大相撲令和二年七月場所 (本来は名古屋場所であるが新型コロナウィルス感染防止
対策の為場所を東京の両国国技館に移し、7月19日から8月2日まで行われた)
一、 照ノ富士 と 朝の山
七月場所は幕尻の照ノ富士が13勝2敗で優勝した。
両膝を損傷した上に内臓疾患も病み、大関から序二段まで陥落したが、今場所前頭の
幕尻まで復活して感動的な優勝を果たした。膝の負傷は完治する事なく、負傷を抱え
ながらどう現役を続行していくのか注目された。
大関時代は脇が甘く屢々両差しを許し、後ろに反り返って力ずくの相撲を若さにまかせ
て取った事から、負傷したものである。
膝、腰に負担をかけないで相撲をとる事が絶対条件となり、為に、立会いに素早く左上
手を前褌近く浅く取り、前傾姿勢を保って前に出る形をつくりあげて、今場所に挑んだ。場所前に「上手を取れば白鵬関以外には負けない」と豪語していたが、相当の自信があったのであろう。言葉通り勝ち進み、終盤上位陣に当っても位負けする事なく、見事な
結果をもたらした。
一方の朝の山である。
朝の山は右四ッの形を急速につくりあげたことで、安定感を増し大関となった。
今場所の後半に弱点が露呈した。左上手の位置が深すぎるのである。
浅いと何故良いのか。1. 褌が近く、取りやすい。
2.取って引き付ける事により相手の自由を奪える。
3.相手の右下手の効果を殺す事が出来る。 以上
その効果は思いの外大きいのだ。
今後の課題
1.立会いの鋭さを増すこと。
㋑ 相手の勢いを止める。
㋺ 相手の体勢を起こし、早く前褌をとる事が出来る。
㋩ 以上で取りこぼしが減る。
2.左上手を取る為に左手の薬指、小指の強化を図る。
3.左手の腕力を強化する(引きつける力をつける)
4. 右差しにこだわらない。こだわると相手はおっつけて搾り上げる為に上体を
起されるからだ。
朝の山は右差しの為右脇は堅い事から、相手の左差しをおっつけて搾り上げる事により、相手の上体を崩すことが出来る。相手がたまらずに差し手を抜けば差せば良い。
左上手から強烈に引きつければ一層の威力が増すことであろう。
二. 近年の相撲が面白くない理由
いくら横綱白鵬が強くとも30回闘って1~2回しか勝てない、又は全くかてないという事実は深刻である。これでは勝負事として全く面白味がないのは当然で、対戦者はなに
も考えずにたゞ漫然と土俵に上がっているとしか思えない。
どうしたら勝負になるのか考えてもらいたい。
40~50年以前の小兵力士は達は、こういう体勢をつくれば、たとえ横綱相手でもそうはいかんぞとという自負心を持っていた。
(例)1.両前褌を取って頭を付け、拝むように押し上げて前に出る。
(相手に前褌を取らせない)
2. 上手を深く取って頭を付け、下手は前褌をとり、相手を半身にさせて出し
投げて崩し寄り、又は外掛け内掛けで攻める。
3.時折立会い一瞬 立合い一瞬の蹴手繰りを繰り出す。それによって次の場所
では彼が何をするのか、変わるのか、一遍に出てくるのか惑わす。
4. 双差しに特化して、差したら一散に走る。相手に上手を絶対に許さず、
上手を取りに来たところに内掛けを狙う。
等、特技を持った多くの個性的な力士が居た。全てが横綱、大関になる事は出来ないの
は明らかで最大限の個性を発揮したのである。
彼等も専門家集団であり、修得した練達の技の数々を披露するのが仕事であろうに!