会場 カナダ ケベック州セントレ・ビデオトロン (2019年2月4日)
チャンピオン エロース・スペンス アメリカ サウスポー
戦跡24戦全勝21KO 3度目の防衛戦
挑戦者 ミゲール・マイキー・ガルシア アメリカ
戦跡39戦全勝30KO WBCライト級チャンピオン
1R スペンス 右のジャブを強弱つけて37発繰り出し、中に、左ストレート3発ボディ1発を混へて立ち上る。ガルシアは堅いガードと半歩のステップバックでこれを防ぎ、ほとんど手は出さず。
2R スペンスこれまでと異なってガードをしっかりと固めてガルシアの攻撃力を警戒。ガルシアはこのR、攻勢をかけて左ジャブと左フックのボディブロー有効
3R 両者の距離は予想外に近く、ガルシアが離れるとスペンスの左ストレートの距離となる為にこの選択をしていると思われ、スペンスもこれに応じているようだ。お互いのディフェンスの巧みさからクリーンヒットはない。
4R スペンス 3Rまでの経緯から右ジャブから左ストレート左フックを顔面・ボディに打ち分け始めて攻勢を強める。
5R ガルシアはスペンスの打ち終りを狙って攻撃を仕掛けてロープに詰めて攻勢をかける。中盤からスペンスは反撃に出て、ガルシアのガードの上を叩く。ガルシアの顔面が傷つき始める。
6R 徐々にスペンスはパンチに力を込め始めて ガルシアのガードを破ってヒットし始めてスペンスの優勢がはっきりしてきた。
7R スペンス攻撃の中心をボディに決めたようでこれが有効。ガルシアのガード力も弱まりスピードも落ちてくる。繰り出すパンチもスペンスに届かなくなる。
8R ガルシアはガードはしていても、次第に打たれ始めてスペンスは時折り強烈なパンチを振う。
9R スペンス 倒しにかかり、右ジャブは30発以上左右ストレートフック、アッパを上下に打ち分け一方的となる。ガルシア後半反撃する。
10R 試合の趨勢は決まり、スペンスのKOがいつかに興味は移ってきた。このR終了時コーナーは、これ以上続けるかガルシアに問い直す。
11R スペンスの攻撃はすさまじく、ガルシアは一方的に打たれ、レフリーストップが懸念されたが、ガルシアも4階級王者の意地をみせて耐える。
12R スペンス中盤に15秒程のラッシュを見せるが、ガルシアも反撃をみせて終了
判定は120:108が2人120:107が一人でスペンスの完封勝利となった。
ガルシアは4階級にわたって全勝を続けたが、この前の試合でウェルター級の天才エイドリアン・ブローナーと斗い、勝利しているが、パンチ力ではブローナーが数段階上であった。スペンスは攻撃力もパンチ力もスピードもこのクラスでも頭抜けており、ライト級とウェルター級では5.5kの体重差がありこれを克服するのは想像以上に至難の技であった。つい最近までパウンド・フォーパウンドと衆目の一致するところであったSフライ級のローマン・ゴンザレスは一階級下のフライ級までは文字通り当るを幸いとKOの山を築いてきたが、フライ級のリミット50.8kgからSフライ級の52.16kg、1.36kgの違いで当時チャンピオンのカルロス・クアドラスに挑戦。大苦戦の末に辛くも勝利しての初防衛戦強打のシーサケット・ソールンビサイと対戦。ダウンを奪われた末に判定負けしたデビュー以来初の一敗であった。満を持しての再戦では壮絶なKO負けを喫して1.36kgの壁を痛感させられている。
ガルシアが何故スペンスを対戦相手に選んだのであろうか、2018年9月IBF王者で全勝のロバート・イースターとダブルタイトルを賭けて対戦。大差の判定で下して王座統一。
次に期待されたのがWBA、WBOの王者でボクシング史上の最高傑作と謳われるスーパースターワシル・ロマチェンコが対戦相手として待望されたのである。何せアマの記録が396勝1敗である。流石にガルシアも二の足を踏んだとしても不思議でない。では1階級上のSライト級にネームバリューがある選手は居らず、ならば、大物スペンスをターゲットにしたとも考えられるのだ。よしんば負けても、自分の評価が下る事はない。体格差が大きい為だ。ガルシアのプライドがSライト級の選択を許さなかった事もあろう。しかしスペンスの力量は体格差は当然、右ジャブのスピード距離の長さ、左ストレートの上・下への打ち分けとその破壊力、無尽蔵のスタミナ、囲いガード、反応の早さと統べてに於いてガルシアを上回っており、対戦するのは無理筋であったのである。ガルシアの試合経験。ガードの固さ、防御技術で12R・スペンスの攻撃を凌いだのはさすがであったが勝利のめどは全くたたなかったのである。スペンス側からみればこれで次の相手は同級全勝王者WBOのテレンス・クロフォードとなった。
クロフォードはパウンド・フォー・パウンドでいずれの調査でも1・2位にランクされている万能型の選手であり、2人とも絶頂期の今が斗い時である。
フライ級のマニー・パッキャオが20kgの体重差をのり超えて、Sウェルター級まで事実上の10階級を制したのは今後2度と現れる事のない異能のボクサーの奇蹟なのであるから。
チャンピオン ジャーボンティ・デービス アメリカ 24才
戦跡20戦全勝19KO ニックネームは「タンク」
挑戦者 ウーゴ・ルイス メキシコ 32才
戦跡43戦39勝33KO4敗
試合前 リング上でフロイド・メイウェザーが秘蔵っ子デービスに何やらしばらく話していた。メイウェザーの体形は引退前と少しも変らず。又復活を狙っているのではと思われた。お互いにサウスポー。
1R デービスは右ジャブを続けざまに11発放ってルイスをロープに追いつめて左右フック、右フックをボディに、ルイスが右ストレートを打ったとみるまに、デービスの左ストレートが飛び、ついで左からの右フック顔面でルイスたまらず膝をついてダウン。鼻血も流れて、やっと立ち上ったが、レフリー戦斗意志なしと判断。レフリーストップとなった。2分59秒の事であった。デービスの強さは異次元のもので、果して誰がこれを止める事が出来るのであろうか。
唯一気がかりは以前に体重リミットを維持出来ずに試合に臨んだ事があり、これによってタイトル剥奪されている。今回も3度目の測量でやっとパスしており、自己管理が今後の課題である。元々の身体が小柄であり、そのままクラスを上げて良いかはやや疑問が残るところでもありむつかしいところだ。
このクラスの他団体は、WBCに強打のミゲール・ベルチェルトが居て、IBFにデビン・ファーマー、WBOに伊藤雅雪がいるが、デービスに対抗できるのは、唯一ベルチェルトである。ベルチェルトも強打者であるが、彼は対三浦戦のように相手の強打を避けて、アウトボクシングを選択すると思われるが、踏み込みの早いデービスを躱しきれまい。正面衝突となった場合。やはりデービス有利は否めないところだ。
これに勝てばこのクラスに敵なしで、次は一クラス上のワシル・ロマチェンコとなるであろう。
今日のボクシング界で、最も魅力的なカードは
1.エロール・スペンス対テレンス・クロフォード
2.シャーボンティ・デービス対ワシル・ロマチェンコ
が衆目の一致するところである。
チャンピオン エレイデル・アルバレス コロンビア 34才
戦跡24戦全勝12KO 北京5輪に出場している。
ニックネームはストーム(嵐)
挑戦者 セルゲイ・コバレフ ロシア 35才
戦跡 36戦32勝28KO 3敗1分
元3団体統一チャンピオン ニックネームはクラッシャー
両者は6ヶ月前にアルバレスがまさかの逆転劇で7RKOにコバレフを下して戴冠しておりダイレクトマッチである。
1Rから9Rまでコバレフは従来の斗い方を変えて相手の右パンチを絶対食わないことを肝に命じて距離をとり相手の左に回って右のパンチとの距離を図り、左ジャブを突いては右ストレートを打ち、深追いせずにすぐに後退し、軽いパンチで終止して、カウンターをまともに食わない事に細心の注意を払って試合をすすめた。
10R アルバレスこれではならじと右フックを振って攻勢を強め、数発パンチを出したがコバレフをグラつかせたが後が続かず反撃を許してペースにのれない。
11R アルバレス、右ショートストレート 3発、当るがコバレフ 手数で対抗。
12R コバレフ、最後の力を振り絞ってパンチを繰り出し、優勢のまま終了
判定は116:112が2人 120:108が一人でコバレフのタイトル奪還に成功した。
アルバレスはそもそも待ちのボクシングで、相手の攻撃に完全にガードしてから後の先でパンチを振るう為に、コバレフのジャブからの軽いパンチのあと、さっと退く作戦に完全にしてやられた。
しかしコバレフの全盛時パウンド・フォー・パウンドと認められた鬼神のような力強さは、対アンドレ・ウォード第二戦あたりから急速に弱体化し、打たれ弱さをさらけ出してしまった。対アルバレス戦の前線はKOに敗れ、今回の再戦は、唯勝ったことのみを目的に作戦をたてて、何とか成功したものの、体は萎み、スピードも衰え、パンチ力は極端に落ち、今回はごまかしのボクシングで王座奪還したが、もう限界に達しており老残を曝して欲しくないと思う。コバレフの時代は既に終わったのである。
製本用 修正済
チャンピオン テオフィモ・ロペス アメリカ21才
戦跡11戦全勝9KO 16才でリオ五輪出場するも1回戦で敗退
挑戦者 ディエゴ・マグダレノ アメリカ 32才
戦跡33戦31勝13KO2敗 その2敗はいずれも世界戦であり中でも、ローマン・マルチネス戦は1:2の惜敗であった。サウスポー
1R ロペス、L字ガードでマグダレノはロペスの強打を警戒に高くガードを掲げて立ち上がる。ロペスいきなりの右ストレート、ついでの右フックのあと集中打をみせる。
2R ロペス、左手を完全に下げて、途中サウスポーにスイッチ。元に戻すやカウンターの右アッパーを始め、完全に相手の力を読み切る。セオリーに反して、相手の正面に立って斗う。マグダレノ、鼻柱を負傷して出血。ペースはロペスのもの。
3R ロペスは短い右アッパーを2発、右ボディブロー強烈
4R ロペス、相手の出るのを待って、右ショートストレートのカウンター、そのあとは左ジャブを多発。これが実に速い。
5R 同じ
6R マグダレノ、何とかしなくてはと前に出るところ、左ショートアッパーを顎に左ロングアッパーと続けたあと狙いすました左フックでタフなマグダレノもついにダウン。
7R ロペスは落ちついて相手をみながら左ストレートついでの左フックでマグダレノをKOに仕留める。
勝利のコールあと、鮮やかなバック転を披露した。
ロペスは若くて自信に満ちており、世界戦2度の兵(つわもの)を相手にしても、呑んでかっていた。
第一にスピードが段違いでパンチ力、パンチのスピード、左ジャブの使い方、ショート・ロングのアッパーの巧みさ、勝負の決め方、防御技術、攻防にみる勘の良さと何よりもエンターテイナーとしての華やかさを有している。
とび込みざまに打った左・右のショートアッパーの切れ味は、ノーガードで上体の変化のみでかわし、KOの山を築いた。あの悪魔王子、ナジーム・ハメドを髣髴とさせる選手である。持ち味のアクの強さもやや似ており、タイトル奪取も近い事であろうし、人気も急上昇する。今、若手で一番魅力のある選手である。
うまく育てばボクシング界のドル箱スターになるかも知れない。
チャンピオン ヒルベルト・ラミレス(サウスポー)メキシコ 27才
戦跡38戦全勝25KO ニックネームはスルド(左利きの男)
挑戦者 ジェシー・ハート アメリカ 29才
戦跡26戦25勝21KO1敗 ニックネームは「ハードワーク」
父親はランキングボクサーでマービン・ハグラーとも対戦している。
この両者は17年9月に対戦。ラミレスが2Rダウンを奪って楽勝かとみられたがハート中盤から反撃に出てラミレス接戦のうえ辛くも判定に下している。
1R このところ判定勝ちが続いて人気も今一つのラミレスはKOを狙ってか圧力をかけて前に出る。手数も多い。ハートは退きぎみで左ジャブでラミレスを止めにかかる。
2R~5R ラミレスの圧力は変らず、パンチは上・下に打ち分け、多彩。
このRまでラミレスの優勢は続く。
6R ハートもこれではならじと、反撃開始するが、やはりラミレスのペースは変らない。
7R 足を止めたハートは力強いパンチを振るいだして、正面からラミレスに対抗する。ラミレス前半のオーバーペースが祟って急速にスピードもスタミナも失って失速する。
8・9R 中央での打ち合いはハートが打ち勝って流れはハートに傾く。
10R ラミレス、手が出なくなり、ロープに詰められて打たれる。
11R ラミレス、終始ロープに詰められて攻撃を一方的に受け、大ピンチに陥る。
12R ラミレス、王座陥落の危機を感じてか猛然と攻撃に出て、打たれたハートはダウン寸前に追い込まれるが、それでも終盤に反撃する。
判定は114:114、115:113が2人でラミレス辛くも防衛に成功。ラミレスはパンチ力もスタミナも無く、何故王座に君臨しているのかは不思議であるが、いわゆる総合力とでも云うのであろうか。
試合運びのうまさと、良く手がでるのが取り得のようである。
会場 カナダ ケベック州セントレ・ビデオトロン (2019年2月4日)
WBC Lヘビー級タイトルマッチ
チャンピオン アドニス・ステーヴンソン カナダ 41才
戦跡31戦29勝24KO 1敗1分 ニックネームはスーパーマン
2013年6月チャド・ドーソンを衝撃の1RKOに下して
文字通りスーパーマンの如く、左ストレート一発の威力で挑戦者を薙ぎ倒して今回が10度目の防衛戦である。
挑戦者 オレキサンダー・クボジーク ウクライナ 31才
戦跡15戦全勝12KO 12年ロンドン五輪銅メダリスト
ニックネームはザ・ネイル(仕留める男)
WBC Lヘビー級 暫定チャンピオン
1R~5R クボジークは相手の左ストレートの一発を特別に警戒して、右拳をしっかり顎にあてて構え、スティーヴンソンの左ストレートから遠くなるように左回りに動いて、左ジャブで距離を取って自分の距離で戦う。
6R スティーヴンソンの切り札左ストレートは、ほとんど当らず、当っても左回りの後追いとなってクリーンヒットにならずに試合はクボジークのペースに進み、自信を持ったクボジークの手数が増えてくる。クボジークは力強いパンチは振わず、当てるのが目的のようにみえる。
7~8R クボジーク左廻りを止めて正面から打ち始めてスピードもあげてくる。小さなパンチを受けてきたスティーヴンソン消耗してくる。
10R スティーヴンソンの左ストレートが始めてまともに当ってクボジーク ロープに飛ばされる。スティーブンソンはここぞと倒しにかかるが自分も疲れている為に追い切れない。終盤クボジーク反撃にスティーブンソンピンチ。
11R クボジーク 正面からの打ち合いに出て弱ったスティーブンソンをロープに詰め連打を浴びせてダウンを奪う。スティーブンソンのダメージは凄まじくリングに沈んだまましばらく立ち上がれず、5年半続いた王座から陥落した。クボジークの戦術はまことに理に叶っており、前半のパンチを見るかぎりあのKO劇は予想すら出来ないものであったが、KOに至る道は見事なものであった。
従来からS・ミドル級、Lヘビー級、クルーザー級はミドル級とヘビー級に挟まれて、実力者に乏しいクラスであったが、その構図は今も基本的に変わらないようである。
・ロブソン・コンヤイソン 戦跡9戦全勝5KOブラジル
ペキン・ロンドンオリンピック出場共に1回戦敗退
リオ五輪で金メダル獲得したスター候補
・ジョーイ・ラビオレッテ カナダ
戦跡10戦9勝5KO1敗
8R判定でコンセイソン勝利したが左リードに見るべきものなく、右フックは全てオープンブローでありスピードも無く、将来性はみえなかった。
同会場
フェザー級10回戦
ミゲール・マリアガ コロンビア32才
戦跡29戦26勝22KO3敗
WBC・WBOフェザー級15位
3敗は全て世界挑戦での敗北、内オスカル・バルデス戦が2回目で18年8月にロマチェンコに挑戦したが、格の違いを見せ付けられ子供扱いされた上、TKOに敗れている。
WBC ヘビー級タイトルマッチ
チャンピオン・デオンティ・ワイルダー アメリカ33才
戦跡40戦全勝39KO 約8年ぶりの米国人チャンピオンである。ニックネームはブロンズ・ボマー
挑戦者 タイソン・フューリー イギリス30才
戦跡27戦全勝19KO WBC3位
11年以上続いたウラジミール・クリチョ時代に終止符を打った男であるが、その後不祥事があってタイトルを返上して引退。元3団体統一チャンピオンである。
そして復活170kgあった体重を116kgに減量、絞って挑戦の運びとなったワイルダーの前試合後リングに乱入し挑発、軽量時も挑発をくり返して舌戦に及び試合前の戦いはフューリーに軍配が上がっていた。
1R 例によってワイルダー打って出るがフューリーはこれをクリンチで止めた上に両手を身体の後ろに組んだりしてワイルダーを挑発。ゴング近く両社打ち合うが当たらない。
2R ワイルダー左手を下げ攻撃優先のスタイルで圧力を強めるが両者にパンチの交換はない。
3R フューリーは盛んにフェイントを掛け、足も使ってステップを踏み身体も動かして防御中心のスタイルワイルダーの右パンチを極力警戒して斗う。ワイルダーは思い切って大きなパンチをフューリーは小さなパンチを振って対抗する。
4R 3R同様フューリーは冒険を避け慎重に試合を運んでワイルダーのパンチを悉くかわす。
R終了時フューリーは右手を挙げてアッピール
自分の思い通りの試合に満足しているようだ。
5R ワイルダーの左ジャブが目立つが右の大きなパンチは総てかわされる。2~5Rは攻撃点でワイルダー優勢である。
6R フューリーは構えを左・右に変えて5Rまでの守勢から攻撃に転ずる。
7R フューリーのワンツーが3回ヒット、小さなパンチであるが威力があり、ワイルダーの顔面が腫れてくる。
8R フューリー頭を振り、身体を動かし足を使ってリズムにのってくる。試合のペースはフューリーに傾いてきた。ワイルダーのパンチは全く当らない。
9R 守勢に回っていたワイルダーの右フックがダッキングしたフューリーの頭部を掠ってフューリーダウン。立ち上がったところ倒しにかかったワイルダー猛攻。フューリークリンチでそれを凌ぐや猛然と反撃。両手を拳で、又、舌を出して挑発、ワイルダー力を使い切って疲れる。
10R フューリー前進。小さなワンツーが的確に3度ワイルダーをとらえてワイルダー足がもつれる。流れは再びフューリーに。
11R 疲れのみえてワイルダーはパンチのスピードが落ち連打が出来なくなり、この時点で余力はフューリーにありワイルダー押される。
12R 弱っていたワイルダーの突然の右ストレートからの返しの左フックが命中。フューリー仰向に倒れしばし動かず試合は決したかにみえたがフューリー不死鳥の如く立ち上り、反撃開始ワイルダーに余力は残っておらずぐらつきながら試合終了。
判定は115:113ワイルダー 114:110フューリー 113:113ドロー
審判3者3様でワイルダーのドロー防御となった。
ブランクのあと、過酷な減量に耐え短期間に体調を良く整えたフューリーは頭脳的に試合を組み立て、前半はワイルダーの右の一発パンチだけは絶対に食らわない事を肝に命じて中盤から攻勢に転じ、試合の主導権を握り、相手の攻撃を悉く躱して混乱させて自分のペースに引きずり込む作戦通りの試合をくり拡げてみせた。
驚くべきは12Rダウンを喫したあと誰もがKO負けと思ったところから立上がり、しかも反撃してワイルダーをダウン寸前まで立上がり、しかも反撃してワイルダーをダウン寸前まで追い込んだ驚異的な回復力と不屈の闘争心には驚かされた。
準備期間があと2~3ヶ月あれば勝利は間違いないところであったろう。
それにしてもあれほど疲れていてもワイルダーの一発パンチの威力はすさまじいものがあった。
40回戦って39回KOに下した戦跡はだてではなかった。しかし、ワイルダー、フューリー、ジョシアの3強が並び立つ状態があり、やや遅れてオルテスが続く現状がどこで崩れるか
①会場 アメリカ・テキサス州エルパソ・ドン・ハスキンス・コンベンション・センター
S・フェザー級8回戦
●ロブソン・コンセイソン 戦跡9戦全勝5KO ブラジル
ペキン・ロンドン・オリンピック出場共に1回戦敗退
リオ五輪で金メダル獲得したスター候補
●ジョーイ・ラビオレッテ カナダ
戦跡10戦9勝5KO1敗
8R判定でコンセイソン勝利したが、左リードに見るべきものなく、右フックは全てオープンブローでありスピードも無く、将来性は見えなかった。
②同会場
フェザー級10回戦
ミゲール・マリアガ コロンビア 32才
戦跡29戦26勝22KO3敗
WBC・WBOフェザー級15位
3敗は全て世界挑戦での敗北、内オスカル・バルデス戦が2回目で18年8月にロマチェンコに挑戦したが、格の違いを見せ付けられ子供扱いされた上、TKOに敗れている。
ホセ・エストレラ メキシコ 28才
戦跡35戦20勝14KO14敗1分
3R マリアガの左ボディーブローの1発からの左フック顔面でダウン
4R 打ち合いの中、左フックのボディブロー1発でエストレラダウン。苦悶の表情でリングをのた打って立ち上がれずにKOされた。明らかにランター選手の力の違いを見せて、再びの世界挑戦の希望を残したマリアガであった。
③同会場
WBC Sフェザー級タイトルマッチ
チャンピオン ミゲール・ベルチェルト メキシコ 26才
戦跡35戦34勝30KO1敗(1敗は23戦目に1R、TKOに敗けている)ニックネームはアラクラン(サソリ)世界戦6勝5KO(唯一の判定は三浦戦)
挑戦者 ミゲール・ローマン
戦跡72戦60勝47KO12敗いわゆる叩き上げ選手で(ベルチェルトに対する挑戦者決定戦で三浦にはR逆転KOに負けている)
1Rから5Rまで、ローマンは圧力をかけ前進。
ベルチェルトはリーチの長さを利用して長い左ジャブからの3連打で相手を突き離す作戦である。
ローマンはベルチェルトの3連打目の左ストレートに合わせて右フックを狙うのスタイルで推移一進一退
6R ベルチェルトの執拗な左ボディーブローが効いてきてローマン弱ってきたところに左ボディブローのあと、右ショートストレートの打ち下しでローマンダウン。そのあと連打で2度目のダウン
7R ベルチェルトの左ボディブローでローマンの腰が引けて来る。ローマンは右フック2発で反撃するがベルチェルトのボディ攻撃が効いてダウン寸前に追い込まれる。
8R ローマン、このままでは敗北間違いないところから最終盤の反撃に出て、ベルチェルトを追いかけるがベルチェルトの連打にローマンダウン寸前であるが、それでも反撃の右フックを目一杯振い、いくら打たれても倒れない。
9R ローマン足がもつれながらベルチェルトを追うが、ベルチェルトの連打でダウン。立ち上がったがロープに詰められて連打を受け、レフリーストップに終わる。
ベルチェルトの強さ今回も見せつけられたが、ローマンの不屈の戦い振りには深い感銘を受けた。今年の中でも印象深い試合であった。
ベルチェルトがWBAスーパーチャンピオンのジャーボンティ・デービスと果してどちらが強いか興味が深まった。
1.NABF Sウェルター級王座決定戦 カルロス・アダメス vs ジュシア・アダメス
2.S フェザー級10回戦 シャクール・スティーブンソン vs ビオレル・シミオン
3.WBO ウェルター級タイトル・マッチ チャンピオン テレンス・クロフォード
vs ホセ・ベナビデス
4.パウンド・フォー・パウンド ランキングをみる。
1.NABF 北米 S ウェルター級王座決定戦
カルロス・アダメス(ドミニカ)24歳、戦跡 14戦全勝11KO トップランク社所属
の金の卵。
ジュシア・コンリー(米)26歳、戦跡 17戦14勝PKO 2敗1分 ニックネームは
「ヤングガン」
1R アダメス 左ジャブからの左フックのボディブローでコンリー ダウン。
2R アダメス、 コンリーをロープに詰めて連打でダウン。立上ったところに連打のあと
左ストレートで3度目のダウンTKOに終る。
コンリーは立ち上がりからアダメスの名前と圧力に負けて腰が引けていた。
2.S フェザー級10回戦
シャクール・スティーブンソン (米)21歳、戦跡 8戦全勝4KO
リオ五輪のバンタム級銀メダリスト。トップランク社所属 サウスポー
ビオレル・シミオン(ルーマニア)36歳、戦跡 23戦21勝9KO 2敗、IBF4位
シミオンの左ジャブに合せた右フックと返しの左フックでシミオン ダウン。立上がったところに連打で2度ダウンを奪いTKOにシミオンを下す。
アダメスもスティーブンソンも近い将来チャンピオンに挑戦するであろう逸材である。
3.WBO ウェルター級タイトル・マッチ
チャンピオン テレンス・クロフォード(米)31歳、戦跡 33戦全勝24KO、
世界戦11戦全勝8KO
挑戦者 ホセ・ベナビデス(米)26歳、戦跡 27戦全勝18KO アマ戦跡 120勝5敗、
元WBA Sライト級チャンピオン、14年犬を連れて散歩中銃で右膝を打ち抜かれて王座返上。1年7ヶ月休養して復活。
尚クロフォードも銃撃を受けているが銃弾が頭を掠めて大事に至らなかった。
1R クロフォード右構えで開始中盤から左構えに変える。ベナビデス、右カウンター狙
いの姿勢で前に出る。クロフォードは様子見。
2R お互いにフェイントを掛けあい、パンチの交換も行う。
3R ベルトラン右ボディブロー2発。クロフォード左ボディブロー1発、クロフォード
の手数増えてくる。
4R お互いにパンチを繰り出す。ベナビデス1に対しクロフォード2の割合だが、パン
チの威力ではベナビデス。
5R ベナビデスは右狙い変らず、クロフォードの動き速くなってくる。
6R クロフォードの手数が多くなるが、相手に当てることを主体にパンチを振う。
ベナビデスは目一敗パンチを振う。
7R クロフォードのスピードとパンチともに一段レベルを上げて、リズムにのって
くる。6Rあたりから試合の主導権はクロフォードに移ってくる。
8、9、10R クロフォードは相手の動く、パンチを見切って自在に動き始めて、軽い連打
のあとステップバックしてベナビデスの反撃を待って、これに合せる作戦である。
ベナビデス4のパンチは全く当らなくなる。
11R ベナビデス勝負に出てパンチを振うが、既にこれと見切ったクロフォードに当
らない。
12R このままでは勝負は明らかにクロフォードであり、ベナビデスに残されたチャンス
はKO以外にない。ベナビデスが右フック、ストレートで前に出るところに、
右フック、右アッパーのカウンター決ってベナビデス ダウン。立上がったところ
に連打でクロフォードのTKO勝ちとなる。
ベナビデスも元チャンピオンの意地をかけて対抗し、6Rまでは互角に戦った。
特に右ストレートのカウンター狙いは有効で、クロフォードもうかつに攻撃出来ずにいたが7R以降は自分のペースを掴んでいつもの通りのボクシングを展開し、最後は見事なKO劇を演じた難敵を倒し、一段と人気も上ることであろう。
しかしこのクラスはWBAスーパーにキース・サーマン(全勝)WBAレギュラーに
マニー・パッキャオ、WBCにダニー・ガルシアを下したショーン・ポーター。
IBFに全勝のエロール・スペンスといづれ劣らぬ強豪がひしめいており、頂上決戦が楽しみなクラスである。
4.尚 パウンド・フォーパウンド ランキングをみると
( リング誌 ) ( ESPN ) ( ボクシングシーン )
1. ワシル・ロマチェンコ ロマチェンコ クロフォード
2. クロフォード クロフォード ロマチェンコ
3. サウル・アルバレス アルバレス ガルシア
4. ゴロフキン ゴロフキン アルバレス
5. オレキサンダー エロール・スペンス ウシク
・ウシク
6. 井上 尚弥 ガルシア シーサケット・
ソールンビサイ
7. マイキー・ガルシア 井上 尚弥 ゴロフキン
8. ソールンビサイ シーサケット 井上 尚弥
9. エロール・スペンス ウシク エロール・スペンス
10.ドニー・ニエテス アンソニー レオ・サンタクルス
・ジョシア
となっている。
会場 アメリカ オークランド オライム・アリーナ (2018/11/5)
Lヘビー級10回戦
ホセ・ウスカテギ(ベネズエラ)27歳、戦跡 29戦27勝23KO 2敗。
IBF Sミドル級チャンピオン
アンドレ・ディレルからタイトル奪取。
エセキエル・マデルナ(アルゼンチン)31歳、戦跡 30戦26勝16KO 4敗。
ウスカテギは次回のタイトル・マッチまでの間の調整の為の試合設定のようだ。
ウスカテギの一方的な試合となり判定は100:90が2人、98:92が1人で圧勝。ウスカテギはスピード、パンチ力、防御技術とあまりみるところのない選手にみえた。
1. S ミドル級10回戦
クリス・ユーバンクJR (英国)29歳、戦跡 28戦26勝20KO 2敗、WBA S ミドル級4位、WBSSの準決勝でグローブスに判定負けしている。父親はユーバンク シニアで1990年WBOミドル級、1991年WBO S ミドル級の2階級でタイトルを握っている。。好敵手にナイジェル・ベンがいた。 (注)
対戦者 J J マクドナー(アイルランド)32歳、戦跡 20戦16勝8KO 4敗。
1R マクドナー 攻め込むところにユーバンクの左フック テンプルに命中。強烈でダウ
ン、立上がれないとみられたが立上がり続行。
2,3R マクドナーも力一杯パンチを振って互角に渡り合ったが3R終了時続行せず。
TKOに終る。
観客からの大ブーイングが浴びせられた。ユーバンクは左右フックを振り回す選手で左ジャブが全く出ず、これでは多くを望むことは出来ない。
(注)クリス・ユーバンク シニアはWBOタイトル・マッチを24度戦い、イギリス人として最多を誇っている。空位のWBOスーパーミドル級のタイトルを争ったのはマイケル・ワトソンで、その試合後ワトソンは回復不能の障害を負い、ユーバンクはその試合で大きな影響を受け、その後KOで勝てる試合を決め切れなくなり、判定勝ちをくり返すようになった。
製本用 修正済み
会場 サウジアラビア ジッダ キング・アブドウラー・スポーツシティ
2. WBA S ミドル級タイトル・マッチ (2018年11月5日)
チャンピオン ジョージ・グローブス(英国)30歳、戦跡 31戦28勝20KO 3敗、4度目の挑戦で戴冠。その3敗はカール・フロッチに2KO。バドウ・ジャックに1:2の判定負けである。この試合はWBSSの決勝戦でもあり勝者に一千万ドルの賞金がかかっている。
対戦者 カラム・スミス(英国)28歳、戦跡 24戦全勝17KO 、スミス4兄弟の4男、長男ポール、次男スティーブン、3男リアム、リアムは元チャンピオン。
1R グローブス、左手を下げて構える。スミスはガードを高く構えて圧力をかけて前に
出る。グローブスは体力に押されぎみながれ左ジャブを多く出す。
2R グローブスは盛んにフェイントをかけてスミスのパンチを警戒し、細心の注意を
払って、左ジャブを上下にスミスの左ジャブに対し右フックのボディブローを放
つ。
3R グローブスの右フック顔面に、右アッパーをボディに。スミス攻撃に転じ、右ス
トレートのカウンターが顔面に決る。スミスのパンチが合ってきた。
4R グローブス フェイントをかけてスミス左ジャブに右ボディブローで対抗。
押されながらもグローブス先手先手に左ジャブ、右ストレートを出してペースは
グローブス。
5R グローブスの主導権で試合は進むが、スミスの圧力にグローブスは精神的にも追い
つめられて来た。
6R お互いに打ち合い、グローブス左ボディブローは有効。スミスの右ストレートも当
り始める。
7R 6Rの流れを受けてお互いに打ち合いに転じ、グローブスの右ストレートの後、スミスの左フックがヒット、グローブスがぐらつくところ、スミスはグローブスをコーナーに詰めて集中打。右フックボディ、左アッパー顎と連打でグローブス ダウン。
そのまゝKOとなる。
グローブスは万能型の選手で、左ジャブも鋭く右ボディブローもうまく、上下の打ち分けも巧みで防衛もうまい。ファイティング・スピリッドも充分だが欠点は唯一打たれ弱いところだ。今回は充分スミスの右ストレートを警戒し細心の注意を払って試合の主導権を握って有利に進めた。12Rこれを充分に警戒してきたが、12Rこれを完璧につづける事は出来なかった。
スミスは長身、リーチの長さを生かし、スタイリッシュなスタイルと2枚目でもあり、これから人気も急上昇する事であろう。
さて、この S ミドル級のクラスのレベルをみてみると全階級の中でもかなり低いとみざるをえない。 S ウェルター、ミドル級をみてみるとS ウェルター級でジャレット・ハード、ジャメール・チャーロ、ハイメ・ムンギァ、エリス・エリスランディ・ララと強豪が揃い。
ミドル級でゲンナディ・ゴロフキン、カネロ・アルバレス、ジャーマル・チャーロとツワモノ達がひしめいている。
S ミドル級のWBSSに出場した8選手のうちS ウェルター級、ミドル級のこれ等選手に対抗出来るのはせいぜいカラム・スミスしかいないのではなかろうか。又Lヘビーにはドミトリー・ビボル、アドニス・スティーブンソン、アルツール・ペテルビェフと錚々たる面々がいてSミドル級はまさにエァーポケットと云うべき谷間にある。
会場 オーストリラア シドニー オーストラリアン・テクノロジー・バーク
(2018/10/29)
IBF S フェザー級王座決定戦
ビリー・ディブ(オーストラリア)32歳 戦跡 49戦43勝24KO 4敗2無効試合
元IBFフェザー級王者、ニックネームは「キッド」、IBF S フェザー級3位。
テビン・ファーマー(米)28歳、 戦跡 31戦25勝5KO 4敗1分1無効試合、
サウスポー、ニックネームは「アメリカン・アイドル」
1R ディブ、ガードを高く掲げて前進、体力勝負でファーマーの足を封ずる作戦であ
る。ファーマー足を使って距離をとりディブの出鼻を叩く。
2, 3R ディブの前進に対してファーマーは出鼻に右フックを引っかけで右に回り、左
ストレートを打ち込むサウスポーの定則に従って動く。
4~8R この流れは変らず、ファーマーの左フックでディブ ダウン。立上がったところに
ファーマーは倒しにかゝるが、何せKOの経験が少ない為に詰めきる事が出来ない。
10R ファーマー集中攻撃にかゝるがパンチが力んで大振りとなり倒しきれない。
11、12R ファーマー足を使って時折の集中打とメリハリを付けた試合運びで終了。
判定は120:107、118:109、119:108でファーマーの圧勝となりタイトルを獲得した。ディブは足の故障でもあったが、動きがぎこちなく自分のスタイルでボクシングが出来なかった。ファーマーはテクニシャンで足は速いが如何せんパンチ力に乏しく全階級を通じてファーマーが一番非力であろう。王座を守るのは無理である。
会場 アメリカ カリフォルニア州 フレズノ セーブマート・アリーナー
(2018/10/29)
WBC S ライト級タイトル・マッチ
チャンピオン ホセ・ラミレス(米)26歳、戦跡 22戦全勝16KO 、初防衛戦
挑戦者 アントニオ・オロスコ(メキシコ)30歳、戦跡 27戦全勝17KO
WBC S ライト級32位、ニックネームは「リレントレス」(冷酷なやつ)
1R 初回から打ち合う。ラミレスの左ボディブロー3発左フック顔面に3発。
2R オロスコ体勢を崩したところラミレス攻め込む。ラミレスの左ジャブ、フックが
上・下に打ち分けスピード力、角度と様々でまことに多彩。
3R オロスコはどうしても後手、後手に回るのはラミレスの左の使い方のうまさにある
ようだ。
4R 劣勢を挽回すべくオロスコ正面から打ち合うが、打ち負けてラミレスの右フックで
オロスコ ダウン。
5R オロスコも懸命にパンチを振るが、ラミレスの的中率が上回る。
6R ラミレスの右ストレートのカウンター決る。オロスコの顔面傷んでくる。
8R ラミレスの左フック、ボディブローでオロスコ2度目のダウン。ラミレス倒しにか
かるがオロスコもこれに耐えて一発逆転を狙う。
9、12R オロスコも力強いパンチを振って対抗するが、ボクシングの幅の広さでラミレス
に及ばない。
10R 以降ラミレスは攻勢を強めてKOを狙うがオロスコも打たれ続けて弱るが、振うパンチは依然として一発必倒の力を失わないのは勝とうとの執念が最後まで失うことがなかったからである。
判定は119:107で3人審判が揃った。ラミレスは長身とリーチの長さを生かし、多彩なパンチを駆使、左を有効に使い、連打のあとは必ず左フックをボディに決め、全体的には左フックのボディブローを主体としている。強打者でありながら手数が多く、防御もかたく、身体が柔らかで打たれてもうまく逃がす術を持っておりスタミナも充分。
4団体を統一したテレンス・クロフォードの後継者として、今後人気も高まることであろう。4団体統一も夢でない。
オロスコはボクシングの引き出しが少なく、巧い相手に苦戦するようだが、この試合良く準備したと見えて、相当打たれたが、体力が消耗してフラフラしながら振うパンチは速く、力強いものがあり無敗できた実力が窺われた。
製本用 原稿
会場 横浜アリーナ WBAバンタム級タイトル・マッチ 2018/10/18
チャンピオン 井上 尚弥(日本)25才、戦跡 16戦全勝14KO、Sフライ級からバンタム級に1階級上げてタイトル挑戦。英のジェイシー・マクドネルを1R KOに下して3階級制覇を達成したばかり。初の防衛線で、スーパーシリーズの準々決勝でもあった。
(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズは欧州のプロモータ等の企画・主催で昨年から開催、一年以上かけてのトーナメントで頂点を争う。
Sミドル級とクルーザー級で行われオレキサンダー・ウシク(ウクライナ)が全階級を通じて史上4人目の4団体統一王者となっている)今期はSライト級と3階級で行われるSミドル級はスミス4兄弟のカラム・スミスが制した。
挑戦者 ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ)34歳、同級4位でスーパーシリーズに選ばれた8人の1人で、元王者強打者である。サウスポーの変則スタイルで距離も長い。
歴戦の兵(ツワモノ)であり、簡単にはいかないのでは思われたが1R開始早々始めて出した左ジャブからの右ストレートが顔面 額部分を直撃、パヤノは仰向けに倒れ、後頭部をキャンパスに打ちつけて立ち上がることが出来ずに1分10秒KOに下し、マクドネル戦に次いで衝撃のKO劇を演じてみせた。
井上はクラスを上げて一段と凄みを増して、スーパーシリーズ優勝候補の最有力の呼び声にたがわぬ実力を世界のボクシング関係者に示した。
スーパーシリーズの優勝はその序章にすぎずに階級をフェザー級まであげて、ボクシング界のスーパースターにのぼりつめるのも夢ではない。日本ボクシング史上最高のボクサーであるのは間違いない。
WBCウェルター級挑戦者決定戦
ヨーデル・ウガス(キューバ)32歳、戦跡 25戦22勝11KO 3敗 北京五輪銅メダル、
現在7連勝中
対戦者 セザール・バリヌエボ (アルゼンチン) 29歳、戦跡 4034戦勝24KO 3敗1分
1無効試合
1~12R ウガスは身長176cm、リーチは186cmの体格を生かして長い左右のボディ打ちで先手をとるとバリヌエボはこれを嫌がり腰が引けて、左右パンチを振うもウガスに届かずパンチにも威力が失われ、1Rから12Rまで劣勢のまゝ終了。
判定は120:108が2人、119:109が1人とウガス圧勝。
キューバの至宝と呼ばれるウガスがアルゼンチンの宝石と呼ばれたバリヌエボを倒した。ウガスは相手の打ち終りに打つボディ攻撃が巧みでカウンターも上手いが決めてを欠いており、これでは観客を喜ばせる事は出来ないし、タイトル・マッチを組まれることは難しいであろう。
製本用 原稿
会場 米国 ニューニョーク バークレイ センター 2018年10月15日
2.WBCウェルター級王座決定戦
元3階級王者 ダニー・ガルシア(米)30歳、戦跡 35戦34勝20KO 1敗。
WBC1位、ニックネームは「スウィスト」
対戦者 ショーン・ポータ(米)30歳、戦跡 31戦28勝17KO 2敗1分、
ニックネームは「ショータイム」、元 IBFウェルター級王者。
両者ともキース・サーマンと闘って惜敗しているがサーマンが3月負傷の為WBCタイトル返上して王座決定戦となった。ポーターは同会場5度目の登場。ガルシアは例によってマスクを着けて登場、会場を盛り上げた。
1R ポーターは元々突進型のファイターであったが、今回足を使ってのアウトボクシン
グを選択するようだ。ガルシアの左フックのスピードと切れは相変らず抜群のもの
がある。
2R ポーター動き出し、足を使って頭の位置を変え、身体も動かしてリズムをつくり、
突如として早いとび込みからの連打をみせる。
3R ガルシアの左フック ボディにさらに右フック顔面に送り込めば、ポーターも負けず
に打ち返す。
4R お互いにファイトを掛け合い、打たれゝば打ち返す。ポーター左ジャブの3連打、
左ストレートのカウンター、左フックボディと左右フックのボディとポーターのっ
てくる。ガルシアは左フック ボディに一発。
5R ガルシア、右フックのボディブロー3発。左フックのボディブロー1発とボディ中心
に攻めてポーターの動きを止めにかゝる。
6R ポーター機を見て突進、右ストレート顔面。相手が打たないと見るやそれを感じて
飛び込んでの左右連打をみせ、スピードにのってくる。ガルシアの左フックが当ら
ない。ポーターの動きが目立ってくる。
7R ポーター盛んにフェイントをかけて、相手を牽制ガルシアはボディ中心に攻撃する
が、ポーターの動きはそれを上回る。
8R ガルシア悪い流れを変えるべく攻勢に出て、ボディに3発、あとお互いにボディを
打ち合う。
9R ポーターの出てくるところ、ガルシア小さなパンチで迎え打つ。そのあと左・右
フックでボディに3発。
10R ガルシア 左フックボディ1発のあとお互いに死力を尽して打ち合う。
11R ポーターの動きが一層活発になって攻勢が目立つ。ガルシア劣勢、後退。
12R 手数はポーター、力ではガルシアで互いに譲らず、終了。
判定は116:112が1人、115:113が2人でポーターの勝利。WBC ウェルター級チャンピオンとなる。6ヶ月前にブランドン・リオスを左ストレート1発で倒したガルシアをみて、オッズは5:4でガルシアであったが、ポーターの打っては離れのアウトボクシングと突進型スタイルを織り交ぜて作戦に後手を踏んで自慢の強打が振えずに敗れた。
ポーターの幅の拡さと12Rまでの躍動するスタミナにも驚愕した。
この会場にはマイキー・ガルシア、ジャーボンティ・デービス、エイドリアン・ブローナー、キース・サーマン、ジャーマル・チャーロ、エロール・スペンス、ジャレット・ハードと錚々たる面々が顔を揃えていたことからも、この試合がいかに注目される試合であったかが良くわかる。
敗れたとはいえ、ガルシアの強打の魅力は充分で評価は落ちることはないだろう。
この勝負を分けた原因を考えてみよう。ポーターの勝利はガルシア強打を封ずる事、特に左フックを完璧に封じた。作戦を成功させた源は ① そのスピードにある。②スタミナにもある.
ガルシアはポーターの足を使った速い動きと身体を絶えず動かし、頭の位置を変え、機を見て素早い、しかもパンチを使った突進に対処出来なかったのは、彼がレフト・フッカーであり、左フックが主戦武器であったからで又左ジャブが全く使われていなかった為でもある。動きの速い、しかも突進力のある相手にフックを当てるのはむずかしい。
当る確率の高さと、突進をとめるのは何よりもジャブとストレートが有効であるが、ガルシアにはこれがなかった。中盤、顔面狙いからボディにターゲットを変えて、ペースをとりかかったが、さすがポーターはボディ打ちに対して、空いた顔面を狙い、又お返しのボディにもパンチを送り込んだ。なにせ、手数の差が圧倒的に異なるのだから勝負にならない。点差よりも試合内容はポーターの圧勝であった。
会場 アメリカ アリゾナ州ヒラ・リバー・アリーナ 2018/10/8
WBOライト級タイトル・マッチ
チャンピオン レイムンド・ベルトラン(メキシコ)37歳。戦跡 44戦35勝21KO 7敗1分1無効試合、ニックネームは「シュガー」(華麗な男)注1
4度目の挑戦で王座を掴んだ。ハリケーンに裸で入っているようだと評されたパッキャオにほとんどのパートナーが脱落していく中で、ベルトランだけがスパーリング・パートナーを長く続けた。雑草魂の選手。負けて強くなった。
挑戦者 ホセ・ペトラザ(プエルトリコ)29歳、戦跡 25戦24勝12KO 1敗。1敗はシャーボンティ・デービス、相手が悪かった。 ニックネームは「スナイパー」
1R ペトラザはスイッチ・ヒッター、1Rは右構えで始める。ベルトランは圧力をかけ
て前に出るがペトラザの右ジャブが良く出て、時折の右ストレートでベルトランの
前進を止める。ベルトラン左目上を切る。
2R ペトラザこのラウンドは左構え。1R同様、ジャブが効果的でベルトラン打たれ
る。ベルトラン傷から出血。
3R ペトラザ右構え、ベルトラン体力で押すが効果的パンチはペトラザ。
4R ペトラザ右から左構えに。リング中央で押し合う。押し合いは体力の劣るペトラザ
に不利とみえたが、頭をベルトランの顎の下に付けて身体を低くし、体重を相手に
預けて対抗。ベルトランの圧力にペトラザ、右ジャブを当てる。
5R ペトラザ、左構えから右構えに変え巧みにフェイントを交え足を使って、頭の位置
も変えベルトランの強打を躱す。ベルトランも大きなパンチをおさえてスピードを
主としたパンチに変える。
6R ペトラザ右構え、両者体力勝負でリング中央で押し合う。ここが正念場。
7R ベルトラン一段と圧力を強めるがパンチはベルトランの左フック1に対しペトラザ
4発の左ジャブが悉くカウンターとなり左フック2発ヒット。
8R ペトラザ左構え、前進するベルトランは攻勢をかけるがラウンド中盤以降細かいパ
ンチが次第に数多く当り始めペースはペトラザに。
9、10R 相変らずパンチの当らないベルトランにペトラザのパンチが面白いように
ヒット。
11R ペトラザ左構え。ポイント有利と判断したペトラザは足を使ってのカウンター狙
いに作戦を変更。ベルトラン遮二無二前に出るところ左アッパーがカウンターと
なりベルトラン ダウン。立上がったところに集中打。
12R ペトラザ終盤にベルトランをコーナーに詰めて滅多打ち。ベルトラン ダウン寸前
に追い込まれた。
判定は117:110が2人、115:112が1人でペトラザ王座奪還。2階級制覇となる。
ペトラザはこれでロマチェンコと闘う事になりそうである。
注1:シュガーを名乗るのは一代目シュガー レイ・ロビンソン、二代目シュガー・レイ・レナード、三代目はシュガー・シェーン・モズリーで何れも名選手ばかりであり、
ベルトランがこれを名乗るのは名前負けの謗りを免れない。
会場 アメリカ カリフォルニア州 ファンタジー・スプリングス・リゾート・カジノ
2018/10 /8
Sライト級12回戦
ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)33歳、戦跡 48戦44勝27KO 4敗 元3階級王者。
ニックネームは「ゴールデンボーイ」。前ライト級チャンピオン、5月にワシル・ロマチェンコと激闘の末10R KO負け。
対戦者 アブネル・コット(プエルトリコ)31歳、戦跡 26戦23勝12KO 3敗。
ニックネームは「ピン」(針)。ミゲール・コットの従弟。
1R リナレス一階級上げ22kg増量で身体もやゝ大きくなったようだが、ライト級時
代同様左ジャブは早い。コットもチャンスに恵まれ、ここでリナレスを倒すよう
な事になれば一躍スターダムにのし上がるのを理解し、体調を万全に仕上げて来
たようで、スピードもあり、技術的にもしっかりしているリナレスと互角に渡り
合う。
2R コット入ってくるところリナレス得意の右ショートストレートのカウンター決って
コット ダウン。ダメージはかなりあるようだ。
3R 右ストレートでコット怯むところに右ストレートでコット ダウン。立上がったとこ
ろリナレス コーナーに追い詰め集中打。両者もつれてリングに倒れこむ。
立上がったところコット足がもつれて立ち上れず、これをみてレフリーはストップ
を宣言。リナレス復帰戦を飾った。
リナレスの右ショートストレートのカウンターは相変らず惚れぼれする美しさと切れ味
があるが、これは多分に危険性もあるのを認識する事だ。
それ以外のパンチは速いが凄みは今一つ。集中打はハンドスピードで打っており、相手
に与えるダメージは少ない。決め手の武器がもう一つ欲しいところだ。又打たれ弱さは対ロマチェンコ戦でも露呈しており、どう対処するかも考えるところである。
階級的にはSライト級が一番合っているようであるが、一階級上げて2.27kg上ると格段に対戦相手のパンチ力、打たれ強さも今迄とかなり変ってくるので、腰を据えてかかる
事だ。
チャンピオン ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)26歳、戦跡 32戦30勝20KO
1敗1分、サウスポー
挑戦者 アレハンドロ・サンチャゴ(メキシコ)22歳、戦跡 22戦16勝7KO 2敗4分
1R アンカハス右ジャブからの左ストレートが武器。サンチャゴは159cmの小兵で動き
が早く、アンカハスの左ストレート当らず。
2~5Rまで サンチャゴの出入りの早さと特に引きの早さにアンカハスの左ストレート
は全く当らず、届かない。サンチャゴは自分のボクシングに自信を持ったようで、
これまではサンチャゴのペース。
6Rから、前に出ての左ストレートが有効でない事からアンカハスは戦法を変えて待ち
のボクシングに変更。サンチャゴの出てくるところに出鼻を叩くやり方だ。
7R以降 アンカハスはこの戦法を貫くが、両者ともに主導権を握る事が出来ずに一進一
退のうちに終了。
判定は116:112でアンカハス、118:111でサンチャゴ、114:114が人でドロー。
アンカハス6度目の防衛を果たした。アンカハスは右ジャブがらの左ストレート 一本槍では今後苦戦するのは必定である。
チャンピオン マクウィリアムス・アローヨ (プエリトリコ)32歳、戦跡 20戦17勝14KO 3敗、WBC、WBO Sフライ級3位.
挑戦者 井岡 一翔(日本)29歳、戦跡 23戦22勝13KO 1敗、元3階級王者
1R アローヨ、ガードを高く掲げて固め前進の構え、井岡はやゝ前屈みで左ジャブ、
左フックボディで対抗。1Rからお互いに接近して打ち合う。
2R アローヨ主導権を握るべく強めに出てくるが、井岡後退する事もなく打って止め
る。アローヨは井岡の左ジャブと手数の多さにぺースをつかめない。
3R アローヨ、力強いパンチを繰り出すが、対抗する井岡手数で両者力勝負で打ち合う
がラウンド終了前井岡のワンツーでアローヨ ダウン。
4R アローヨ劣勢を挽回すべくガードを固めて前進しょうとするが、前半の1分のみ、
中盤以降は井岡に押されて後退。
5R アローヨがパンチをヒットさせると、すかさず井岡は3発返し、アローヨは押され
て後退ぎみ。
6R アローヨの強打に打ち負けずに井岡手数でアローヨを煽る。
7~10R 井岡優勢のうちに終了。
判定は99:90、97:92が2人で井岡完勝。
井岡は引退後1年5ヶ月振りに復活。1階級上げて強敵と闘った。
今回は左ジャブが鋭く的確。アローヨの固いガードを破ってヒットし続けたことからガードを上げたアローヨのボディに左フックを送り込む頭脳的な」戦術と共に強打のアローヨに打ち負けることなく正面から闘った。
アローヨは強打者に特有の連打が効かないこととリードパンチが少ない為に、スピードと手数が多い相手にどうしても後手に回る欠点が今回出た。しかしガードの固さとパンチ力には魅力があり、後半になってもスピードもパンチ力も衰えないところなど、一線級の選手であることに疑いはない。井岡はこの試合でタイトルに近くなった事は間違いない。
勝利の最大の要因は決して打ち負けないという不屈の敢闘精神にある。
チャンピオン ドミトリー・ビボル(ロシア)27歳、戦跡 13戦全勝11KO 、
2014年11月プロデビュー、7戦目でタイトル獲得、5度目の防衛戦である。
アマの戦跡は283戦。2017年は4試合行っている。
挑戦者 アイザック・チレンバ(マラウイ)31歳、戦跡 32戦25勝10KO 5敗2分、WBA12位 あのスーパースターだったロイ・ジョーンズがセコンドに付いている。
1R ビボル高くガードを掲げて左フックから右ストレートを放って攻撃的。
チレンバは左手を下げるデトロイトスタイルで迎え撃つ。防御に自信を持っている
ようだ。
2R ビボル、チレンバをロープに詰めて攻撃を強めるが、パンチはまともには当ら
ない。
3R ビボル集中打、チレンバはビボルのうち終わりを狙ってカウンターの構えだが、
後手、後手に廻る。
4~7R ビボルの左ジャブからの右ストレートで主導権を握るがチレンバ身体が柔らかで
決定打は許さない。
8R 劣勢を挽回すべくチレンバ攻撃に回る。
9~12R ビボル足を使ってアウトボクシングに転じ機をみて鋭い攻撃を行い終了。
判定は120:108が2人、116:112が1人でビボルの完勝であった。
ビボルは豊富なアマ経験を生かし、左ジャブ、右ストレートの威力もあり又アウトボクシングも出来、防衛も固い。パンチのスピードはこのクラスの№1であろう。
地味ではあるが負けない選手で、永く王座を守りそうである。
チャンピオン セルゲイ・コバレフ(ロシア)35歳、戦跡 35戦32勝28KO 2敗1分。
ニックネーム「クラッシャー」(破壊者)。アンドレ・ウォードに連敗してどうなるか
と思われたが王座帰り咲き、今回は2度目の防衛戦である。
挑戦者 エレイデル・アルバレス(コロンビア)34歳、戦跡 23戦全勝11KO ニックネームは「ストーム」(嵐)。WBC王者アドニス・スティーブンソンの指名挑戦者決定戦に2度勝利したが、スティーブンソンと同じプロモーターの為とスティーブンソンが戦うのを嫌がって3年以上待たされた経緯がある。あまりやりたくない相手とみたようだ。
1R コバレフ例によって圧力をかけて前に出る。アルバレス押されてロープに詰る。
コバレフという名に圧力を感じているようだ。コバレフは余裕タップリである。
2R コバレフは左ジャブを中心に相手をコントロール。
3R コバレフ プレッシャーを強め、ロープに押し込んで、ボディ中心に攻撃。1Rから
ペースはコバレフ。
4R コバレフの右ショート・フックにアルバレスダメージを受けたようで足もつれる。
5R アルバレス、ダメージを急速に回復したようでスピードが戻り反撃。コバレフの左
が下っているのが気になる。コバレフ一休み、口があいてきて疲れてきている。
6R コバレフ、右ショートアッパーと右ストレートがアルバレスにダメージを与える。
7R アルバレス後退をやめ正面から打ち合いに出た。右ストレートでコバレフまさかの
ダウン。立上がったところに、右ストレートで2度目のダウン。また立上がったと
ころに右フックで3度目のダウンでKOされた。
コバレフは6Rまでゝ完全に自分の勝利を確信し油断したようだ。2年程前からパンチ力が落ちてきており、スタミナもなくなり、元々打たれ弱かった事もあって苦杯を舐めた。それまでの攻撃力で打たれる事がなかった為に一度目のダウンのあと、クリンチで時間
をかせぐ等のやり方もあったのだが、それも出来ずに敗北した。
無敵を誇ったコバレフの時代は終ったのである。
1.Sフライ級10回戦
元4階級王者 ローマン・ゴンザレス(ニカラグア) 戦跡 48戦46勝38KO 2敗。連敗中、2敗はシーサケット・ソールンビサイ戦で1戦目は判定、2戦目は4RKOで敗れている。それまでは全階級通じて一番強いのではないか。パウンド・フォーパウンドの呼
び声が高かった選手であり復帰戦である。
対戦者 モイセス・フェンテス(メキシコ)31歳、戦跡 31戦25勝14KO 5敗1分 元2階級チャンピオンである。
1R ゴンザレス ガードを従来よりやゝ高く構えて左ジャブを突いて慎重に立上がる。
フェンテスも正面から受けて立つ構え。
2R ゴンザレス圧力をかけて前進。手数もおおくなり、得意のコンビネーションが出
始める。フェンテス ロープに退りぎみとなり右目尻カット出血始まる。
3R フェンテス出血の為短期決戦を選択打ってゴンザレスの前進を止めようとするが
止らない。
4R フェンテスはこのRが勝負とみて打ち合うが打ち負ける。
5R フェンテスの右フックに合せた右フックのカウンターでフェンテス ダウン。
立上がれずTKOに終る。
ゴンザレスはSフライ級に上って3試合いずれも苦戦し、このクラスが適していないの
ではと思われていたが、期間を経過して合ってきたようで、この試合で完全復活とみて
良いようだ。
2.WBAミドル級挑戦者決定戦
元 IBMミドル級チャンピオン ディビッド・レミュー(カナダ)、前回ビリージョー・サンダースに挑戦したが出鼻を悉く叩かれて完敗している。
対戦者 ゲイリー・オサリバン(カナダ)WBAミドル級3位。現在5試合KO中。
1R オサリバンも好戦的で打ち合う選手であり、オサリバンの左ジャブに対しコンパク
トな得意の左フックがカウンターとなり一発KO勝ち。レミュー生き残る。
3.WBO Sウェルター級タイトル・マッチ
チャンピオン ハイメ・ムンギァ 4月にサダム・アリをKOに下してタイトルを握るや
7月に元王者のカラム・スミスをダウンを奪った上、大差の判定に下して2度目の防衛戦である。7ヶ月で5試合、1年と13日で7試合のハイペースで試合をこなしている。
21歳で全勝の若者である。
挑戦者 ブランドン・クック(カナダ)、WBO Sウェルター級3位の実力者である。
1R ムンギァ自信満々思い切った左ボディブロー2発でクックをコナーに追い込むや集
中打。
2R クックも打って止めようとするが、何せあの迫力に次第にコーナーに追い詰められ
て集中打を受け、辛うじてダウンを免れる。
3R クックも必死に打ちにいったが、打たれダウン。そのあとロープに詰めて集中打を
受けレフリーストップ。4ヶ月で2度目の防衛に成功した。
ムンギァは体重苦があるようで、近い将来ミドル級に上るようで、ミドル級戦線は更に
加熱する。
製本用 修正済
会場 米国 ラスベガス T Mobile アリーナ (2018年9月16日)
4. WBAスーパー、WBCミドル級タイトル・マッチ
チャンピオン ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)36歳 戦跡 39戦38勝34KO
1分。
挑戦者 サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)28歳 戦跡 52戦49勝34KO 1敗2分
1年前の第一戦は1:1 1分引分けているが疑問の残る判定であっり、終始攻めて手数
も多かったのはゴロフキンで、後退を続けて時折カウンターを狙うアルバレスで、明ら
かにゴロフキン有利の展開であった。
1R ゴロフキン例によって左ジャブを的確に当てゝ始まる。アルバレスには前戦と異な
り後退せずに踏みとどまり、正面から受けて立つ構えである。身体も絞って、ス
ピードもあり、万全の調整を整えてこの試合に臨んでようだ。
2R ゴロフキン左ジャブからの右アッパーヒット、アルバレスは左フックとアッパーの
中間のパンチ顎にヒット。前回と異なり、プレッシャーをかけて前に出る。
3R ゴロフキンの手数に対してアルバレスは一発、一発に力を込めて振い、特に左ボ
ディブローが狙い目のようで、攻撃の最後に必ずボディーを狙う。
4R アルバレスの左ボディブロー効果あり、ゴロフキンやゝ退りぎみで、アルバレスの
ペースとなってきた。
5R お互いの左ジャブは鋭く、カネロのボディブローをゴロフキン嫌がる。
6R アルバレスの左ボディブロー2発、パンチの数は互角であるが、威力はアルバレス
のようで、アルバレスは自信を持ったようだ。
7R ゴロフキン ペースを取戻すべく攻勢に出るが、アルバレス一歩も引かず打ち合う。
7R終了時、ポイントではアルバレスがかなり有利であるようだ。
8R 帳面から打ち合い、ほゞ互角。
9R ゴロフキン相変らず手数が多くアルバレス疲れたか急に手数が減る。
10R ゴロフキン集中打をみせてペースを握る。
11R アルバレス疲れて後退を始める。
12R ゴロフキン攻勢を緩めずアルバレス スリップダウンしたあと終了。
判定は114:114が1人、115:113が2人でアルバレスの勝利となった。長く続いたゴロ
フキンが交替する。
この試合は前回と比べると明らかにアルバレス ペースで進行したが、前半アルバレスがリードし後半ゴロフキンが追い上げる形となった。パンチの威力か、手数をとるかの判
定の難しい試合で私の採点では115:113でゴロフキンの勝利とみたが、ゴロフキンはダニエル・ジェイコブス戦あたりから、力に翳りがみえ始めておりこの結末も止むを得な
いのかとは思われるが、この試合のみを考えると、勝利への執念は充分にみられた。
WBAスーパーとWBCのチャンピオンはカネロのものとなった。アルバレスは既に世界的なスーパースターとして人気の頂点に立っており、更にその人気は一層高まるであろう。この試合のアルバレスのパンチの威力とスピードは12Rまで衰えることはなく、特に
左フックともアッパーとも云えないボディブローは強烈で迫力万点であり、従来やゝも
すると退りぎみな試合運びも今回は一切影を潜めて、一歩も引かずに正面から受け止め
ていたのは、この試合に懸ける決意の表れであったと思われる。
しかしアルバレスがこれで連続KO防衛を続けていたゴロフキンのような絶対王者となるかは又別で、Sミドル級に強打のダニエル・ジェイコブス、ジャーマル・ジャーメル兄弟、無尽蔵のスタミナと打たれ強さのジャレット・ハード、新星ハイメ・ムンギアと錚々たる面々がアルバレスと拮抗する力を有して控えており、予断を許さない状態にある。
ボクシング界はこの20年で最も充実した時を迎えているのかも知れない。
1.WBA インターコンチネンタル ウェルター級 王座決定戦 2018/9/10
マリオ・バリオス(米)23歳、戦跡 21戦全勝13KO WBA Sライト級4位
ホセ・ローマン(米)30歳 戦跡 27戦24勝16KO 2敗1分
1~7R バリオス圧力をかけ前に出て、常に先手をとり4Rには右フックからの集中打で
ダウンを狙うや ・・・
8R 連打で2度目のダウンを奪って子のR終了時コーナーからタオルで8R終了時TKO
でバリオス勝利。
いきの良い若者らしい試合振りで好感が持てる。今後実力者と闘ってそれを乗越えたときにタイトル劣る挑戦の目が見えてくる。
2. ヘビー10回戦
ルイス・オルティス(キューバ)戦跡 31戦28勝24KO 1敗2無効試合
今年3月WBCチャンピオン ディオンティ・ワイルダーに挑戦し、勝利寸前までワイルダーを追い込んだが惜敗。株を上げた。WBC4位、ニックネームはキング・コング、サウスポーのテクニシャン。
ラズバン・コジャヌ(ルーマニア)戦跡 19戦16勝9KO 3敗
1R オルティス、右フック2発、左ストレートボディへ、コジャヌは手を出さず。
2R コジャヌ前のめりに倒れて立上がろうとするが足がきかずに2度よろめいて倒れる
のをみてレフリーストップ。TKOでオルティス復帰戦を飾る。
オルティス ヘビー級2強の中に再び参入する勢いを見せた。
3. IBF & WBC の ライト級 統一戦
IBF チャンピオン ロバート・イースター(米)27歳、戦跡 21戦全勝14KO、 3度防衛中だが、その内2試合はスプリット・デシジョンで接戦を勝ち抜いて来ている。
WBC チャンピオン ミゲール・マイキー・ガルシア(米)30歳、戦跡 28戦全勝30KO 兄ロベルトはIBF Sフェザー級王者。IBF Sライト級のタイトル獲得したがこれは放棄している。4階級制覇王者。
1R イースターは193cmのリーチの長さを生かして左ジャブを多く出すがガルシアに届
かない。 ガルシアの左ジャブは2発当る。
2R ガルシアは距離を詰めて左フックからの右ストレートが迫力あり、イースターはそ
の圧力を感じて後退ぎみ。
3R イースターは左ジャブからの右ストレートとをボディに送り込む。ガルシア圧力を
かけて前に出るも手を出さずにいたが突如右ストレートから返しの左フックでイー
スター ダウン。
4R イースターは盛んに左ジャブを繰り出すが腰が引けて全く威力がなく、ロープに詰
められて打たれる。
5R イースターは後退りを続けて下りながらも左ジャブを間断なく出してガルシアの前
進を止めにかかる。
6R ガルシアの左フックヒット、ロープに詰めて連打。
7、8R イースター、ロープに詰まりっぱなしでガルシアの左ジャブに再上顎をあげら
れる。
9R ガルシア倒しにかゝりロープに詰めて連打。そのあとイースターも勝負をかけて中
央で打ち合う。しかし後半イースター打たれる。
10、11R イースターの手が出なくなり一方的に攻撃されるが、チャンピオンの意地をみ
せてKO負けだけは防ごうと防戦一方ながら踏み止まる。
12R イースター、ダウン寸前まで追い込まれるが辛うじてゴングに救われる。
判定116:110、117:110、118:109で3者共ガルシア。
イースターは3Rダウンのあと完全に腰が引けて繰り出すパンチに全く威力なく、防戦一方に追い込まれた。戦前の予想通り実力にかなりの差が合ったようでガルシアの圧力に飲まれていた。KO負けだけは避けたいという選手を相手に倒す事はむずかしい。
ガルシアは若くして将来を嘱望され、タイトルも取っていたが、所属事務所と意見があわなかったか途中2年間のブランクがあった。その後復活して果たしてどうかと心配されたが、フェザー級からSライト級まで4階級を制覇し、中量級の中心選手となった。
攻防兼備の完成されたボクサーでパンチの的中率も良く、パンチ力もある。天才ブローナーを大差の判定で下し、ライト級、Sライト級で残る最大の敵はワシル・ロマチェンコ唯一人である。いかなガルシアといえどもボクシングの質からみて、ロマチェンコを倒すのは至難の技と思われる。
1. WBO 中南米ライト級タイトル・マッチ 2018/8/13
チャンピオン アントニオ・モラン(メキシコ)25才、戦跡 24戦22勝15KO 2敗
WBOライト級5位
挑戦者 ホセ・ペトラザ(プエルトリコ)29歳、戦跡 24戦23勝12KO 1敗
元 IBF・Sフェザー級王者、ニックネームは「スナイパー」 ジャーボンティ・デービスにTKOで1敗している。
1~10R モラン正面から打って出るが、ペトラザ デフェンスが巧みで自分のパンチも
タイミング良くあてる。モランも圧力をかけて打ち合いを希むがペトラザ、足を使
いクリンチをしカウンターを的確にヒット、8Rからはサウスポーにスイッチ、それ
までのボディ打ちが効果を現して後半は優位に立つ。試合全体をみると終始リング
を支配し、計画を立てゝ試合全体を組み立てゝいたのはペトラザでモランに比べて
一日の長があった。
判定は3者ともに96:94でペトラザ勝利。世界タイトル戦への可能性が出てきた。
しかしこの力ではタイトルを掴むのはむずかしいのでは?
2. WBO ウェルター級タイトル・マッチ 2018/8/13
チャンピオン ジェフ・ホーン(オーストラリ)30歳 戦跡 19戦18勝12KO 1分
ニックネームは「ザ・ホーネット」スズメバチ 無名であったがマニー・パッキャオを
大番狂わせで下して一躍スターダムにのし上がった。防衛第2戦である。
挑戦者 テレンス・クロフォード(米)30歳 戦跡 32戦全勝23KO ニックネームは「ハンター」、2階級を制覇して3階級での王者を目指す。転向第一戦がタイトル・マッチ。パウンド・フォーパウンドと目されている選
手。S ライト級では4団体を統一している。4団体統一はバーナード・ポプキンスのミドル級統一についで2人目。
1R ホーンのさくせんは体格、体力を生かして圧力をかけてロープに追い込み圧倒する
力のボクシングである。ホーンとび込むところサウスポースタイルからクロフォー
ド早い左フック。ホーンの出るところに出鼻を叩く。
2R ホーンの圧力にクロフォード退る事ことなく右ジャブと左ボディブローで対抗す
る。
3R ホーンの突進をカウンターパンチと足を使い又クリンチと様々なテクニックで見事
に捌く。カウンターの右フックと左ストレートのボディブロー強烈。パンチの的確
さが目立つ。
4R ホーンの出るところに左ストレートのカウンター的確。ホーンのパンチは全く当ら
ない。
5R ホーンの出鼻に右カウンター、スピードでも、パワーでもホーンを圧倒し、試合は
一方的となってきた。ホーンのスピードもパンチの威力も落ちてくる。
6R ホーン劣勢を挽回すべく、上体を動かして標的になるのを警戒しながら攻勢をかけ
るがクロフォードの左アッパーのボディブロー強烈。
7R ホーンの出るところにクロフォードのショートパンチが悉く的中。左ストレートで
ホーンの顎があがり左ストレート、アッパーをボディ、アッパー後に的中。
8R ホーンの動き緩慢となるところ、クロフォード倒しにかゝり猛攻、終了間際あわや
ホーン ダウンとなる。
9R 左右構えになったクロフォードは左から右でホーン ダウン。立上がったところに連
打でレフリーはストップを宣言。9R2分33秒でTKO。
クロフォードはこの試合1Rから9Rまで総て支配し、タフガイ ホーンをまさに鎧袖一触何もさせずに一蹴して、その能力の高さを改めてボクシング界に示した。
クロフォードのボクシングは決して無理をすることなく充分に痛めつけて、相手の力が残っていない事を確信するや倒しにかかる慎重さを常に示しているが、それは自身が打たれ強くはないことを自覚して危険を冒さないことなのかも知れない。
その身体能力の技術の高さ、試合の見極め、試合を常に支配するテクニックと、多彩なパンチ右でも左でも、自在に使い分け連打もきゝ、一発パンチの威力と、完成されたボクサーである。全階級の中で世界中の有力選手が集中するウェルター級の中でその中核を担う選手であることは間違いないところだ。
しかしこのクラスWBAスーパーチャンピオン全勝のキース・サーマン、同じレギュラーチャンピオンは返り咲いたマニー・パッキャオ(強打のルーカス・マティセをKOで下して復活)、IBFはフロイド・メイウェザーの再来と云われている全勝のエロール・スペンス、WBCは現在空位を争うダニー・ガルシアとショーン・ポーターがいて、他にエイドリアン・ブローナーもケル・ブルックもいて群雄割拠の状態であり、統一戦が次々に組ませる事になり目が離せないクラスである。
1.WBC S・ウエルター級タイトル・マッチ 2018/8/6
チャンピオン ジャメール・チャーロ(米)28歳
戦跡 30戦全勝15KO ニックネームは「アイアンマン」
挑戦者 オースティン・トラウト(米)32歳、戦跡 35戦31勝17KO 4敗。
元WBA S・ウェルター級チャンピオン4度防衛。
ニックネームは「ノーダウト」(正真正銘)
1R サウスポーのトラウトは右半身の右ジャブでチャーロをコントロールし左ストレー
トのカウンターを狙う。
2R トラウト、右ジャブからの左ストレートとを繰り出す。チャーロは自慢のパンチ
を振うがトラウト巧みにステップを踏んでそのパンチを躱す。
3R トラウト、右ジャブを出してチャーロの出鼻を叩く。チャーロの右フックからの迫
力でトラウト不運なダウンを喫する。
4R チャーロの迫力あるラッシュにトラウト後退するが、パンチは当てさせない。
ヒットはトラウト。
5R チャーロもトラウトの動きの変化に対応して、振り回さずにショートのストレート
を主体とする。トラウトの左ストレートのカウンターがヒットする。チャーロの
パンチがあまりにも当らない為に 観客のブーイングが始まる。
6R トラウトの右フックでチャーロ大きくバランスを崩し苦笑。
7R チャーロ開始早々猛然と打って出る。トラウト後退することなく正面から打ち合
うがチャーロのパンチを悉く躱し随所に自分のパンチをヒットさせる。
8R チャーロの右フック2発不十分だがヒット。あとはトラウトのボクシング。
9R 8Rまでの試合結果に自信を持ったかトラウト攻勢を仕掛けて不用意に踏込むとこ
ろに、チャーロの右フックがヒット。トラウト2度目のダウン。
トラウトにとってまことに痛いダウンである。
10R チャーロの迫力ある攻勢に躱し続けていたトラウトに疲れが見えて、被弾がまと]
もではないが多くなる。
11R トラウトの左アッパー、左ショート、ストレートヒットしてトラウト頑張る。
12R 11Rでトラウト」の右足のシューズの底はがれて応急処置。このRチャーロ無理
せずに流して終了。
判定は113:113、115:111、 118:108 の2:0でチャーロの勝利。
トラウトは自分の持ち味を充分に出して良く戦った。ボクシングのテクニックを堪能させてくれる選手である。パンチ力と体力だけでなく、頭を使った技術とスピード、身体の動き、タイミングと防御技術で充分対抗できる事を示して呉れるからである。
一方のチャーロはS・ウェルター級とミドル級にかけて兄のジャーマルと共に中核となる勢いがある。
ゴロフキン、ジャレット・ハード、ハイメ・ムンギアと強豪が揃う激突が楽しみ。
忘れてはいけないのはサウル・アルバレス、ダニエル・ジェイコブスの実力者も控えているのだ。
2. WBA フェザー級タイトル・マッチ 2018/8/6
チャンピオン レオ・サンタクルス(メキシコ)29歳、戦跡 36戦34勝19KO 1敗1分
ニックネームは「テレモト」(地震)。1敗はカール・フランプトン
なお再戦では雪辱している。
挑戦者 アブネル・マレス(メキシコ)32歳、戦跡 34戦31勝15KO 2敗1分。
両者は2015年8月第一戦闘い2:0でサンタクルスが勝利しているが、接戦の為リマッチ組まれた。
1R サンタクルスは例の通りガードを高く掲げて構える。手が長い為に顔面、ボディが
全部カバー出来程である。なおサンタクルスとマレスのリーチは175、168であ
る。マレスは距離をとり左右のワンツーでサンタクルスの内懐に入り込む作戦で
ある。
2R お互いに打ち合うが、入り込んでの回転の早さでマレス優勢。打つだけ打ってサッ
と引くマレスのリズムである。
3R サンタクルス、マレスの作戦をみてマレスの打ち終りに横への動きを封じる作戦
に出る。
4R サンタクルス圧力をかけて前に出て距離を潰してマレスのとじ込みを防ぐ。
5R サンタクルスは短いワンツー攻撃で先手を取り、マレスを後手後手に追い込む。
6~12R マレスはとじ込もうとするがサンタクルスのワンツー攻撃に阻まれてペースを
握ることが出来ないまゝに終了。それでも毎ラウンド両者頭をつけてリング中央で
激しく打ち合い、一歩も引かない意地を見せて観客を大いに楽しませた。
判定は115:113、116:112、117:111でサンタクルス。
会場 アメリカ フロリダ州 キシミー・キシミー・シッピングセンター
( 2018/7/29)
WBO S・フェザー級 タイトル・マッチ
4度防衛していたワシル・ロマチェンコがWBAライト級王者獲得により返上した為の王座決定戦である。
同級1位 クリストファー・ディアス(プエリトリコ)23歳、戦跡 23戦全勝15KO
ボブ・アラム氏のトップ・ランク社に所属する往年の同国のスター15連続KO防衛を果したレジェンド ウィルフレッド・ゴメス、5階級制覇のミゲール・コット等の後継者として大事に育てゝきた逸材である。
対戦者 同級2位 伊藤 雅雪(日本)27歳。戦跡 25戦23勝12KO 1敗1分
7連勝中5KO 始めての海外試合である。
オッズは4:1でディアス これは当然の予想である。
1R 伊藤、左ジャブ、右ストレートを打って先手をとる。ディアスは相手の出方をみ
て手数は少ない。伊藤はディアスの主武器左左フックを警戒して右ガードを高く
掲げる。
2R ディアス打って出るが伊藤負けずに打ち合う。この主導権争いで伊藤これを制する
3R やゝ近い中間距離で闘う。ディアスの得意の距離であるがディアスの攻撃を正面か
受け止める。ディアスのガードは固いが伊藤の右ストレートでディアスの左目下腫
れ始める。
4R 伊藤の4連打のストレートでディアス ダウン。立ち上がったところにロープに詰め
連打で追い込む。
5R ディアス劣勢を回復すべく反撃開始。伊藤の反撃にあってディアス得意の連打まで
至らない。
6R ディアス回復してリズムも出てくる。伊藤の左ボディブロー、右アッパーが有効で
ディアス ペースを握ることが出来ない。
7R 正面から両者打ち合う。伊藤のストレートの連打、右アッパー有効。
8R 依然ペースは伊藤が握っており常に先手。ディアス右目尻と右目上切る。
左目下腫れて視界不良。
9R 両者打ち合うが先手は伊藤が取っており、ディアスも疲れてくる。
10R 開始早々ディアス勝負にでて右ストレート2発当たり優勢であったが後半失速して
伊藤の反撃を受ける。
11R バッティング2回あり、ディアス嫌がる。伊藤のペースで進んだこのRの終盤、
ディアスの左フック1発強烈でイ等たじろぐ。
12R 両者最後の力を振り絞って打ち合うが余力はやゝ伊藤にあり、4連打のあとの
右アッパー等あり優勢のうちに終了。
私の判定 伊藤 1,2,3,④,6,7,8,9,12 ディアス 5,10,11 で117:110で伊藤。
伊藤に上りタイトル獲得、大番狂わせといえる。
右ストレートとと左フックに一発必倒の威力を有する。ディアスがスピードでも優り、ガードも固く負ける可能性は少ないと見られていたが、伊藤が勝利した要因を考えると、 第1に相手にを恐れずに立ち向かった事が大きい。
第2に左ジャブを良く出した事で距離を図りまた相手を懐に入れなかった事。
第3に右ストレートを主武器にした事である。
リーチで11cm優る伊藤がこれを有効に使って、ディアスの出鼻を叩いたこと。
また前進する相手にストレートは有効である。一方でディアスは4Rにダウンを奪われておりペースを崩されまた右ジャブが極端に少ないことで自慢の強打が距離の測定が出来ずにクリーンヒットせず、従って得意の連打に繋がらなかった。
このまゝでは足が速くボクシングの巧い選手には苦戦することになりそうである。
課題は唯一ジャブを習得する事である。あのKOキング ゲンナディ・ゴロフキンの左ジャブの巧みさを見習うべきだと思うが・・・・・
会場 アメリカ カリフォニア州 フレズノ・・セーブマート・アリーナ 2018/7/23
WBA S・フライ級タイトル・マッチ
チャンピオン カリド・ヤファイ( 英国 )。戦跡 23戦全勝14KO
2016年12月ナレイス・コンセプションからタイトル奪取。両親はイエメン出身。
イエメン出身ではS・バンタム級、フェザー級で活躍したナジーム・ハメドが居た。
両手をダラリと下げた完全なノーカウント・スタイルで相手のパンチはステップとダッキング、ウィービングで総て躱し、必殺パンチ特に左アッパーは強烈でKOの山を築いた。入場から派手なパフォーマンスで本当のエンターティナーであった。
当時ハメドを真似る選手が世界に多く出現したが全員失敗している。
まさに規格外の選手であった。ヤファイはそれに反して、正統派スタイルでガードを高く掲げて左ジョブから左ストレート、フックを繰り出す。面白味はあまりない選手である。
挑戦者 ダビド・カルモナ(メキシコ)27歳、戦跡 31戦21勝9KO5敗5分
1R ヤファィの左フックでカルモナ ダウン。立上がったカルモナの左フックがヤファィ
のテンプルに当ってヤファィ ダウン寸前に追い込まれる。
2R 以降ヤファィは一段とガードを高く掲げて、カルモナのパンチを警戒し、慎重に
試合を進める。
各ラウンドやゝ優勢に推移、7R終了時突然とも思えるカルモナのギブアップでヤファィのアメリカ進出第一戦で3度目の防衛に成功した。
人気の面ではやゝアピールするものに欠てはいる。
チャンピオン レイ・バルガス(メキシコ)27歳。戦跡 31戦全勝22KO 172cmの長身
挑戦者 アサト・ホバニシャン(アルメニア)29歳。戦跡 16戦14勝11KO 2敗 スイッチ・ヒッターである。
オッズは9:2でバルガス。
1R バルガス、ガードを高くして左ジャブ、右ストレートでリーチの長さ(ホバニシャ
ンと10cmの差がある)を武器にスタート。ホバニシャン身体を揺って前進。
バルガスあわやダウンの場面も。バッティングでバルガスの右目尻切る。
2R 以降ホバニシャン、バルガスとの距離の違いを何とかすべくスイッチしたり、トリ
ッキーな動きをしたりして、攪乱を図るが半ばその作戦は効を奏する。しかし全体
的にはバルガスの左ストレート、左右フック、左アッパーのボディと有効打は圧倒
的であり、中盤以降ホバニシャン。第3のパンチの頭から突進でバルガス両目尻切
る。劣勢のホバニシャンは12R執念の攻撃を見せるがバルガス足を使ってこれを
躱す。
118:111、117:111、116:112でバルガス判定勝を納める。バルガスは左ジャブ、右ストレートとも鋭いが左フックのボディブローも強烈でパンチをフルスイングして終盤までスピードが衰えない。長身でリーチの長い、しかもパンチ力のあるバルガスを崩すのは
なかなか難しいとみた。
1.WBA Sフェザー級タイトル・マッチ
チャンピオン アルベルト・マチャド(プエルトリコ)27歳、戦跡 19戦全勝16KO
ニックネームは「爆弾」
挑戦者 ラファエル・メンサー ガーナ)戦跡 30戦全勝22KO
両方ともにサウスポー
1R 終了間際相打ちで右フックがカウンターとなりメンサー ダウン。
2~12Rまで主導権を握ったマチャドが一度もリードを許さずに終了。メンサーは反撃の糸口すらつかめずに完敗。
判定は120:107でマチャド完勝。初防衛戦を飾った。
マチャドはリーチも長く、右リードも欲出て教科書的スタイルで安定感ある戦い方であ
るが、決め手をやゝ欠いており前途はやゝ心配な点もある。メンサーは30戦全てガー
ナ国内で闘っており、初めての海外の試合で実力的に不明なところがあったが総合力で
差があった。
ガーナは歴史的に名選手を輩出している。15連続KO防衛の記録を有するウィルフレッド・ゴメス、ウィルフレッド・ベニテス、アジマー・ネルソン、アイク・クオーティ、フェリックス・トリニダート、ウィルフレド・バスケス、ジョシア・クロッティ、ミゲール・コット、アイザック・ドクホエと夫々ボクシングファンに強烈な印象を残すボクサーばかりであった。
製本用 修正済
会場 米国 ラスベガス ハードロックホテル&カジノ (2018年7月21日)
2.WBO Sウェルター級タイトル・マッチ
チャンピオン ハイメ・ムンギア(メキシコ)21歳、戦跡 29戦全勝25KO、2ヶ月前に
ミゲール・コットを破って戴冠したサダム・アリをKOに下して王者となっての初防衛戦である。
挑戦者 リアム・スミス(英国)29歳、戦跡 28戦26勝14KO 1敗1分、2015年10月
カネロ・アルバレスに敗れてタイトルを失っている。指名挑戦者である。
リバプールのヒーロー、ニックネームは「ヒーフィー」(逞しい男)。
リアムはスミス4兄弟の3番目で長男ポール、次男ステーブン、4男カラムと4人総て
ボクサーである。
1R 攻撃力でムンギア。防御力でスミスの前評判通り、スミス ガードを固めて接近し
ショートパンチを振う。ムンギアの思い切り振うパンチをガッチリガードでカ
バー、細かいパンチで対抗する。
2R ムンギア 右ボディブロー3発迫力満点でその迫力でスミス後退。
3R 右アッパー2発、スミスのパンチも正確にヒットしているが、ムンギアは意外に
体が柔らかく、良くパンチを逃す。
4R ムンギアの左フック、アッパーにスミス、ガードで防ぐが圧倒されてロープに詰
る。ガードの上からでも効いてきている。
5R スミスも得意の接近戦で頭をつけてショートパンチをくりだすが、ムンギアの左
アッパーボディ強烈でスミスのパンチの価値を無いものにして了う。
6R 左フックでスミス ダウン。立上がったところにムンギア パンチを振り回して追撃。
7R ムンギア 力一杯パンチを振って倒しにかゝる。スミスは元チャンピオンの意地で、
これに耐えてガードを固めて頭を付けて何とか凌ぐ。
8R スミスも打たれながらも自分のスタイルを崩さず、相手の打ち終わりを狙って細か
いパンチを繰り出して対抗。スピードもパンチ力もさほど衰えないが、ムンギアの
破壊力あるパンチに束の間のリードもふいになる。
9、10R ムンギアにボディを乱打されスミス ダウン寸前に追い込まれるが何とかショー
トパンチを振って対抗。
11、12R このまゝの展開で終了。
ムンギアの力一杯振り回すパンチが12Rまで続くかと心配されたが、その威力は些かも衰えず無尽蔵のスタミナは驚異的であった。スミスも元王者の意地とプライドをみせて、見ごたえのある試合となった。
判定は116:111、119:110、119:108とムンギアの完勝であった。
尚WBA、IBFにはジャレット・ハード、WBCにはジャーメル・チャーロがいていずれ劣らぬ強打と体力の持ち主が揃っている。
製本用 修正済
会場 米国 NY州 ウェローナ ターニング・ストーン・リゾート&カジノ
( 2018年5月12日 試合日 )
WBO S・ウェルター級タイトル・マッチ
チャンピオン サダム・アリ(米)29歳。昨年12月ミゲール・コットを判定に下し戴冠
初防衛戦である。ニックネームは「ワールド・キッド」。戦跡 27戦26勝14KO 1敗。
挑戦者はハイメ・ムンギア(メキシコ)21歳。戦跡 28戦全勝24KO 今年3戦目である。
1R アリ左ジャブからのコンビネーションを繰り出す。スピード、身体の切れは良く、
調子はは良さそうである。ムンギアはゆったりと構えて落ちついてみえる。
突然の左フックでアリ ダウン。立ち上がったがロープに詰るところに右フック2
度目のダウン。アリのダメージは相当に深い。
2R アリは反撃のパンチを振うが、パンチに力がなく、ムンギア落ちついてアリの攻撃
を受け止めいたがやっと回復してきたかにみえたアリに終盤右ストレートからの右
フックでアリ3度目のダウン。
3R アリ、何とか反撃するが、それもムンギアの一発のパンチで消し飛び、ダウン寸前
に追い込まれる。ラウンド終了時、ドクターがアリの目をみて試合続行の可否を判
定。 続行。
4R ジャブのタイミングでのいきなりの右フックでアリ4度目のダウンでレフリース
トップ。
ドクターリンクに入ってアリの状態を診察する。アリは開始早々のムンギア左フックで
自分のスピードを生かしてのテクニックで闘う作戦は総て画餅に帰し、惨敗した。
スーパースターの出現を予感させるムンギアの強さであった。
1. WBAフェザー級暫定王座気決定戦
ジャック・テポラ(フィリピン)25才、戦跡 21戦全勝16KO 同位2位
対戦者 エディバルト・オルテガ(メキシコ)28歳、戦跡 28戦26勝12KO 1敗1分
サウスポー同士の闘い
1R テポラ 左フック、右フックのボディブローでオルテガ怯む。テポラ迫力満点の力強
いパンチを振う。
2R オルテガ主導権を取戻すべく、攻勢の出る。
3R オルテガのリズムが良くなり、手数が増える。パンチの強さはテポラ。
4、5、6R 手数と前に出る力でオルテガが一発の威力でテポラ。
7R オルテガの左目下腫れてくる。
9R テポラの右アッパー顎にヒット。オルテガ ダウン、そのあとの連打でレフリー
ストップ。
それまでの流れはほゞ互角で勝負を分けたのはパンチの差であった。
テポラは魅力的な選手ではあるが、オープンガードで防衛が甘く、右ジャブが少なく、
待ちのボクシングであり、パンチが大振り等懸念材料は多いが、パンチ力には将来の
可能性が窺える。
2. WBAウェルター級タイトル・マッチ
チャンピオン ルーカス・マティセ(アルゼンチン)35歳、戦跡 44戦39勝36KO 4敗1無効試合。ニックネームは「ラ・マキノ」(機械)
挑戦者 マニー・パッキャオ(フィリピン)39歳、戦跡 68戦59勝38KO 7敗2分。
ジェク・ホーンに負けてタイトルを失ってから1年経過して再起戦である。
ニックネームは「パックマン」
1R マティセの左ジャブで始まる。動くと思われたパッキャオは正面から対決するよう
だ。パッキャオのパンチ力と圧力を感じてかマティセ後退する。パッキャオの動き
や身体の切れは昔に戻ったようで調子は良さそう。
2R マティセはパッキャオのパンチの威力を感じて正面衝突を避けて左に回り始める。
マティセの左ジャブを被せられて退りぎみのマティセのパンチにスピードも力強さ
も失われている。
3R マティセは攻撃よりも防御に腐心してかガードを固くして対応するが、その内側か
らの左アッパーが顎にヒット。マティセ ダウン、立上がったところにパッキャオの
ショートパンチが襲う。力を抜いた多彩なパンチだ。
4R パンチのスピードと力強さで大きく差がついて来た。相手のパンチ力を警戒して、
本来の思い切りの良いマティセのパンチが出ない。又手を出すところに空いた場所
に軽いが的確なパンチをパッキャオが送り込む。
5R 試合は一方的になって来た。ガードを固めたマティセに右ジャブ2発ついでの軽い
右フックでマティセ2度目のダウン。
6R パッキャオは力をセーブする如く、軽いパンチを数多く、しかも的確に繰り出す。
マティセが打とうとする出鼻を悉く叩く。
7R 狙いすました左アッパーが顎にヒット、マティセ3度目のダウン。マウスピースを
吐き出下ところでレフリーが試合をストップし、パッキャオ、対ミゲール・コット
戦12R TKO以来11年振りのKO劇をみせた。
KOマシン マティセは全く力を出す事なく完敗したが1Rのマティセの左ジャブに対してのパッキャオの右ジャブでマティセの作戦は狂ったようでパッキャオの左ストレートがブロックの上でも威力を感じて消極的になってしまったのが敗因で、これでは自分のパンチに力が入らない。精神面でマティセは敗北していた。パッキャオはまさに強豪を倒して不死鳥のようによみがえった。(No.21)
このクラスの次のカードはWBC王座決定戦でダニー・ガルシア対ショーン・ポーター。
IBFでエロール・スペンスにカルロス・オカンボが挑戦。WBOでジェフ・フォーンにテレンス・クロフォードが挑戦することが決っていて、いずれも錚々たるスターが揃う。WBAのスーパーチャンピオン キース・サーマン、IBFのチャンピオン
エロール・スペンス、WBOのテレンス・クロフォードと全員が全勝で並んでWBCに1敗のダニー・ガルシア、WBAレギュラーチャンピオンのパッキャオと実力者が揃ってミドル級と並んで激戦区となった。
会場 カナダ トロント エア・カナダ・センター
WBC Lヘビー級タイトル・マッチ
チャンピオン アドニス・スティーブンソン(米)40才、戦跡 30戦29勝24KO 1敗。ニックネームは「スーパーマン」、2013年6月強豪チャド・ドーソンを番狂わせの1RKOに下して今回9度目の防衛戦。セオリーなしの左一発のを当てれば良い。当れば相手が倒れる解りやすい選手である。
挑戦者はバドウ・ジャック(スウェーデン)34歳、戦跡 25戦22勝13KO 1敗2分、元2階級制覇王者。
1R スティーブンソン右手をやゝ下げて構える。例によって右は左を打つ為だけに使う
相手との距離を計る道具である。ジャックは防御の巧みな選手であるが、今回は相
手の必殺の左を警戒し、専守防衛のスタイル。
2R スティーブンソン圧力をかけて前に出てパンチを振う。ジャックは押されるがラウ
ンド終盤右カウンターを当てる。
3、4R スティーブンソンは攻勢をかけパンチを振う。総てガードの上であるが、手数
でスティーブンソン有利。
5R スティーブンソン左アッパーを振うがガードの上、ジャックの専守防衛の形は変
らない。
6R スティーブンソンは力を込めて左フック、ストレートを打ち込むが、ジャックはま
ともに打たせない事に重点を置いて試合をしているようだ。スティーブンソンの攻
撃はいくら打っても固いガードに阻まれて打つパンチを大振りとなりパンチも身体
も流れてくる。終盤ジャックの右ストレートのカウンターがスティーブンソンにダ
メージを与えたようだ。
7R ジャックは右フックを顔面に、右ストレートをボディに、ついで右アッパー、右
フックを顔面にと攻撃に転じ、スティーブンソンまともに打たれ自分のスピード
も落ちる。スティーブンソンは6Rの力を入れた攻撃で急速にスタミナを失った
ようだ。
8R ジャックの右フックでスティーブンソンよろめいて後退を始める。ジャックは
ラウンド終了時に勝利の目が見えてきたか腕を揚げてみせる。
9R ジャックの動きが一段と良くなりパンチもスムーズに出るようになり、ペースは
完全にジャックに傾く。スティーブンソン鼻血を出す。
10R 弱っていたスティーブンソンの出した左ストレートのボディブローで形勢逆転、
その後の集中打でジャック辛くもゴングに救われる。
11R スティーブンソンは10Rの流れをつかんでボディーを集中的に攻めりジャック
あわやダウンの状況が続くが、スティーブンソンが打ち疲れた中盤からジャック猛
反撃で再度の形勢逆転、スティーブンソン窮地に追い込まれる。
12R 両者死力を尽して打ち合うが余力は明らかにジャックにありスティーブンソンは辛
くもダウンを免れて終了。
判定は115:113、114:114が2人で引分けでスティーブンソン辛くも防衛して。
私の判定はスティーブンソン2,3,4,5,6,10が取り、ジャックは2,7,8,9,11,12のラウンドを取っての114:114の引分けであった。
1. MABF北米Sミドル級王座決定戦8回戦(地域タイトル)
ジェシー・ハート(米)28歳、戦跡 24戦23勝19KO 1敗 WBOミドル級1位
対戦者 デモンド・ニコルソン(米)25才、戦跡 21戦18勝17KO 2敗1分
1R ハート197cmのリーチを生かして左リード、ついでの右オーバーハンドフックで
優位に立つがゴング寸前ニコルソンの放った右ストレートでハート一瞬よろめく。
2R 1Rの影響でハート慎重となり後退ぎみに回復を待つ。
3R 回復なったハートの左・右フックでスリップとみられたがダウンをとられ立上がっ
たところ、左アッパーボディ、右ストレートあとの右フックは空振り。
右フックで2度目のダウン。
5~6Rとハートペース。
7R ニコルソン最後の勝負をかけて反撃を試みるが、攻撃一服のあと、ハートのラッ
シュでダウン。TKOとなる。
2.WBO Sバンタム級タイトル・マッチ
正王者ジェシー・マグダレノ(米)26歳、戦跡 25戦全勝18KO サウスポー、2017年6月5階級王者ノニト・ドネアを12R判定に下し王座につく。
対戦者 同級暫定チャンピオン アイザック・ドグボエ(ガーナ)23歳、戦跡 18戦全勝12KO、ニックネーム「ブレイブ・サン」(勇敢な息子)
1R ドグボエ開始早々、前進してパンチを振う。後退したマグダレノはロープ際から
カウンターの左ストレートでドグボエ ダウン。
2~3R ドグボエ、委細かまわずロープに詰めて連打。ドグボエは左アッパーで対応。
4R ドグボエ攻勢をかけるがパンチは当らない。
5R 打ちに出たマグダレノに、ドグボエの右ショートフックのカウンターでマグダレノ
ダウン。そのあとロープに詰められて集中打を受けるが、マグダレノは巧みな防御
で何とかしのぎきる。
6R ドグボエの一方的な攻撃が続くがマグダレノはロープ際、時折左アッパーを振って
あとは防御に専心回復を図る。
7R マグダレノ、やゝ回復をみて反撃に出る。
8、9R マグダレノ、足を使ってアウトボクシングを始め主導権はやゝマグダレノに
移ってきた。
10R お互いに勝負に出たが、ドグボエの左・右フックのボディブローが効いて、5R
のダウンひきずってを来たマグダレノはその後のボディブローも効いており、遂
にダウン。立上ったが左フック顔面でダウン。ドクターストップとなった。
ドグボエは160cmと小柄であるが、エネルギッシュな攻撃力を持ち、パンチも力強く、スタミナもスピードも終盤に至っても落ちる事がない。パンチが一発一発大振りでカウンターを受ける危険はあるものの又魅力的なボクサーが出てきた。
これからはアメリカを主戦場にして人気も急上昇する事であろう。
製本用 修正済
会場 米国ニューヨーク バークレイ・センター (2018年6月18日)
1.WBA Sフェザー級王座決定戦
ジャ-ボンティ・デービス(米)23歳 前 IBF S・フェザー級チャンピオン。
前試合KO勝利したが、体重オーバーで王座剥奪されている。
戦跡 19戦全勝18KO メイウェザーの秘蔵っ子、ニックネームは「タンク」
対戦者ヘスス・クェジャル(アルゼンチン)31歳、元WBA フェザー級チャンピオンと
して5度防衛している。
1R 先制攻撃を仕掛けて打って出るクェジャルに対し、デービス タイミングの良い
右・左アッパーをボディに2発づつヒット。最後の右アッパーが効いてクェジャル
後退を始める。
2R 長丁場は無理と判断したクェジャルはパンチを振って前に出るところ、デービス
の左ストレートとのボディ、カウンターでクェジャル ダウン。
3R デービス、クェジャルをロープに詰めて連打でダウンを奪う。
4R 同じくロープに詰めての連打で3度目のダウンを奪ってTKOにクェジャルを下す。
デービはス165cmと小柄であるがスピードとタイミングとパンチの切れ味が抜群で、クェジャルはパンチを出すとカウンターを打たれ、出さないと右リードパンチからの的
確なパンチを打たれ、なす術なく敗れた。
ボクシングセンスと身体能力に優れたデービスは未だ23歳と若く、スーパースターの道を駆け登って行きそうである。
しかしこのクラスには31勝28KO 1敗 WBCチャンピオン、長身、リーチの長いミゲール・ベルチェルトがいて、1階級上にはワシル・ロマチェンコ、マイキー・ガルシア、
ロバート・イースターの強者が揃っている階級でもある。
2.WBC ミドル級暫定王者決定戦
ジャーマル・チャーロ(米)27歳、戦跡 26戦全勝20KO。
前 IBF S・ウェルター級王者、ミドル級転向2戦目。
対戦者 ウーゴ・センティノ(米)27歳、戦跡 28戦26勝 1敗1無効試合
ニックネームは「ザ・ボス」、アマ戦跡は98戦90勝8敗。
1R チャーロは様子をみるでもなく、例の通り圧力をかけて前に出て、左ジャブ、
右ストレートとを出す。センティノはテクニシャンらしく、これを巧みに躱す。
2R チャーロはセンティノをロープに詰めるや、左フック、右ストレートの繰り返しで
KOに下す。
ジャーマル・ジャーメル(WBC S・ウエルター級王者)の実力。人気とも急上昇して
おり、両者全勝でパンチ力、スタミナ、頑強さを有しボクシングも巧い。S・ウェルター級からミドル級までの台風の目となっていて、特にミドル級のゴロフキン、ハード、アルバレスと並んだ。強豪達との闘いは見ものではある。
3.144ポンドキャッチウエイト契約12回戦
(S・ライト級とウェルター級の中間体重)
エイドリアン・ブローナー(米)28歳 戦跡 37戦33勝24KO 3敗1無効試合
S・フェザー級からウェルター級まで4階級を制覇している。
ニックネームは「プロブレム」問題児
対戦者 ジェシー・バルガス(米)28歳、戦跡 30戦28勝10KO 2敗、ニックネームは
「プライド・オブ・ラスベガス」。2敗は引退からの復帰戦となったマニー・パッキャ
オの標的となってダウンを喫した上、大差の判定負けとなりタイトルを失った試合が
ある。
この試合の後トレーナーを替えて過去の名ボクサー、ボディスナッチャーと呼ばれた
マイク・マッカラムを迎えている。
1R 例によってブローナー、やゝ体重を後にL字ガードで構える。バルガスは先手必勝
と左リードパンチを中心に手数を多く出す。
2~6R バルガスは手数を多くしかも力を込めて振い、ペースを完全に握る。ブローナー
はガードを高くして距離もとり、そのパンチを大半躱すが自信は的確ではあるが、
いかんせん数で圧倒されるパンチの数でリードを許す。
7Rのラウンドの後半からブローナーの巻き返しが始まり、ペースはブローナーに移行。
バルガスは前半の飛ばし過ぎから失速する。
9R ブローナー ラッシュ。バルガス ダウン寸前に追い込まれるが意地で踏ん張る。
10~12R ブローナー優位のまゝ終了。
判定は115:113が1人ブローナー。 114:114が2人でドローとなった。
前半はバルガス、後半はブローナーとこんなにはっきりした試合もめずらしい。
才能に溢れて天才と謳われ5階級を制したブローナーであったが
ライト級あたりまではこのスタイルで相手を圧倒できたが、その上となるとそう簡単
に倒せなくなり、となると本来リードジャブが少ない、カウンターパンチャンーの
ブローナーではショーン・ポーターのような出入りの多いファイターやミゲール、
ガルシアのようなリードパンチの鋭いパンチもある本格的ボクサーに対抗するのは
難しくなってくる。
才能だけに頼ってきたツケが今になって身に振りかゝって来たという事であろう。
そうこうしている間に、ミゲール・ガルシア、ダニー・ガルシア、エロール・スペンス、テレンス・クロフォードといった新しい才能にとって代られるのもみえてきた。
1.WBOバンタム級タイトル・マッチ
チャンピオン ゾラニ・テテ(南アフリカ共和国)30歳、戦跡 29戦26勝21KO 3敗
サウスポー 初防衛戦は世界戦最短の11秒でKO勝ちしている。
挑戦者 オマール・ナルバエス(アルゼンチン)42歳、戦跡52戦48勝25KO 2敗2分
元2階級王者。世界戦27度防衛、Sフライ級タイトル・マッチで井上尚弥にKOで敗れてタイトルを失っている。サウスポー、ニックネームは「ハリケーン」
1R テテ175cm、ナルバエス160cmの身長差を生かしてテテ左ジャブで試合をコント
ロール。
2R~12R ナルバエスは固いガードでテテの多彩なパンチを殆んど防ぐが、絶え間なく
繰り出されるテテのパンチの前に攻撃の糸口すらつかめず終了。
判定は120:108が3人でテテの完全試合であった。S・フライ級とバンタム級の体格差は大きいものであり、ナルバエスは文字とおり手も足も出ずに完敗した。テテのリーチの
長さとスピード、左ジャブの早さと、左右アッパーのボディブローは驚異でこのクラス
で井上尚弥の強敵となる。
2. WBO フェザー級 暫定王座 決定戦
カール・フランプトン(英国)31歳、戦跡 25戦24勝14KO 1敗。
ニックネームはジャッカル、1敗はレオ・サンタクルス
対戦者 ノニト・ドネア(フィリピン)35歳、戦跡 42戦38勝24KO 4敗
元5階級制覇チャンピオン、なお 5階級制覇しているのは
1. トーマス・ハーンズ 2. シュガー・レナード 3. フロイド・メイウェザー
4. ホルセ・マルセ 5. オスカー・デラホーヤ 6. マニー・パッキャオで
ドネアが7人目である。
1R ドネア レッシャーをかけてやゝ前に出る。左ジャブと左ボディブローがヒット。
2R フランプトン主導権を握るべくドネアをコーナーに詰めて集中打。
3R フランプトン、左手を下げてジャブを打ちやすく構え、ドネアのパンチは遅れ
ぎみ。
4R 離れてのフランプトンの速さをみて、ドネアは中間距離で闘うのを不利とみて接近
戦を決めたようだ。 フランプトンはドネアの出鼻を叩く、ドネアの左フックを防ぐ
為に接近する際には頭を下げて右拳を右顎にしっかりと付けて構える。
5R ペースは3Rあたりからフランプトンに。ドネアはロープに詰められ際決め手の右
アッパーを数発振う。
6R ドネア前進に対し、フランプトンやゝ下りながらカウンターを狙う。
7R ドネアのパンチも身体も流れてくる。フランプトンの体身はぶれない。途中バッ
ティングでドネアアピール。レフリーこれを認めず。しかしドネの右アッパー2発
でフランプトンたじろぐ。
8~10R フランプトン完全に勝利を確信し、自信に満ちた動きをみせ、スピードも衰え
ない。
11R 2分過ぎドネア左フック・ボディ、左フック2発顎にヒット。フランプトン
ダウン寸前に追い 込まれる。
12R 両者打ち合いの中でゴング。
判定は117:111が3者全員でフランプトンの完勝であった。
ドネアはS・バンタム級までが一番威力もある左フックを振ったが、フェザー級に転換してニコラス・ウォータースにKO負け、ギジェルモ・リゴンドーにスピードで翻弄されて完敗したことから、試合前のオッズは11:2でフランプトン優利と出ていた。
ドネアのS・バンタム級までのニックネーム「フィリピンの閃光」の切れ味の鋭さは、このクラスでは望むべくもなかった。バンタム級時代 2011年2月長谷川穂積を破り、絶頂期にあったフェルナンド・モンティエルを2R衝撃の左ショートフック一発でKOに下し、2012年12月S・バンタム級で3Rホルヘ・マルセ を同じく左ショートフック一発でKOに下したあの輝きはすでに失われていた。
会場 アメリカ ラスベガス ハードロック ホテル&カジノ(2018/06/04)
WBA・IBF S・ウェルター級王者統一戦
WBAスーパーチャンピオン エリスランディ・ララ(米)34歳、戦跡 29戦25勝14KO2敗2分ニックネームアメリカン・ドリーム。キューバ生れ2007年アメリカにリゴンドーと共に亡命に失敗、翌年に亡命に成功。リゴンドーは1年後に成功している。
2敗はポール・ウィリアムスとカネロ・アルバレスで些差の判定で負けであり、対アルバレス戦では中盤以降アルバレスをテクニックの冴えで翻弄している。
私の好きな選手の1人である。
対戦者 ジャレット・ハード(米)27歳、戦跡 21戦全勝15KO。
ニックネームはスウィフト
1R サウスポーのララのリードパンチ2発、左ストレート、アッパー当る。
2R 例によってハード前進し、ガードを固めて打って出る。手数も多い。
3R ハードはララのテクニックを馬力で抑え込む方針。ララの左アッパー的中するが、
ハードの右ストレートのカウンターも命中。
4R ハードは打たれても構わず前に出て、パンチを数多く出し体力で押す戦術を一貫
し、ララはロープに詰るようになる。ペースはやゝハードに。
5R ララ接近戦を避けて距離をとり左ストレートのカウンターを狙う。手数はハードであるが
的中率はララ。
6R ハード前に出るが手数は減る。ララの左アッパー命中、この試合一番のパンチであ
り、ハード一瞬たじろぐ。
7R ハード前進一方で一段と力を入れてパンチを振うがララの防御巧みでほとんどガー
ドと柔らかい身体の動きで防ぐ。数は少ないがララのパンチの的中率は高い。
8R ハードは主導権を取り返すべく攻撃を強め、圧力をかけ体力で押す。ララの顔面の
ガードが固い為にボディを集中して狙う。
9R ララはハードの体力に押されて苦しくなる。ララの顔腫れてくる。ハードの顔が腫
れないのは腫れにくい体質か?
10R 序盤ハード手数を多くして、力を込めて打って出るが、ララの左ストレート、アッ
パーでハードの動きが急速に鈍りパンチに鋭さがなくなりララに押される。
11R 両者死力を尽して打ち合うが的中率でララ 優勢。
12R 両者ラストラウンド勝負とみて打ち合うがハードは残る力を振り絞ってパンチを振
い、右アッパーが当ってララ急に失速。弱って後退するところにハードの左フック
でララ ダウン。立ち上がったところにハード倒しにかゝるがララ反撃してゴング。
判定は114:113が2人、113:114が1人でハードの2:1で勝利となった。ララダウンしなければ勝利を掴んでいたのだ。ララは8度目の防衛に失敗した。
戦前のオッズは1:1でララがラクニックでハードを巧みにあしらうのではの声もあったが、前の試合でボクシング界有数のテクニシャンのオースティン・トラウトを力で制圧したハードをみてララも足を使って対抗するのは難しいと判断したか、打ち合ってハードの前進を止めようと決めていたようで、これは一応功を奏して、勝利寸前までこぎつけたがハードの不屈の攻撃にしてやられた。
このクラスにはテクニック、強打で急上昇してきたチャーロ兄弟の弟ジャメールが全勝で
WBC王座にいて、その先にミドル級のゴロフキンもおり楽しみになってきた。
それにしても疲れを知らないスタミナを有し、いくら打たれても前進して力強いパンチを振い続けるハードのエネルギーは驚異的と云える。
5月25日行われたWBAバンタム級タイトル・マッチは10年間無敗のチャンピオン
ジュィミー・マクドネルにS・フライ級から体重苦の為に一階級上げて井上尚弥が挑戦
した。前日計量に一時間以上遅刻して現れたマクドネルは憔悴しきっていたが翌日の試
合当日は12kg増量してリングに上った。
体格差と体重差勝負に出たがスピードもスタミナも全く無く、一方的に打たれて112秒で
TKOされてしまった。一方の井上のリバウンドは6kgであったと云う。マクドネルはまさに狂気の沙汰であるとしか言いようがない。
井上はこのあとバンタム級の他団体のチャンピオン全員を含めた6人でトーナメントを行いバンタム級No.1を決定することが決っており、その優勝候補のトップに躍り出た。
予想ではここで勝ち抜き、更に階級を上げてフェザー級あたりでまでは十分望めそうで
ある。それだけの逸材であることは確かであると思われる。
1.WBC L・ヘビー級暫定王者決定戦
WBC同級2位 オレクサンダー・クボジーク(ウクライナ)30才、戦跡 14戦全勝12KO、
ロンドン五輪銅メダリスト。
対戦者 同級10位 メディ・アーマー(フランス)35歳、戦跡 41戦34勝16KO 5敗2分
1R~12Rまで クボジーク圧力をかけて前に出て左ジャブを間断なく出し相手を
コントロール。出すパンチは軽いものであったがアーマーはジャブに阻まれて
クボジークの射程距離内に入れず後退。時折力を込めたパンチを振うが、ほと
んどが当らない。
9Rあたりからクボジーク、パンチに強弱をつけ時折力強いパンチも繰り出す。
重量級にも拘らず、軽やかにステップを踏みパンチもストレート中心に手数も多
い。まるで軽量級のボクサーのようで、力強さは全く感じないがスピード感はあ
り、まことに奇麗なボクシングを披露。
終了しても汗ひとつかゝない様な感じのボクシングであった。
力を込めたパンチを振うとき、反撃のパンチを受ける場合があり、やゝ懸念材料は
ある。この試合はチャンピオンのアドニス・スティーブンソンが怪我の為11ヶ月ブラ
ンクが続いた事から暫定王者の試合とされたものである。
次の試合は正・暫定王者の闘いが予想されるがスティーブンソンの驚異の左ストレ
ートの威力にクボジークのこのボクシングが果たして対抗できるかが見ものである。
2.WBC S・ライト級王座決定戦
ホセ・ラミレス(米)25歳、戦跡 21戦全勝16KO 同級3位
対戦者 アミール・イマム(米)27歳、戦跡 22戦21勝18KO 1敗、
同級1位 順風満帆できた2015年11月グラナドスに8R KO負けを喫している。
1R イマム左手を下げたデトロイトスタイルで構え、ラミレスは開始早々前進し、積極
的にパンチ振るう。イマムはやゝ退りぎみであるが、左ジャブは的確で鋭くお互い
に打ち合う。
2R ラミレスの出鼻をイマムは早い左ジャブで叩くが、委細構わずラミレス前進する。
3~4R ラミレスの前進をイマム左ジャブと右ストレートで対抗。ラミレス自分の射程
距離に入りこめない。
5R 中間距離はイマムで、ラミレス イマムをロープに詰めて左右フックを振うがイマム
頭を振ってこれをかわす。 このRまではやゝイマムのペース。
6R ラミレスの右フックが当って、ラミレスの距離となり得意の攻撃が始まる。
7R ラミレスの左フックのボディブローを始め、左中心としたパンチが当り始める。
8R イマムも左ジャブだけではラミレスを止め切れないとみて、これは打ち合って止
めないと、と思ってか足を止めて正面から打ち合う。
9R お互いに頭を付けあって、ボディを主に打ち合う消耗戦となる。
10、11R ラミレス勝負に出てパンチを集める。スピードを上げ手数を増やし積極的に
攻めて、イマム押される。
12R ラミレス猛攻、KOを狙って攻めるが、イマムも意地で打ち合う。
判定は115:113、117:111、120:108でラミレス王者となった。
両者とも充分な準備をして、万全なコンデションで闘った事で緊張感溢れる試合と
なったがラミレスの体力、スタミナ、一発一発のパンチの強さと手数の多さ、終盤に
なっても衰えないスピードが、イマムの切れ味を抑えての勝利となった。
ラミレスの力量は同級の全勝ミゲール・マイキィ・ガルシアとウェルター級に転じた
テレンス・クロフォードと闘っても面白い存在となってきたと思われる。
パワーが素晴らしく、今後大いに人気も上っていく事であろう。
製本用 校正済
会場 アメリカ マディソン・スクェアガーデン ライブ放送 (2018 /5/13)
WBA ライト級タイトル・マッチ
チャンピオン ホルヘ・リナレス (ベネズエラ)32歳
戦跡 47戦44勝27KO3敗、フェザー、S・フェザー、ライト級の3階級制覇王者である。
ニックネームは「ゴールデンボーイ」。 前2試合もサウスポーが相手で対サウスポー
戦には自信を持っており、全階級を通じて最高のパンチスピードとカウンターの名手
である。
挑戦者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)30歳、戦跡 11戦10勝8KO 1敗 この1敗は歴戦の雄オルランド・サリドで、一部では2:1の判定負けだが勝っていたのではの声もあるところだ。
現WBO Sフェザー級チャンピオン、オリンピック2大会連続金メダル。アマ戦跡 396勝
1敗。アマボクシング史上最高傑作と云われている。プロ11戦は初戦を除いて総て世界
戦である。戦前のボクシングファンの勝敗予想では50:45:5引分けでリナレス有利
と出た。なおロマチェンコのニックネームは「ハイテク」である。
リングアナは20年以上ジミーレノンJr.と人気を2分して世界各地で行われる世界タイトル戦のリングアナを務めているマイケル・バッファー。
1R リナレスの左ジャブ、左ボディブローで始まる。ロマチェンコは様子を見る事もな
く、するすると異常接近し相手の射程距離の中に入り込む従来の試合振りと異な
り、左右の動きを抑えて直線的に闘う方針のようだ。
2R リナレス下りながら距離をとって、左ジャブ、右アッパーとボディにヒット。
不十分ながらそれでもリナレスのパンチにスピードあり。
3R 力を抜いてのロマチェンコの接近と、手数の多さに、リナレス右アッパーを振うが
ぺースはロマチェンコのものとなってペースを握る。
4R 自分の射程距離内に入り込んで、多彩なパンチを数多く振うロマチェンコにリナレ
ス煽られて後手に回る。
5R ロマチェンコ 自分の距離をしっかりキープしてリナレスをロープに詰める。
自分の射程距離を取れないリナレスは後退。
6R ロマチェンコはテンポを上げて動きも一段と激しくなる。防戦一方のリナレスはラ
ラウンドの後半、得意の右ショートストレートのカウンターが決りロマチェンコ
まさかのダウン。 立上がったロマチェンコはガードを高く、距離をとってゴング。
7R リナレスは今までの劣勢を6Rの流れを引きつで攻勢を強め、左、右ボディを中心
に力を込めてパンチを振うがロマチェンコ、ガードを高く防御を主として回復を待
ち、ラウンドの後半攻勢に転じ、ペースは再びロマチェンコに。
8R リナレスは更に一段とスピードを上げたロマチェンコの動きと速さとパンチの多彩
さに守勢に回り、顔面の腫れもひどくなってきる。左目上もカット。
9R リナレスは勝負をかけて攻勢を仕掛けるが、ロマチェンコはこれに付合わず。
リナレスこの試合始めて連打のコンビネーションを使う。
10R リナレスは9R同様攻勢を強めるがリナレスの攻撃が一段落のあと、ロマチェンコ
の左アッパーからの右フックを顔面に最後は左フックのボディブローで圧力をか
けられて、なお打たれ続けてきたリナレスはついにダウン。
そのまゝカウントアウト。
リナレス4度目の防衛に失敗した。
今回の試合の勝敗を決定したのは一体何か? 先ず体格差を見てみよう。
リナレス 身長173cm、 リーチ175cm、 体重 61.23kg
ロマチェンコ 身長170cm、 リーチ166cm、 体重 58.97kg
(体重はライト級、Sフェザー級のリミット)
長くライト級で闘ってきたリナレスと今回1階級上げてきたロマチェンコでは明らかに
体格に差がある。試合前にリナレスが語っていた「リーチの長さと体格差、そしてロマチェンコに負けないスピードを理由として自分の勝利である」と。
体格差を超える為に何が必要か?
1に、相手を上回るスピード 2に、 パンチ力 3に、テクニック があげられる。
1及び2はリナレスの方が上かも知れない。
ロマチェンコはどこに活路を見出したのか?
その戦略はリナレスの射程距離の10cm、いや5cmかもしれない程度内懐に入る事である。その戦術は従来前後左右に動きながら、頭も動かして闘うスタイルから、前後の
動きに絞って右ジャブを突きながら接近戦に持ち込み、軽いパンチを上下に打ち分けて
試合の主導権を握る。
リナレスは自分の距離をつくる為に後退するが、ロマチェンコはぴったりと付いて動き
これを許さない。自分の距離で闘えないリナレスは圧力をかけられ続けてしかも絶え間
ないパンチを受けて考える余裕を与えられないまゝ精神的にも肉体的にも消耗していっ
たのである。
リナレスはあと10cm相手との距離が欲しかった。そうすれば左の早いジャブで相手を
コントロールし、それでも強引に入ってくる相手に必殺の右ストレートのカウンターと
左右アッパー、左フックのボディブローと余裕をもって闘う事が出来たであろうし、試
合前にはそうした組み立て描いていたであろう。
しかし試合が始まると左ジャブを打つ前に既に眼前にロマチェンコは居たのである。
それでもリナレスはペースを握られた中でも時折鋭いパンチを振い6Rは右シュートストレートのカウンターでダウンも奪っており、能力の高さをみせた。
ロマチェンコは防御に絶対の自信をもっていたが、プロ転向後一番の難敵そのパンチのスピード、タイミングの好さでは全階級一とも云われる相手であり、相当のリスクは覚悟してこの作戦を選択したのであろう。しかも難しい作戦をそのまゝ実行できる能力の高さには驚嘆以外にない。
今までスーパースター同士の闘いは両者または一方が盛り上がりを過ぎてからが多いと
ころ、この試合は両者が今あぶらの乗り切った時点と云う事で、緊迫感溢れる好試合となった。
ロマチェンコはもしかしてボクシング史上最高の選手かもしれないし、同時代に生きてTVでその試合をみられる幸を噛みしめているところだ。
1.WBA、WBC ミドル級タイトル・マッチ
チャンピオン ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)36歳、戦跡 38戦37勝33KO
1分、3団体統一チャンピオン アテネ五輪銀メダリスト、17連続KO防衛を含む19連続
防衛中、ニックネームは「G、G、G」
挑戦者 バーネス・マーティロスヤン(米)アルメニア生まれ、32歳
戦跡 40戦36勝21KO 3敗1分、ニックネームは「ナイトメア」(悪夢)、WBC S・ウェルター級○位、この試合は当初7ヶ月前引き分けたサウス・カネロ・アルバレスの予定であったがアルバレスのドーピングの為急遽対戦相手を物色して、マーティロスヤンに決ったもの。この試合の賭け率は10:1でゴロフキン。
1R ゴロフキン左ジャブを突いて圧力をかける。マーティロスヤン圧力に負けて後退し
たが終盤右ついでの左ストレートのカウンターでゴロフキンたじろぐ。
2R ネジを締め直したか、ゴロフキン攻勢を強めての右フックでロープに退った。
マーティロスヤンに左フックのあと、流れるような集中打でマーティロスヤン
ダウン、カウントの途中立ち上がりかけたが再び長々とキャンパスに伸びて、
カウントアウト KO決着。
両者の力にあまりにも違いがありすぎた。ゴロフキン17連続KOのあと、2試合判定となり力の衰えが懸念されたが杞憂であった。
考えてみれば、判定に終った2試合の相手が当時10連続KO防衛中で32戦31勝28
KO1敗のダニエル・ジェイコブスとメイウェザーと、1:2の判定で惜敗した1敗のみの当代人気随一のWBC王者で48戦46勝32KO 1敗1分のカネロ・アルバレスで、超一流の実力者の2人であったのをみると、納得出来るのである。
ちなみにアルバレスとの対戦はどうみてもゴロフキン優位は動かないものであった。
2.ライト級8回戦
ライアン・マーティン(米)25才、戦跡 21戦全勝12KO、IBFライト級6位
対戦者 プレイディス・プレスコット(米)34歳、戦跡 43戦31勝22KO 12敗
アマ戦跡 226戦202勝24敗、プロで当時日の出の勢いのアミール・カーンをKOして
初の1敗をつけている。他にマイク・アルバラードやテレンス・クロフォード等の強
豪とも対戦している歴戦の勇である。
1R プレスコットは体力もスタミナも打たれ強さもあり、タフでパンチ力も充分。
開始早々 打って出る。マーティンはガードを高くしてのアップスタイルでガード
を僅かに動かして巧みに防御し、プレスコットの攻撃を完全にシャットアウトし、
左ジャブで圧力をかける。
2、3R プレスコットは左ジャブと左右パンチを力一杯振うがマーティンは数少ないが的
確なパンチとガード力でプレスコットは打ちながら後退。
4R 左ボディブローでプレスコット ダウン。レフリーはローブローと判断し、休ませた
がリプレーで良く見るとローブローではなかった。再開後のボディブローでプレス
コット ダウン。これは明確なローブローでレフリーはマーティンに減点1とする。
5R マーティンの右アッパー顎に命中、プレスコット ダウン。マーティン倒しに掛か
るがプレスコット頑張って反撃。
6~8R プレスコットも良く反撃して終了。
判定は79:71が2人、77:73が1人でマーティン勝利。マーティンは将来を嘱望されている選手で、この試合でこれを十分知らしめた。
それにしてもプレスコットの粘りとタフネス振りは驚異的であった。
会場 アメリカ テキサス州 サン・アントニオ フリーマン コロシアム (2018/4/30)
IBFライト級タイトル・マッチ
チャンピオン セルゲイ・リピネッツ(ロシア)28歳、戦跡 13戦全勝10KO
近藤明広との決戦を制して戴冠。初防衛戦。 ニックネームはサムライ。
挑戦者 マイキー・ガルシア(米)30歳、戦跡 37戦全勝30KO、
WBCライト級チャンピオン。
1R リピネッツ左腕を下げてフリッカージャブを打ち易いように構えて前進。
ガルシアは早く鋭い左ジャブをくり出す。
2R リピネッツは中間距離ではガルシアと認識しており、接近戦を挑むがガルシアやゝ
下がりぎみであるが、左ジャブとカウンターの右ストレートの威力で対抗。
ガルシアは一階級上げたがスピードもあり調子は良さそうである。
3R リピネッツは左ジャブ少なく、接近して自分の距離に入るや左、右フックを振る
スタイルであり、体力に任せて押し切るタイプ。ガルシアの右ストレートは相手の
出る瞬間に放つ常にカウンターの為威力あり。
4R ペースはガルシア握られこれを取り返すために積極的にリピネッツ前に出るが、
出鼻をガルシアに打たれる。
5R リピネッツはこのラウンドから左ガードを高く掲げてガルシアの右パンチを警戒。
6R この試合の趨勢を決めるラウンドとお互いに正念場とみて正面から打ち合う。
7R 6Rから積極的に打って出たリピネッツの左フックの終り際にガルシアの左フック
がカウンターとなり、リピネッツ ダウン。
8~12R リピネッツ必死に反撃するが有効打なく、ガルシアは無理に攻めることなく
4階級制覇する事が最大の目標と定めていたようで、安全運転に徹した。
判定116:111が1人、117:111が2人でガルシアの圧勝であった。
ガルシアは常に早い左ジャブと左ストレートを中心に左・右フック、アッパーを上下に
打ち分け、右ストレートとはいずれもカウンターであり、強打者と云うよりは巧い選手で、足も使えて防御も巧みで試合運びも巧いオールラウンダーであり、欠点の少ない負
けない選手である。
途中契約のもつれから2年半のブランクがあったが、それを感じさせないスタイリ
ッシュな美しさがあった。この選手を崩すのは誰にしても仲々難しいことであろう。
会場 アメリカ カリフォルニア州 カーソン・スタブハブセンター (2018/04/30)
WBO フェザー級タイトル・マッチ
チャンピオン オスカル・バルデス(メキシコ)27歳、戦跡 23戦全勝19KO
北京、ロンドン五輪出場
挑戦者 WBO フェザー級タイトル・マッチ
チャンピオン スコット・クイッグ(英国)29歳、戦跡 37戦34勝25KO 1敗2分
WBA S・バンタム級王座を6度防衛しカール・フランプトンと統一戦を戦い初の1敗、王座陥落している。計量でリミットを1.3キロオーバーでこの試合勝ってもタイトル獲得はない。
1R バルデス左フックをボディに右フックを2発顔面にヒットし順調に発進。
2、3R バルデス左右フックをボディに次いでの右アッパーと全力投球するがクイッグも
ボディもボディを中心に攻め、前進を止めない。
4R バルデス左・右フックをボディに集中。
5R バルデス手数も的中率も良いが、それでも圧力をかけて前に出るクイッグに押され
て苦しい。中盤クイッグ、左フックからの集中打であわやダウンかとみられたが追
いきれず。
6R バルデス前ラウンドの劣勢を取り返すべく手数を増やす。
8R バルデスのボディブロー命中し、クイッグ身体をくの字に曲げて、ガードをボディ
に集中するが、にも拘らず圧力をかけ続ける。
11R クイッグの攻撃の中、右ボディブローがローブローとなり、弱っていたバルデス休
めて助かる。
12R お互いに打ち合いの中終了。
判定は117:111が2人、118:110が1人でバルデス勝利。判定は大差がついたが中味は
どちらに転ぶか解らないもので、途中諦めた方が負けのような試合であった。
バルデスの手数と目一杯振るパンチに対し、クイッグの体力とスタミナ、一発のパンチで
一歩も引かない好試合であった。バルデスは途中顎を骨折していたとの事。バルデスは
一発のパンチの切れ味に乏しく、突進力のある選手には苦戦を強いられるであろう。
チャンピオン ドミトリー・ビボル(ロシア)27歳。戦跡 12戦全勝10KO 。
挑戦者 サリバン・バレラ(キューバ)36歳。戦跡 22戦21勝14KO 1敗。
同級1位、1敗は引退したアンドレ・ウォード戦である。
1R ビボルは左ジャブからの右ストレート。バレラは足を使うとみられていたが圧力に
押されるのを嫌って打って出る。ビボルはガードとステップバックで対抗する。
2R バレラの右に対してのビボル右カウンターを狙う。ジャブの突き合いでもビボルの
スピードが優る。ビボルバッティングで右目尻切る。
3R ビボルは目尻のカットを防ぐべく、右拳を特に高く揚げて前進。
4R 左フックからビボルの攻撃強まり、バレラの攻撃はガードとステップで悉く防ぐ。
5R 劣勢を挽回すべく攻撃を強めるが次第にビボルのパンチに押される。
6R バレラはビボルのパンチ力と圧力に対抗する為に力を入れてパンチを振うが、
その為にコンビネーションは出ない。ビボルは対照的に体勢を崩すことなく早く正
確なパンチを振う。
7、8R 試合は一方的になって来た。
9R 開始前にドクターチェック。試合中にビボル、モニターで残り時間確認する。
10~12R ビボル優位に進み12R左ジャブからのワンツーでバレラ遂にダウン。
そのまゝKO負けとなる。
バレラは始めてのKO負けであった。この試合は11Rまでバレラのフル・マークであった
ようだ。バレラは開始から試合の主導権を握れず、色々考えて対応したが、ビボルの
ガードとステップに封じ込められて完敗した。
しかし最後までスピード、パンチ力も衰える事なく、一発逆転を狙ったの流石であった。
チャンピオン セルゲイ・コバレフ(ロシア)34歳。
戦跡 34戦31勝27KO 2敗1分。ニックネームは「クラッシャー」。3団体統一チャンピオンであったがアンドレ・ウォードに連敗したがウォードその後引退、コバレフは昨年11月返り咲いた。
挑戦者 イゴール・ミカールキン(ロシア)32歳。戦跡 22戦21勝9KO 1敗、同級4位。
1R ミカールキンは特に右ガードを高く、コバレフの左ジャブに対抗し、手数でポイン
を狙う作戦。コバレフはリラックスして体の力を抜いて、左ジャブ、右もジャブの
ように使い、サウスポーを苦手にしているようには見えない。ミカールキンの顔く
なってくる。
2R コバレフのトレーナー ジョン・デビッド・ジャクソン トレーナーと別えてトレー
ナーを変更する。
3R ミカールキンは目一杯力を出している為に、疲れてきた。
4~6R 体力差がどんどん出て来て、右目下切り、鼻のブリッジも切れ出血多くなり、7
R開始早々ドクターチェック。再開後出血激しく、ドクターストップとなり、
コバレフ復活と云って良いだろう。
但し、ウォードに敗れる前のコバレフの強さは「クラッシャー」の名に相応しく凄みがあ
ったが、その凄みはやゝ衰えた感があった。
このクラスはWBAに全勝のビボル、IBFに全勝のペテルビェフ、WBCにスーパーマン
ことアドニス・スティーブンソンがいて、4強時代に入った。
会場 ロシアのソチ アドレル・ボリショイ アイス・ドーム (2018/4/16)
ソチはロシア屈指の保養地である。
アメリカとヨーロッパのプロモーターが提携、S・ミドル級とクルーザー級の各8人がエントリーしてのワールド・ボクシング・スーパー・シリーズで2階級の賞金合計53億円、優勝賞金は各10億6千万円である。クルーザー級の4団体の各王者がエントリーして各々が全勝と言う華やかさがある。
IBFクルーザー級チャンピオン ムラト・ガシエフ(ロシア)24歳。
戦跡 25戦全勝18KO、ニックネームは「アイアンマン」
対戦者 WBAクルーザー級チャンピオン ユニエル・ドルティコス(キューバ)31歳
戦跡 22戦全勝21KO。 ニックネームは「KOドクター」、21KOのうち1R KOが10試合、4R以内が19試合ある。
1R ドルティコスは長く鋭い左ジャブで主導権を握る。ガシエフは右フックを顔面、
ボ ディに。
2~4R ドルティコスは左ジャブを主体に右ストレートを決め手として圧力をかける。
ガシエフ4Rまでのドルティコスのパンチを極度に警戒して、ガードを特に左グロー
ブを高く、専守防衛に努めるが、後退しながらも時折左フック、アッパーで的確に
反撃を試みる。
5R 危険な4Rを終えて、ガシエフの反撃始まり、終盤の右フックに始まる猛反撃に左右
をフルスイングは迫力満点。
6R ガシエフの左フック・左アッパーでドルティコス退り始め、ペースはガシエフに移
行する。
7R ガシエフ、左ボディブロー2発、右ボディ、左右ボディ、左アッパー、右フック顔
面と主としてボディを集中的に攻める。
8R 劣勢を挽回すべく、ドルティコス反撃、手数でこのRをとる。
9R ガシエフの執拗なボディ攻撃にドルティコス弱ってくる。
10、11R ガシエフのプレッシャー厳しくなり、右フックでドルティコスぐらつく。
12R 左フックでドルティコス ダウン。その後の連打で2,3度ダウンTKOとなる。
(12R 2分52秒)
ドルティコスは長丁場の経験が乏しく、5R以降急速に攻撃力がダウンした。
しかしそれでも尚左ジャブの鋭さと、右ストレートの威力は残しており、一発逆転の力は残しており流石と思わせた。
ガシエフは細かいパンチも使い、チャンスでは思い切ったパンチも振い、左フックのボディブロー、次いでの左アッパーは有効で決めての左フックの威力も充分。ガードも固く、体力にも恵まれてスタミナもあり楽しみな選手である。
リガはラトビア共和国の首都でバルト海の真珠と謳われる。
WBOクルーザー級チャンピオン オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)31歳。
戦跡 13戦全勝11KO 。12年ロンドン五輪ヘビー級で金メダル。
アナトリー(ロマチェンコの父)に師事
対戦者 WBCクルーザー級チャンピオン マイリス・ブリーディス(ラトビア) 33歳。
ラトビア初の世界王者。戦跡 23戦全勝18KO。ワシル・ロマチェンコを手本として、そのテクニックは重量級に例をみない。このクラス最強と目される。
1R ブリーディス主導権を狙って圧力をかけコンビネーションを振う。
2R ブリーディス接近戦を仕掛けて、力強いパンチを振う。
一発の威力ではブリーディス。
3R バッティングでウシク右目上を切る。
(ベースは依然としてブリーディス)
4R この試合の趨勢を決めるラウンドとお互いに認識して両者一歩も引かず打ち合う。
5R ウシクの左・右ボディブローが効いてブリーディス後退。ウシクはボディ中心に攻
める。
6~12R 試合はウシクのペースで進み、手数もウシクが多く、ブリーディスは守勢回るが
時折強打を振って反撃するパターンが続いてウシク優勢のまゝ終了。
判定は113:114、115:113が2人でウシクの勝利となった。
ウシクは多彩なパンチと手数、固いガード、スピード、試合運びの巧みさといった総合力で抜きん出ており、負けないボクサーである。
またブリーディスは下馬評に比べて善戦。良く鍛錬されている事を物語ってパンチの鋭
さと、力強さ、スタミナ、スピードは最後まで衰えることなくチャンピオンの意地を見
せた。
チャンピオン ドニー・ニエテス (フィリピン)35歳、戦跡 35戦40勝22KO 1敗4分
ミニマム、Lフライ、フライ級各級のタイトル制覇している。ニックネームは「蛇」
挑戦者 ファン・カルロス・レベコ(アルゼンチン)34歳
戦跡 42戦39勝18KO 3敗。
1R 両者ガードも固く、スピードもあり手もよく出るが手数でレベコ。
2R 両者とも防御が巧みで、パンチをまともに食わない。ニエテスは先ずボディを攻め
てガードを下げさせる。
3R ニエテスは相手の戦力を見極めたか力で押す方針を決めたようだ。
4、5R 体力、パンチ力に勝るニエテスの力の前にレベコ押され始める。
6R レベコはこのR勝負に出て打ち合うがゴング近、ニエテスの右ストレートのカウン
ターで、ダウン寸前ゴングに救われる。
7R 開始早々、ニエテスの連打で、レベコ ダウン。立上がったところコーナーからギブ
アップの申し出あり、7R KOでニエテス勝利。
ニエテスに衰えは見られない。
チャンピオン シーサケット・ソールンビサイ(タイ)31歳
戦跡 48戦43勝39KO 4敗1分。2013年5月に初タイトル、防衛2戦目にカルロス・クワドラスに敗れたが、2017年3月に絶対王者。プロ・アマ通じて無敗のローマン・ゴンザレスを下し、2戦目もゴンザレスをKOに下し、2度目の防衛戦である。なお他の3敗は2009年3月デビュー後に5戦して1勝3敗1分の成績であった。
挑戦者 ファン・カルロス・エストラーダ(メキシコ)27歳。
戦跡 38戦36勝25KO 2敗。ニックネームは「エル・ガショ」(雄鶏)、2017年9月挑戦者決定戦でクワドラスを接戦の末に下して挑戦者となった。
1~12Rまでシーサケットが正面から打って出てエストラーダがこれをカウンターで迎え
打つ、また打ち終りにパンチを当てるスタイルで進行、パンチの当った数は断然エス
トラーダであったが、一発パンチの威力はシーサケットが数段上でレフリーの見方で
試合の趨勢が分かれるところとなった。
判定は117:111、115:113でシーサケット。114:114が1人でシーサケットの勝利に帰したが、シーサケットにとっては消化不良の試合であったろう。
エストラーダは自分の作戦通りの試合が出来て勝利を確信していたに違いないが、ボクシ
ングは格闘技であり、相手にどれだけダメージを与えるかの勝負であることから、この判定も止む得ない面もあったのである。
シーサケットは武骨で策を弄しない選手で、エストラーダのように巧い選手に苦戦するが、これはこれで魅力である。
製本用 原稿
会場 米国 ラスベガス マンダレイベイ・イベンツ・センター(2018年3月19日)
WBC ウエルター級 挑戦者決定戦
元2階級制覇王者 ダニー・ガルシア(米)29歳、戦跡 34戦33勝19KO 1敗。
ニックネームは「スウィフト」(俊敏な奴)11ヶ月前にキース・サーマンに敗れて
初の1敗。
対戦者 ブランドン・リオス(米)31歳、戦跡 38戦34勝24KO 3敗1分。
ニックネームはバンバン、3敗は2012年ごろにマイク・アルバラートと3戦共に激闘を
演じての2勝1敗。パッキャオに判定負け。ティモシー・ブラッドリーに2度ダウンの末
9ラウンドTKO負け。
1R リオス例によってガードを高くして前進。ガルシアはやゝ退りぎみながら左・右
フックをボディに。
2R ガルシアは打ち合いを避けて、下りながらショート・パンチを正確に打つ。
3R ガルシアは下りながら余裕があり、リオスの動きはよく見えているようだ。左・右
フックをボディ接近戦で早い連打。コンパクトに打つ事に留意している。
4R ガルシアのパンチは鋭く、正確に急所にヒット、右フック、右ストレート顔面に必
殺の右フックはゴングの途中で止める。すっかり余裕をもった。
5R 右フックがボディに、右フックが3発リオスにヒット。ゴング近くでの左フックで
リオスの足がもつれる。
6R リオス、これではならじと攻撃を強める。ガルシアは一休み。
7R ガルシアの右ストレートとがカウンターとなり、ついでのコンビネーション
左・右フックが面白いように当り始める。リオス苦しくなってきた。
9R リオス前に出るところに、右ストレートのカウンター2発。最後は右ストレー
ト一発でリオスついにダウン。そのまゝTKOとなる。
ガルシアはタイトルを獲得するまで相撃ちを狙って必殺の左フックを振って強敵を打ち
倒してきたが、チャンピオンとなって安全運転に変更し、力任せのボクシングから理詰
めのボクシングに転換してコンパクトにパンチを出してきた。勝つコツを掴んだようだ。
これで再びキース・サーマンとの戦いとなって非常に楽しみである。
さて、リオスは以前の打ち合いの迫力がやゝ弱まり、パンチの強さもスピードも粘りも
全盛時のようではなく引退するのではないかと思わせる試合内容であった。
チャンピオン デビッド・ベナビデス(米)21歳
戦跡 19戦全勝17KO、2017年9月8日チャンピオンのバドウ・ジャックがクルーザー級
へ転向の為タイトル返上をうけて、王座決定戦をロナルド・ガブリルと行い2:1で勝
利してタイトルを獲得したもの。ニックネームは「レッド・フラッグ」
挑戦者 ロナルド・ガブリル(ルーマニア)、戦跡 20戦18勝14KO2敗
1R ベナビデス体格差を活用し長いリーチで左ジャブを良く出す。中間距離を不利と
みたがガブリルはガードを固めて接近を図る。
2R ベナビデスは左ジャブからの右ストレートで優位に立つ。
3R ベナビデス、左ジャブから左右フック、アッパーと多彩な攻撃を仕掛ける。パンチ
も強そうだ。
4~8R 完全に主導権を握ったベナビデスはガブリルがガードを固めるところに左、右
フック、同ボディ、アッパーと空いたところへパンチを自在に打ち込む。
9R ベナビデスどうやら右拳を痛めたようで、左ジャブのみでアウトボクシングに変
える。そのまま12Rまで戦い終了。
判定は119:109、120:108が2人でベナビデス完勝。これからが楽しみな選手がまた
出てきた。
チャンピオン エロール・スペンス(米)28歳、戦跡 22戦全勝19KO
サウスポー ニックネームは「ザ・トウルース」(本物)、敵地で強豪ケル・ブルック
を11R KOに下して戴冠。現在9連続KO中である。
挑戦者 レイモンド・ピーターソン(米)33歳、戦跡 39戦35勝17KO 3敗1分。
IBF ウェルター級1位、WBAタイトルを返上して本日挑戦した。3敗はティモシー・
ブラッドリー、ルーカス・マティセ、ダニー・ガルシアといずれも世界タイトル保持者
の強者揃いである。しかしオッズは16:1でスペンスとなっている。
1R スペンスは右リードパンチを顔面、ボディに打ち込む。ピーターソンも中間距離を
得意とする選手であるが、スペンスとこの距離で戦うのを不利とみてガードを高く
掲げて接近を図る。
2R 接近戦を狙うピーターソンに対し、スペンスはスピード豊かな右リードからの左ス
トレート、アッパー、フックと多彩な攻撃で接近を許さない。
3R ペースは完全にスペンスのものとなって、ピーターソンは接近の前に打たれる。
スペンスはガードの隙間を狙って、正確なパンチを打ち込みピーターソンのダメー
ジ次第に深まってくる。
5R 連打の中の左フックでガードを固めて防御に努めてきたピーターソンも遂にダウ
ン。試合は一方的になって、ピーターソンの顔面も腫れてくる。
6R スペンスは軽くステップを踏み、まるでサンドバックを叩くように打ち始めて終了
が見えて来た。このラウンド終了時コーナーが試合中止を申し出て、スペンスの
TKO勝ちとなった。
誰と戦っても好試合を繰り広げる試合巧者ピーターソンであったが、過去これ程まで全
くなす術なく敗れ去ったのは始めての事であり、スペンスの才能の高さを改めてファン
に見せつける事となった。これからもっと強くなる事であろう。楽しみな選手である。
ちなみにこのクラスのWBAスーパーにキース・サーマン、WBAレギュラーにルーカス・
マティセ、WBOにパッキャオを破ったジェフ・ホーンがいて、他にショーン・ポーター、ダニー・ガルシア、テレンス・クロフォード、パッキャオと多士済々である。
レベルが高いクラスではある。
チャンピオン ジョージ・グローブス(英国)29歳、戦跡 30戦27勝20KO 3敗
ニックネームは「セント・ジョージ」
挑戦者 クリス・ユーバンク Jr.(英国)28歳、戦跡 27戦26勝20KO 1敗
元WBAミドル級王者。
この試合はアメリカ、ヨーロッパのプロモーターが提携してS・ミドルとクルーザー級
の2階級各8人がエントリーして2階級合計での賞金総額53億円、優勝賞金10.6億円が賭けられている。その準決勝戦である。
1~12Rまでグローブスは左手をやゝ下げてのジャブを主体として、相手が入ってくる
ところに左ストレートでカウンターを打ち込むスタイルである。
対してのユーバンクJr.は無尽蔵のスタミナに任せて、目一杯強打を振う一発当れば良
いのスタイルである。大振りのユーバンクJr.に対して、小さいパンチをコツコツ当て
るグローブスが結局はポイントをあげて、有利に試合を運び盛り上がりなく終了。
117:112、116:112、115:113でグローブスが判定で勝利した。
グローブスはかってカール・フロッチと激闘を演じ、2戦ともTKOで敗れている。
もう一敗はバドウ・ジャックの全盛期である。これで人気者になったが、その時と比べ
ると体力もスタミナもついてきて試合運びも巧みとなり、そこそこ安定したチャンピオ
ンとなるであろうが、今一つ決め手に欠けるところがある。
ユーバンクJr.はこのスタイルではタイトルを獲得するのは無理であろう。ジャブがな
く大振りではテクニックのある選手に翻弄されてしまう。
グローブスはサーマン、クロフォード、ポーター、ガルシアには勝てまい。
ボクシング史上、特にクロフォードはスペンスと並んで稀有のボクサーなのだ。
IBF S・ミドル級暫定王者タイトル・マッチ
チャンピオン アンドレ・ディレル(米)
戦跡 28戦26勝16KO 2敗分 アテネ五輪銅メダリスト
挑戦者 ホセ・ウスカテギ(ベネズエラ)27歳、戦跡 26戦26勝22KO 2敗
両者は9ケ月前に対戦、ウスカテギがガードしてたが連打の途中でゴングがなり、直後
のパンチが反則ととられて、反則負けとなった。ディレルはダウンしていたが、試合直
後コーナーのコーチがウスカテギを殴って騒然となったなったいきさつがあり、再戦となった。ウスカテギの他の1敗はミドル級時代マット・コロボフに敗れたものである。
1R ディレルはサウスポーで前回の試合ではウスカテギもサウスポーで戦ったが今回
は右構え、前傾姿勢を保て、手数も多く圧力をかけて前に出る。
前回の試合で自信を持ったようである。
2R ディレルは今回足を使わず正面からウスカテギを迎え打つ戦術をとった様だ。
3R ディレルは右ジャブでウスカテギの前進を止めようとするが、腰が引けて防御主体
の為に威力がなく、前進を止められない。ゴング寸前ウスカテギの右ストレートで
あわやダウンと見られた。
4R ウスカテギの攻撃は変らず、前傾姿勢のまゝ上体を揺すって、ガードも固く体も柔
らかくみえて、ディレルのパンチはまともに当らない。
5R ウスカテギの攻勢変らず。
6R ディレルこのまゝではジリ貧になるとみて攻勢にでる。左ストレート2発当てる。
7R ディレル攻勢に出るが続かず、ロープに詰ることが多くなる。
8R ウスカテギ勝負ところとみて一気に攻勢を強め、ディレル防戦一方となり、この
ラウンドの終了時コーナーは試合中止を決断。ウスカテギのTKO勝ちとなった。
ディレルも色々と対処方法を考え試してみたが、体力、パンチ、手数と地力に差があっ
て完敗となった。
製本用 修正済
会場 米国 ニューヨーク ブルックリン バークレイズ・センター(2018年3月5日)
WBCヘビー級タイトル・マッチ
チャンピオン デオンティ・ワイルダー(米)32歳、 戦跡 39戦全勝38KO
挑戦者 ルイス・オルティス(キューバ)38歳。戦跡 30戦28勝KO 2無効試合、
サウスポー、オルティスは38歳となっているが、43歳ともいわれている。
1R オルティスはカウンターパンチャンーであるがワイルダーがパンチを出さない為
に、攻勢に出て弱いが左ストレートとを当てる。
2R オルティスは右に回りながらワイルダーの右から距離をとり、自分の左は当る距離
をとり、自分の左は当る距離を計る。
3R ワイルダーは従来の大振りを避けて、長い左ジャブで相手の接近を止め距離を図っ
て右ストレートのカウンターを狙っている。
4R ワイルダーがパンチを出さず、前にも出ない為にオルティス足を使って右回りなが
らパンチを出す。
5R このラウンド終盤、ワイルダーの早く鋭い右ストレートでオルティス ダウン。
ゴングに救われる。
6R このラウンドがお互いにとって試合の趨勢を決めるとみて、激しく迫力満点の打ち
合いをみせる。
7R 中盤からオルティスび左ストレートのカウンターから始まった猛攻が続いて、
ワイルダー ダウン寸前に追い込まれる。
8R 7Rで体力を使い切ったオルティスは疲れてワイルダーを追い込めず、ワイルダーは
足を使った左ジャブを時折出して回復を計る。
9R オルティス疲れて攻撃できないうちに、ワイルダーはダメージから回復してくる。
10R 回復したワイルダーの連打だオルティス ダウン。立上がったがワイルダー再度の
連打でオルティスをKOに下す。
これでヘビー級の初戦は終りアンソニー・ジョシアとの統一戦が近づいて来た。
ワイルダーの強さは
1.右ストレートの威力 2.左ジャブの長さ 3.12Rでも衰えないと思われる体力
とパンチ力 4.意外と思えるアウトボクシングも出来る能力 5.畳み掛ける集
中力がある。
欠点をあげると、今回の試合にもみられる
1.懐に入られた場合にもろさが見られる 2.大振りの裏にカウンターを取られる
場合がありそうだ。
一方のジョシアは全勝全KOで勝ち進んできているが、一発のパンチ力ではワイルダーに軍配を上げる事に異存はあるまい。
最大の難点はスタミナが無い事であり、打たれ弱い事である。先ず順当に戦えばワイルダーの勝ちは動かないところだ。ワイルダーは荒っぽくみえるが、対応能力が高いとこ
ろも見逃せない。
さて敗れたオルティスは今までワイルダーが戦った相手としては最強であり、ボクシングの巧さは流石であったが、スタミナと一発パンチの威力に屈したのは已むをえないところだが、山場もつくって、試合としても面白いものであった。
マルセリーノ・ロペス (アルゼンチン)31歳
戦跡 36戦33勝18KO 2敗1分 WBC Sライト級28位.
戦跡の中にはアミール・カーン、テレンス、クロフォードとも戦い激闘王マイク・アル
バラード とは全米年間最高試合との評価される試合を行っている。
対戦者 プレイディス・プレスコット(コロンビア)33歳
戦跡 41戦30勝22KO 11敗.
両者ともにこのクラスの中堅選手同士で実力者である。
1R 長いリーチに恵まれたプレスコットはアウトボクシングに適しているにも拘らず、
ガードを高く掲げて左ジャブを中心に正面衝突を狙う。ロペスは短身を更に低構え
て、ボディワークを使って圧力をかける。短いリーチの割りに左ジャブがうまい。
2R 正面からの打ち合いはロペスに有利となりペースをつかむ。
3R 頭をつけた打ち合いにロペスは上・下にパンチを打ち分けてのって来た。
4R 打ち負けたプレスコットは後退を始めるが作戦の変更はない。
5R プレスコットは左構えにスイッチし、何とか戦況を打開しようと、打って出て右
フックを振うところにカウンターの右フックでプレスコット ダウン。立ち上がっ
たところにロペス再度の右フックでプレスコットをKOに下した。
ロペスは気風の良い試合振りで好感の持てる選手である。この選手が28位とはこのあたりのクラスには強豪が群をなしているという事だ。
チャンピオン ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)32歳
戦跡 46戦43勝27KO 3敗 3階級制覇王者
挑戦者 メルシト・ヘスタ(フィリピン)30歳
戦跡 34戦31勝17KO 1敗2分 唯一の1敗はミゲール・バスケス。マニーパッキャオの後継者と云われていた時期もある。その戦法も良く似ている。コーチはパッキャオを育てた名コーチフレディ・ローチが付いている。
1R ヘスタ試合開始早々から攻勢にでる。
2R 1R同様ペースはヘスタ。ヘスタの距離である。主武器は右フック。
3R リナレスは体が温まってきたか動きにもスピードが出てきた。ヘスタの右フックを
警戒して左ガードはやゝ高めに構える。
4R 3Rからリナレスのカウンターが決り出し、左ジャブと相俟ってヘスタ出られなく
なる。
5~9R ヘスタの出るところにリナレス出鼻を叩いて、これを止め中盤からパンチのス
ピードをげて来て、ヘスタこれに対応できず。
10R ヘスタ勝負を賭けて打って出るが、リナレスはこれに付き合うことなく、足を
使って躱す。
11、12R ヘスタは必死に攻撃に出るが、リナレスの右ストレートのカウンターが小気
味よく決まり終了。
判定は118:110が2人、117:111が1人でリナレスの完勝であった。
リナレスはヘスタに力で対抗することなく、スピードを主として戦った。パンチの精度
が高く、技術の差は歴然としており、後半になっても些かもスピードが落ちることなく、ボクシングのスタイルの完成型をみせた。
絶えまない努力によって自分の型をつくりあげ、磨き上げて遂にこゝまで到達したかと4の感が強い。力づくのボクシングではなく、流れるような美しさがこゝにはあった。
ルーカス・マティセ(アルゼンチン)
戦跡 43戦38勝35KO 4敗1無効試合、元WBC暫定 S・ライト級チャンピオン
対戦者 テワ・キムラ(タイ)
戦跡 38戦全勝28KO WBAウェルター級1位
1R キラムはマティセの過去の試合を充分ビデオで研究してきたとの事で長い左ジャブ
でマティセを近づけない戦法に徹する作戦のようだ。
2R マティセ圧力をかけて前進、キラム押される。
3R マティセ2R同様に圧力をかけて前に出るが手が出ない。
3~6R キラムは極力打ち合いを避けて左ジャブで距離をとり、時折右ストレートを
放ってあとは足を使って動く。
7R キラム、自分の作戦に持ったか動きも良くなり、右ストレートも出すようになるが
威力はない。マティセは次第に焦り始めてパンチを振りまわるが全く当らない。
8R 敗色が濃厚になったマティセの突然の左ストレート返しの右フックでキムラ ダウ
ン。立上がったところに右ジャブ、左ストレートでキラム2度目のダウン。
暫く立上がる事はなかった。
対戦相手のキラムは左ジャブだけで他のパンチには全く威力なく、タイトルを争う実力はなかった。成績は対戦した相手によるようだ。
さてマティセはニックネームを「マキラ」(闘うマシン)と称し、KOの山を築いてきたが、負けた相手はザブ・シュダー(スピード抜群)デボン・アレキサンダー、ビクトル・ポストル(共に巧い選手)そしてダニーガルシアである。
今日の試合をみるとマティセは作戦をたてない選手のようで、足を使って闘われると追いついていかれない。対策を構ずるかと思えばそれもなく、一発当てれば良いと思っているようだ。年令から来るスピードとパンチの衰えは争えず、今後の防衛は難しいのでは思われた。足が早くテクニック有するキラムよりはるかに良いボクサーはこのクラスに沢山
いるのだから。
アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)WBO L・フライ級6位 ニックネームは「ティト」
戦跡 17戦16勝16KO 1敗。1敗は17戦目に田中恒成にダウンを喫した上での大差の判定
に敗れ、タイトル奪取に失敗し、再起戦がこの試合となった。
( 田中がタイトルを返上した為 )
対戦者 フアン・アレホ(メキシコ)同級4位、戦跡 30戦25勝15KO 4敗1分
ニックネームは「ピンキー」
1R 両者開始早々から、積極的に手を出す。
2R アコスタ中盤から集中打。アレホも負けずに立ち向かうがアコスタのパンチ力に
やゝ押される。
4R アコスタ左フックヒットして攻勢、アレホも何とか対抗する。アレホの4敗のうち
3敗はデビューからの3連敗がある。
5R アレホ、左構えにスイッチするが効果がないとみるや元に戻す。アコスタ パンチ
の打ち終わりにやゝ棒立ちになるきらいがあり、そこに右フックを受ける危険が何
度もみられた。
7~9R アコスタのペースで試合は進むがアコスタは無理をせず慎重に試合を進め、何が
何でもタイトルを獲る事を優先しているようだ。
10R 右フックからの返しの左フックが相打ちとなったが、パンチ力の差でアレホ ダウ
ン。そのまゝKOとなった。
アコスタは強打者で全KOで相手を下してきたが、相手が田中のように打ち終わりを狙っ
来られると、体が堅くやゝ棒立ちのところがあり、防御も甘い為に今迄のようにはいか
ないであろう。これから強い相手と当ることになるので、正念場はこれからである。
チャンピオン ミゲール・アンレル・コット( プエルトリコ )37歳、
戦跡 46戦41勝33KO 5敗、S・ライト級からミドル級まで4階級を制覇している。
プエルトリコでは初。5敗の中にはアントニオ・マルガリート、マニー・パッキャオ、
フロイド・メイウェザー、オースティン・トラウト等がいる。
挑戦者はサダム・アリ(米)29歳、戦跡 26戦24勝14KO 1敗、同級7位。
1敗はジェシー・バルガス
1R コット圧力をかけて前に出る。アリは足を使って時折ワンツー・右ストレートを
放つ。動きはスムーズである。
2R アリの右ストレートでコット足がふらついたところにアリ集中打。アリは対コット
戦に充分に対策を練ってきたようで、体調も万全に整えている。コットの打ち終り
に出す右ストレートは狙い通りである。
3R コット前進。パンチは正確にヒットしないがアリ消極的でコットペース。
4R アリの左フックでコット足がふらつく。
5、6、7R コットの左ジャブが良く伸びて、左フックのボディブローも有効。6Rは右
ストレートでアリよろめく。コットのペースとなって来た。
8R コーナーから喝を入れられたかアリ一転して攻撃に出る。終盤のアリの左アッパー
有効。
10R 左右フック、上下に打ち分けられコット失速、ダウン寸前に追い込まれる。ボディ
を打たれたのが原因か?
11、12R アリは充分余力を残しており、パンチの切れもスピードも変らずに一方的な試
合となって終了。
判定は115:113が2人、116:112が1人でアリの勝利となり、タイトル獲得となった。
さてコットである。これで引退となったが
2004年9月 全勝同士で争ったWBO S・ライト級のタイトルを6R TKOに下して獲得。
WBAウェルター級タイトルを獲得。
2006年6月まで6度防衛し2006年12月カルロス・キンタナを5R KOに下してWBAウェ
ルター級タイトルを獲得。
2008年4月 まで4度防衛。2010年6月ユーリ・フォアマンを9R TKOに下してWBA
S・ウェルター級タイトルを獲得。
2012年6月 セルヒオ・マルチネスを10R TKOに下しWBCミドル級タイトルを獲得で
4階級王者となった。
2000年シドニー五輪に出場したがモハメド・アブドゥラエフに疑問の残る判定で敗れ
ている。プロ転向後はボブ・アラムのトップランク社と契約しS・ライト級でランクを
上げていったが、自動車事故で(プエルトリコのジムに向う途中で居眠りしてコンクリートの壁に激突)で骨折した腕にチタンを埋め込むほどの重症を負う。
その後復帰しブラジルの ケルソン・ピントを6R TKOに下し、デマーカス・コーリー、リカルド・トーレス、 ポール・マリナッジ等を下している。
ウエルターに階級を上げて ザブ・ジュダー、シェーン・モズリーに勝った頃からパウンド・フォー・パウンドの評価は高まった。
アントニオ・マルガリート、マニー・パッキャオ、フロイド・メイウェザー等には敗れ
ているが、中量級のスター選手として常にその一角を占めて15年、その存在感を示し
続けたスター選手であった。
グスタボ・ビットリ(アルゼンチン)28歳
戦跡 23戦20勝11KO 2敗1分、サウスポー
アレクス・サウセド(米)23歳、戦跡 25戦全勝15KO WBO S・ライト級6位
1R 両者開始早々から打ち合う。お互いに主導権を争う。サウセドはジャブの良く出で
るが左フック、左アッパーに威力がありそう。
2R ビットリはサウセドのパンチのいりょくを感じて、これを止めるべく積極的に打っ
て出るが次第にサウセドのパンチに押されてくる。
3R サウセドの左フックのカウンターにビットリ ダウン。立上がったところに、再度
の左フックで2度目のダウン。TKOとなった。
サウセドは左ジャブと特に左フック、アッパー、右ストレート共にスピード、鋭さも
あり強さもある。全体にバランスもとれており、今後大いに期待される選手とみられる。
タイトル獲得も夢でない。
ホセ・ラミレス(米)25才、戦跡 20戦全勝15KO、WBC S・ライト級3位
マイク・リード(米)24歳、戦跡 23戦全勝12KO、WBO S・ライト級10位。ニック
ネームは「イエス・インディード」サウスポー
1R 開始早々ラミレス、プレッシャーをかけて力強いパンチをたて続けに振う。
リードは押されて、それでもカウンター狙い。
2R ラミレスは相手のカウンター狙いもいさい構わず連打でリードたまらずダウン。
立上がったところに、こゝぞとばかりロープに詰めて乱打、レフリーストップを
呼び込んだ。
左フックのボディブローが有効であった。生きの良いこの攻撃一辺倒のスタイルは、
今後人気が急上昇することであろう。
アルツール・ペテルビエフ(ロシア)32歳、戦跡 11戦全勝全KO、IBF L・ヘビー級2位
対戦者 エンリコ・コーリング(ドイツ)27歳、戦跡 24戦23勝6KO 1敗
IBF L・ヘビー級3位
1R ペテルビエフは高いガードで構え、左リードパンチを出しながら、プレッシャーを
掛けて出る。
2R ペテルビエフは決してパンチを大振りする事はなく左ジャブを丁寧に突いて相手を
コントロール、ガードを固めて接近し自分の距離となるやパンチをくりだす。
3R ペテルビエフはショートレンジの打ち合いも巧みで、コーリングは懐に入っても打
打ち負ける為に打つ手がなく、防御に追われる。
4R ペテルビエフは身体も頑丈でコーリングのパンチが当っても全く効いた様子を見
せない。
5R コーリングは思い切って強いパンチを出さないと、相手がどんどん出てくるので、
振り回すが全く相手に効いた様子もなく、次第に疲れてくる。
6~9R 試合の流れはそのまゝペテルビエフのペースで進んでいくが観客のブーイング
も始まってくる。しかしコーリングはプロ入り以来ダウンした事がない防御技術を
有しており、ダウンしてなるものかの気持ちが窺える。ペテルビエフも何がなん
でもKOしょうとは思っていないようにみえる。
10R ペテルビエフはこのラウンド、やゝ力を入れて攻撃を強めてきた。
11R ペテルビエフ倒しにかゝる。
12R ペテルビエフKOを狙って力強いパンチを振ってきた。たまらずコーリングついに
ダウン。やっと立ち上がったところに連打で流石粘りのコーリングも2度目のダ
ウンで戦意喪失。
12R 2分22秒でKOとなり、12戦全勝で初タイトル獲得となった。
デビュー以来ペテルビエフの評価は高く、もっと早くタイトルを獲ると思われたが、敬
遠されたか、チャンスが廻ってこずにやっとの感が強い。頑丈な身体を持ち、スタミナ
も抜群。パンチもあり、ガードも固いのに慎重な性格が無理攻めをせず、石橋を叩いて
渡るような試合振りである。それでも全試合KO勝ちとは誠に畏れ入る選手ではある。
このクラスは左ストレート一発狙いでKOの山を築くスティーブンソンを除いては皆基本
に忠実で、堅実な試合振りの選手ばかりで、強打者であるにも拘らずボクシングが巧く
隙のない選手達である。
しかし無敵のコバレフはアンドレ・ウォード戦連敗したが、この2試合ともに中盤から
疲れをみせて、スタミナ不足を露呈しており、スティーブンソンは年齢のこともあって、
早晩ビボルとペテルビエフの2強の時代となる予感がする。
チャンピオン ドミトリー・ビボル(ロシア)26歳、戦跡 11戦全勝9KO、 父は韓国
母はモルドバ生まれ。アマの戦跡 283戦268勝15敗
挑戦者 トレント・ブロードハースト(オーストラリア)29歳。
戦跡 21戦20勝12KO 1敗、WBA L・ヘビー級10位
1R ビボルの左ジャブでブロードハースト ダウン。立ち上っタところに右ストレート
と顔面にヒット、ブロードハースト痛烈なダウン。すぐさまレフリーは試合をスト
ップしてKOで終った。
身体から力の抜けた自然体で、しかも全く力みのないパンチは切れ味抜群。限りない将
来性をみせて、スーパースターを予感させる選手である。
しかしこのクラスにはWBCにスーパーマンことアドニス・スティーブンソンがKOの山
を築いて君臨し、WBOにセルゲイ・コバレフ、IBFにアルツール・ぺテルビエフがいて
実力者が揃うクラスでもある。
フェザー級10回戦
カール・フランプトン(英国)30歳、戦跡 24戦23勝14KO 1敗。
2017年1月レオ・サンタクルスとのリマッチに敗れ初の1敗、タイトルを失い再起戦
である。ニックネームは「ジャッカル」
対戦者 オラシオ・ガルシア(メキシコ)27歳、戦跡 37戦33勝24KO 3敗1分
ニックネームは「バイオレント」(乱暴もの)
1~5Rまでフランプトンやゝ左を下げてジャブを打ちやすいスタイルで相手の出鼻を
叩き、相手が出て来たら下がり、出ないとみるやパンチをくり出し打ち終わるや、
後退又はクリンチと効率の良いボクシングを展開しリードしたが、 ガルシアは、
6Rから攻勢を強めて、強いパンチを振う。フランプトン急速に疲れてスピードが落
ちてくる。
7R ガルシアの左フックで足の揃っていたフランプトンはダウン。 ダメージはなさそ
うだが打っては休むスタイルの虚を突かれたようだ。
8~10R フランプトンは7Rまでの打っては休むスタイルを止め、正面から全力で打ち
合ってガルシアの前進を止める作戦に変更し辛うじて勝利を納めた。
判定は98:93、97:93、96:93でフランプトンであったが、スタミナもパンチの威力も
以前の姿にほど遠く、次のタイトル・マッチに大きな不安を残すことゝとなった。
北アイルランドは1922年以来イギリス領となっており北アイルランドを除くアイルラ
ンドはイギリス連邦を脱退している。アイルランドはイギリスの半ば植民地的扱いを受
け入れた為の1919年シン・フェイン党がアイルランド国民会議を開設、独立を宣言して
からそれまでの義勇軍(IRA)を共和国軍として認知した。やがてIRAは分裂し、一部が
テロ化していった。北アイルランド出身のカール・フランプトンの人気がイギリスでも
取り分けアイルランドで絶大なのはこの歴史的背景もあるのだ。
IBF S・フライ級タイトル・マッチ
チャンピオン シェルウイン・アンカサス(フィリピン)25才、サウスポー
戦跡 29戦27勝18KO 1敗1分、ニックネームは「プリティボーイ」
挑戦者 ジェイミー・コンラン(英国)31歳、戦跡 19戦全勝11KO。
ロンドン五輪銅メダリスト、マイケル・コンランの兄。コンランは生れも育ちもベル
ファストである。
1R アンカサスの右ストレートボディブローでコンラン ダウン。
2R 左目上バッテングでカット、出血始まる。アンカサス圧力をかけて前に出る。
コンラン後退。
3R アンカサスの左ストレートの威力にコンラン腰が引けて防戦一方となる。
左ボディへの連打でコンラン2度目のダウン。
4R ボディブローの集中打でコンラン3度目のダウン。
5R ボディブローでコンラン4度目のダウンはローブローと認定されダウンは取り消
し。 アンカサスに減点1。
6R 右フックでコンラン4度目のダウンでついにレフリーもTKOを宣言。
アンカサス初防衛に成功。アンカサスは踏み込みの早さと左ストレートの威力で
マニー・パッキャオを思わせる選手で、本人も相当パッキャオのボクシングを研究し
たようである。
WBOバンタム級タイトル・マッチ
チャンピオン ゾラニ・テデ (南アフリカ共和国)29歳
戦跡 28戦25勝20KO 3敗、サウスポー
挑戦者 シボニソ・ゴニヤ(南アフリカ共和国)26歳
戦跡 12戦11勝5KO 1敗、サウスポー
1R テデいきなりの右ショート・フック顎に命中、立上がれずとみたレフリーはKOを
宣言した。タイムは11秒。
歴史上最短のKO記録となった。
ちなみに過去の記録は
1994年9月 WBOバンタム級ダニエル・ヒメネスがハロルド・ゲイアーを17秒。
1993年8月 WBCミドル級ジェラルド・マクレインがジェイベルを20秒。
2016年12月 WBAミドル級のアッサム・エンダムがアルフェンソ・ブランコを22秒。
1966年1月 IBF ミドル級のバーナード・ポプキンスがスティーブ・フランクを24秒で
KOがある。
ゴニアはリングにダウンして気を失って数分間寝たまゝであった。
製本用 修正済
2017年総集編 (2017年12月 日)
1位 IBFヘビー級タイトル・マッチ
アンソニー・ジョシア 挑戦者 ウラジミール・クリチコ
9万人の観衆を集めて行われた。
5R ジョシア ラッシュして左フックからの連打でクリチコ ダウン。
そのあとジョシア急速にスタミナを失って、足ももつれたが・・
6R クリチコの右ストレートでジョシア ダウン。KO寸前に追い込まれたが
クリチコも未だ回復していなかった為に辛うじてKOを免れる。
7~10Rまでクリチコやゝ有利で11Rを迎えた。
11R ジョシアこのまゝでは負けるかも知れないと思ったか、猛然とラッシュ。
右アッパーからの連打でクリチコ2度のダウン。立上がったところへ連打でレフ
リーストップ。ジョシア19戦全KO勝ちとなる。
クリチコは3団体統一チャンピオンとして18度の防衛を続けてタイソン・フュー
リーに判定負けの後の再起戦であったが、これに敗れ引退を表明した。
2位 3団体統一ミドル級タイトル・マッチ
チャンピオン ゲンナディ・ゴロフキン 挑戦者 サウル・アルバレス
3者3様の判定で引分け。やゝゴロフキンに分とみえた。
3位 WBC ヘビー級タイトル・マッチ
デオンティ・ワイルダー 挑戦者 バーメイン・スティバーン
1R 始めて出した右ストレートがガードを割って命中、スティバーン ダウン。
その後2度のダウンを奪って179秒のKO勝ち。
KOを逃した唯一の相手を今回1R KOに下した。
4位 WBC 、WBO S・ライト級 チャンピオン
テレンス・クロフォード 対戦者 WBA、IBF S・ライト級 チャンピオン
ジュリウス・インドンゴ
2R クロフォードの左ストレートの打ち下しでインドンゴ ダウン
3R 左ボディブローでクロフォードのKO勝ち。
史上2人目の4団体統一チャンピオンとなる。
1人目はミドル級のバーナード・ポプキンスである。
5位 IBF S・フェザー級王座決定戦
4位 尾川堅一 対 5位 デビン・ファーマー
接戦で判定勝 尾川 王者となる。
6位 WBO S・ウェルター級王座決定戦
ミゲール・コット 対 亀海善寛
接戦であったがコットのうまさが光って判定勝ち。
7位 WBC S・フライ級
パウンド・フォー・パウンドに名があがる全勝のローマン・ゴンザレス
挑戦者 シーサケット・ソールンビサイ
1R シーサケット右アッパーでゴンザレス ダウン
3R ゴンザレス右目尻カット。4~12R 一進一退、結果は 2:0 の判定で
ゴンザレス初の1敗。
8位 3団体 L・ヘビー級タイトル・マッチ
アンドレ・ウォード 対 セルゲイ・ゴバレフ
8R 右ストレートからの左ボディブロー3発で8R TKO。ローブローを含めて
ウォードの老獪なうまさが試合を制した。ウォードはこのあと引退。
9位 WBC S・フェザー級
三浦隆司 対 ミゲール・ローマン
9Rまでガードを固めて懐に入り込み手数の多いローマンに試合をリードされて
いたが 10R 左アッパーのボディブローで形勢逆転、ローマン ダウン。
11R 再びダウンを奪ってKOに下す。三浦 生き残る。
10位 WBA ライト級タイトル・マッチ
ホルヘ・リナレス 対 ルーフ・キャンベル(五輪金メダリスト)
2R 右ストレートでキャンベル ダウン、その後リナレス リードのまゝ判定勝ち。
11位 WBO S・フライ級タイトル・マッチ
井上尚弥 挑戦者 アントニオ・ニエベス
5R 左アッパーボディでニエベス ダウン。
6R 終了時TKO アメリカデビューを飾った。
12位 WBO ウェルター級タイトル・マッチ
ジェフ・ホーンがマニー・パッキャオを判定で下す。
13位 WBO S・フェザー級タイトル・マッチ
ワシル・ロマチェンコ 挑戦者 ギジェルモ・リゴンドー
ロマチェンコの一方的展開で6R終了時TKO。
2人とも五輪2連続金メダリストの最高のテクニック合戦が実現したが決着し
た。
14位 3団体ミドル級タイトル・マッチ
ゲンナディ・ゴロフキン 挑戦者 ダニエル・ジェイコブス
4R右フックでダウンを奪ったがゴロフキンの判定勝ちに終ってゴロフキンの
タイトル戦17連続KOで終った。
15位 WBA、WBC ウェルター級タイトル・マッチ
キース・サーマン 対 ダニー・ガルシア
打ちつ打たれつの互角の打ち合いの末僅差でサーマン全勝を守る。
16位 WBC S・ウェルター級タイトル・マッチ
ジャメール・チャーロ 挑戦者 エリクソン・ルビン
全勝対決だったが1R右アッパーの一撃でチャーロの勝利に帰した。KO
17位 WBC S・フライ級タイトル・マッチ
シーサケット・ソールンビサイ 挑戦者 ローマン・ゴンザレス
4R 右フックでソールンビサイ勝利で決着。
18位 WBC ライト級タイトル・マッチ
デヤン・ズラティカニン 挑戦者 マイキー・ガルシア
3R 右フックでガルシア3階級制覇した。KO
19位 WBA ライト級タイトル・マッチ
ホルヘ・リナレス 挑戦者 アンソニー・クロラ
2R 左アッパーでダウンを奪って、判定でリナレス。
20位 IBF S・ウェルター級
ジャーマル・チャーロ 挑戦者 ジュリアン・ウィリアムス
5R 右アッパー、次いで左アッパーでウィリアムスをKOに下す。
○ ローマン・ゴンザレス
ミニマム級からフライ級まで3階級を制覇していた全勝のゴンザレスは S・フライ級
に階級を上げての初戦。タイトルをかけてカルロス・クワドラスと対戦。
辛うじて判定に下したが大苦戦であった。次の挑戦者は強打のシーサケット・ソール
ンビサイで、これも1Rダウンを喫して、その上出血し接戦であったが判定で敗れ
初の1敗。再戦でシーサケットに4R KOで敗れた。それまで快進撃を続けて無敵の
強さを誇っていたが、1,36kg の体重差はゴンザレスに重くのしかゝり、これを越え
られなかったのである。ミニマム級47、62kgからS・フライ級52、16kgの差4、54kg
は実に大きかったと云うことである。この試合前までボクシング・リング誌で全階級
をなべて誰が一番強いか?パウンド・フォー・パウンドで1位にランクされていたの
がローマン・ゴンザレスであったのだ。
これをみてもフライ級50,8kgからS・ウェルター級69,85kg、実に19,8kg 10階級
を股にかけて、6階級を制覇したマニー・パッキャオがどれほど凄い事をやったかが
改めて良く分かる。
製本用 校正済
会場 米国 ニューヨーク マジソンスクエアガーデン (2017年12月18日)
WBO Sフェザー級タイトル
チャンピオン ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)29歳、戦跡 10戦9勝7KO 1敗
北京五輪フェザー級で金メダル、ロンドン五輪ライト級で金メダル。
アマ戦跡 396勝1敗
対戦者 ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)37歳、戦跡 18戦17勝11KO 1無効試合
現WBA、WBO S・バンタム級チャンピオン。シドニー五輪、アテネ五輪バンタム級
金メダル。アマ戦跡 463戦12敗
いづれもアマチュアボクシング界のレジェンドが激突する注目の一戦である。
お互いサウスポー同士。
1R リゴンドーは主導権を握ってロマチェンコの動きを封ずるべく、足を使わずに右を
出して正面から対決する構えだ。ロマチェンコは様子見で手を出さず。
2R ロマチェンコは動き出し右ジャブを数多く出して、当面当てる事を重視し、
リズムに乗り始める。
3R ロマチェンコの左ストレート当る。リゴンドーが攻める前にロマチェンコの右
ジャブが飛んで来て反撃する時は既にその場に居ない。リゴンドー攻めてがつか
めないまゝ終了。
4R ロマチェンコ徐々にテンポアップし、動きも激しさを増して来る。リゴンドーは
ロマチェンコの動きを見てしまって手が出なくなる。スピード負けが明らかとなっ
てきた。
5R リゴンドー攻める手が見出せないまゝロマチェンコの攻撃を執拗なホールドで防ぐ
のが目立ってきた。
6R ロマチェンコ攻撃に力を加え始め、スピードも一段と上げてくる。下るリゴンドー
にそのまゝついて行き、余裕を与えないリゴンドーのホールドにレフリーは減点
1を与える。すっかり余裕を持ったロマチェンコはゴングが鳴る前に悠然とコー
ナーに戻る。6R終了時リゴンドーギブアップ。
2Rに左拳を痛めたと説明したが、このまゝ試合を続けると確実にKO負けがやってくると判断してのことであろう。アマチュアボクシングのレジェンド同士の対決対決はロマチェンコの圧勝に終った。
リゴンドーのパンチは唯の一発も当らなかったのだからテクニックでは引けをとらない
とみられていたリゴンドーであり、あの踏み込みの早さとタイミング長短いずれも鋭い
ストレートを有し、カウンターも巧みで、今度こそは今までと異なり苦戦が予想されたが、ロマチェンコの技術の高さは我々の予想もリゴンドーの予想もはるかに超えて、足
のスピード、頭の位置、体の動き、相手との距離のとり方、相手が下るとそのまゝつい
て行き、相手の距離をつぶし、相手が打とうとする直前に軽いジャブを連続して出し、
中盤からの動きを加速し、中盤以降はこれにパンチにも力を加えてくる。
タイトルをKOで奪取して防衛は4度目だが、相手は皆十分体力を有しながら中盤でギブ・アップして、所謂「ロマチェンコ勝ち」なる言い方まで生れた。
これ以上続けても100%勝ち目はないし、続けるとKO負けの危険性も限りなく高いことが明白であり、続けることは無駄で意味がないとつくづく悟らされるのである。
ロマチェンコはどの高みまで登っていくことであろうか。
マイケル・コンラン(アイルランド)25才、戦跡 4戦全勝4KO
ロンドン五輪銅メダリスト
対戦者 ルイス・フェルナンド・モリナ(アルゼンチン)29歳
戦跡 11戦7勝2KO 3敗1分
コンラン1Rは右構え2Rから左構えで闘うが何の為に左構えにしたのか理解できない。
パンチの打ち方も悪く威力もない。60:54のフルマークで判定勝はしたが、これでは先に
期待はもてない。
クリストファー・ディアス(プエルトリコ)23歳、戦跡 21戦全勝12KO
対戦者 ブライアント・クルス(米)28歳、戦跡 20戦18勝9KO 2敗
ディアス3Rまでに4度のダウンを奪ってTKO。
ディアスは力強いパンチを振るって活きの良い選手であるが、これからランキングボクサーと闘ってどうかである。
シャクール・スティーブンソン(米)20歳、戦跡 3戦全勝1KO、リオ五輪バンタム級で
銀メダル。トップランク社と契約してメイウェザー2世と期待されている。
対戦者 オスカー・メンドーサ(米)26歳、戦跡 6戦4勝2敗
2R 一方的となりTKOメンドーサ4勝目。
スピードもあり手数も多く連打も効いて体も出来てくるにつれて将来嘱望される選手
である。
会場 アメリカ アリゾナ州 ツーソン コンベンション・センター(2017月11月13)
WBA スーパーS・ウェルター級タイトル・マッチ
チャンピオン エリスランディ・ララ(米)34歳、戦跡 28戦24勝14KO 2敗2分
ララはキューバ出身の選手。一度目の亡命はリゴンドーと一緒で失敗、2度目の亡命で
今日に至っている。ニックネームはそのまゝの「アメリカン・ドリーム」である。
サウスポー
挑戦者 テレル・ゲシェイ(米)30歳、戦跡 20戦全勝9KO、12年ロンドン五輪出場。
1R ララは体格的に自分有利とみて左右の動きは使わずに正面からのストレート勝負と
するようである。同じようなテクニックの選手同士である為にジャブが重要とな
る。先手はララがとった。
2R ララは意図的にかゲシェイの左足を右足で踏み、動きを止めて左ストレートを
ボディに。
3R ゲシェイもパンチを出そうとするが出鼻にララの右ジャブが飛んで来て、自分の
ジャブが打てない。お互いにフェイントを掛け合うがペースは完全にララのもの
だ。
4R 思ったように進行しない試合に焦ったゲシェイは、強引に頭を下げて前に出るとこ
ろにララの右フック側頭部にヒット。左をフォローされてゲシェイ ダウン。
5R 4Rのダウンでゲシェイ改めて、ガードを高々とゝ掲げて防御を固めて出る。
6R ゲシェイは5R以降受身となり、ララの攻撃の打ち終わりを狙うカウンター作戦一
辺倒となり時折くり出すパンチはララに届かない。
7~9R 変らず。
10R 劣勢を挽回すべくゲシェイ ガードを固めたまゝ接近し、力一杯パンチを振うが
全く当らない。ララも疲れてくる。
11、12R 焦るゲシェイに対しララはジャブを出し時折の力の入った左ストレートで
ゲシェイをあしらい終了。
判定は117:110、116:111が2人でララの完勝であった。
ララは2013年アルフレッド・マングロと闘ってタイトルを獲得。以来これが7度目の
タイトル防衛である。この試合は左と右の対戦となったが、ララの右ジャブが実に効果
的に使われてゲシェイは自分の考えた作戦が全く機能しなかった。
ララは自分のリーチの長さを的確に把握し、安全圏に身を置いてパンチをくり出し、無駄な力は使わずに計算通りの試合を行った。
2014年強打のカネロ・アルバレスと戦ったが判定となり115:113、113:115、111:117
と2:1で敗れたが、前半はやゝアルバレス。9Rからはララがアルバレスとヒットアン
ドアウェー戦法で翻弄しまともにアルバレスのパンチは一発も受けずに終了してララ有
利とみえたが疑問の残る判定であった。ララは現地のボクシング界屈指のテクニシァン
でその試合振りは美しい。
このクラスはWBCにジャーメル・チャーロ、IBFにジャレッド・ハード、WBOにミゲール・コットと実力者が揃うが、その中でもララは異色の存在である。
この試合のリングサイドにはキース・サーマン、エロール・スペンス、エイドリ
アン・ブローナー、デオンティ・ワイルダーの面々が揃い踏みで観戦していた。