あの「半沢直樹」を書いた池井戸の作品である。
首相武藤泰山は国会答弁中にいきなりどうしようもないどら息子翔と入れ替る。(これはこれでテロか某無法国の策略かと探すことになる)その場は官房長官狩屋の桟転で切り抜けるが次回はそうはいかない。第一秘書貝原の書いた答弁原稿を読む事になるが漢字が読めない。「我国はアメリカ発の金融キキン(危桟)によるミゾユー(未曾有)の危桟にジカメン(直面)しており景気は著しくテイマイ(低迷)しておるところでございます。」建設など一部の業界においては大型倒産がハンザツ(頻発)し、製造業においては急激な受注減によるハヤリ(派遣)労働者首切りの問題がワカオキ(惹起)しておりまして、こうした事態をカイサケ(回避)するため昨年から我が党が実施してきた経済対策をフシュウ(踏襲)した積極的な景気刺激策を講じてまいるトコロアリ(所存)です。と読むのである。
連立する反党の江見国交大臣は講演会で「日協連が強い県は学力レベルが低い」と発言し更迭される。狩屋官房長官は愛人問題が暴露されて窮地に追い込まれる。経済産業大臣が酪酊状態で記者会見をしたりと騒動が続く。
麻生前首相を想起させるエピソードを数多く盛り込み、当時を思い出す読者も多いことであろう。票と金と組織の論理に支配された政治の世界に漢字も読めないダメ息子翔を放り込んで話は盛り上がっていく。ダメでも素直で物怖じしない性格で、政治のバカさ加減を浮き彫りにしてゆく。揚げ足とりのマスコミに対して「お前らそんな仕事をして恥ずかしくないのか、目をさましやがれ」と啖呵を切る。愛人を囲った武藤泰山に妻が慰謝料1億円を請求すること等、登場人物が各々個性溢れて描かれており、まことに面白い小説となっている。
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