ハンス・ホッター
フィッシャー・ディスカウの歌を聴いてドイツリートが好きになった。
シューベルトの「春の想い」「音楽によす」「ミューズの子」等そして「冬の旅」「美しき水車小屋の娘」CDで何度聴いた事であろうか。リートはシューベルトに極まると思っていた。
以前ハンス・ホーターを爺くさい感じで好きになれなかったが、最近改めて聴いて何と印象が全く異なるのに驚いた。あの面白味のない甘くもなんともない、バスに近いバリトンの歌声がジーンと来るではないか。特にシューマンの「誰がお前を悩ますのだ」「なつかしいざわめき」「新緑」を歌うハンス・ホッターの深く低い声は歌の総てを表現するという風でもなく、内容を暗示するかの如き歌唱で若い時代に理解出来なかったのは当然であろう。
シューマンはさしたる悲愴感もなく、大ホールで歌うにふさわしないが、情感こまやか
にひっそりと歌うのがふさわしとみえる。
ホッターならではの名演である。