パリに遊びに来た二人のペルシャ人が故郷の後宮にいる寵姫や宦官たちや友人たちと交わした書信161通によって成り立っている。
11~14番までの4通の手紙のなかに述べられている注目すべき記述がある。
トログロディート族の話として、人口が日に日に増大していったので、トログロディート人達は皆の王様を選ぶのが適当だと信じた。彼等は一番正しい人間に王冠が授けられるべきだということに意見が一致して、皆の眼差しはその年恰好からいってもその年長に亘る徳行から云っても尊敬すべき一人の老人に向けられた。
代表者たちが、この老人のもとに送られて、彼が選ばれた旨を知らせると老人はこう言った。「私の為にトログロディート族に、こういう禍がもたらされるなんてとんでもないことだし、私より正しい人間が外には一人もいないと思うのもとんでもない話だ!皆さんは私に王冠をお授けくださる、どうしてもそれをお望みになるのなら、戴くより外に致し方ないだろう。しかし、私が生まれた時には自由なトログロディート族であったのが、今度は他人の言うがままになるのを見なければならなくなるのだから、その苦しみに私は死ぬだろうとお考え願いたい」といった。それから厳しい声でこう叫んだ。「おお、トログロディート
人たちよ、私には何故こういうことになるのかよく判る。皆さんの徳行が重荷になり始めているのだ。現在の状態では、指導者が全くないから、あなた方は自分を抑えても有徳でなければならないわけだし、そうしなけらば生き続けることは出来ないからだ。
しかしこの軛は、あなた方には重すぎる様に思われてきている。あなた方は、誰か一人
の君主に服従し、あなた方の生き方よりも厳しくない法律に従うほうが良いと思っている。そうすれば野心も充たされるし、富も獲得できるし、放縦な享楽にだらけ切ることもで
きるし、大きな罪を犯さぬ限りにおいては徳行等も入用でなくなるということを、あなた
方は知っているのだ」
モンテスキューは国民の一人一人が自立して物を考え、自己の責任において行動することがいかに困難かということを骨身にしみて知っていたのであろう。
現在日本の状況をみても国民は安倍政権に、自分達の運命を丸ごと委ねてしまっているようにみえる。
多くの新興宗教の存在も自己確立の困難さを証明しているようで、モンテスキューの指摘は今日に至るも的確である。
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