映画「少年H」観る

1997年妹尾河童初の自伝的小説として刊行された「少年H」の映画化である。小説は上・下巻売り上げ340万部ミリオンセラーを記録している。
昭和16年春、神戸の街で洋服屋を営む家族の中で好奇心旺盛に育つ小学5年の肇がいて、周囲からは「H」と呼ばれている。一家はクリスチャンである。H一家の周りでも変化が起き始め、自由な言動が次第に抑えられ始め、徴集令状が来はじめる。戦争が
始まって軍事統制も厳しさを増し、戦況が不利になるにつれ其々の日常が激変して行き、神戸は大空襲に襲われ終戦を迎える。
街は見渡す限りの焼け野原になっていた。敗戦後生き残った人々は、それぞれの想いを抱えて又生きて行くのである。作品は現実を極力伝えようとする意志が伝わり戦争に突入する前に思想動員が行われて国民がそれに乗せられて流されて行く状況が描かれ、次第に戦争勝利という大義名分の為に言論統制が行われ、自由が奪われてゆく様子や戦争が始まり軍隊の仕官達が傍若無人に行動するが彼等は質屋のまた時計屋の息子たちであり軍隊、戦争は善良な人達を狂気に駆り立てる様子も巧みに語られる。神戸の空襲の映像はリアルで凄まじい。敗戦後、軍人達は元の職業に戻り何くわぬ顔で現実の社会に順応していくことに逞しさと同時に危険な面も感じさせる。

 

今日、憲法九条を廃棄し、戦争可能な国へ進んで行くような動きが速度を早め、福島原発が終息はおろか手の付けようもない状態になっているにも拘らず、再稼動させようとしており、首相が外国に原発を輸出しようとす狂奔している現在、公平を装って安倍首相を支持するマスコミを始めとする国民の思想動員はすでに始まって政治、経済、文化等あらゆるところで拡がっており、現実を素直に見れば今の政治、経済は国民の望むところとは相容れないのは明らかであるが、思想動員の恐ろしさをまざまざと感じざる得ないのである。

 

安倍内閣の支持率が6割を超えていることは現実の国民生活に照らしてあり得ない。