WBOフェザー級タイトルマッチである。
チャンピオンはKOキングで世界的人気の高かったファン・マヌエル・ロペスを2戦連続大番狂わせでTKOに倒した実力者オルランド・サリド(メキシコ・32歳)である。
サリドの戦跡は53勝39敗27KO11敗2分1無効試合であり、これだけ勝率の悪いチャンピオンは17階級68名の中に誰一人として存在しないのであり、いくら敗れても雑草のように這い上がってくる気持ちの強い男であることを示している。
対するミゲール・ガルシア(米・25歳)は戦跡は25戦全勝20KOで関係者の間でも極めて評価の高い選手である。
試合前のオッズ(予想)ではロペスを倒し評価が急上昇したサリドに対してガルシアが13:6と引き離して優勢とみられたのであるが、それだけガルシアの評価が高かったのである。
試合は1回に2度、3回に1度、4回に1度ガルシアがサリドをダウンさせて一方的なものになったが8回サリドが頭から突っ込み、バッティングで鼻柱を骨折させてガルシアの鼻柱が曲って試合続行不可能となり負傷判定の結果、審判二人が79:69、一人が79:70でガルシアが圧勝した。
試合はガルシアのスタイリッシュな戦い方、足を使いサリドの突進を早い左ジャブを適格に当て右ストレートをタイミング良く繰り出す教科書通りのようなテクニックで主導権を握って戦い、サリドを中に入れない。入り込んできた時には短い右アッパーで顔を上げて攻撃を許さない、接近して左右フックを打ち込むスタイルのサリドにはスピード豊かなしかも力を入れないガルシアのパンチがサリドには見えなかったのかもしれない。
注意を払って予想したパンチには耐えることが出来ても予期できないパンチに対応出来ないままにあのタフネスを誇るサリドがさして力強くはないパンチに4度も倒される事になったのである。
ガルシアは接近戦に活路を見出すサリドに対し、接近戦を避け足を使って中間距離を常に保ち一分の隙もないボクシングで翻弄して圧勝した。後半に入って2度程KOを狙った攻撃を行ったが成功しないと見ると深追いを避けて再び足を使う冷静な闘い振りに感心した。
サリドは自分の力を信じ勝利を獲得する為の戦い方に徹して接近戦を挑み、得意の左右フックを振るってチャンスを狙いチャンピオンとしての存在感を示した爆発的な攻撃力の存在を最後まで窺わせて一度のチャンスを得れば逆転できると思わせる戦を一貫して追求、勝利への執念はまだまだ恐るべきであることを示した。
4団体あるこのクラスでの4人のチャンピオンを見渡してもガルシアが一頭地を抜く存在であることは疑いなく、これから長期政権を築きスーパースターへの道を昇りつめていくことであろう。
シェン・モズリー、アントニオ・マルガリート、すでに衰え一時代を築いたマニー・パッキャオ、メイウェザーも峠を越えた現在スーパースターの出現を世界のボクシング界も待ち望んできたがアンドレ・ベルト。ケリー・パブリック。アルツール・アブラハム。チャド・ドーソン。ポール・ウィリアムス等の候補達も次々と期待を裏切ってきた現在、バンタム級のノニト・ドネアを筆頭にSフェザー級エイドリアン・ブローナー、Sミドル級のサウルアルバレスに次いでガルシアも候補の出現の一人となった。
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