TVでボクシング観戦 アミール・カーンの再起戦を見る

アミール・カーン(英) 対 フリオ・ディアス(メキシコ)

S・ライト級140ポンドとウェルター級147ポンドの中間143ポンドの体重で戦うノンタイトル戦である。イギリスのキング・カーンと呼ばれるスーパースター候補の元WBA・IBFのSライト級チャンピオン アミール・カーンの再起戦である。

 

2004年のアテネオリンピックのライト級で17才銀メダルの実績を引っさげてプロ入り、Sライト級の2団体のチャンピオンとして順風満帆の勢いで人気も急上昇、日の出の勢いであった。しかしこの世界では未だ無名に近かったダニー・ガルシアにKO負け、ついでレイモンド・ピーターソンにも破れて、この試合が再起戦であった。
攻撃一辺倒であった従来のフレディ・ローチから防御も重視したバージル・ハンターにコーチを替えてのニューカーンの登場であった。

 

戦跡はアミール・カーン30戦 27勝 内19KO 3敗 26才。一方のフリオ・ディアスは元IBFライト級チャンピオンで48戦 40勝 29KO 7敗1分 33才でパンチ力もそれ程恐れるまでもない、峠を越した33才で誰もがカーンの楽勝と思われた。

 

カーンはディアスの主力武器である左フックを警戒して、右の拳をしっかりと顎にあて防備体制を万全にして対戦。出だしは好調に持ち前のスピードで主導権を握ったかに見えたが従来どおりの攻撃優先の戦法である為か身体が固く、受けるパンチはことごとくまともでダメージが大きい、更に左ジャブを出す際に右のガードが下がり、2ラウンドにディアスに狙われて、左フックをまともに受け4ランドにはその左フックでダウンした。
ダメージは深く、ディアスのスピードと追い足のなさに辛うじてクリンチで逃れた。

その後一進一退が続くがやゝカーンの攻勢が多いラウンドが続き優勢にみえたが、よく見ると攻撃していても的中率が悪く威力もなかった為に終盤ディアスの猛反撃に会いダウン寸前まで追い込まれたが足を使って辛うじて逃げ切った。

 

スコアは3者共に接戦の採点であった。カーンは自慢の速射砲のような左ジャブを連続して繰り出し、見た目には派手に映るが的中率が極めて悪く、スピード優先のために手打ちになり相手にダメージを与えるに至らない。カーンは過去に強打のライト級マルコス・マイダナと対戦し左フック一発を右ボディに見舞いダウンさせたことに自分のパンチ力を誤認しているのかも知れない。

自分のパンチが当る場所での連続攻撃は相手にとっても射程距離にあることでもあり、カーンのパンチと同時にまたは打ち終りに計算した攻撃を受ける危険が多い。しかし自分のスピードに自信を過度に持つ為か相手の反撃を考慮に入れずパンチを繰り出すためカウンターを受ける確率が高くなるのである。

 

ディアスは自他の戦力を冷静に把握してカーンの左ジャブを出す際に右ガードが下がることを見極めて左フックのカウンターを狙い成功していたが、たたみかける程の力はなく逃げ切らてしまった。

カーンは 1.打たれ弱いし打たれ方が悪い 2.後半のスタミナ切れが激しい 
     3.打ち急いでパンチ力を滅殺させていて 4.的中率が極めて悪い
このままではスーパースターはおろかチャンピオンの返り咲きも困難かもしれないと思われた。