ドキュメンタリー映画『チリの闘い』 第二部「クーデター」及び 第三部「民衆の力」  10月25日掲載の続き 

ドキュメンタリー映画『チリの闘い』 第二部「クーデター」及び  第三部「民衆の力」

    ( 第一部「ブルジョワジーの叛乱」は10月25日付け掲載済み)

1973年6月29日のクーデター未遂事件から9月11日のクーデター実施へと至る出来事が時系列で語られる。

第二部 「クーデター」 

6月29日のクーデターは軍の多くの司令官たちはこれを静観、時期尚早とみたのである。街はクーデター挫折を喜ぶ人民連合の支持者で埋め尽くされる。左派の労働者たちは即座にチリ中の工場や企業を彼等の管理下に置いて、これをコルドンと云う地域労働者連合会がこの仕事を統括した。アジエンデはこのクーデターを受けて非常事態関連法を議会に要請。野党が多数の議会はこれを却下。軍は前年議会を通過していた銃砲取り締まり法案により武器の捜索を工場中心に強行し、国民恫喝を開始する。

政府は政府転覆をもくろむ勢力、アメリカ合衆国と叛乱支持者による迫りくるクーデターの脅威を前にして、民主主義を尊重する将校達の支持とキリスト教民主党との最低限の合意を目指す一方で人民連合内でのクーデターに対する戦略をめぐって見解の相違が表面化する。左派の過激派が政府と人民連合の主力の態度を「妥協」ととらえ激しく対立する。

 

7月27日 大統領の海事副官は政府と海軍将校との重要なパイプ役を担っていたが、極右に暗殺される。又輸送業者が無期限ストに突入、経済を混乱に陥れ、政府とキリスト教民主党との対話を妨害しようとする極右の作戦である。このスト参加者達にはCIAから500万ドルの資金援助がなされた。CIAの訓練を受けたテロリスト達はダイナマイト等を使ってのテロを繰り返し、キリスト教民主党はスト支持を表明。しかし政府と支持者によりこのストに対応「人民商店」を強化し、国から直接購入した食料を原価で売る等の手配と政府を支持する運送業者の協力でこれに対抗した。

 

やがてホワイトハウスと国内の野党は次第にブルジョワの大半を味方につける事に成功。

一方人民連合はアジエンデ支持のデモを組織し80万人が集結。アジエンデは9月11日に政府のやり方をめぐって国民投票の実施を表明。これを知った合衆国政府と反アジエンデ派は最後の手段をとることに決定。アメリカの駆逐艦4隻がチリの沿岸に迫り9月11日空軍の爆撃がモネダ宮殿を襲い、アジエンデは宮殿の中で死亡。

以後 大衆運動は徹底的に弾圧、数千に及ぶ人々が虐殺されスポーツ競技場は強制収容所と化す。

 

9月11日に放送されたアジエンデのラジオ演説『歴史は抑圧や犯罪をもってしては押しとどめることはできない。彼らは我々を押しつぶすこともできるかもしれない。しかし歴史は人民のものであるり、労働者のものである。遅かれ早かれ大きな道が切り開かれることだろう。みな自由に歩くことができ、より良い社会を建設するために通る大きな道が』

 

ここに描かれる人民連合の人々の涙ぐましい努力と崇高な精神と高い倫理感、反動勢力に対する的確な対応力は感動的である。

対するアメリカ合衆国の権力と策略とそれでもダメなら武力で叩き潰す、その在り方には今更ながら改めて思い知る思いがする。

 

チリの闘い  第三部 「民衆の力」 

1972年アジェンデ政権が誕生して1年半、サンチャゴでアジェンデのパレードに大声援を送る支持者達の熱狂ぶりが示される。

運送業者のストライキが実施される。野党の強硬派国民党がけしかけたもで、全国農業協会や全国商店主連合も同調、キリスト教民主党もこれを支援、原料、農産物は国中でストップした。

ニューヨークタイムスは「経済的支援」を合衆国政府であったと暴露した。

労働者達は工場のトラックを走らせることで何とか対処、労働者の多くが工場のトラックや徒歩で通勤、一方で産業界の重役やエンジニアは自宅に留まることでストを支援する。これに政府支持のエンジニアが数社を担当して業務を維持した。反政府派による生活必需品の買いだめが急増、政府派はこれを監視強化と、産業界の組合が製品を各地域に運び閉鎖中の商店を開業。

1972年10月には政府の予想を超えて労働者の組織能力は高まり、産業界で資源を交換するシステムを作り上げる。改革に行き詰まったアジェンデは民主制を支持した陸軍司令官プラッツを内務大臣に任命し、ストライキ終結に成功、一方労働者は国内の数百の工場を占拠、企業統合した産業コルドンが形成されて社会主義化が進んで行く。

都市部の労働者が農民に協力して雇用者側に対抗、政府には農地改革を迫った。右派の策謀により商品の多くが闇市に流される事態を人民勢力は商店を介さずに各家庭に食料を始め生活必需品を行き渡らせる供給制度を作る等、人民勢力の成長振りは目覚ましく、社会主義化への道を着実に突き進んで行く中で、労働者、農民、市民の連帯を一層強めて行くのだ。

しかし、議会中の勢力は半数以下であり、政策の現実は困難を極めて、労働者たちは現状への危機感を強め、膠着状態に陥った政府に対し苛立ちを募らせていた。彼等は既存の資本主義制度を超えて、階級闘争を挑んで行かなければならないと考え始めていたのである。クーデターの悲劇は真近かに迫っていた。

反政府勢力は(アメリカ合衆国を含めて)の様々な政府転覆に失敗して、ついに最後の手段クーデターを実行に移すことになる。