丸山眞男 座談 全9巻 岩波書店「民主主義を憂う」より

「民主主義を憂う」より1958年12月 1959年1月

 

ー 地方文化 ー
丸山眞男、大内兵衛、南原繁3氏による鼎談

「日本には地方文化というものはない。地方文化を振興しろといっても、それはいいことをしろということと同じであって、振興するだけの基礎がない」「たとえば地方団体にしましても、地方自治体にしましても補助金、交付金というものは40%でしょう。だいたいほとんど地方財務の半分以上が中央に依存している。けっきょくそうすれば、中央で金をとってくることがうまいやつが地方のリーダーになっていくわけです。そういうことを通じて官僚支配といものが地方自治体というものを、いかにインチキであるか、戦後はそれがもっともひどい」「ヨーロッパでもアメリカでも都市化が進んでいるが、地方都市があってローカルのカラーがあって全部ベルリンになるとかニューヨークになるとかはない」「日本の近代化は東京がモデルになって、地方に東京のイミテーションができて、政治、経済、文化とあらゆるものが東京に集中しちゃう」したがって「地方文化といものがないんだから、いくら地方文化を振興したほうがいいといっても、地方文化というものがない」「地方文化というものは城を、名古屋城とか、姫路城を再建することになる。

それになんの意味があるのか」

 

ー 国際的問題について -
「本当に腹の底から、日本がいわゆる自由世界というものに一辺倒になって、そして将来も世界に処していけるということについての確信と、そのなかにおける日本の具体的なあり方についてのイメージが保守党にあるかというのです。ないと思う。」「安保条約を改正してアメリカと同盟してやるということはアメリカどおりの政体とか、アメリカどおりの生活の仕方というものを理想にして、日本もそれに賛成・・・・」「けっきょくそこまで考えないで、多少ちがいはあっても世界的原理としては、共通の立場にたつのだということを考えないで、この問題を処理するということは、非常に危険なんだ」
「できるだけある程度のーーもちろん失地回復だねーー。日本の帝国主義的な、かってのものを持ちたいということをリアルに考えている。その為にはアメリカと一緒にやって

  ・・・・。そういう帝国主義的信念と世界観と、それにともなう政策を考えていい。それは恐ろしいものですよ」「それなら反動ですよ」
「日本の保守党はなにを守ろうという理論がないですよ。つまり守る利益はあるが世界的理論がないということになるんじゃないか」

 

ー 選挙制度 ー
「二大政党ということになると、少数党の発生を防ぐために、小選挙区制いうものが起ってくるわけですよ」「ニ大政党じゃないと安定しないということになると小選挙区の方が安定するというほうに持っていかれる危険性がそうとうあるとおもいます」


今から60年前に3人の論者はこうした見解を述べ、警鐘を鳴らしているのだ。
今日考えてみれば、二大政党はおろか、一党支配、更には官廷支配が強まり、民主主義を否定するような、論議を無視して思うがままの政治を断行、公文書の改竄・破棄と無法の限りを尽くす政治が行われているのが実情である。