1967年発表された安部公房の小説である。
失踪した男の調査をその妻から依頼された興信所員は失踪した男の妻や弟から手がかりを求めて話を聞き、遺留品を要求するが、要を得ない対応に不信を抱いたまま男の勤務していた会社や立ち寄った酒場、喫茶店等で聞き込みを行うが、果たして家出したのか、殺害されたのか調査は一歩も前進する事無く過ぎていくうちに男の弟は殺害され、男の職場の部下も死ぬ。興信所員は調査を続ける内に男と自分の生活やいき方を重ね合わせて次第に現実の社会が取り留めない現実感の無いものになって行き、自分の存在と社会とがどちらが実体のあるものか不安となり自分を見失う。
相変わらずの安部公房の文章力は凄く細部の描写に力を入れて読者を安部公房ワールドに引き込んで行く力量は見事である。
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