「鷲は飛び立った」 作 ジャック・ヒギンス 2022年4月21日

「鷲は飛び立った」  ジャック・ヒギンズ 作

1975年発表した「鷲は舞い下りた」から15年、満を持して書かれた「鷲は飛びっ立った」は前作でイギリスからチャーチルを拉致するという総統の特命を実行すべくクルト・シュタイナー中佐を中心としたチームが成功寸前にある理由から失敗し、シュタイナー中佐は死亡する。生存者はリーアム・デブリン唯一人。

 

今作では死んだと思われていたシュタイナー中佐が、負傷して捕虜となりロンドン塔に収容されている事が判明、しかも近いうちに身柄をセントメリー修道院に移すという。

ヒトラーの思いついたことの一つが「ドイツ帝国の英雄をイギリス人に捕らえられては放ってはおけない、これを奪還する」というもので、それもヒトラーは2,3日もすれば忘れてしまうが、ヒムラ―は政敵アブヴェールの長官カナリス提督を追い落とすために実行を強要する。この仕事はナチス親衛隊秘密情報部の将軍ヴァルター・シェレンベルグ少将に廻ってくる。シェレンベルグは述懐する。「総督の愚かな考えによって我々はスターリングラードで30万人以上の戦死者を出した。24人の将官を含めて9万1千人が捕虜となり、総統のおかげで次々と失敗が重なって行く」と。また第三帝国をお粗末な喜劇と認識し、ヒトラーと取り巻きを非常に程度の低い役者とみなしており、自分をナチスの一員とは考えてはいない。しかし総統の命令は絶対であり、その実行の為に、欠かすことのできない人物それがアイルランドのIRAメンバー リーアム・デブリンであった。デブリンは3万ポンドでこの仕事を引き受ける。チャーチル拉致で仕事を共にシュタイナー中佐を助ける為だ。デブリンは協力者を選択し、計画をすゝめるのだ。

 

ここからスリルに満ちた活躍が始まる。デブリンの活躍はさながらジェームス・ボンドである。更に凄腕のアメリカ人パイロット エイサ・ヴォーン、デブリンの友人と妹メリィ、イギリス男爵マックスウエル・ショウ、妹ラヴイニア、武器を調達する為に拘わり合ったギャング ジャック・カーヴァー、弟のエリック等々。仲々魅力的な人物が交錯する。果してシュタイナー中佐の奪回はなるのか・・・・。