韓国と北朝鮮による南北首脳会談が行われ、朝鮮半島の「完全な非核化」と「朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言」に署名した。
非核化の実現に向けけた具体化は米朝会談に持ち込まれたが、歴史的な出来事であったことに変りはない。
世界的に注目されたこの会談はトランプ政権を始めとして総じて歓迎されたが、日本を始めとして懐疑の表明もみられた。会談は入念に考えられて進行し、両首脳の熱意が良く表れたもので、特に叔父や側近を次々と処刑し兄も暗殺した冷酷な独裁者と世界中から見られていた金委員長が、年長を立てる、相手の話を良く聞き交渉術にも長けて政治的能力も充分持ち合わせた頭の良い今後米国とも交渉の相手になりうる人物である事を世界に知らしめた。冷酷な独裁者の反面、気配りと政治戦略に長けて、かつ懐の深さを示した。
日本の保守的論者の中には「この宣言は欺瞞であり騙されてはいけない、これまでさんざん裏切られて来た。中距離ミサイルも放棄しなければ日本にとって何の意味もない」との意見も出されている。
しかし従来幾度となく約束を破ってきた北朝鮮であることは確かであるが、アメリカの言
いがかりにより突然のイラク全面攻撃や、9.11によるイラン、イラク、北朝鮮を悪の枢
軸と呼び、テロ支援国家と認定し、圧倒的な軍事力を背景に、意に反する国を攻撃するアメリカに、核を持ちICBMを早く装備して対処しようとした北朝鮮のみを非難することは出来ない。
その為に自国の国民の生活を始めすべてを犠牲にして核武装に走って時間を稼ぎ、やっと実のある交渉がアメリカと出来ると踏んでの方向転換であろう。
言うまでもなく1.経済制裁によって自国の経済が瀬戸際に来ている事。
2.アメリカの国力が低下し世界の警察官の役割を返上しつゝある事。
3.韓国の文在寅大統領に替わった事。等が大いに幸した事であろう。
これらの事を踏まえての金委員長の戦略的方針のしたたかさが見えてくる。
北朝鮮の後戻り出来ない現状の中での本気度を表わしているのは明らかで、今回の宣言の意味する事は極めて大きいとみるべきであり、朝鮮半島の非核化が現実味を帯びてきたとみる。
一方の安倍政権は一貫して圧力一辺倒できたが、外国から経済的圧力を受けた戦前の日本が戦争に突入したのを忘れたのであろうか。
北朝鮮の核問題を国難として、憲法改定の絶好のチャンスとしてきたが、これが大きく
崩れてさぞかし残念なことであろう。日本が朝鮮半島問題から外されて蚊帳の外に置かれ強いてはアジアからの孤立もしかねない状況だ。