会場メキシコ・テイファナ・ファウスト・グテイエレスモレノ市立講堂。WBO Sフェザー級暫定王者決定戦。1位オルランド・サリド(メキシコ)33歳。戦跡56戦41勝28KO
12敗2分1無効試合、前WBO フェザー級チャンピオン今回階級を上げて試合に挑む。ニックネームは「シリ」、対戦者ターサック・ゴーキャットジム(タイ)33歳、同級2位、戦跡58戦53勝33KO 4敗1分,ニックネームは「ビットブル(闘犬)」
1R 開始早々に打ち合いの中、左フックでサリド ダウン次いで今度は右フックのボディブローでゴーキャットジム ダウン。(本当のところボディブローローブローで反則であったが終盤ゴーキャットジムの左フックでサリド ダウン寸前。
2R サリド攻勢に出るが終了ちかくゴーキャットジムの右フックでサリド ダウン。
3R ゴーキャットジムの右フックでサリドたじろぐが猛然と攻撃に転じる。
4R ゴーキャットジム足を踏まれてスリップダウン、右ストレートのボディブローでゴーキャットジム2度目のダウン。
5R サリド猛攻の中、ゴーキャットジムの左ショートストレートでサリド3度目のダウン。しかしゴーキャットジムも消耗しており追撃できない。
6R サリド再び攻撃、ゴーキャットジム手数が減りロープに詰まる。レフリーが終了時間を間違えてストップした為にサリド陣営はレフリースットップと思い込みリング内に入る。サリドも両手を挙げて喜ぶが、レフリーは間違いに気づき試合を続行。
7R サリド ゴーキャットジムをロープに詰めて連打ゴーキャットジム ダウン3度目。
8R サリド ボディ中心に集中打、ゴーキャットジム弱る。
9R ゴーキャットジム距離をとりアウトボクシング、サリドも小休止。
10R ゴーキャットジム勝負を賭けて前に出るが両者とも疲れる。
11R サリド 左右フックに次いでアッパー右フックを連打、ついにゴーキャットジムをKOする。サリドは1、2、5Rに計3度のダウン ゴーキャットジムは1,4,7,11Rで計4度のダウン。打ちつ打たれつの壮絶な試合となったが、サリドの連打とボディ打ちが、ゴーキャットジムの左強打に優り勝利を握り、2階級制覇なる。
WBOチャンピオンのミゲール・ガルシアの王者返上によってサリドが正王者となった。
両者の正面衝突の激闘は凄まじく、今年度一番の試合であった。
12敗もしてチャンピオンになっている選手はサリドだけでである。叩き上げの典型ボクサーで貴重な存在である。
メキシコシティ・アリーナ・シウダ・デ・メヒコ
WBA・WBOフライ級タイトルマッチ
チャンピオン ファン・フランシスコ・エストラーダ
24才 戦跡 28戦26勝19KO 2敗(メキシコ)
2013年4月ハワイアン・パンチのブライアン・ピロリアからタイトルを奪取。
ニックネームはガジコ(雄鶏)
怪物ローマン・ゴンザレスに挑戦し、善戦したことから評価を上げてビロリアに挑戦が決まった経緯がある。攻防兼備のバランスのとれたボクサーである。
挑戦者はジョバンニ・セグラ 32才(メキシコ)
元WBA・WBOライトフライ級チャンピオンで体重苦から1階級あげて来た。小さな王者イヴァン・カルデロンが長く保持していたタイトルをKOに破って以来、強打をほしいままにしてきた。
戦跡は36戦32勝28KO3敗1分 ニックネームはエル・グレロ・アステカ(アステカの戦士)
フライ級ではビロリアに敗れて2度目の挑戦である。サウスポー。
1R セグラ 例によって左右フックを振って前進 エストラーダ左ジャブと右ストレートをコンパクトに使って懐に入れない
2R セグラ 頭を下げて左フックでボディを狙う。ガードもほとんどせずに攻撃主体のスタイルで強打が防御をかねている。
3R エストラーダ 左ジャブ・左フック・ストレートアッパーと多彩なパンチを振う。途中に必ず左フックのボディ打ちを忘れない。巧みな試合運びである。
4R エストラーダはセグラの大ぶりな左フックをウィービング・ダッキングで巧みに外し、左を多用。セグラの右目が腫れてくる。接近戦となるがエストラーダのパンチ制度がだんぜん高い。
5R エストラーダ セグラをロープに詰めて集中打
6R セグラの右目の腫れがひどくなってくる
7~8R セグラのパンチは当たらず、スピードも落ちてきて試合は一方的な様相を見せてくる。
9R エストラーダ 倒しにかかるがややパンチ力の不足を追い上げが足らずに仕止められない。
11R エストラーダ セグラをロープに詰めて集中打でレフリー・ストップ。TKOとなる。
エストラーダは巧い選手であるが、やや迫力不足と決め手に欠けるところがあり、絶対王者となるのは難しいのではと思わせた。
78%のKO率を誇ったセグラはそのパンチの迫力でライト・フライ級では猛威を揮ったが1階級(48.97kgから50.80kg、1.83kgの差)の違いは大きく、防御せずに打ち勝ってきたスタイルが通用せずに連敗した。
カリフォルニア州 カーソンスタブハブセンターWBAフェザー級統一戦5階級制覇チャンピオン現WBAスーパチャンピオン ノニト・ドネア(フィリッピン)。
戦跡35戦33勝21KO 2敗。対戦者ニコラス・ウオーター(ジャマイカ)、戦跡24戦全勝20KO、WBAフェザー級チャンピオン。
1R ウオータース プレッシャーを掛けて前進し、力強いパンチを振るう。ドネア スリップダウン。
2R ウオータース長い腕で顔面、ボディを完全にカバー、お互いに接近し激しく打ち合う最後にドネアの左フックでウオータースぐらつく。
3R ドネア主導権を握らんと積極的に攻め優勢をとるがウオータースの右アッパーが顎を捉えてドネア ダウン。右目上を切る。
4R ウオータース前進しプレッシャーをかけて左ジャブ多用。ドネア体勢を整える為にこのラウンド休む。
5R 主導権をめぐって両者激しく打ち合うがウオータースがこの打ち合いを制する。
6R お互いに打ち合うがウオータースの右フックでドネア2度目のダウン。テンプルのうしろに命中。そのままKOとなる。
お互いに正面衝突の闘いであったが体力、パンチ力共にウオータースが優り完勝。
軽量級5階級に亘って席巻、その切れ味鋭い左フックで強敵を次々に薙ぎ倒し「フィリピーノ フラッシュ(フィリピンの閃光)」と謳われた
スーパースター ノニト・ドネアは頂上決戦でギジェルモ・リゴンドーに完敗してその耀きは失われその後の試合は苦戦を強いられてきたが、
この試合でドネアの時代は終焉を告げ、かつての強豪ガーナのアイク・クォーティ(ウェルター級)を思わせるガードが固く、身体能力が高く、
左ジャブが鋭く強力なパンチ力を持つスーパースターの誕生を予告させるようなニコラス・ウオータースに栄光のバトンは移ったのである。
カリフォルニア州 カーソン スタブハブセンター WBA WBC ミドル級統一戦
WBA チャンピオン ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)32歳。戦跡30勝全勝27KO、現在11連続KO防衛中。
対戦者アントニオ・ルビオ(メキシコ)34歳。WBC暫定ミドル級チャンピオン。戦跡66戦59勝51KO 6敗1分。
ルビオ ウェイト オーバーでタイトルを失う。両者の体重差はかなりありそう。ルビオが一廻り大きい。
1R お互いに積極的にパンチを振るうが有功打はゴロフキン。
2R プレッシャーをかけたゴロフキンは右アッパーでのけぞらせたあとの左フックでルビオダウン、そのままカウントアウトでゴロフキンのKO勝ちとなる。
パンチが強く、ガードも固いルビオを鎧袖一触、底知れぬ力でゴロフキンは連続KO勝ちを伸ばした。
ゴロフキンの今後の希望する対戦者はミゲール・コット、フリオ・セザール、チャベスJr.そしてカネロ・アルバレスとの事で今後が楽しみである。
代々木第2体育館。WBCバンタム級タイトルマッチ
チャンピオン山中慎介(日)32歳、戦跡22戦21勝16KO 1分7度目の防衛戦6連続KO中。 挑戦者スリヤン・ソールンビサイ(タイ)25歳。戦跡43戦37勝16KO5敗1分、同級1位、元WBC・Sフライ級チャンピオン。
1R サウスポーの山中に対しスリヤンはセオリー通りに右ストレートを多用し、相手の内懐にはいって接近戦の構えである。右ストレート数発ヒット。
2R 約10センチの身長の差を更に頭を下げて顎を引き、スタミナと突進力で接近戦に活路を見出す作戦はスリヤンにとって最善の策と思われ試合の主導権を取る。
3R スリヤンの攻撃は続く。
4R スリヤンの前進に右ジャブを使って距離をとり始めてから、左ストレートも当たり始めペースは徐々に山中に傾き始める。
5R スリヤンは更に頭を下げて突進し距離を縮める策を止めない。
6R 山中の左アッパー顔面に的中、今日一番のパンチ。
7R 山中左ストレート2発、テンプルに命中しスリヤン ダウン。KO勝ちが見えてくる。
8R 山中の集中打に接近して防ごうとするがダメージが大きい。時折発つ右フックは依然威力はあるが、山中の左ストレートで2度目のダウン。
9R スリヤン クリンチして山中を投げ、減点1、更に山中の左フックのボディにスリヤン3度目のダウン。
10R スリヤン驚異的なスタミナで右フックを振って突進、更に頭を低くして攻撃に、山中もてあます。
11、12R も同様に推移して終了。
判定は115:109、116:108、114:110で山中の圧勝であったが、7度の防衛戦で一番苦戦した試合であった。相手の頭を下げた突進に対して、もっと右ジャブを多用して前進を止め、距離をとってなおも前進する相手にアッパーも有効だと思う。左ストレートは相手の頭が低いために、頭を打つことになり拳をいためることになるからだ。
今後の方針は各団体のチャンピオンとの統一選が目標でアメリカ進出も視野に入っているようだ。
オハイオ州シンシナティ U・S パンク アリーナー
ウェルター級10回戦 元IBFウェルター級チャンピオン アンドレ・ベルト、戦跡31戦28勝22KO 3敗(米)31歳。3敗はビクター・オルチスと両者計5度のダウンの末に初黒星でタイトルを失うと、その後低迷ロバート・ゲレロ・へスス・ソト・カラスには12R
TKOで敗れたもので、目字通り生き残りを賭けた再起戦である。チャンピオン時代はメイウェザー再来と言われ攻撃力ではメイウェザーを上回っていた。
2013年7月カラスに敗れ以来の試合である。
対戦者スティーブ・アップシャー・チャンバース(米)29歳。戦跡29戦24勝6KO 3敗1分1無効試合、両者2連敗の対戦である。
1R ベルト左ジャブ、右フック、ストレートで先制攻撃をかける。
2R チャンバースは待ちのボクシングで左ジャブを使ってベルトのこうげきを止めるよう図る。ベルトは攻撃的、手数が多い。
3R ベルト圧力をかけてチャンバースをロープに追い込んで、攻撃を仕掛けるが有効打は少ない。チャンバースはベルトの打ち終わり狙う。
4R 手数でベルト、チャンバースはほとんど手を出さない。
5R ベルト ロープに詰めてラッシュするがチャンバースの打ち終わりのカウンターにたじろぎ以後カウンターを恐れて後が、続かない。
6R ベルト相変わらず手数が多いがほとんどまともに当らず、時折放つチャンバースのカウンターをもらう。
7R~10R ベルト、ロープに詰めてパンチを振るうが両者とも疲れてスピードが失われていったまゝ終了。
判定は99:91 3者ともにベルトで、ベルト連敗を逃れた。がパンチの威力はチャンピオン時代に遠く及ばず、打たれ弱さは相変わらずで今後は見込めない。
北アイルランド、ベルファスト。タイタニック・クォーター
IBF S・バンタム級タイトルマッチ、12回戦。チャンピオン キコ・マルチネス(スペイン)28歳、ニックネームは「ラ・センサシオン(センセーショ)」、戦跡35戦31勝23KO 4敗。4月に長谷川穂積を7R KOに下し長谷川の3階級制覇を阻止。現在4連続防衛中。2013年2月にクランプトンに敗れリベンジを狙っている。
挑戦者カール・フランプトン(英)27歳。戦跡18戦全勝13KO ニックネームは「ジャッカル」、同2位級である。
1R フランプトン距離をとって左ジャブを多用。ファイターのマルチネスは接近戦に持ち込みたいが、これを許さない。
2R フランプトン左フックのをボディに右ストレートを3発顔面に有効打。
3R フランプトン、マルチネスの出鼻を左ジャブで叩き、更に出るところへ右フック、左ストレートを3発。打っては自分の位置を変える巧みな試合運びである。
4R フランプトンの左ショートストレート有効。
5R マルチネスの無理して出るところに右ショートストレートのカウンターでマルチネス ダウン.。
6R 劣勢を挽回しようとマルチネス前に出るところに右カウンターを浴びせ軽く、動いて自在にパンチを当てる。
7R フランプトン右ストレートのカウンター2発、それでも前に出るマルチネスに対してはグリンチで対応、接近戦を許さない。
8R マルチネス、 ロープに追い込もうとすれども巧みに足を使って動き、カウンターを決める。
9R も変わらず、マルチネスのパンチは空を切る。
10R 両者足を止めて打ち合い、始めてマルチネスのペースとなる。
11R フランプトン、スピードを上げて連打でマルチネスを棒立ちにさせ優勢を保つ。
12R 逆転を狙ってマルチネス、前進しパンチを振るうが、動きが鈍くなりフランプトンの速いパンチに対抗出来ないまま終了。
判定は119:108が2人、118:111が1人でフランプトンの圧勝でマルチネスのリベンジならず、新チャンピオンの誕生となった。
このクラスはWBAスーパー、WBOの両団体に君臨するキューバのスーパースター、ギジェルモ・リゴンドーがおり、WBCには強打で手数の多いタフガイ、レオ・サンタクルス(メキシコ)がいる。強豪揃いのクラスでもあるがリゴンドーが断然リードしている。
10月6日 ネバタ州ラスベガス4、MGMグランドガーデン・アリーナ。
ミドル級10回戦。
アルフレッド・アングロ(米)32歳、戦跡26戦22勝18KO 4敗。元WBO Sウェルター級チャンピオン。
対戦者ジェームス・デラ・ローサ(メキシコ)26歳、戦跡24戦22勝13KO 2敗ニックネームはキング。アングロはカネロ・アルバレスに敗れ連敗中。
1R デラ・ローサ、左右両構えでしかもラウンド中に自在に変更。左ジャブ、右ストレート、右ジャブ、左ストレートをくりだし、足を使ってリズミカルに闘う。アングロ、打たれながらいつもの通り前進する。
2R デラ・ローサ、アングロが前に出る出鼻をジャブ、ストレートで巧みに迎え打って、なおアングロが出てくるところへ左フック2発アングロ、ダウン。
3R デラ・ローサ距離をとってアウトボクシング、アングロ、ボディブローを狙って接近戦を挑むが当たらない。
4R デラ・ローサ、 アングロのパンチのスピードが鈍って威力がないことを見て足を止めて打ち合う。
5R デラ・ローサ、アングロにまだ力が残っていると見て再び足を使ってスピードある左右ストレート、フックを自在に振って一方的な展開となる。
6~7R デラ・ローサ ペースで試合は進む。7R ロープローでアングロに減点!
8R 両者頭をつけて打ち合う。デラ・ローサのスピードが急に落ち、スタミナも失われてきた。
9R デラ・ローサ足を使って逃げ切りにかかるがアングロの執拗な攻撃にダウン寸前に追い込まれる。
10R デラ・ローサ足を使って逃げ込み辛くも勝利。
判定は98:90、96:92、99:89でデラ・ローサの圧勝。2Rのダウンが勝敗を分けたが、アングロは過去の激戦によりしかも常に打たれてきたことが重なってこの試合に現われて来たようで、今後は望めまい。
オハイオ州シンシナティ US パンクアリーナー
WBC Sライト級(シルバー)タイトルマッチ。
WBC Sライト級2位ルーカス・マティセ(アルゼンチン)31歳、戦跡39戦35勝33KO 3敗1無効試合、ニックネームはマシーン。ダニー・ガルシアとの大一番に判定で敗れて、暫定王者のタイトルを失ってから2戦目である。1戦目は勝ったものの、ダウンをモリナに奪われており、この試合が再起戦の本番である。
対戦者ロベルト・オルティス(メキシコ)28歳、戦跡32戦31勝24KO 1分。WBC Sライト級5位、ニックネームは「マッサ」。
1R オルティス、マティセの強打を警戒し上半身を揺すって距離をとり、長いジャブを繰り出してアウトボクシングで闘う戦術をとるようである。
2R 距離を詰めたマティセの左ボディブロー1発でオルティス、ダウンそのままKOとなる。力の差がありすぎたようであった。これでマティセの完全復活はなったと見てよい。
③オハイオ州シンシナティ US パンクアリーナー
WBAインターナショナル Sライト級王座決定戦。
エイドリアン・ブローナー 元3階級(Sフェザー・ライト・ウェルター)のチャンピオンである、(米)25歳。戦跡30戦28勝22KO 1敗1無効試合、ニックネームは「プロブレム」問題。マルコス・マイダナに2回ダウンを奪われて不覚の1敗を喫して、後カルロス・モリナに判定勝ちし2戦目である。
対戦者エマニュエル・タイラー(米)23歳。戦跡20戦18勝12KO 2敗。ニックネームは「トランスフォーマー」。
1R タイラー主導権を取る為に積極的に前進。ブローナーをロープに追い込んで連打。
2R ブローナーは中間距離にすこぶる強いことから距離をつめてタイラー攻勢を続ける。
3R ブローナー次第に落ち着いて自分のボクシングを始める。4R ブローナー右アッパー顔面に左ボディ、ブロー5発で完全に主導権をとる。
5R タイラー距離をつめて勝負に出るが続かない。6~11Rまでブローナー優勢のまま推移。
12R ブローナー左右フックの後の左アッパーでタイラーダウン。立ち上がったところでゴング。
判定は115:112、116:111が2人でブローナー勝利でブローナーも完全復活と見てみて良いようである。
しかしSライト級には2団体チャンピオン日の出の勢いのダニー・ガルシア、KO率85%強打のルーカス・マティセ、激闘型のルスラン・プロポドニコス、同マイク・アルバラード、同ブランドン・リオスと並び、ウェルター級では天才フロイド・メイウェザー、異能ボクサー驚異のマニー・パッキャオ、カウンターの名手ファン・マヌエル・マルケス、若手キース・サーマン他強豪が揃っており、メイウェザーの後釜と呼び声高いブローナーにとっても、きびしい戦いが続くことであろう。
ニューヨーク・ブルックリンバークレイズ・センター
WBAミドル級王座決定戦 ゲンナディ・ゴロフキンがWBAミドル級のスーパーチャンピオンに格上された為にレギュラーチャンピオンの座を争う一戦である。
WBAミドル級3位 ダニエル・ジェイコブス27才(米)戦跡28戦27勝24KO 1敗 2011年タイトルマッチに敗れ初の一敗、同年5月に骨肉腫発生し6時間の大手術の後、日常生活も困難と見られたが、リハビリで復活し今日を迎えた。ニックネームは(ミラクル・マン)。対戦者シャロット・フレッチャー(豪)30歳。戦跡19戦18勝10KO 1敗。ニックネームは「レフト・ジャブ」
1R ジェイコブス左ジャブ、右ストレートで始まり右ストレートの返しの左フックでフレッチャー ダウン、立ち上がったところで左右フック、アッパーの猛攻であわや1R KOかと思われたが、フレッチャー辛くも凌いで終了。
2R ジェイコブス、相手の反撃を警戒し、左構えにスイッチ、右構えにすぐに変更し主導権を渡さない。フレッチャー 1Rの劣勢をとり返すべく攻撃をかけるが思うに任せず。3R 2R同様に推移。
4R 左フック、右ストレートでフレッチャーぐらつく。ジェイコブス攻撃を強めて集中打。
5R フレッチャー攻撃を試みるがジェイコブスの右フックからの)カウンターからの連打でフレッチャーダウン、TKOとなる。ジェイコブスはボクシングセンスに溢れており、先のKO負けをかてとして無理押しもせず、攻防の試合運びもよく考えられており、パンチの切れも申し分なく今後飛躍が見込まれる。
ニューヨーク・ブルックリンバークレイズ・センター
ライト級10回戦 WBA(WBAはスーパーチャンピオンになる)WBC Sライト級チャンピオン ダニーガルシア(プエルトリコ出身の米)26歳。戦跡28戦全勝16KO、ニックネームは「スイフト」俊敏な男。前戦は無名のマウリシオ・ヘラレに大苦戦、一部では敗けていたとの評も、その汚名払拭の一戦である。
いずれにしても今後も旬な選手の一人ではある。
対戦者ロッド・サルガ(米)31歳。戦跡22戦19勝3KO 3敗、ニックネームははライトニング・ロッド。
1R ガルシア左ジャブから左フックで立ち上がる。サルガはヘレラの戦い振りを参考にし、サークリングしてガルシアの攻撃を躱し出入りして闘う戦術を考えているようだが、ガルシアの迫力に逃げ腰、試合の趨勢は明らかとなる。
2R 右ボディ、左ボディ、ショートの右フックでサルガ ダウン。右フックのダブルで2度のダウン。得意の左フック強烈で3度目のダウン、レフリーストップとコーナーからタオルも舞ってTKOとなる。実力が違いすぎたミスマッチである。
ガルシアは流石だったがストレートはほとんど使わず、左右フックを主体にしており大振りだがスピードがある為に綻びをみせることがないが、ガードオープンの傾向があることから早いジャブ、ストレートを得意とする選手には苦戦するかも知れない。
ニューヨーク ブルックリンバークレイズセンター
IBF Sライト級タイトルマッチ。チャンピオン レイモンド・ピーターソン(米)36歳、戦跡35戦32勝16KO 2敗1分、ニックネームは「ハボック(破壊者)」。
経歴 父親は犯罪者で服役、母親は育児放棄で、少年時代は弟と路上生活を送っている。
挑戦者は エドガル・サンタナ(プエルトリコ)35歳。戦跡33戦29勝20KO 4
敗、ニックネームはチャマコ(少年)。
1R ピーターソン足を使って左ジャブで様子を窺う。サンタナは左右フックを大きく振って前進、プレッシャーを掛ける。
2R サンタナ、右フックを主体にプレッシャーをかけるが、ピーターソン軽やかにステップを踏んで左ジャブを主体として、右フックを2発ボディに見舞う。主導権はピーターソンに。
3R 左ジャブに左右フックを3発ボディに強烈にヒット。
4R ピーターソン、左右フック、アッパーをボディに集中、ワンツーを顔面に返す攻撃で圧倒。
5R 相変わらず、ボディを集中的に攻めて、苦しくなったサンタナは腰を引いてボディを逃がすがスピードが落ちてくる。
6R サンタナ、劣勢を挽回するために攻勢にでるがパンチに力なく足もついてゆかない。ボディに集中打を受けて、一方的な展開となる。
8R ピーターソンは倒しにかかりボディ、顔面に集中打を浴びせるが、サンタナ驚異的な粘りで良く耐える。
10R 顔面、ボディに集中打、サンタナ反撃できず、戦意も喪失、意識朦朧として、レフリーストップとなり、ダウンなしでTKOとなった。
ピーターソンは足も速くパンチも的確で、防御も巧く、スマートなボクシングを行い、ここぞという時には集中打も打つテクニックと強打を併せ持つ選手である。ちなみにSライト級トップ戦線。WBAスーパー
、WBAはダニー・ガルシア、WBAレギュラーはジェシー・バルガス、IBFはレイモンド・ピーターソン、WBOはクリス・マルジェリであり、ピーターソンはガルシアとの統一戦が囁かれており、アルジェリはパッキャオの持つWBO ウェルター級に挑戦が決まっている。ガルシアが一頭地を抜いており彼を中心にしてこのクラスは動いていることは間違いない。
カリフォルニア州カーソン・スタブハブ・センター。
WBCライト級タイトルマッチ チャンピオン オマール・フィゲロア(米)24歳、戦跡24戦23戦17KO 1分、ニックネームはパンテリータ(黒豹)。
2013年7月荒川仁人とお互いに流血する壮絶な闘いの末チャンピオンとなった。
手数の多いタフで好戦的な選手である。挑戦者ダニエル・エストラーダ(メキシコ)29歳。戦跡35戦32勝24KO 2敗1分、ニックネームはトレメンド(すごい奴)179cmの長身選手である。
1R 例によってフィゲロア、上体を揺すって前進、エストラーダをロープに詰めて攻めるがパンチの精度はエストラーダ。
2R フィゲロア相手の攻撃にも拘らず強引に前進し相手の懐に入ってリーチの差を補って戦い主導権を握る。
3R お互いにパンチ交換を行い、互角の闘い、エストラーダ鼻血をだす。
4~5R 攻勢と手数でフィゲロア優勢。
6R 劣勢だったフィゲロアは終了間際連続パンチでエストラーダ ダメージを負う。
7R フィゲロア ギアチェンジして攻勢を強めるがバッテングデで眉の上切る。
9R スピードの落ちたエストラーダに対してジャブの終わり際に右ストレートのカウンター顎に命中エストラーダ ダウン、立ち上がったところへ集中打でTKOを下した。
次の対戦相手はホルへ・リナレスとなりそうで、好試合となることは必定である。
カリフォルニア州カーソン・スタブハブ・センター。 WBC・Sミドル級タイトルマッチ チャンピオン サキオ・ピカ(カメルーン出身のオーストラリア)35歳。戦跡40戦32勝21KO 5敗3分、ニックネームは(スコーピオン)、挑戦者はアンソニー・ディレル(米)29歳。戦跡27戦26勝22KO 1分。ニックネームは(ドッグ)。両者は2013年12月対戦して引き分けており、ダイレクトリマッ
チである。
なお兄のアンドレ・ディレルはSミドル級最強を決めるスーパー・シックスの一員であった。メンバーはミッケル・ケスラー、アンドレ・ウォード、カール・フロッチ、ジャーメイン・テイラー、アルトゥール・アブラハム、アンドレ・ディレルと錚々たるメンバーで大いに盛り上がった。
結局チャンピオンにはなれずじまいであったが、正統派のテクニシャンで巧いボクサーであった。
1R 前戦で勝ったと思っていたディレルはエキサイトして、お互いに荒っぽい闘いとなりレスリングのように組み合って2人とも倒れる。前回よりディレルは攻撃的である。
2R以降9Rまでディレルは相手の出鼻をジャブで右ストレート、アッパーで的確に捉えて優勢に試合を進める。ピカはジャブなし左右のフックを振り廻して相手をロープに追い詰めて右フックを連打するスタイルであるが、ディレルの早いパンチをクリンチに空回りして劣勢が続いた。
9R ディレル疲れた為か手数が少なくなりピカの攻勢にタジタジとなって終了。
判定は114:113、116:111、117:110でディレルの勝利となった。ピカは右左振り回す体力を使うスタイルと揉み合うことが多く、心配したスタミナは驚異的であった。この試合はお互いに組み合って倒し倒されの体力の消耗する試合であった。
カリフォルニア州カーソンスタブハブ・センター。
WBCヘビー級10回戦。WBCヘビー級1位デオンティ・ワイルダー(米)28歳。
戦跡31戦全勝全KO、ニックネームは「ブロンズ・ボマー」。
対戦者ジェイソン・ギャバーン(米)37歳、戦跡44戦25勝11KO 15敗4分、ニックネームは「センセーション」。
1~4Rまでタイトルマッチの試運転を行い、相手に打たせて、足も使い、軽い左ジャブも打って、さほど強いパンチではないが2度のダウンを奪って4R終了。KOで勝利。次はいよいよタイトルマッチとなる。強みは2mを超す巨体と強力な右ストレートの威力で死角は見当たらない。重量級でのアメリカの希望の星である。
カリフォルニア州カーソンスタブハブ・センター。
IBFウェルター級タイトルマッチ チャンピオン ショーン・ポーター(米)26歳。戦跡25戦24勝15KO 1分。ニックネームは「ショータイム」。
安定王者であった巧いデボン・アレキサンダーを判定に下して王者となると誰もが対戦を嫌がる。魔術師ポール・マリナッジを4R TKOに下し初防衛に成功、マリナッジは初のKO負けであった。
挑戦者はケル・ブルック(英)28歳。戦跡32戦全勝22KO。 IBF ウェルター級1位、ニックネームは「スペシャル ワン」。
2年前に デボン・アレキサンダーに挑戦が決まっていたが、その都度お互いの怪我によって延期されているうちにアレキサンダーが敗れて、今回の挑戦となった。
1R から12Rまでポーターは例によって頭から突進、ブルックは出鼻を左ジャブで止め、中に入り込んで来るポーターをクリンチで押さえ込んで、内懐に入っての連打を許さない。時折長く早い右ストレートは的確、スピードは最後まで衰えることがなかった。体力も、スタミナもあり、アウトボクシングもインファイトも出来る万能型の選手で、荒っぽいポーターの攻撃に巻き込まれることなく冷静に闘った頭の良さも感じられるバランスの取れたチャンピオンとなりそうである。
東京代々木第2体育館 ミドル級10回戦 村田諒太(日)28歳。
戦跡4戦全勝4KO、WBC ミドル級12位、対戦者アドリアン・ルナ(メキシコ)24歳。戦跡20戦17勝11KO 2敗1分、WBCミドル級21位。
1R 村田例の通りガードを固めて接近し右ストレートでプレッシャーを掛ける。 4R 右ストレートが顔面にヒット、ラッシュをかけるが顔面中心に攻撃単調、ルナ反撃して終了。
5R~8R ルナは身体が柔らかくパンチの逃し方も巧み。村田のパンチをまとも
に食わない。村田のパンチに馴れて手数も多くなり、それなりにリズムに乗ってくる。メキシコのミドル級チャンピオンの実力を発揮、ほぼ互角に対抗する。
その間、4Rで力を使った村田の手数は少なくなり、10R 村田最後のラッシュをかけ終了。
判定98:92、99:91、100:90で村田圧勝。しかし左ジャブが少なくパンチも単調でスピードもなく体の動きも重くスタミナもない。プロとしての実力は、未だの感が強かった。前途は険しいと思わせた。
東京代々木第2体育館 WBCライトフライ級タイトルマッチ チャンピオン井上尚弥、戦跡6戦全勝5KO初防衛戦である。
対戦者サマートレック・ゴーキャットジム(ゴーキャットジムは所属するジムの名前)(タイ)29歳、WBCライトフライ級13位。
1R 井上の左ジャブ正確で早く、早々に主導権を握る。2~3R 井上多彩なパンチを上下に打ち分け、有利に試合をすすめ 4Rボディブローの後の右フック顔面にヒットしてゴーキャットジム ダウン、ダメージ大きい。
6R 右フックからの左ボデイでゴーキャットジム2度目のダウン。
11R 連打でレフリーストップ、井上快勝した。
ゴーキャットジムも小柄であるが左・右フックを武器に力強いパンチを振い、しかもタフな良い選手であったが井上との実力に差があった。
井上は試合に際し10kgの減量を行い、この試合のあとフライ級に上って闘う予定である。
東京代々木第2体育館 本日のメインカード。 WBCフライ級タイトルマッチ、チャンピオン八重樫 東(アキラ)31歳。戦跡23戦20勝10KO 3敗。4度目の防衛戦である。
対戦者ローマン・ゴンザレス(ニカラグア)27歳。戦跡39戦全勝33KO。ミニマム・ライトフライの2冠を獲得している。アマチュア時代の戦跡87戦全勝でプロ・アマを通じて無敗の選手で、あまりの強さにチャンピオン達は対戦を回避し続けてきた。今回八重樫が挑戦を受けたことは特筆しても良い。
1Rからゴンザレス前進してプレッシャーをかける。足を使って対応すると見られた八重樫は正面から打合って対抗する構えである。
2R ゴンザレス ペースをあげて手数を増やし 3R 左フックでダウンを奪う。
4~6R ゴンザレスのパンチは多彩で必ずボディ打ちを忘れない。八重樫押されるが打たれたら打ち返すファイトを見せ、必死に対抗。
7R 正確さと力強さ、手数の多さで●回3ゴンザレスの圧力に八重樫ダメージ深く追い込まれるが、何とか気力を振り絞って反撃するが 8R ダウン寸前。
9R 連打で2度目のダウン、八重樫に立ち上がる気力はもうなかった。
ゴンザレスは無敗のまま3階級制覇に成功。
八重樫は短期間に身体を改造し、フライ級にはみえない身体づくりに仕上げて万全の体勢でリングに上がったようだ。勝利の為には打ち勝つしかないと覚悟を決めていたのは明らか、良く闘ったと思う。藤沢秀行会長はこの一戦を「人間が神に挑戦する闘い」と表現したが、ゴンザレスの闘いはガードを固めて、相手のパンチはボディは除いてほとんどまともに食らうことなく、強弱つけた多彩なパンチは間断なくしかも的確、力強く顔面、ボディと打ち分けて隙がなく、あと2階級は制覇するのではと思わせた。全階級の中で現役最高級の選手であろう。
ネバダ州ラスベガス コスモポリタン・オブ・ラスベガス
WBA Sライト級タイトルマッチ チャンピオン ジェシー・バルガス(米)26歳。戦跡24戦全勝9KO。2014年4月に戴冠初防衛戦である。
挑戦者アントン・ノビコフ(露)26歳。戦跡29戦28勝10KO 1無効試合、サウスポーである。
1R バルガス早くて正確な左ジャブで相手の出鼻を叩き主導権を握る。
2R 1Rと同じ推移。3R~4R ノビコフ左アッパーのボディブローを中心に前進し主導権をとり返す。
5R バルガスの左ストレートのカウンターが決まりノビコフぐらつく。
6R バルガスの大きな右フックでノビコフたじろぐ。
7R バルガス急にスピードが鈍り、6Rまでのコンパクトなパンチが姿を消し、大きな振りに変わる。
8~12Rまで ノビコフが前進しバルガスが退りながらのカウンターで一進一退で終了。判定は118:111が2人、117:111が1人でバルガス苦戦しながら防衛。
判定に現われた数字程楽勝ではなかった。1R~2Rの早いジャブと右ストレートの切れは中盤以降失われて失速。スタミナ不足を露呈した。見るべきパンチ力も無い選手で生き残る為には早くて正確なパンチを終盤まで持続するスタミナが不可欠となる、前途多難とみた。
ネバダ州ラスベガス コスモポリタン・オブ・ラスベガス ウェルター級10回戦。
ブランドン・リオス(米)28歳、戦跡34戦31勝22KO
2敗1分、ニックネームは「バンバン」、元WBAライト級チャンピオン、2敗はマイク・アルバートに激闘の上判定敗。あのマニー・パッキャオの再起戦で手も足も出ない完敗があり目下連敗中。全勝中に比べて力は落ちたのではとの見方もある。対戦者ディエゴ・チャベス(アルゼンチン)28歳。戦跡24戦23勝19KO 1敗。ニックネ
ームは「ラ・ホヤ」(宝石)、元暫定WBAウェルター級チャンピオンである。現在WBA6位、1敗は若手のホープ キース・サーマンに10R KO敗でタイトルを失っている。オッズは3:2でリオス。
1Rから予想通り激しく打合う。 2Rリオスは身体で押して接近戦に持ち込み連打。頭をチャベスの顎の下に押し付けて闘い,チャベス嫌がる。
チャベスは少し距離を置いてのパンチに威力がある。パンチの威力はチャベスの方にあるようだ。
3R チャベスの右ストレートのカウンター強烈でリオスたじろぐが怯まずチャベスをロープに追い込む。チャベス、リオスの接近戦にホールディングを繰り返し減点1。
4R チャベス、リオスの接近の前にジャブ、右ストレートのカウンターで有利に立つやアウトボクシングに転ずる。
5R お互いのラフファイトは激しくなり、リオスすくい投げにチャベス倒して減点1。
6R チャベスのカウンター次々に決まりペースを握ったが終盤お互いに頭をぶっつけあう。
7R 乱打戦となり両者激しく打合う。8R 両者エキサイト、ラフファイトにチャベス2度目の減点1。
9R チャベス、相手の首を上から拘えて後ろに投げ飛ばす。その後すぐ再度首を拘えたところで、レフリーはチャベスに失格を宣告。チャベスの反則敗となった。それまでの判定は75:74でチャベス有利であった。
チャベスはリオスの頭から突っ込む攻撃に再三レフリーに注意を促す仕草を繰り返していたが、とうとう怒りに任せて投げ飛ばしたものであろう。
パンチの威力と的確さではリオスを上回っていた。リオスは体重苦からウェルター級に体重をあげたが相手に与えるパンチの威力は減少したようで、ライト級当時の破壊力は見られなかった。
リオスの次の相手は激闘型の権化とも言うべきルスラン・プロポトニコフである。
カリフォルニア州カーソンスタブハブセンター 司会ジミー・レノンJR
ライト級8回戦 ホルへ・リナレス(ベネズエラ/帝拳所属)28歳、戦跡39戦36勝23KO 3敗、ニックネームはエル・ニーニョ・デ・オロ(ゴールデンボーイ)。ゴールデンボーイはあのスーパースター、オスカー・デラ・ホーヤのニックネームであり、リナレスへの期待がいかに大きかったかが分かるが、その割りに伸び悩んでいる感あがる。
対戦者アイラ・テリー(米)27歳。戦跡28戦26勝16KO 11敗1無効試合。ニックネームは(ミスターショータイム)、デビューから19連勝の日の出の勢いの頃ついたニックネームでこの選手も大いに将来を嘱望されたと思われる。
2R、テリーの左ジャブに合わせた右ストレートのカウンター見事に決まり、一発KOとなる。リナレスのパンチのスピード、多彩さは相変わらずであるが、従来のやゝ感じられたひ弱さが改善され、力強さも加わったようで、カウンターの鋭さに磨きがかかった。しかしカウンターは危険が伴い、相手のパンチを食うことが当然予知され、打たれ強さも要求されるので、今までの打たれ弱さを克服しないと危険と隣合わせであることを、十分考慮しないといけない。
ニューヨーク・マディソン・スクエア・ガーデン、司会マイケル・バッファー。WBCヘビー級挑戦者決定戦。WBC2位ブライアント・ジェニングス(米)29歳、戦跡18戦全勝10KO。ニックネームは「パイバイ」。
対戦者 同3位、マイク・ペレス(キューバ)28歳、戦跡21戦20勝12 1分。ニックネームはレベル(反逆者)。
1R~12Rまで一進一退。
12Rペレスは頭突きで反則、1ポイントを失ったが、これが決め手で判定114:113でペレス、115:112、114:113で・ジェニングスと2:1でジェニングスが勝を拾った。稀に見る凡戦でジェニングスは身長191cm、リーチは210cmの特長を生かすことなくガードを高くかかげて接近し相手の打の終わりを狙ってパンチを出すが,長い手でもっと左ジャブを多用しなければ宝の持ち腐れではな
いか。両者ともパンチ力もなく、何の特徴もない選手でヘビー級の人材は枯渇しているのを痛感した。
ニューヨーク・マディソン・スクエア・ガーデン。 WBAミドル級タイトルマッチ。チャンピオン ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)32歳、戦跡29戦全勝26KO ニックネームはG・G・G。現在10連続KO防衛中である。
因みに連続KO防衛の選手は1位17回のウィルフレド・ゴメス(Sバンタム級)、14回のダリウス・ミハエルゾウスキー、ロイ・ジョーンズと並びたってのLヘビー級の名選手で度々両者の対決の話があったが条件が合わずに実現することはなかった。10回はライト級のロベルト・デュラン(80年代のマーベラス・マービン・ハグラー、シュガー・レイ・レナード、ヒットマン
トーマス・ハーンズと並んで黄金時代を築いたスーパースター)。
同10回のナジーム・ハメド(悪魔王子のニックネームを持つイエメン出身の英国人で、ノーガードで相手の攻撃を全て躱し、必殺のパンチで当たるを幸いKOの山を築いたエンター・ライナー)そしてゴロフキンである。
挑戦者ダニエル・ギール(豪)33歳。戦跡32戦30勝10KO 2敗。WBA9位、WBO4位、ニックネームはリアルデール(本物)。
2013年ダーレーン・バーガーとの闘い、僅差の判定敗で4度防衛したタイトル(WBA、IBF)を失う。バランスが良く足も早くフットワークも軽い。ウィービングやダッキングも使い、手数も多くファイティング・スピリットも旺盛な、攻戦的な選手である。
1R ギールは足を止めて正面からゴロフキンの前進に対決する戦術にでる。手数も多いが後半ゴロフキンのプレッシャー厳しく、ギール次第にロープに詰まり始める。ギール右目尻切る。
2R 圧力にギール、ロープに詰まり連打でダウン。ギール必死でパンチを振るうがゴロフキン委細かまわず前に出る。
3R ギール長引くと不利とみて勝負に出て、パンチを振るうが圧力に負けて、足を使い身体を動かして何とかゴロフキンの圧力から逃れようと図るが、ギールの左フックを受けた後の右ストレートでギール ダウン。立ち上がったがこれ以上闘っても勝ち目がないと判断、首を振って試合続行不能をレフリーに伝え、ゴロフキンのKO勝ちとなった。ギールは初のKO敗けである。
試合は当初4月に行われる予定であったがゴロフキンの父親が2月に死去した為延びたもの。ギールのテクニックとファイティング・スピリット、速い動きはゴロフキンを苦しめるのではないかと思われたがゴロフキンはギールの動きに慌てず騒がず冷静に、相手を追い詰め的確にパンチで相手を仕留めた。その能力は恐るべきである。KO防衛をどこまで伸ばせるか、今やボクシング界の注目の的となっている。
マカオ・ベネチアン・リゾート・コタイアアリーナ
元2階級チャンピオン ブライアン・ビロリア(米)33歳 戦跡39戦33勝19KO 4敗2無効試合、2000年シドニーオリンピック出場 99年アマチュア世界選チャンピオンでオリンピック優勝候補の最右翼であったが伏兵フランスのブロウム・アスロウムに金を奪われた後、鳴り物入りでプロ転向。ニックネームの「ハワイアンパンチ」で強敵を倒し人気者となった。
対戦者 ホセ・アルフレド・スニガ(メキシコ)25歳、戦跡17戦11勝5KO 5敗1分、ニックネームはディアブリート(小さな悪魔)。
1Rから両者積極的に打合うがビロリアのパンチの方が強い。
2Rビロリアのオーバーハンド左右ショートフックで優位にたつや3Rビロリアのプレッシャーは一段と強まりスニガ劣勢となり4Rビロリア右ストレートの3連発とピッチを上げる。スニガは相手のプレッシャーがきつい為に接近戦を選択したがビロリアの左フックのボディブロー強烈でダウン。そのままKOとなる。
ビロリアの1Rからのボディ打ちが効を奏し、見事なKO勝ちであった。
マカオ・ベネチアン・リゾート・コタイアアリーナ
WBOインターナショナル フライ級王座決定戦(WBOの下部団体)。
ゾウ・シミン33歳(中国)戦跡4戦全勝1KO 2000年のアテネ五輪で銅メダル、2008年の北京、2012年のロンドンで共に金メダルを獲得してプロ入り、金の卵である。現在WBAフライ級6位。
対戦者 ルイス・デラ・ローサ(コロンビア)28歳。戦跡27戦23勝13KO 3敗1分。IBFフライ級10位。10回戦である。
1Rから9Rまでゾウ・シミン両手をさげて素早手数の多いボクシングで相手を翻弄し、打ち終わりに頭も体も動かして動く標的とし、相手のパンチは手数の多さと、身体の動きで躱し、主導権を握り続ける。
10R、両者激しく打合って終了、99:91が2人97:73が1人でゾウ・シミンの圧勝であった。
ゾウ・シミンはアマチュアでの経験が永く、そのスタイルをプロでも継続しておりパンチの手数と相手に当てる技術は優れているが、打ち終わりに、相手の反撃を避ける為に打つパンチに威力がない。これでは相手にダメージを与えることも出来ないし、脅威を与えることも出来ない。又この試合でも見られたが相手のパンチも何発か受けており、ガードをせずにパンチを出せることを優先、デラ・ローサ クラスの相手には通用しても、トップ戦線に対抗することは出来ない。誰と闘っても勝つことは難しいのではないか。
救いは10R闘ってもスタミナ落ちないことと、打たれても打たれ強さがあるようで、今後プロでやって行く条件の2つはクリアしたようである。2大会連続の金メダリストとはいえリゴンドーとゾウ・シミンの実力の差はあまりにも大きい。
マカオ・ベネチアン・リゾート・コタイアアリーナ
WBA・WBO Sバンタム級タイトルマッチ チャンピオン ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)33歳、戦跡13戦全8勝KO。2000年シドニー、2004年アテネの五輪金メダリスト、絶頂期のドネアを倒して2団体のチャンピオンとなる。アマの超エリートで、プロでもスーパースターである。ニックネームはジャッカル。
挑戦者ソッド・ゴーキャットジム(タイ)37歳。戦跡66戦63勝27KO 2敗1分。引き分けを挟んで8年間の36連勝中。
共にサウスポーである。
1R 偶然のバッテングでゴーキャットジムダメージを受け一時試合中断のあと開始早々リゴンドーの左ストレート返しの右フックでゴーキャットジム、 ダウンそのままKOとなった。レフリーはあと30秒程待つべきで選手の戦闘の意志を確認して試合を再開すべきであった。それにしてもリゴンドーの強さは際立っていた。
ニューヨーク州、ブルックリンバークレイズ・センター
WBO Sライト級タイトルマッチ。チャンピオン ルスラン・プロボドニコフ、(ロシア)30歳。戦跡25戦23勝16 KO2敗、同じ激闘型のマイク・アルバラードをKOに下してタイトルを握っての初防衛戦。
挑戦者クリス・アルジェリ(米)30歳。戦跡19戦全勝8KO、WBO13位国際的には無名の選手である。
1R プロボドニコフの左フックでアルジェリ、 ダウン、ついで左アッパーで2度のダウン、左目」は腫あがり、鼻血も出す。
2R
アルジェリ足を使って左ジャブを多用、立ち直る。3Rから12Rまでパンチを振るって追いかけるプロボドニコフと、足を使って逃げ、下がりながら左ジャブで対抗するアルジェリの攻防が続き、ダメージはアルジェリに大きく、右目下は紫色に腫上がり顔中傷になるが、プロポドニコフにダメージの跡は見られなかったが、逃げ廻って、手をだしてただ当てるだけのパンチの数を有効とみた審判の判定は117:109でプロポドニコフが1人、114:112が2人でアルジェリの番狂わせの結果に終わった。
激闘型のプロポドニコフにとっては最も闘いにくい相手で、初めから苦戦が予想された。チャンピオンとはなったがアルジェリは全く魅力のない選手で防衛戦を勝ち抜くのは至難の事となるであろう。またこの判定は見方によってはこれ程評価が異なることの典型でほとんど当たらないが極めて少ない有効打と攻勢を優位とするか、又は猫パンチで相手に当てるだけで、ダメージは零、跡は逃げの一手でもこれを有効とするか、苟も格闘技であるからは、相手に与えたダメージで判定すべきだと思うのだが・・・・・。
ニューヨーク州、ブルックリンバークレイズ・センター
WBO Sウエルター級タイトルマッチ チャンピオン デメトリアス・アンドレイド(米)26歳、戦跡20戦全勝13KO、ニックネームは「ブー・ブー」、2013年11月全勝対決でバーネス・マーティロシアンと王座決定戦。
1R ダウンを喫するが逆転判定でタイトルを握って初防衛戦である。
対戦者 ブライアン・ローズ(英)29歳、戦跡27戦25勝7KO1敗1分。WBO1位の指名挑戦者である。ニックネームは「ライオン」。
1R ローズはガードをしっかりと固めて顔面をカバー、相手の攻撃は全てガードで受け止めて闘うスタイルであるがアンドレイドの早くて長い左ストレートがガードを割って顔面に命中し、ローズたまらずダウン。
2R アンドレイドはローズをガードが固いとみるや、左右フックでボディを狙い、相手の出るところに右フックで引っかけて
右に動き、左ストレートでガードを割る。
3R ローズが攻撃に出てくるところへ右フックでローズ2度目のダウン。
4R ローズの手数が極端に減り、アンドレアは上体を柔らかくして常に動かし、的を絞らせないようにしながら、相手の空いている部所に的確にパンチを打ち込む。
5R、6R 一方的な展開となり 7R 集中打でレフリーストップ。TKOとなる。両者の力の差がありすぎた試合であった。
アメリカ ネバダ州ラスベガス・MGMグランドガーデン・アリーナ
WBA Sライト級暫定チャンピオン・タイトルマッチ 63.50kg
チャンピオン ジョアン・ペレス(ベネズエラ)31歳
戦跡 22戦 19勝 13KO 1敗 1分 1無効試合
13年、ポール・スパダホーラを下して二度目の防衛戦である。
ニックネームはベネズエラの恐怖。
対戦者はマウリシオ・ヘレラ(米)34歳
戦跡 24戦 20勝 7KO 4敗
前回の試合は2団体のチャンピオンで日の出の勢いのダニー・ガルシアに善戦。2:0の判定で敗れたが、ヘレラが勝っていたのではと見る人が多かった試合であった。
ニックネームはエル・マエストロ(達人)
1Rから4Rまでヘレラが積極的にプレッシャーをかけ、左ジャブを中心に攻めたてる。
5R 前半ペレスが足を止めて、右ストレートの打ちおろしを主武器にヘレラの前進を止める。後半ヘレラ反撃、右カウンターでペレスがぐらつく。
6R、7R ともに前半ペレス攻勢、後半ヘレラ反撃。
8R ペレス集中打の中でヘレラの右カウンターでペレス、ダウン寸前。
9R 互いに主導権をめぐって激しく打ち合う。ペレスのパンチの方が威力があるが、的中率はヘレラの方が数段上、ヘレラのボディーブローでペレスの動きが止まる。
10R~12Rまで互いに譲らずに一進一退。
判定は114:114が1人、116:112が2人でヘレラは王座奪回する。
ヘレラはパンチ力はないが、相手の長所を殺し、左ジャブの的確さと、攻められたら必ず反撃し、主導権を渡さない試合運びのうまさが際立った。
パンチ力、スピードに秀でている訳ではないのに、勝利を握る。
まさに達人と言うべき選手ではある。こんな選手も世界にはいるのだと感心させられた。
ペレスも実に良い選手で、また復活するのは間違いない事であろう。
カナダ、ケベック州モントリオール、ペル・センター
WBC Lヘビー級タイトルマッチ、79.38kg
チャンピオン アドニス・スティーヴンソン(カナダ)36歳
戦跡 24戦23勝20KO 1敗
過去スーパースター街道をまっしぐらであったが、その勢が衰えたとはいえ、
あのチャド・ドーソンを1R KOに下し、戴冠しその後2連続KO、通算10連続KO中で2013年のファイター・オブ・ザ・イヤーに選ばれている。
今後も脚光を浴びている選手の1人である。
ニックネームはスーパーマン。
挑戦者アンドレィ・フォンファラ(ポーランド)26歳。
戦跡28戦25勝15KO 2敗無効試合。WBC 3位。
1R スティ-ヴンソンの左ストレートでフォンファラ ダウン。
2Rフォンファラ立ち直って左ジャブを主に前進しプレッシャーを掛ける。
3~4Rフォンファラ ガードを固めて前進するが有効打はスティーヴンソン。
5R 左ストレート・ボディでフォンファラ2度目のダウン。
6~8R フォンファラ長身と体力を生かし基本通りのボクシングでスティーヴンソンをロープに追い込む。
9R強打を振い続けて疲れたスティ-ヴンソンにフォンファラ右ストレートを顔面にきめてダウンを奪う。7Rから主導権を握ったフォンファラに対し主導権を取り返すべく、スティ-ヴンソン力を振り絞って攻撃に出てペースを取り戻し、そのまま12Rに持ち込まれた。
判定は115:110が2人、116:109が1人でスティーヴンソン3度目の防衛を果たす。前半でスタミナを使ったスティ-ヴンソンは9Rのダウンで敗北するかにみえたが10R勝負を賭けて攻勢に転じたことから勝利したもの、フォンファラは戦前のオッズ10:1にも拘わらず、善戦、健闘しダウンの応酬あり、好試合であった。
スティーブンソンは左の強打一本の選手で倒せなかった場合、後半に持ち込まれたらどうなると一抹の不安があったかが、試合の全体を見通す目も備えていたことが窺えて評価が一段上がったのではと思われる。次はWBOのチャンピオン、強打の全勝王者セルゲイ・コバレフと闘い、その勝者がWBAスーパー及びIBFの王者49歳のバーナード・ホプキンスと統一戦の運びとなるようである。
アメリカ ネブラスカ州オマハセンチュリーリング・センター
WBOインターコンチネンタル ミドル級王者決定戦 72.57kg。
マット・コロボフ,(ロシア)31歳。 WBOミドル級1位、サウスポー2005年、2007年のアマチェア世界選手権優勝。対戦者ホセ・ウスカテギ(ベネズエラ)23歳、両者ともに全勝である。1R コロボフ右ジャブで試合をコントロール、ウスカテギ左眉下カット。2~3R コロボフの右ジャブが邪魔でウスカテギ前に出られない。4R ウスカテギ体力にまかせてプレッシャーを掛け始める。
5R コロボフの左ショートアッパーでウスカテギ ぐらつく。コロボフ右目尻カット。6R コロボフ左アッパー、左ストレート共にボデイに決まる。
7R 左アッパー、ボデイと左ストレートからの返しの右フックでウスカテギ ダウン。立ち上がったところに左、右のフックで2度目のダウン。8R コロボフ 7Rの攻勢のため疲れてスピードが落ちウスカテギの反撃を許す。9~10R コロボフ攻撃に出てパンチを振るうが2人とも疲れてバタバタとなり判定は97:91が2人、96:92が1人でコロボフ勝利。
さほど攻撃に力を使ったともみえないのにあれ程スタミナ切れになったのでは、世界を狙うのは難しいのではと不安を残した。WBOのチャンピオンは強打とタフネスのピータ・クイリンなのに。
同会場にて(アメリカ ネブラスカ州オマハセンチュリーリング・センター)WBOライト級タイトルマッチ 61.23kg チャンピオン テレンス・クロフォード(米)26歳 23戦全勝16KO 左、右どちらでも闘える。
挑戦者ユリオルキス・ガンボア フェザー、スーパーフェザー、ライト級の3階級元王者でオリンピックの金メダリストでもある。戦跡はクロフォードと全く同じ23戦全勝16KOである。1年振りの試合となるが、試合の報酬2億円保証を譲らずにブランクが続いたものである。オッズは5:3でクロフォード。入場者数は1万人クロフォードはリッキー・バーンズからタイトルを奪って初防衛戦である。リングアナはマイケル・バッファー。
1R ガンボア跳び込んでの左・右フックで先制。
2~3R 出入のスピードとパンチの早さで優勢。クロフォードは冷静に相手の実力を探る。
4Rクロフォードは次第にプレッシャーをかけてペースを握る。この回から左構えとなるがガンボアの左が下がりぎみをみて右ジャブが当たる判断変えたようである。
6R 右フックのカウンターに次ぐ左フックでガンボア ダウン。さらに右ストレート2発がガンボア深いダメージを負う。
7R ガンボア挽回すべく攻撃に転ずるがスピードは落ちる。
8R ガンボアの必死の攻撃にクロフォード下がりながらの右フックのカウンターで2度目のダウンを奪う。
9R 左フックでダウン、立ち上がったところへ右アッパーでレフリー・ストップ、クリフォードの完勝であった。
クロフォードは無理にKOを狙うことなく構えはバランス良く、上体・頭の位置を絶えず動かし自在に動いて左、右両構にいづれも無理ない体勢で、ジャブは早く、パンチは切れてカウンターも巧み、既にスーパースターの雰囲気を漂わせる一部の隙もない選手で、これからも人気はどんどんあがってくることであろう。あの早くて強いガンボアを何の苦もなく倒した実力は今年一番の成長株とみた。
メキシコ メキシコシティ、マグダレナ・ミシュカ スポーツシティ。
WBC Sフライ級タイトルマッチ 52.16kg チャンピオン シーサケット・ソールンビサイ。挑戦者はカルロス・クアドラス。両者とも8割を超えるKO率を誇る強打者同士の一戦である。
1R 過去の試合振りからみて、正面衝突が予想されたが、シーサケットが例の通り、左のストレートを武器に強打を振るったが、クアドラスは相手の強打を警戒し打ち合いを避けて、足をつかいアウトボクシングを選択する。
2、3R シーサケットは接近戦を挑み、相手をロープに追い詰め強打と体力で押すがクアドラスは相手の打ち終わりに、4~5発の連打で対抗、押されてはいたが有効打は多い。4R バッティングでクアドロス左眉横をカット、シーサケット1点減点(WBCの規定で偶然のバッティングの場合、傷のない選手から1点減点とする)。 5R
再度のバッティングで傷口が拡がり負傷判定となり78:73、77:74、77:75でクアドロスの勝利となった。シーサケットがサウスポーの左ストレートと返しの左フックで正面から闘うのに対し、クアドラスは従来の自分の特色である正面突破を排し、アウトボクシングの道を選び、連打のないシーサケットの打ち終わりを狙って、巧みな連打でポイントを重ねる作戦に出た。引き出しの多さが試合を決定したものである。
しかし寓直なまでに自分のスタイルを貫いたシーサケットの戦い方も好感が持てた。特に7R に放った左ストレートのボディブローは強烈でクアドラスはダメージ深く、12R までに形勢は逆転した可能性が高いと私にはみえた。
クアドラスはメキシコ出身25歳30戦全勝24KOと前途洋々。シーサケットは32戦27勝25KO 4敗27歳と共に若く、両者共ともこれからが楽しみな軽量級で類なハードパンチャーたちである。
イギリス ランカシャー州マンチェスターフォンズ・フォーユー・アリナー
WBA Sバンタム級タイトルマッチ 52.16kg チャンピオン スコット・クイッブ 対戦者ツイーフィワ・ムニャイ。
クイッブのプロモーターは往年の強打者で人気抜群であり、メイウェザーとも闘ったリッキー・ハットンである。
当初の対戦者は暫定王者であったが負傷のため急遽ムニヤイに決まったもの。
1R クイッブは高いガードでじょうたいを揺すって接近し相手の懐に入って、左・右の強打を振るう。ムニャイは長い手足を使って左ジャブと早い足で距離をとって対応する。右拳はしっかり顎をガードでジャブを出しやすい体勢をとるが
クイッブの圧力に対抗しきれずに前に出て止めようとした時に左フックのカウンター、ムニャイの顎にヒットしダウン。
2R ムニャイ弱気になったところに右ストレートに再度ダウン、TKO敗け、クイッグ3度目の防衛となった。未だ無敗の25歳で生きも良くこれから人気も急上昇しそうだ。
(写真 なし)
フィリピンメトロ・マニラパサイシティ。 SMモール・オブ・エイシア・アリーナにて。 WBO・Lフライ級王座統一戦、48.97kg チャンピオン ドニー・ニェテス。 挑戦者はモイエス・フェンテス。両者は2013年5月対戦して引き分けている。試合前のオッズは7:4でニェテス。会場にノニト・ドネアの顔が見えた。1R よりフェンテス積極的に前に出てパンチを振る。体格差を有効に使ってボディ中心に攻める。ニェテスはやゝ押され気味に終始するがパンチは的確である。7R 攻勢に出たニェテス集中打を浴びせる。フェンテスは前半のハイペースに疲れる。8R フェンテス 力を振り絞って前進するが9R 右ストレートでダウン。次いで3度目のダウンを喫してTKOとなり、ニェテスは押されて相手の圧力のもと攻撃を受け続けながら冷静に又的確に反撃し反抗の期を狙って集中打で局面を一挙に打開し4度目の防衛戦を飾った。
(写真なし)
MGMグランド・ガーデン Sウェルター級のノンタイトル戦。リミット154ポンドのところ155ポンドの契約での対戦の為ノンタイトルとなった。
WBA Sウェルター級チャンピオン エリスランディ・ララ (キューバ)31歳。戦跡22戦19勝12KO 1敗2分。1敗はポール・ウィリアムスで疑惑の判定負であった。北京オリンピック代表でブラジルにリゴンドーと共に亡命したが連れ戻され、再度ボートで亡命、ドイツから米へ入国した経歴をもつ。2005年から7年までナショナルチャンピオンでもあった。ニックネームは「アメリカンドリーム」。対戦者サウル・アルバレス(メキシコ)23歳。20歳でSウェルター級のチャンピオンとなり2013年天才フロイド・メイウェザーに完敗して2団体のチャンピオンの座を失ったが依然としてスーパースター候補の筆頭であることに変わりはない。
戦跡45勝43勝31KO 1敗1分。ニックネームは「カネロ」(シナモン)。
1R からララは長い腕を使い、早い足とセンスの良さでアルバレスの接近を許さず距離を保ってアウトボクシングに徹する。
アルバレスは相手の動きを止める為にボディを中心に攻める。8Rまでこの状態は変わらず、やゝ攻勢のアルバレス有利に進むが9R以降スピードの落ちたアルバレスに対し、ララは持ち前のヒット・アンド・アウェーの戦術でアルバレスを翻弄。終盤は完全にララのペースで終了。判定は115:113で1人がララ、115:113、117:111で2人がアルバレスでアルバレスの辛勝となった。アルバレスは早い足の相手の足を止めるべくボディを中心に攻撃を絞った作戦で戦ったが、ララの足を止めることが出来ずに、ロープにコーナーに追い詰めて攻撃することが出来なかった。フラストレーションの溜まる試合であったろう。アルバレスは試合の後半失速するようで、試合運びを再考することも必要であろう。又、スピードのある巧い相手を苦手とするところがあり、正面からぶつかる相手には滅法強いが、今回のような相手にはこれからも苦戦するのではないか。今回は動きの早い相手をどう倒すかの戦略が無かったと言うべきでメイウェザー戦の教訓を生かせていないのが露呈した。ララは思った通りの作戦で試合後は自分の勝利を確信していたようだ。アルバレスの強打を安全に封じ込めて、自分のパンチは軽いが的確に当たっていたからだが、見た目がプレッシャーを掛けられ続けて後退が目立ち、劣勢に写ったことが敗因と思われる。
今少しの攻撃がみられゝば、勝利は間違いなかったのにと惜しまれる。
しかしボクシングのセンスの良さは素晴らしいもので、テクニックには充分堪能することができた。負けない選手である。
MGMグランドガーディン リングアナはジミーレノンJR。
WBO インターナショナル Sフェザー級チャンピオン ファン・マヌエル・ロペス(プエルトリコ)31歳。戦跡37戦34勝31KO 3敗。3敗はオルランド・サリドに2KO敗、ミゲール・ガルシアにKO敗である。ニックネームは「ファンマ」。対戦者はフランシスコ・バルガス NHBF北米 Sフェザー級チャンピオン(メキシコ)29歳。戦跡20戦19勝13KO 1分。ニックネームは「バンティト」。オッズは2:1でバルガス。
1R バルガス積極的に前進した右ストレートをボディに2Rは左フック、右ストレート、アッパーを振って優勢。3R 打合いとなり中間距離が得意のロペスも打合いに応じたが打ち負けてダウン。3R 終了時TKOとなる。往年の強打を振ったロペスも体重を上げる事によって自分のパンチが以前ほど相手にダメージを与えることが出来なくなり、強打が防御となっていたが、弱点の打たれ弱さが露呈して完敗となった。ロペスの今後は多分ない。
カリフォルニア州 ロスアンゼルス USガーデンセンター。
WBCヘビー級王座決定戦。
長期政権を続けていたウクライナのビタリ・クリチコが王座返上して引退、政界に転進した為にこの試合が組まれた。
バーメイン・スティバーン WBCヘビー級1位、35歳ハイチ出身の(米人)戦跡25戦23勝20KO1敗1分。ニックネームは「危険な男」。
対戦者クリス・アレオーラ、同級2位(メキシコ出身の米人)33歳。
戦跡39戦35勝31KO 3敗1無効試合。両者は2013年4月27日、WBCのシルバータイトルを争ってスティバーンがダウンを奪って大差の判定勝ちを納めている。1R アレオーラ 先制攻撃をかけスティバーンをロープ・コーナー
に追い詰めて連打、優位に立つがスティバーンは防御が巧みで、まともにパンチを食わない。相手のパンチの打ち終わりに打つパンチは早く的確。終わり際左フックでアレオーラぐらつく。
2Rアレオーラ相手をロープに追い詰めて集中打。スティバーンはガードを固めて攻撃を凌ぐが、手数は極端に少ない。3R アレオーラ依然として攻撃を緩めず、集中打を浴びあえるが有効打は少ない。4、5Rと同じ戦況は続いて アレオーラは先攻逃げ切りを図っているようで、かなりのハイペースで飛ばしている。6R スティバーンの右フックで
アレオーラ、ダウン次いでの連打で2度目のダウン。立ち上がったところへの集中打で試合はストップ。
TKOでスティバーンはハイチ出身者として初めてのヘビー級王者となった。
NABF北米ミドル級王座決定戦。 ディビット・レミュー カナダ 25歳、戦跡33戦31勝29 KO 2敗 ニックネームは「カナダのタイソン」。対戦者フェルナンド・ゲレロ(米)27歳。IBF 7位、戦跡28戦26勝19KO 2敗。WBC32位。
1R レミューはガードを高くかかげて接近、パンチはださずにゲレロをロープに詰めて相手のガードもなんのその、集中打のうえ、右フックボディでブローでダウンを奪う。2Rゲレロのジャブに合わせた左フックでゲレロ後退。左目から出血。
ゲレロ及び腰となり、連打でKO負け。レミューは前評判通りの力を見せた。
ロンドン、ウェンブリー・スタジアム IBF、WBA Sミドル級挑戦者決定戦。ジェームス・デゲイル(英)28歳。2008年の北京オリンピックのミドル級金メダリスト。戦跡19戦18勝12KO 1敗。IBF Sミドル級4位。1敗の相手はジョージ・グローブスである。ニックネームは「チャンキー」。
対戦者ブランドン・ゴンザレス(米)30歳。戦跡20戦18勝10KO 1分1無効試合。ニックネームは「フロウレス」(完全無欠)同級3位のディゲールの主戦武器はサウスポーの左フックである。
1R デゲイルの左フックのオープニングヒットで主導権を握ったまま4Rゴンザレスはロープに詰めて連打するがデゲイルの超ロングの左フックでダウンを喫しTKOとなる。デゲイルは左フックだけの選手で、ストレートは一発も打たなかった。左フックはまるで野球のピッチャーの投球のように大きく弧を描いて振るわれる独得のもので、あとのパンチはオープンブローがほとんどであり、今後は望めないであろう。
ロンドン、ウェンブリー・スタジアム 8万人の観客で埋め尽くされた会場はマイケル・バッファー、リング・アナの名調子でいやがうえにも盛り上がった。WBA・IBF Sミドル級のタイトルマッチである。2013年11月23日イギリス・マンチェスターで闘った両者の第一戦は1R グローブスの左ストレートでフロッチ ダウン。グローブス優勢で進んだ試合は9Rフロッチの猛攻でグ
ローブス グロッキーとなり、試合はストップ、フロッチの劇的逆転勝利となったが試合直後の判定が早すぎるのではの観客の
ブーイングが激しく、フロッチはリング上でのダイレクト・リマッチを約束した。因縁の試合である。
1R グローブスは前戦の雪辱を期してファイト満々。腰を落としてスタンスは広め、右ストレートのカウンターを狙う。
左ジャブも早く、主導権を握る為に意気込む。フロッチはグローブスの右を極度に警戒し不用意に左を出さずに慎重に
立ち上がる。
2R グローブスはフロンチの左ジャブの打ち終わりに左右ストレートを狙う。3R 打合いはグローブスの早さが目立ち腰を
落として上半身を小刻みに動かしてフロッチの右ストレートの間合いを外している。フロッチは手をださない。4R スピード
争いでは依然としてグローブスが上回っておりフロッチは対抗できないでいたが相手の動きに制限を加える為にプレッシャー
を掛けてロープに詰めボディを中心に連打し、相手のスタミナを削る作戦である。スタミナでは断然フロッチが優位にあるから
だ。5R グローブスは試合をコントロールしてきたがフロッチの圧力に体力を使い、スタミナが失われてきて、スピードが落ち始
める。ペースは次第にフロッチに移り始める。8R、相手のプレッシャーに消耗してきたグローブスにフロッチの右ストレート顔面
にヒット、衝撃のKO劇で締めくくり、因縁の一戦は完全決着した。フロッチの英国での人気の高さはうなずける。フロッチはグ
ローブスの早さと左ストレートを警戒し慎重に試合を進めてスピードの差をプレッシャーと体力で補い、機を見るに敏な連打と
止めの右ストレートは見事であった。
今後の見通しはフリオ・セザール・チャベスJRが、以前に一敗しているアンドレ・ウォードとの対戦が見込まれている。何はともあれ
今年一番の名勝負と鮮烈なKO劇ではあった。
カリフォルニア州 カーソン・スタブハブセンター 2014年6月21日
WBO フェザー級王座決定戦
WBO 同級一位ゲイリー・ラッセル(米)25歳 戦跡23戦全勝14KO
対戦者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)北京・ロンドン五輪金メダリスト。前戦は歴戦の雄サリドに挑戦したが判定敗。戦跡は1勝1敗 共にサウスポー。
1R ラッセルは主戦武器の右ジャブを多く出すがロマチェンコの的中率の方が精度が高い。2R も変わらず。 3R ラッセル攻勢に出るがロマチェンコ前後左右に自在に動き、相手が打ち気に出ると、動いてその気を削ぎ、出ないとみるとすかさず攻撃に転ずる、巧みさが目立つ。5R ロマチェンコ攻勢を強めボディへの集中打ちでラッセルの動きを止める。6R ロマチェンコの優勢は変わらず、ラッセルの攻撃は空回りする。
7R ロマチェンコ顔面、ボディとフック・アッパー連打でラッセル防戦一方となり、勝負の大勢は決まってくる。8R ラッセル挽回を図って攻勢に出るがハンドスピードを上げるが手打ちとなり威力が失われ精度も落ちてくる。
10R 及び11R ロマチェンコ、スピードが鈍ってきて、動きによって躱してきた相手の攻撃をガードで受け止めるようになり一進一退。12R ロマチェンコの動き戻り、有効な攻勢を見せて試合を締めくくる。
判定は114:114が1人、116:112が2人でロマチェンコが3試合目で王座につく。ロマチェンコのフットワークは滑るように自在でしかも頭の位置を絶えず動かし、相手の打ち終わりに、すかさず的確なパンチを打ち込み、その能力の高さを改めて観客に披露した。金メダリストの実力は伊達ではなかった。また7R 12Rとしっかり見せ場もつくり、エンターティナーとしての存在感も仲々のものであったが今後の課題はパンチの威力を高めることと後半のスタミナであろう。チャンピオンとしての将来はこの2点を考えると安泰とはいえない。オルランド・サリドのようなタフで強打、不屈の闘志の持ち主に対抗できるであろうか。今のパンチ力では止められまい。
ニューヨーク マジソンスクエア ガーデン
WBC ミドル級タイトルマッチ 72.57kg
チャンピオン セルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)39歳、Sウエルター・ミドルの2階級制覇している。ニックネーはマラビジャ(驚異の男)。2004年に初戦敗れたスーパースター候補のポール・ウイリアムスを再戦で衝撃的な左フック一撃でK0に下し33歳にして世界を驚かせた選手である。戦跡55戦51勝28K0 2敗2分。
無敗のスター、フリオ・セザール・チャベスに圧勝してチャンピオンに返り咲き、防衛戦マーティン・マレーを下し2度目の防衛戦である。
挑戦者はミゲール・コット(プエルトリコ)33歳。戦跡42戦38勝31KO4敗。
Sライト・ウエルター・Sウェルターの3階級を制覇している。ニックネームはフニオ(若者)、4敗は人間風車マルガリート、異能ボクサー パッキャオ、天才メイウェザーで, あとの1人はオースチン・トラウトで、サウスポーで早く巧みな選手でメイウェザー戦に続く敗戦中である。2004年4月WBO
Sライト級王座を賭してケルソン・ピント(ブラジル)27歳、戦跡20勝全勝18KO,内15KOは2分以内であった。
2000年のシドニーオリンピック出場者で、中南米のトーマス・ハーンズと言われた強打者でアマ時代は対コット戦2戦2勝、対するコット23歳、20戦全勝16KO シドニーオリンピック出場者である。
1Rから先制攻撃をかけ2R,5Rにダウンを奪い6R KOに下し、防御も巧み、パンチは早くて強い、万能型のチャンピオンとして脚光を浴びてスターとなる。
さてマルチネスとの一戦はコット先制攻撃をかけて左フック顔面にヒットしてマルチネス ダウン、次いで再度の左フックで2度目のダウン、更に左フックのボディブローで3度目のダウン。2Rコットの左フックでマルチネス足が縺れてスリップダウン。3R前進するコットにマルチネス足を使って回復を図りながら右ジャブで躱わす。4Rマルチネスはコットの左フックが見えていないようだ。
軽い左フックにもたじろぐ。5Rコットはガードを相変わらずしっかりと固めて慎重に追い込むが手数が少ない。6Rマルチネス回復してきたようで手数を増やしコットの前進を阻む。
7Rマルチネス前に出始めるが、コットの左フックのボディと右ストレート顔面にヒット、マルチネスぐらつく。9Rコット攻勢を強めて左右フックと右ストレートを顔面に浴せて益々優勢となり、左ジャブでマルチネス4度目のダウン、10R開始早々コーナーから出ることなくTKOでコット2年1ヶ月振りで王座につく。
試合前のオッズは3:2でマルチネスであったが、1Rの思いがけないコットの攻勢で3度ダウンした影響は大きく、マルチネス本来の前後、左右に自在に動き、相手の出鼻をカウンターで狙う、相手が出ないとみるや、両手を下げて接近し、已むなく前に出る相手をカウンターで仕留める変幻自在のボクシングを駆使することが出来なかった。コットの左フックを最後まで見極めることが出来なかったのも大きい。コットも体格差からみてこのクラスで王座を維持するのは難しいのではないか。
カリフォルニア州 イングルウッド フォーラム。
WBOウェルター級挑戦者決定戦
元4階級制覇 チャンピオン ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)40歳。
戦跡63戦55勝40KO 7敗1分。ニックネームはディナミタ(ダイナマイト)。
対戦者マイク・アルバラード メキシコ系米人33歳, 前WBO Sライト級チャンピオン。前戦 ルスラン・プロボドニコフに敗れて王座を失っている。戦跡36戦34勝23KO 2敗、ニックネームはマイル・ハイ(コロラドの高地の男)。
1R 例の通り攻勢に出るとみられたアルバラードは高いガードで防御を固め、マルケスの様子を見て慎重にたちあがるがほとんどパンチは出さない。マルケスは自在にパンチを出し、スピードもあり好調のようだ。
2R アルバラード 手を出して前進するが当たらず、マルケスに手数で圧倒される。
3R アルバラード覗き見スタイルでガードを固め、ロープに詰めてくるが、パンチの数と的確さでは、はるかにマルケスにかなわない。
4R マルケスは相手の出鼻にコンビネーションパンチを打ち込み、主導権は依然として握っている。 5R~7R この状態は変わらず、マルケスの的中率の良さと、うまさが際立つ。8R アルバラードの右フックに合わせた右ストレートのカウンターでアルバラード ダウン ダメージは深そうで、コーナーを間違える。
9R 攻勢に出たマルケスの両足が揃ったところにアルバラードの右フックでマルケス ダウン。
10R アルバラードに8Rのダウンの影響もあって攻撃できず。
11R アルバラードの右ストレートでマルケス腰砕けとなり、あわやダウンしそうになるがその後攻勢を強める。12R マルケスの攻勢は変わらず終了。
判定は119:108が1人、117:109が2人でマルケスの圧勝であったが、激しい試合で見ごたえがあった。マルケスは前の試合で敗れたブラッドリー戦に比べてコンデションの良さがみてとれ、ブラッドリーが見せた出入りの早さとカウンター戦法に力を出し切れなっかたがアルバラードの今回の戦法はゆっくり前進して来る為に絶好のカウンターの餌食とし、最も戦いやすい相手であったと思われる。
アルバラードの2敗はブラントン・リオスに激闘の末にプロポトニコフには相手の強打を警戒して、アウトボクシングの選択をして共に敗れた。今回プロポトニコフに敗れた事からトラウマになっていた事とマルケスが衝撃的な右ショートストレートでパッキャオをKOした残像が残っていた為か過度にマルケスを警戒し、持ち味である激闘型の本領を発揮出来ずに終わったことが悔やまれる。これで5度目のパッキャオ対マルケス戦が決定した。
中国マカオ、ベネチアン・リゾートゴタイ・マリーナ。
WBAスーパー世界フェザー級タイトマッチル、チャンピオン シンビウェ・ベチェカ(南ア)、戦跡28戦26勝15KO 2敗、スーパーチャンピオンとして長く君臨したクリス・ジョンを倒してチャンピオンとなった。挑戦者は元4階級チャンピオン「フィリピンの閃光」ノニト・ドネアが5階級目を目指しての挑戦である。戦跡34戦32勝21KO 2敗。
1R 互いにスピードあるジャブで立ち上がるが、終盤バッティングでドネア左目上切る。目蓋の部分で血が目に入るやっかいな場所である。2R 再度のバッティングで左目上傷口拡がる。ベチェカは難敵を倒したことで事で自信満々の試合振りでスピードも一段と上げている。3R ドネアの左フックでベチェカぐらつく。
4R ベチェカ攻勢に出たところドネアの左フックでダウン、 ダメージ大きくスピード落ちる。5R 開始早々ドネアの傷口が大きく深い為、試合成立する4Rまでの負傷判定となり、3者とも49:46でドネアの勝利となる。本人には不本意のようであったが、何はともあれ5階級制覇のチャンピオンとなった。この試合は再戦が組まれることになりそうである。
WBAフェザー級タイトルマッチ 12回戦 チャンピオン ニコラス・ウォータース、28歳(ジャマイカ)戦跡23戦全勝19KO。
挑戦者は元2階級制覇チャンピオン ビック・ダルチニャン(アルメニア)38歳、 戦跡46戦39勝28KO 6敗1分。前の試合でノニト・ドネアに9R逆転KOで敗れての再起戦でもある。
1R ウォータース、ガードを高くして構える。手が長く顔からボディまで全部隠れる、殆どだ。バネがあり、パンチ力もあり、体力もあり、ダルチニャン 体負けで押される。2R 頭を下げて入ろうとするところにウォータースの右アッパー強烈ダルチニャン ダウン。
4R 左フックでダルチニャンよろめき、再度の右フック顔面にヒット、ダウンしそのまゝカウントダウン。ウォータースはフェザー級戦線だけでなく、ライト級あたりまでのクラスで、今後更に名を挙げていきそうな選手である。
中国マカオ、ベネチアン・リゾートゴタイ・マリーナ。
IBFフェザー級タイトルマッチ 12回戦 57.15kg チャンピオン イフゲニー・グラドビッチ(ロシア) 戦跡18戦全勝9KO、2013年3月ビリー・キムより王座獲得、3度目の防衛戦。挑戦者同級1位 アレキサンデル・ミスケルケアン(グルジア出身のベルギー人)戦跡27戦24勝2敗1分。
1R からグラドビッチ手数で優位に立って 6R攻勢中に左ジャブでダウンを喫したが最後まで手数で押し切って、判定117:110が2人、118:110が1人でグラドビッチ防衛。2人ともパンチがなく、見所の少ない対戦で、グラドビッチの取り柄は手数とスタミナだけといったところである。
ドイツ、ノルトラン・ウェスト ファーレン州オーバーハウゼン・ケーニッヒ・ピルスナー・アリーナ。リングアナ マイケル・バッファー
ヘビー級3団体統一チャンピオン ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)38歳、1996年アトランタ オリンピック ロンドン オリンピック 金メダリスト。
ニックネーはムスチール・ハンマー、長く兄弟で4団体を独占してきたが兄ビタリは引退。挑戦者はアレックス・リーバイ(サモア出身の豪)34歳、WBO 1位,
戦跡37戦30勝24KO4敗3分。
1R 例によってクリチコ軽く左ジャブを突く、軽く出した右ストレート顔面にヒットで、リーバイ ダウン。2R リーバイ 身体を振り姿勢を低くして飛び込もうとするが、クリチコは早くて強いジャブで寄せ付けない。3R~4R 左ジャブが次第に強く的確に当たり始め、リーバイ ダメージが重なっていく。
5R 少しづつ力を入れ始めたクリチコの右ストレートが顔面にヒットでリーバイ2度目のダウン、立ち上がったところへ再度の右ストレートでKOとなる。リーバのイパンチは一発も当たらず文字通り手も足も出ない完敗であった。クリチコは汗一つかかない余力七分の安全運転で殆んど力を使わなかったのではないかと思わせて16度目の防衛を強さを見せつけて果たした。
ちなみに空位のWBCは1位バーメイン・ステバーン(カナダ)、2位クリス・アレオーラ(米)、3位デオンティ・ワイルダー(米)である。
プエルトリコ、バヤモン ルーペン・ロドリゲス コロシアム。
デオンテイ・ワイルダー(米)28歳、戦跡30勝全勝全KO、デビューから全て4R以内でKOしている。30試合で53Rしか戦っていない。2008年の北京オリンピックの銅メダリスト、WBC 3位ニックネームはブロンズ・ボンバー。 対戦者マリク・スコット(米)33歳、WBC 23位、戦跡38戦36勝13KO 1敗1分、ニックネームはキング。
1R ワイルダーの左フックからの右ストレート顔面に決まりスコット ダウンそのままKOとなる。ワイルダーのクリチコへの挑戦が次第に現実味を帯びてきた。
クリチコに対する恐るべき相手となりそうである。
ワシントンDC DCアーモリー
WBOミドル級チャンピオン ピーター・クイリン(米)30歳、戦跡30戦全勝22KO、ニックネームはキッド・チョコレート。1930年代フェザー級 Sフェザー級でキューバ人初の世界チャンピオンのニックネームをキューバ系のクイリンがその名を継いで名乗っている。三度目の防衛戦。挑戦者ルーカス・コネチニー(チェコ)35歳、WBOミドル級2位、元WBO暫定Sウェルター級王者でチェコ初の世界王者でもある。戦跡は54戦50勝23KO 4敗。アマ時代の戦跡は257戦230勝25敗2分。シドニーオリンピックに出場している。
1R コネチニーはガードを固め顎を引いて背中を丸めて接近戦を挑む。長い距離では明らかに不利だからだ。クイリンは早い左ジャブで懐に入るのを防ぎ、右ストレートでガードの上を叩く。
2R 以降4Rまでこの攻防は続き、共に的確なパンチはない。5R クイリンの左フックがボディに決まり、少しづゝペースはクイリンに傾くが、コネチニーの懐に入る作戦は奏功して、クイリンは懐に入られている。クイリン得意の右ストレートは完全に防御されているが、いかんせん追い込んでのコネチニーのパンチに威力がない為に、クイリンに脅威を与える事が出来ない。そのまま試合に変化なく12R終了。判定は120:108が1人、119:109が2人でクイリンの圧勝であった。コネチニーは良く考えて作戦を立てゝきたが肝心の攻撃力が乏しい為に、ポイントを取る事が出来なかった。
クイリンはパンチの威力で勝利したが、相手の前進に真っ直ぐに下がる為に、常にロープを背負うことなり、相手にパンチがあれば、左が下がる傾向も合わせて危険であると言わざるを得ない。常に圧力をかけてロープに追い込み、破壊力のあるパンチを連続で振るうゴロフキンのような相手には対抗出来ないのではと思わせた。
WBC王者フロイド・メイウェザー(米)37歳, 戦跡は45戦全勝26KOの天才ボクサーである。
WBA王者はマルコス・マイダナ(アルゼンチン)30歳、戦跡38戦35勝31KO3敗、視聴者の勝敗予想は72%対27%で、オッズも5:1でいづれもメイウェザーである。1R~4R マイダナ予想通り頭を下げて前進、ロープに詰めて乱打。ペースはマイダナであるがメイウェザーもまともにパンチを受け
ることなく的確にパンチを返している。6R マイダナの攻勢は変わらないが圧力は弱まり次第にメイウェザーのペースとなり、以降メイウェザーはロープに詰まることが少なくなり、余裕が生まれて中間距離を保ってのパンチが当たり始めて、12R 終了。 判定は114:114が二人、117:111と116:112でメイウェザーの勝利となった。メイウェザは相変わらずの試合巧者振りで中盤からで試合をコントロールして余裕をもった戦い方で終始し危なげない
試合であった。マイダナを下して、パッキャオも衰えた今、負ける相手が見当たらないのが現状である。
WBC シルバーウェルター級タイトルマッチ 元WBA・IBF Sライト級チャンピオン アミール・カーン(英)27歳ニックネームはキング・カーン
戦跡31戦28勝19KO3敗、英で絶大な人気を誇る。レイモンド・ピーターソンに1:2の判定で敗れ、タイトルを失い、更にダニー・ガルシアに4RTKOに敗れている。前回フリオ・ディアスに勝って1年振りの1階級を上げての試合である。対戦者はルイス・コラーゾ(米)33歳、元WBAウエルター級王者である。最近は4年間で5試合しかしておらず、終わった選手と見られていたが今年1月ビクター・オルチスを2RKOに倒して一躍脚光を浴びた。
1R コラーゾ、前進してカウンターを狙うカーン、スピードはあるがプレッシャーを受ける。2R 3R コラーゾは前進するがパンチは後退しながらのカーンの左右ストレートがヒット。4R カーンの右ショートストレートでコラーゾダウン、以降コラーゾ、ノーガードでカーンを追い回す。8R ローブローの反則でコラーゾ、ホールトでカーンが各1ポイントづつ失う。10R 左ボディ、右フックボディでコラーゾ2度目のダウン、連打で3度目のダウン。11R 12Rコラーゾ前進して一発逆転を狙うがカーン逃げ切る。
判定は117:106が一人、119:104が二人でカーンが完勝。カーンはウェルター級に上げての初めての試合であるが、後退しながら打つパンチに威力がなく、打たれ弱さもスタミナ不足も解消されておらず、全体にひ弱さがみられた前途多難が感じられた。
5月4日 ラスベガス グランドガーデンアリーナ 元3階級制覇チャンピオン エイドリアン・ブローナー(米)24歳ニックネームはプロブレン、戦跡29戦27勝22KO1敗1無効試合。
カルロス・モリナ(米)戦跡19戦17勝7KO1敗1分。ブローナは今年1月マルコス・マイダナに判定で敗れて王座転落、これが再起戦である。モリナの1敗はアミール・カーンにTKOで敗れたもの。
1R ブローナーは相変わらずのL字ガードで立ち上がる。身体をやや後ろに反らしているが以前に比べると攻撃に重点を置いた体勢である。
モリナは左右フックの細かいパンチを数多く出して対抗する作戦。
2R
モリナの肩越しの右フックがヒットしブローナーはガードを高く、防御体勢をとる。3R モリナは相手の内懐に入って早い左右フックを連打、ブローナーは充分に止めることが出来ていない。4R ブローナー左ジャブ多用し攻撃を強め多彩なパンチを繰り出しペースを握る。5R 両者にパンチのスピードの差がつきペースは完全にブローナーのものとなり、一方的な試合となり10R終了。判定は99:91、98:91、100:90のワンサイドであった。ブローナーは前回敗戦の後、後遺症は見られなかったが、ロープに詰まった時に左ガードが下がり、右フックを受ける危険が感じられるとともに、左フックに対する防御も甘く、防御に位置ますの不安は残った。