会場 米国 ネバダ州ラスベガス・MGMグランド・ガーデン・アリーナ  4団体 Sミドル級王座統一戦  サウス・カネロ・アルバレス vs ケイレブ・プラント 他 1試合 2021/11/7 (試合日 11月6日)

本日のメインイベント             2021/11/7  (試合日 現地時間 11月6日 )

1. 4団体 Sミドル級王座統一戦

WBA、WBC、WBO 王者 サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)31才 戦跡 59戦56勝38KO 1敗1分、4階級制覇しておりパウンド・フォー・パウンドに指名されているスーパースターである。

 

対戦者 IBF Sミドル級王者 ケイレブ・プランド(米)29才 戦跡 21戦全勝12KO、3回防衛中 内2戦2KO、あとの1戦は判定フル・マークである。

 

戦前の日本の予想はアルバレスの 勝利 846(66%)、引分け 218(17%)、 負け218 (17%)であった。

 

1R カネロ圧力をかけて前にでるが、パンチは出さない。プランドは左ジャブを数多く出す。速いジャブでアルバレスの突進を止める。

 

2R 1Rと同様にプランドは足を使ってロープを使ってロープ伝いに回りながらカネロの圧力を躱しながら、左ジャブ、左右ボディブロー数発。

 

3R 1Rと同様プラントはカネロの前進をジャブを主体に防ぎながらロープ伝いに後退するが、追い込まれている訳ではない。ペースはプラント。

 

4R プラント、左ジャブ、アッパー、右フックと多彩なパンチを振う。カネロ、プラントをロープに詰めて集中打をみせるが、クリーンヒットは無い。プラント優勢。

 

5R プラント左ジャブを多発。カネロ、力強いパンチを振うがクリーンヒットはない。

 

(これまでの判定は僅差ではあるがプラント優位である。)

 

6R カネロ、これではならじと一段とプレッシャーを強め手数もふやす。終盤左フック ヒット。ペースを上げたカネロにプラントの手数がやゝ減る。

 

7R カネロ、攻勢を強めるが途中、ロープに下ってカウンターを狙うが、プラントこの誘いに乗らず。

 

8R 距離近くなり、打ち合うが両者共に防御技術が高くクリーンヒットは許さない、が 終盤カネロのパンチが不十分ながら当たり始める。

 

9R カネロはパワーパンチを振い出す。プラントは小さなパンチを数多く出して対抗。

 

10R カネロの左フックのボディブローが中盤から続いてプラントの左脇腹が赤くなって、効いてきたようで追い詰められてきた。

 

11R カネロの左フックでプラント下を向くところに右アッパーを突きあげられて、プラント ダウン。やっと立上ったが、もう時間の問題であり、連打のあとの左ストレートで2度目のダウン。レフリーストップとなりカネロの4団体統一がなった。

 

プラントはカネロがメイウェザーに敗れたビデオを良く研究したようで、メイウェザー流の右拳をしっかりと顎につけて左はL字ガードでカネロの左フックを完全に防ぎ、左腕のL字ガードと右肘で右ボディもカバーし、空いた左顔面は左肩を極端に前に構え肩でカネロの右パンチをショルダーブロックで対抗し、こレが奏功して中盤まで有利に試合を進めた。

しかし1Rから強烈な圧力を加えられ続けた事と寸分の隙もみせられない試合と右ボディ程ではないものゝ左脇腹を打たれ続けた事から終盤に失速し、カネロの強打を12Rまで防ぎきる事が出来なかった。それまでの判定はやゝプラント有利であったようだが、カネロの粘り強い地道な攻撃がプラントの策をついに粉砕したものである。これでカネロは文句なしのパウンド・フォー・パウンドに君臨する事になった。しかしカネロにとってプラントは最も苦手とするタイプの選手で、判定まで持ち込まれていたら、勝敗はどちらに転んでいたか分からない。以前当代最高のテクニシァン エリスランディ・ララと対戦した事があって2:1で辛うじて判定勝ちしたが、中盤以降はいいように翻弄されて実質負け試合であった。カネロは依然としてテクニックの高い相手を苦手としているのは変らないようである。 

 

2.Sミドル級10回戦

アンソニー・ディレル(米)37才 戦跡 37戦33勝24KO 2敗2分。2敗はともに世界戦2019年9月デビット・ベナビデスに敗れて王座陥落、その後1戦してドローに終わって再起戦である。

対戦者 マルコス・エルナンデス(米) 才 戦跡 21戦20勝15KO 1敗

 

1R ディレル先制攻撃をかける。

2R エルナンデス得意の左フックを振って対抗、攻勢をとる。

3R エルナンデス2Rの良い流れに乗って、攻撃の入り際にディレルの振りかぶって突き上げた右足が顎をとらえ、エルナンデス ダウン。やっと立上ったが足がふらついてレフリーストップを宣言。TKOに下したディレルは何とかトップ戦線に残って余程嬉しかったのかバック転をみせた。

 

ボクシングの新人 有望株 ハムザ・シェラーズ

ボクシング 有望新人 2021年1月11日 現在

ハムザ・シェラーズ(パキスタン系英国人)21才

WBO 欧州チャンピオン(Sウエルター級)戦跡 12戦全勝8KO 190㎝を超える長身でガードを高く掲げて覗きみスタイル。長い手で顔面、ボディを完全にカバー、左を突いてのあとワンツーから左アッパーをボディに教科書通りのボクシングで特徴は危険を冒さない安全第一のスタイルである。やゝメリハリのなさと力強さに欠けるが、あと2~3年で体力もついてパンチに威力が加わると頭角を現わしてくる選手で、身体も柔らか。

会場 米国 ジョージァ州 アトランタ  ステートファーム・アリーナ   3 試合 2021/10/25  (試合日 10月23日)

1.ミドル級4回戦 ニコ・アリ・ウォルシ vs ジェームス・ウェストリー

2.S ウェルター級6回戦 サンダー・ザヤス vs ダン・カーペンシー

3.チャンピオン ジャメル・ヘリング vs シャクール・スティーブンソン

 

1.ミドル級4回戦

ニコ・アリ・ウォルシュ(米)21才 戦跡 1戦1勝1KO モハメド・アリの孫

 

ジェームス・ウェストリー(米)36才 戦跡 1戦1勝

 

2R ゴング寸前右ストレートでウェストリー  ダウン。

 

3R 右ストレートでウェストリー ダウン。セコンドがタオルを投げてレフリーストップ。TKOでニコ勝利。

 

しかしニコはウォルシュの右ストレート、右フックのカウンターを何発かまともに受けており、全体としてボクシングセンスに疑問が残り、将来の大成は望めないのではと思われた。

 

2.S ウェルター級6回戦

サンダー・ザヤス(プエリトリコ)19才 戦跡 10戦全勝7KO  トップクラク社が16才の時に契約した逸材で井上尚弥以来の神童といわれる。

 

ダン・カーペンシー(米)30才 戦跡 13戦9勝4KO 3敗1分 

 

1R カーペンシー ガッチリとガードを固めて開始。ザヤスは速いジャブからのワンツー上下の打ち分、固いガードを割って打ち込む。左ボディブローでカーペンシーぐらつく。

 

2R  左ボディブローから右フックと一方的になってくる。ザヤスは攻撃中でも防御を考えて動く。カーペンシー マウスピースを落とす。

 

3R ザヤス  ボディブロー連打のあと上・下の打ち分けでカーペンシー再びマウスピースを落とし一方的な展開となる。

 

4R このラウンド ロープに詰められて集中打。このられ終了時ギブアップでザヤスTKOで勝利。

 

かってのフェリックス・トリニダートを彷彿とさせるスタイルと、パンチを打ったあと体が流れたり、体勢を崩すこともなく、的中率も高く、パンチも多彩で防御勘も良く、まことに惚れ惚れする選手で身体も強くなり、安定してくれば人気も急上昇してスーパースターになるのも夢でない。ボクシング界にとっても金の卵となるのではないか、楽しみな選手の出現ではある。

 

3.WBO S フェザー級タイトルマッチ

チャンピオン ジャメル・ヘリング(米)36才 戦跡 25戦23勝11KO 2敗 2019年5月伊藤雅雪(アマ戦跡 92戦78勝14敗)からタイトルを奪って3度防衛中。ロンドン五輪にLウエルター級で出場1回戦で敗退している。アメリカ軍(海兵隊)でイラク戦争に2度従軍している。ニックネームはセンパーファーィ(SemperFi 海兵隊のモットーで 常に忠実 )身長178㎝ リーチ183㎝ 、 パズリング サウスポー(相手を惑わせる)と称せられている。長身でリーチが長い対戦する誰もが嫌がる選手である。

 

挑戦者 シャクール・スティーブンソン(米)24才 戦跡 16戦全勝8KO  同級暫定王者 リオ五輪バンタム級銀メダリスト。アマ戦跡140戦128勝12敗 プロ転向当時から将来を嘱望されており、ボグ・アラムから「お前はシュガー・レイ・レナードになれるぞ」と云われた。

オッズはスティーブンソンの7:1である。

 

1R 両者サウスポー。スティーブンソン右足を大きく踏み出して右ジャブ、左ストレートをボディに。右ジャブ2発、リーチ差が10㎝もあり両者の距離の取り合いが鍵となる。

 

2R スティーブンソンは常々「ボクシング界で一番ディフェンスの巧いのは私だ」と高言してる。ヘリングの距離の内側に踏み込んでおり、ヘリングの攻撃はでヘッド・スリップ、ウィービングで完全に躱して自分の距離を確保し、速い右ジャブ、左フック等を上下に打ち分ける。ペースは安全にスティーブンソンに。

 

3R スティーブンソンの手数が多くなりヘリング受け身一方となってきて、ヘリングの左目下腫れてくる。

 

4R これではならじとヘリング前進するがパンチは悉く躱されて、中盤からは前進も止められる。

 

5R ヘリング試合の流れを変えるべく前進し、集中打をみせる。今日一番のラウンドをみせる。

 

6R 5ラウンド同様の攻撃をヘリングみせるがスティーブンソンの右ジャブ2発でヘリング顎をあげられる。

 

7、8R スティーブンソンの右フックが面白いように当たり始め、ヘリングの右フックは当らない。

 

9R ヘリングはしっかりガードはしているものゝスティーブンソンのスピードが速く、ガードが割られる確率が高くなり、ヘリング右目上から出血。

 

10R 開始早々ヘリングにドクターチェックが入り、そのあとロープに詰めて集中打を受けたヘリングに、それまで一方的な展開であったこともありレフリーストップが入ってTKOでスティーブンソン新王者となる。

 

スピードの違いと距離感のとり方の違い、防御技術の違いとことごとく差がでて一方的な試合となったのは止むを得ないところだ。しかしスティーブンソンの試合は決められないボクシングで、何とかしないと勝つことは勝ってもスーパースターにはなり得ないのではと試合をみる度に思わされる。

 

1. ヘビー級 8回戦 ジャネット・アンダーソン vs ウラジミール・テレシュキン 2. WBOフェザー級タイトルマッチ  チャンピオン  エマヌエル・ナバロッティ vs  ジョエト・ゴンザレス2021/10/18

1. 会場 米国  ネバダ州 ラスベガス Tモバイル・アリーナ 試合日 10月9日

ヘビー級8回戦                                        

ジャレット・アンダーソン(米国)21才 戦跡 9戦全勝9KO トップクラス社 ボブアラム氏期待の若手である。

 

ウラジミール・テレシュキン(ロシア)33才 戦跡 23戦22勝12KO 1分

 

1R テレシュキン左構えで始まるが、アンダーソンの左ジャブ、右ストレートが速く顔面、ボディに打ち分ける。

 

2R アンダーソンのパンチが徐々に当たり始めてテレシュキンをコーナーに追い詰めて連打。一方的となったとこれでレフリーストップを呼び込む。

 

スピードの違いが明らかで格の違いが出た。アンダーソンはスピードもありジャブも良く出てボクシングもうまいが、193㎝と今のヘビー級ではやゝ小柄であり迫力には欠けるが、今のヘビー級戦線をみると、タイソン・フューリー、ワイルダー以外は次を狙う選手は見当たらない。クルーザー級から上がってきたウシクが3団体統一チャンピオンとなったが、うまさはあるがヘビー級としてはやゝ線が細く、このアンダーソンにもチャンスはあるかもしれない。

 

2.  会場 米国 カリフォルニア州 サンディエゴ ペチャンガ・アリーナ  試合日10月15日

WBOフェザー級タイトルマッチ

チャンピオン  エマヌエル・ナバロッティ(メキシコ)26才 戦跡 35戦34勝29KO 1敗 ニックネームはパケロ(カーウボーイ)2018年12月WBO Sバンタム級で実力者ドグホエを12R判定に下し戴冠。2019年5月から20年まで6度防衛を果し、20年10月WBO フェザー級でビラを下し2階級を制覇し、21年4月ディアスを12RTKOに下して初防衛を果たし、今脂の乗りっ切いる選手である。

 

挑戦者  ジョエト・ゴンザレス(米)28才 戦跡 25戦24勝14KO 1敗 1敗はスター候補のシャク―ル・スティヴンスに大差判定負けを喫したものだが、アマ時代、現在脅威のパンチを誇りKOの山を築いている。ジャーモンティ・デービスに2戦1敗の記録がある。

 

1R スロースターターぎみのナバロッティが先制攻撃を仕掛けて、左ジャブ、左右ストレート、フック、アッパーと猛攻。ゴンザレスはガードをしっかり掲げてこれを防御するや、接近戦に持ち込み速い連打を繰り出す。

 

2R ナバロッティの長いワンツーとアッパーと力強い攻撃を仕掛け、これをブロックしたゴンザレスが2分過ぎには反撃に出る。クリーンヒットはゴンザレス。

 

3R 2Rと同様の流れだが、ナバロッティの左フックでゴンザレスの右頬切れて腫れる。

 

4R ゴンザレス  ナバロッティの距離をつぶし接近戦で打ち合う。ゴンザレスの右ストレート有効打。

 

5R 一進一退、ナバロッティやゝ攻勢。

 

6R ゴンザレスの頬紫色に腫れがひどくなってくる。前半ナバロッティ、後半ゴンザレスの流れは変わらない。

 

7R ナバロッティの右ストレート、フック、アッパーと多彩な攻撃を仕掛けるがほとんどガードの上で後半ゴンザレス激しく反撃。

 

8R ナバロッティ足を踏まれてスリップダウン。ゴンザレスに押されてナバロッティ後退。

 

9R この試合の鍵を握るラウンドとみたナバロッティはゴンザレスの攻撃に必死で反撃し何が何でもこのラウンドを獲るのだとの意気込みを示した。

 

10R ナバロッティ猛然と攻撃に出るがゴンザレスも一歩も引く事なく激しく打ち合う。

 

11R ゴンザレスの左フック決まってナバロッティ ダウン。しかし足が掛かっておりレフリーはスリップと判定。お互いに打ちつ打たれつ。

 

12R ナバロッティ必死の攻撃でゴンザレスの攻撃を抑えてやゝ優勢のうちに終了。

 

判定 118:110が1人、116:112が2人でナバロッティ王座を死守した。後半ここが勝負とみたナバロッティの勝負勘が生きて、辛うじて勝利を握ったが、スティヴンスに大差で敗れたゴンザレスを甘くみたのかもしれない。ゴンザレスの頑張りは観客にも深い感銘を与えた事であろう。

ナバロッティのはこの難しい試合を何とか凌ぎ誰もが彼を破るのは至難の技であると実感したのではなかろうか。ナバロッティのボクシングは本来相手との一定の距離を保って、自分の長いジャブ、フック、ストレート、アッパーと自在に繰り出し相手を支配するもので、特に突進形の選手を得意としている。左ジャブで出鼻を叩き入り込んでくるを左アッパーで迎え撃つものだが、何せ手数が多く、それも総てのパンチに威力がある。勝負勘も良く、KO率高く観客に対するアピール度も高いスーパースター候補でもある。

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス T・モバイル・アリーナ  WBCヘビー級タイトルマッチ チャンピオン  タイソン・フューリー vs ディオンティ・ワイルダー   2021/10/10

              2021/10/10  ( 試合日2021年10月9日 )

WBCヘビー級タイトルマッチ

チャンピオン タイソン・フューリー(英)33才 戦跡 31戦30勝21KO 1分 ニックネームは「ジプシーキング」

 

挑戦者  ディオンティ・ワイルダー(米)35才 戦跡 44戦42勝41KO 1敗1分 ニックネームは「ブロンズ・ボマー」

 

過去の対戦はフューリーの1勝1分で3度目の対戦となる。フューリー  126㎏、ワイルダー  107.9kg お互いに体重を若干増量している。リング上で対面したフューリーは目を剥いてワイルダーを見つめる。

 

1R 前戦で先手をとられて守勢に回ったあげくKO負けを喫したワイルダーは開始早々から左ジャブをボディに12発、右ストレートをボディに4発、コンビネーションを顔面に5発。何れも浅いがヒット。フューリーは防戦一方だったが終盤反撃。ワイルダーは先制攻撃を仕掛けたがフューリーのカウンターを恐れたか踏み込みが足らず又得意の右ストレートも威力を欠いた。

 

2R ワイルダーは手数を多くして何とかペースを自分のものにしようと努力したが、フューリーの右ストレート 1,顔面にワンツー、左ジャブ、クリンチ中の左アッパーのボディブロー2発と効果的なパンチを振う。

 

3R ワイルダーの右ストレート2発軽くヒット。フューリー前進を始めて、2分半すぎクリンチ際に右フックをテンプルに、ついでの右アッパーでワイルダー ダウン。立上ったところに右ストレート、左アッパーでワイルダー ダウン寸前。何とか凌いで辛うじてコーナーに戻る。

 

4R フューリー勝負を決めるべくコーナーに詰めたところにワイルダーの右ストレートが側頭部にヒット。フューリー ダウン。やっと立上ったところに右フックでフューリー2度目のダウン。ゴングに救われる。

 

5R ワイルダー生き返ったように元気になり、力を込めたパンチを振うが、フューリーの回復は恐るべしで反撃され、ワイルダーのダウンのダメージの方が大きく、体力が削られてパンチも流れてくる。

 

6R フューリー前進しワイルダーは押されてくる。フューリーの大小とり混ぜてのパンチが有効にヒット。又クリンチ中の右アッパーとクリンチでもフューリーに押されてワイルダーの大振りのパンチとも相俟ってスタミナの消耗が激しいようだ。

 

7R フューリー前進。ワイルダーをロープに詰めて、左ストレート、フックをボディ、顔面と打ち分け、クリンチ中にもボディブローを内ワイルダー ダウン寸前に追い込まれ、やっとコーナーに戻る。

 

8R ワイルダー消耗激しく足元がおぼつかなくなって来たが、時折くり出す右ストレートにはまだ威力があり、一発必倒の恐ろしさを有している。コーナーに戻る際になぜかワイルダー手をあげる。

 

9R 開始早々ドクターチェックが入り、ワイルダーの戦闘能力をチェック。フューリーの左ジャブが当る毎にワイルダーよろめく。弱ったワイルダーが突然放った右ストレートにフューリーよろめくが、フューリーの細かいパンチ数発でワイルダーやっと立っている。

 

10R フューリーの左ジャブで顎をあげられたうえに右フックでワイルダー2度目のダウン。立上ったワイルダーはよろめきながら必死の猛反撃。

 

11R フューリー前進し、右フック、右アッパー2発づつ顔面に、ロープ際で右フック顔面に直撃、ワイルダー顔面からリングに沈んだ。レフリーはこれを見てすぐにレフリーストップを宣言した。今回もワイルダー右耳から出血。

 

これで両者の対決は決着を見た。この試合ワイルダーは体重を増やして万全な体調で臨んだが、前戦KO負けの気持ちの整理がつかなかったのか、1ラウンドから手数は多く先手を多く取ったものゝ、何かおよび腰でパンチに威力がなかったし、3ラウンド ダウンされた後は急速にスタミナを失い、自分の力に自信を失ったように見えた。さすがに4ラウンドに2度のダウンを奪い、このラウンドと5ラウンドに勝負をつけようとしたがフューリーの驚異の回復力にかなわず、後半は残る動物的反応のみで闘ったようで、対フューリー初戦までのワイルダーとは明らかに別人となっていたようであった。

 

前戦のKO負けは計り知れないダメージをワイルダーに残していたのであろう。

一方のフューリーは先ずその回復力の凄さと、スタミナに驚かされたが、ボクシングの幅が素晴しい。パンチは力一杯振り回すことなく、細かいパンチを多用し、時折力強いパンチをとり混ぜて使い、クリンチ中でもアッパーを多用し、体格を生かして相手に圧力をかけて消耗を図り、クリンチ中も必ず相手の内側に自分の腕を差し込む等試合中も緩急をつけて、体力の消耗を防ぎ、後半になるもパンチの威力、スピードも変える事なく動きもスムーズで良く考えられたボクシングを展開している。この体格で中量級のような動きを終盤まで続けられる能力はヘビー級で飛びぬけていると云えよう。

リング登場も派手派手で観客を楽しませてくれて、まさにエンターテイナーの面目躍如である。一方の雄アンソニー・ジョシュアが敗れてフューリーの一強時代の到来であろうか。 

1.S ミドル級4回戦 ニコ・アリ・ウォルシュ vs ジョーダン・ウィークス(モハメド・アリの孫プロ転向デビュー戦)他 全3試合 2021/9/27

1.Sミドル級 4回戦 

    ニコ・アリ・ウォルシュ vs ジョーダン・ウィークス( 試合日 8月14日 )

2. WBO 米大陸フェザー級王座決定戦

    カルロス・カストロ vs オスカル・エスカンドン ( 試合日 8月21日 )

3. WBC Lフライ級タイトルマッチ

    チャンピオン 寺地 挙四朗 vs 矢吹 丈 ( 試合日 9月22日 ) 

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1.会場  米国 オクラホマ州  タルサ・ハードロックホテル&カジノ 試合日 8月14日

Sミドル級4回戦  

ニコ・アリ・ウォルシュ(米国)20才 モハメド・アリの孫でプロ転向初戦である。しかしさすがにネームバリューがありトップランク社と契約している。

ジョーダン・ウィークス(米国)29才 戦跡 5戦4勝2KO 1敗 

1R お互いに開始から打ち合い、1分45秒アリの右ストレート顎にヒットしてウィークス ダウン。立上ったところに連打でレフリーストップ。TKOに終わった。アリはスター性もあり、パンチもあってこれからが期待される。

 

2.会場  米国 ネバダ州  ラスベガス T・モバイル・アリーナ ( 試合日 8月21日 )

 

WBO 米大陸フェザー級王座決定戦

カルロス・カストロ メキシコ生れのアメリカ国籍 27才 戦跡 26戦全勝11KO  Sバンタム級WBC2位、IBF5位、この試合に勝てばタイトルマッチがみえてくる。

 

オスカル・エスカンドン(コロンビア)37才 戦跡 31戦26勝18KO 5敗 アテネ五輪出場。  Sバンタム、フェザー級で暫定王座を獲得している。

 

1R エスカンドン先制攻撃をかけて猛然と接近戦を挑み、エスカンドンの左フック顔面に命中してカストロ、 ロープに倒れ込む。ロープがなければ明らかにダウンであった。

2R エスカンドンは、長身でリーチの長いカストロの内懐に入り込み集中攻撃。カストロは持ち味の左ジャブ、でエスカンドンを止められない。

3、4R エスカンドン相変わらずの接近戦を続けてペースは完全にエスカンドンのもの。

5、6R カストロは左アッパーのボディブローが強烈。エスカンドンの勢いを止め、左ジャブから右をかぶせていく自分の動きが出てくる。

7R カストロの右ストレートでエスカンドン足がもつれてふらつくが、その体勢でパンチを振って自ら倒れる。これをダウンと判断され、立上って猛然と反撃する。

8R ビデオをみて7Rのエスカンドンのダウンはスリップと変更される。カストロは7R打ち疲れの為に一休みした為にエスカンドンに攻められる。

9R お互いに疲れて中ダルミのラウンド。

10R カストロの右ストレートでエスカンドンよろめくところに集中打でエスカンドンたまらずダウン、疲れと、打たれたダメージで立ち上がれずにレフリー TKO宣した。

 

エスカンドンが勝つ為にはこの作戦しか無かったか。後半疲れて失速、カストロは名のある選手をTKOに下して、タイトルマッチに近づいた。左ジャブ、右ストレートの切れはあり、リーチの長さを有効に使っての試合振りは仲々のものであった。

 

3.会場 京都市 右京区 西京極  京都市体育館      ( 試合日 9月22日 )

WBC Lフライ級タイトルマッチ  

チャンピオン 寺地 挙四朗(日本)29才 戦跡 18戦全勝10KO 2017年5月ガニガン・ロペスを判定に下しタイトル獲得。2021年4月 久田 哲也を判定に下して9度の防衛を果している。9度のうち5KO。

挑戦者 矢吹 正道(日本)29才 戦跡 15戦12勝11KO 3敗 WBA9位、IBF6位 17才で一児の父となり、23才でデビュー、28才で日本チャンピオンとなっている。

寺地はコロナ陽性となり10日間自宅療養となりその後2週間程でこの試合となった。

その間栄養と減量と練習がどうなったいたのか一抹の不安があった。リングに上った寺地の身体が、これから試合をするようにはみえず、明らかに病気上がりの様にみえたのである。 

さて1R 寺地は左ジャブを突いて様子見であったが、矢吹は左ジャブを突いて思い切っての大きな右フック等力強いパンチを振う。ガードの上であるが当り寺地よろめく。

2、3R 寺地は1R同様に左ジャブを多くを出すが、矢吹の思い切って放つパンチは寺地のガードを叩き、寺地を後退させる。

4Rも同様でこの回終了時に中間発表があり、40:30 が2人、38:38 が 1人 で矢吹リードと出た。

5R 今日の審判は自分のリードパンチは評価せず、ヒットはしないものゝ矢吹の強いパンチを評価するのをみて、作戦を変更して圧力をかけて前進、攻勢を強めたが時折放つ矢吹のパンチに寺地体勢を崩される。

8R 矢吹の振うパンチは数少ないが有効とみられてこのR終了時の判定は73:79、74:78、75:77 とやはり矢吹であった。

9R このままでは勝てないと判断した寺地は猛然と攻撃に転じて、KO狙いに出る。途中寺地は右目上負傷して出血したが、寺地の攻撃激しく矢吹ダウン寸前に追い込まれた。

10R 寺地、矢吹をロープに詰めて猛攻。矢吹は顔面もボディも打たれてすっかり効いてしまい、あわやレフリーストップかと思われたところに起死回生の右ストレートがヒット。寺地も疲れていたところに強打を受けてたじろぐところに矢吹の最後の力を振り絞っての集中打でレフリーストップを呼び込んだ。

 

寺地のチャンピオンの意地をかけたKO狙いの攻撃は見事であったが、決して試合を捨てない矢吹の魂も又凄かった。

尚矢吹のリングネームは ちばてつや の漫画「あしたのジョー」の主人公 矢吹 丈からとったものである。  

 

会場  フランス・ パリ  スタッド・ローラン・ギャロス( 全仏オープン・テニス コート)2 試合   2021/9/20 試合日9月10

  1.ヘビー級10回戦  トニー・ヨカ vs ピーター・ミラス 

  2.WBAインターコンチネンタル S ウェルター級タイトルマッチ

    ソーレイマヌ・シソッコ vs イスマイル・イリエフ

 

1.ヘビー級10回戦

トニー・ヨカ(フランス)29才 戦跡 10戦全勝8KO  リオ五輪 S ヘビー級金メダリスト  IBF9位、WBC10位、WBO15位 フランス期待の大注目選手である。

ピーター・ミラス(クロアチア)26才 戦跡 15戦全勝11KO 

 

この試合マクロン大統領 他 数人の議員がリングサイドで観戦。フランス始まって以来のヘビー級チャンピオン候補への期待が如何に大きいかがわかる。日本ではあり得ない光景である。

 

1R ミラスは試合中、左・右自在に構えを変え、軽やかにステップを踏み2,3発打っては距離をとりリングを広く使う。変則型の選手であり、誰が相手でも極めてやりにくい選手である。ヨカは従来よりも高くガードを掲げて、ミラスの攻撃を全てブロック。慎重に立ち上がる。

 

2R ヨカ プレッシャーを掛けて前進。左ジャブから右ストレート、ラウンド終りに左・右ボディブロー、すぐにミラスお返しの左・右ボディブロー。

 

3R ミラスは足を使って絶えず動き、時折連打してはまた足を使ってリングを回る。有効打はともに無いがペースはミラスか。

 

4R ヨカの右ボディブロー有効。そのあと右・左・右フック軽くヒット。ヨカが攻撃を強め、ボディブロー3発ヒットし、ミラス動きがやゝ弱って後退を始める。 

 

6R ヨカのボディブローで始まり、ミラス猛攻撃、これをブロックしたヨカはグローブでコイ、コイと相手を呼び込むパフォーマンスを示す。

 

7R ヨカ ボディブローを3発、4発と打ち込んだあと、左ショートフックでミラスふらつき、そのあとの左フックでダウン。立上ったところに右・左・右フックのあとの右アッパーでミラス2度目のダウン。レフリーTKOを宣言した。

 

ヨカはさすがに五輪金メダリストで、防御も完璧。攻撃も無理押しせずに、速い相手の動きを止めるべく、ボディ中心に攻め、消耗してきた相手のガードを下げさせて左ショートフックと理詰めの攻撃で仕止めた。攻防のバランスも良く、パンチの切れ味もまずまず。アンソニー・ジョシアと同タイプで対戦すればそこそこ戦えることであろう。

しかしワイルダーや、タイソン・フューリーを考えるとスケールが小さい感がする。この試合の二人の動きは従来のヘビー級とは異なり、まるでミドル級のような動きであった。

しかしフランスが期待するだけの事はある選手である。尚リオ五輪の決勝の相手はジョー・ジョイス(英国)でタイトルマッチの前にどうしても戦わなければならない相手である。ちなみにヨカの夫人はリオ五輪のライト級金メダリスト(エステル・モリス)、二人の子供がいる。プロ転向後9戦全勝で、将来のスター候補である。

 

2.WBAインターコンチネンタル Sウェルター級タイトルマッチ

ソーレイマヌ・シソッコ(セネガル出身フランス国籍)30才 戦跡 13戦全勝8KO          リオ五輪銅メダリスト WBA Sウェルター級14位

イスマイル・イリエフ(ロシア)28才 戦跡 16戦13勝3KO 2敗1分 

 

1R イリエフ左ジャブを突いて前進、圧力をかける。シソッコ足を使ってリングを回りながら時折左ジャブ、右ストレートで対応、右ショートアッパー鋭い。

 

2R シソッコ ガードを固くして、イリエフが前進して打とうとする直前に左ジャブを当てる。右フックを上に、左アッパーをボディに。

 

3R イリエフ依然として圧力をかけて前にでるが、出すパンチは目の良いシソッコに当らず、シソッコの左ジャブ、右ストレートを上下に、時折右フックのアッパー2発を始め多彩なパンチでイリエフの攻撃を防ぐ。

 

4R イリエフこれではならじと一層圧力を強めて出るところに、右ストレートのカウンター3発、ついで左ジャブからの右オーバーハンドの右でイリエフ ダウン。

 

5R 開始直前にイリエフのコーナーからの申し出によりラウンド終了時TKOとなる。

 

イリエフの攻撃単調でシソッコにとってやゝ御し易い相手だったようである。シソッコは左ジャブ、左右フック、ストレートと右アッパー等多彩なパンチを振って、ボクシングセンスの良さを披露した。しかし前試合PKダウンを喫して2:1で辛勝しており、試合の後半疲れて攻撃力が弱まりスピードも落ちてきた時に、相手がもっとタフな選手であったなら、危険性を孕んでいると感じさせる。攻撃力を一段と強化する事が求められる。

 

 

会場 米国 アリゾナ州 トゥーソン カジノ・デル・ソル       WBOフライ級タイトルマッチ チャンピオン 中谷潤人 初防衛戦 計3試合  試合日 2021年9月10日

会場 米国 アリゾナ州 トゥーソン カジノ・デル・ソル 試合日 2021年9月10日 

(1)WBOフライ級タイトルマッチ

          チャンピオン 中谷潤人  vs アンヘル・アコスタ

(2)Sフェザー級10回戦

           ガブリエル・フローレンス vs ルイス・アルベルト

(3)WBC Sフェザー級タイトルマッチ

           チャンピオン オスカル・バルデス vs ロブソン・コンセイサン

 

(1)WBOフライ級タイトルマッチ

チャンピオン 中谷 潤人(日本) 23才 戦跡 21戦全勝16KO  2020年11月タイトル獲得、初防衛である。 サウスポー

挑戦者 アンヘル・アコスタ(プエルトリコ)30才 戦跡 24戦22勝21KO 2敗 Sフライ級で3度防衛しており、階級を上げてフライ級に挑戦した強打者である。

 

1R 中谷、長い右ジャブで様子を窺うが、突然打ち合いに転ずるところに、中谷の左フック、左ストレートがアコスタの顔面に直撃。アコスタよろめく。そのあと左フックのボディブロー2発、アコスタ鼻血を出す。

 

2R 中谷の左ストレートでアコスタ腰砕けとなる。鼻血酷くなり途中ドクターチェックが入り血止め処置。止まったところで再開。アコスタはストップを懸念して猛烈に攻撃。アコスタの右アッパー ヒット、中谷怯んで後退するが、すぐさま反撃に転ずる。

 

3R 開始早々にアコスタ2度目のドクターチェック。  再開するもアコスタ後退を続ける。

4R アコスタのコーナーはこのラウンド勝負を賭けると指示したよう。 ” このまゝではストップされるぞっ" と。アコスタ勝負をかけて前進するが、すぐにレフリースストップを宣言。

 

1ラウンドの中谷の左ストレートで鼻柱を骨折しており、これ以上の試合続行は無理と判断したようである。

中谷は長い手足を有しており右ジャブを有効に使い、アコスタの突入を阻止するとともに距離を測定する役割も持って、有利に試合を進め最大の武器左ストレートで決めるパターンであった。又ボクサータイプであるにも拘らずに接近戦も充分に熟(コナ)して万能型でもあり、この後2~3試合を無難にこなすと、大化けするかもしれない。楽しみな選手である。中谷は15才で中学卒業後アメリカにプロを目指して渡っており、プロ意識も高い。

 

(2)Sフェザー級10回戦

ガブリエル・フローレンス(米)21才 戦跡 20戦全勝7KO WBOフェザー級11位

トップランク所属 期待の新人である。若い頃から才能が突出しておr、16才で契約17歳でプロデビューしている。

ルイス・アルベルト(メキシコ)28才 戦跡 24戦22勝12KO 2敗 WBASフェザー級11位。

1R ロペスは先制攻撃をかけ左・右フックを力一杯振って突っ込む。右フック2発ヒット。意表を突かれたフローレンスは一方的に押しまくられる。

 

2R ロペスはガードを下げてどんどん前進し、攻撃を仕掛けフローレンスのパンチはウィービングで躱す。試合の主導権は完全にロペスのものとなる。

 

3~6R ロペスの攻撃は止まることなく、フローレンスは後退を続け反撃するも、後退しながらの為に威力がなく、委細構わず前進するロペスに為す術なく押される。コーナーに帰ったフローレンスは ” 一体何してんだ " っと叱咤されるがどうにもならない。

 

7R フローレンス打たれて左目の下を紫色に腫らしてダメージの深さを示し、8RにはKO負けを予想されるフラつきを示す。

 

9R フローレンス最後の勝負をかけて攻撃を行うが1分を過ぎると再び後退を始め左アッパーを受けてグロッキー、ダウン寸前でやっと立っている状態となる。このR終了時コーナーはタオルを投げ、選手を説得するがフローレンスはこれを拒否し試合続行を希望。

 

10R フローレンスは意地だけで倒れずに凌ぎきる。圧倒的差でロペス勝利。

 

それにしてもフローレンスの意地は感動的ですらあった。フローレンスのボクシングの素質は見るべきものがあるが、突進力のある相手に後退していては止められない。ジャブだけでない、カウンターのストレート、アッパーを使って完全に止めなくてはならない。ロペスのような相手は多分初めてであったろう。今後対策を練って練習することが必要である。一方のロペスは防御は二の次で攻撃一辺倒の選手であるが一旦つぼに嵌れば無類の強さを示すが、強打の相手にこれでは対抗出来まい。

 

(3)WBC Sフェザー級タイトルマッチ

チャンピオン オスカル・バルデス(メキシコ)30才 絶対王者ミゲール・ベルチェルトをKOに下し、タイトルを奪取しての初防衛戦である。アマ戦跡204戦177勝27敗、北京、ロンドン 五輪出場。

挑戦者 ロブソン・コンセイサン(ブラジル)32才、戦跡 16戦全勝8KO。北京、ロンドン、リオ五輪出場、リオで金メダル獲得、

アマ戦跡 420戦405勝15敗。 WBCSフェザー級14位。

 

1~5R コンセイサン ガードを高く掲げて速く鋭い左ジャブを多用し、力強い右ストレートでバルデスは接近出来ず、パンチも全く出せないし、出しても届かない。バルデスの顔は傷つき赤くなる。

 

6R このあたりからバルデス反撃に出るがパンチは当らない。

 

7~12R お互いにパンチを繰り出すがクリーンヒットはなく、バルデス攻撃を強めるがヒットはなく、10Rあたりからコンセイサンは勝利を確信して、ラウンドの終盤足を使って試合を流す。しかし判定は117:110、115:112 が2人でバルデスに上った。

 

9Rに反則1がコンセイサンにあるが、この不可解な判定は審判に説明責任があろう。117:110をつけた審判は何か別の意図があったか疑いも残る。

過去から連綿と続いてきた業界の疑惑を依然と引きずっているのかを疑いたくもなるのである。お互いのクリーンヒットは無いがパンチの数は断然コンセイサンにあり、バルデスのガードの上を叩いていたが、それ相当にバルデスにヒットしており、バルデスの顔面に傷跡が残っており、それは明らか。一方のコンセイサンの顔は綺麗なもので、その差は歴然としていた。バルデスに優位を示す理由は全くなく、見出せないのが現実である。

 

会場 米国 オクラホマ州 タルサハード ロック ホテル & カジノ  WBOインターナショナル Sライト級タイトルマッチ       アーノルド・バルボサ vs アントニオ・モラン 2021/8/30

会場 米国 オクラホマ州タルサハードロック ホテル&カジノ

                   2021/8/30       試合日8月14日

WBOインターナショナル Sライト級タイトルマッチ 

アーノルド・バルボサ(米)29才 戦跡 25戦全勝⒑KO WBOSライト級3位

 

対戦者 アントニオ・モラン(メキシコ)28才 戦跡 31戦26勝19KO 4敗1分 

 

1R どちらもミドルレンジで打ち合うタイプで、お互いに左ジャブを打ち合う。

 

2R バルボサはモランのパンチを全てガードで顔面は大半、ボディは7割方防御し、相手の打ち終わりに的確なパンチを送り込む。

 

3R モランはこのまゝでは打ち勝つ以外には勝てないとみて、手数を多く攻勢を強めるが、クリーンヒットはバルボサ。

 

4R 完全にペースを握ったバルボサは余裕を持って戦いを進め、左手を下げて攻勢中心の体勢をとる。

 

5Rに入ると2ラウンドで鼻柱を負傷したモランは鼻血が止まらなくなる。その後10Rまで続行。

 

判定は100:90が1人、99:91が2人でバルボサの完勝となる。

バルボサは防御が実に巧みで、ブロックが中心の相手の攻撃は最小限のステップバック躱し、すぐに攻撃に移る。防御に充分に注意を払う為に、思い切ってパンチを振うことはせずにスピード重視、従ってKO率は低いが安定感は抜群で勘も良い。当て勘も相当のもので完成された選手である。相手によって戦法を変えるテクニックも有している。ボクシングのテクニックを楽しむにはうってつけの選手。

 

会場 オーストラリア ニューサウスウェールズ州 ニューカッスル エンターテインメント センター               (2試合) 2021/8/30   試合日8月7日

会場 オーストラリア ニューサウスウェールズ州 ニューカッスル エンターテインメント センター 2試合 2021/8/30   試合日 8月7日

   

(1)WBOグローバル Sウェルター級タイトルマッチ

ティム・チュー (オーストラリア)26才 戦跡18全戦勝14KO、WBO1位、WBC3位、IBF3位。父親はコンスタンチン・チュー  ロシア スヴェルドロフスク( シベリアの奥地)生まれ。ナターシャ夫人とオーストラリアに移住してボクシングのスーパースターになった。戦跡は 34戦31勝2敗1無効試合であった。6年間Sライト級最強であり続けた。現在はモスクワでレストランを経営している。ティムは風貌も父親そっくりでボクシングスタイルも酷似しており、人気は急上昇中である。

挑戦者 スティーブ・スパーク(オーストラリア)24才 戦跡 13戦12勝11KO 1敗。

 

チューは相手がコロナの為に相手を探していたところ同じく7月に予定していた試合が中止となっていたスパークが試合の前1週間程で急遽決定。今回の試合となったものである。スパークは元々Sライト級の選手で6.3㎏の差があった。しかし顔を合わせた両選手を比べるとさほどの体格差は認められなかった。

 

1R スパークは先制攻撃を仕掛けて左アッパーと右ストレートでチューの顔をあげさせて先手を取る。チューは相手が明らかに格下の選手であることからやゝ甞めてかゝたところがあったか防御が甘かったようだ。

 

2R チューは左ボディブロー2発ついでの右アッパー2発を上・下に打ち分けて、スパークの動きは忽ち鈍くなり、あとはいつ倒れるかになってきた。

 

3R 始め、コーナーで氷の入ったバケツを誰かが蹴とばし、氷がリング上に散乱し取り除くのにやゝ時間が掛かった。さて試合開始したがチュ―の左ボディブローでスパーク ダウン。立上ったところに左ボディアッパーでスパーク2度目のダウン、TKOとなる。

 

さて注目のチューだが、さしてスピードがある訳ではなく、力感溢れたパンチでもないが、丁度ゴロフキンを思わせるようなパンチの威力は素晴らしく、魅力は充分で自信に満ちており、タイトルマッチは目前となってきた。

チューは攻防にバランスのとれた良い選手で、安定感抜群。特に左フックのボディブローは強烈でKO必倒の威力を有しており、風貌、ボクシングスタイルも垢抜けて、スター性も充分。ボクシング業界待望のスーパースター候補である。

 

一方 Sウェルター級のトップ戦線はWBAレギュラーチャンピオンのテクニシャン  エリスランディ・ララは既にミドル級に階級を上げる事が決まっている。WBAスーパー、WBC、IBF のチャンピオン  ジャーメル チャーロ、WBOチャンピオンのブライアン・カスターニョのいずれかがターゲットとなるが、両者ともチューとの対決は必ずしも望んではいないようであり、対戦は必然となった。一強のチャーロはこのクラスで突出した強さを有しており、そのスピードある強打は素晴らしいが基本的には待ちのボクシングでロープに詰る試合が多く、打たれ強さにも疑問が残る。Sウェルター級はウェルター級とミドル級にスター選手が集中して、その間に挟まれてやゝ注目度が低い時代が続いており、久方振りに花のある、そして力強い試合振りのチューの出現は大いに期待されるところだ。

 

(2)WBOアジアパシフィック Sフェザー級タイトルマッチ 

チャンピオン ジョー・ノイナイ(フィリピン) 戦跡 22戦18勝7KO 2敗2分

挑戦者 リアム・ウィルソン(オーストラリア)25才 戦跡 9戦全勝6KO 

 

1R ウイルソン途中左構えにスィッチしたところにノイナイの左ストレート直撃、ウイルソン ダウン。立上ったところに左ストレート2発を受けてウイルソン足許定まらずダウン寸前。

 

2R ウイルソン  ノイナイの左ストレートを警戒し右拳を顎に確りつけて防禦体勢をとり圧力をかけて前進。ロープにノイナイを詰めて攻勢、右ストレートヒット。ウイルソン立ち直る。

 

3R ウイルソンの左フック、右ストレート ヒットしてペースはウイルソンに傾く。

 

4R 後退を続けていたノイナイはボディにストレートを4発打ち込んだあと、ガードの下がったウイルソンの顎に左ストレート ヒットでウイルソン ダウン。立上ったあと、自らのパンチを振ったところで体勢を崩して3度目のダウン。そのあとノイナイの左ストレート3発を受けてフラフラでコーナーに戻る。

 

5R ノイナイの左ボディブロー2発のあと、左ストレート顎に直撃でウイルソン4度目のダウンでレフリーストップ。

 

ウイルソンは期待の若手であったが、実力者ノイナイの前に脆くも敗れた。ノイナイの左ストレートのスタイルはパッキャオを彷彿とさせて、そっくりであった。

 

 

会場  米国 カリフォルニア州 カーソン・ディグニティ・ヘルス スポーツパーク   (3試合)  試合日 2021年8月14日

会場 米国 カリフォルニア州 カーソン・デグニティ-・ヘルス スポーツパーク

                    試合日 2021年8月14日

(1)WBOバンタム級タイトルマッチ

 チャンピオン ジョンリエル・カシメロ vs 挑戦者 ギジェルモ・リゴンドー 

(2)WBAバンタム級暫定王座決定戦 

 アントニオ・ラッセル vs エマヌレル・ロドリゲス 

(3) バンタム級10回戦

 ラウシー・ウォーレン vs ダミエン・バスケス

 

(1)WBO バンタム級 タイトルマッチ

チャンピオン ジョンリエル・カシメロ (フィリピン)32才 戦跡 34戦30勝21KO 4敗 WBO、IBF Sフライ級、及び IBF フライ級王座 獲得している。

挑戦者 ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)40才。シドニー、アテネ五輪の金メダリスト、2001年~2005年の世界選手権優勝を引っさげて28才でプロに転向。キューバからボートで亡命2度目に成功して現在に至っている。アマ戦跡 475戦463勝12敗。ボクシング界のレジェンドである。WBA、WBO バンタム級王座を獲得している。

現WBAバンタム級王者であるが、WBOの主張は統一戦と名乗る資格があるのはWBAのスーパーチャンピオンである井上でありこれを認めないとの事から、リゴンドーはこれを返上する事でこの試合を敢行する事となった。

リゴンドーはワシル・ロマチェンコに挑戦、天才対決となったがこれに惨敗して評価をさげたが、次の試合元チャンピオンのフリオ・セハ戦に今までと全く異なる戦法に変え、正面から打ち合い苦戦したがこれをKOに下し、その後1試合を挟んで実に一年半振りの試合となる。

今回のリゴンドーがどんな戦法を選択するか、40才を迎えて期間があいた条件の中で、その体調はどうか等懸念されるところであった。試合前のオッズは2:1でカシメロである。リングの上に幕を張った会場はすでにすっかり暗くなっており、観客を入れての雰囲気は盛り上がりをみせていた。

 

1R 試合前に「3ラウンドにKOしてリゴンドーの最後の試合にしてやる」と豪語したカシメロは 1ラウンド開始早々プレッシャーをかけて前進。左フックを大きく振るうが空振り。その後、もつれてリゴンドーが倒れたところにカシメロはパンチを振い続けた。レフリーはここで試合をストップさせて、これをスリップダウンと判断した。

 

2R カシメロ嵩にかかって追い詰めるところにリゴンドーの左カウンターのストレート2発ヒット。右ジャブ1発、試合勘が戻ってきたリゴンドーは軽やかにリングを廻りながら動き始める。カシメロのパンチは全く当らない。リゴンドーはリズムにのる。

 

3R カシメロはプレッシャーをかけるが、ガードの上に一発当ったパンチのみで、繰り出すパンチはリゴンドー身体にすら1発も当たらず、リゴンドーの速い動きについて行かれない。リゴンドーの軽いリードパンチが数発ヒットする。

 

4R リゴンドーの動きが、3ラウンドまでとやゝ変わって少なくなり、お互いのパンチの交換はなく、リゴンドーの左ストレートがカシメロのガードの上を叩く。

 

5R カシメロの得意の左フック4発振うが全て空振り、リゴンドーの左ストレート2発。カシメロのパンチは当らないが手数はカシメロか。

 

6R リゴンドーの左ストレートのカウンターと右ジャブでカシメロの出鼻を叩く。極端に打ち合いの少なさに観客ブーイング始まる。

 

7R リゴンドーの右ジャブ3に対しカシメロの左フック4発全て空振り。

 

8R リゴンドーの右ジャブ3,左アッパー1浅いがヒット。カシメロの左フック2発空振り。

 

9R カシメロ 右アッパー2、右ストレートボディ、リゴンドー左アッパー2、左ストレートのカウンター1。

 

10R リゴンドーの左アッパー2、左ストレートボディに。右フックでカシメロたゞらを踏んで上体をリング外にのめる。

 

11、12R 両者一進一退のまゝ終了。

 

判定は115:113でリゴンドー、116:112、117:111でカシメロと分かれて、2:1でカシメロの勝利に終る。

私の採点は1,5,9, 11,12の各ラウンドはカシメロ。2, 3, 4, 6, 7, 8, 10 の各ラウンドはリゴンドーで115:113でリゴンドーの勝利とみた。

 

1.この試合は極めて難しい判定となった。攻勢をとるがパンチは当らない方をとるか、足を使ってサ-クリングしながら、右リードパンチを出し時に左のカウンターのストレートを出すスタイルでパンチは浅くとも当たっていた方をとるかで分かれたのである。

この試合はヨーロッパで行われていたとすれば間違いなくリゴンドーのものとなっていたであろう。

何となればヨーロッパはテクニックを重視するからであり、不様に一発のヒットもなくパンチを振り回すカシメロに点は入らないからだ。しかしこの試合はアメリカである。アメリカで勝利する為にはリゴンドーは(イ)手数をもう少し出すか(ロ)全盛時の踏み込みの鋭い左ストレートのカウンターが出ている事が必要不可欠であった。

しかし40才という年令の為か左ストレートの切れ味に力強さが欠けており、もともとの打たれ弱さを考えると、この試合運びはやむを得ないところであったかもしれない。

しかしリゴンドーは観客のブーイングもどこ吹く風と意に介さず、自分の信ずる道をたゞ進むだけとの信念を固くもっているようで、その防御技術は天才的でその足さばきと合わせて衰えを知らない見事さであった。一方のカシメロは左ジャブが全く無く、試合振りがワンパターンで単調、芸が無い。リゴンドーのテクニックにいいようにあしらわれて終わった。これでは井上にはおろか、ドネアにも対抗するのは難しいと思われる。

 

2.リゴンドーがスリップした後カシメロは倒れたリゴンドーにパンチを振い続けたが、ダウンした相手にパンチを振うことは反則であり、本来レフリーは反則負けを宣言するところであり、もしカシメロのパンチがまともに当ってリゴンドーが相当のダメージを受けて試合続行不可能になったら一体どうなっていたか。明らかにレフリーの不手際と云うべきであった。

 

3.リゴンドーは一体何を考えてこの試合に臨んだのであろうか。既に功成り名を遂げた現在、これ以上の名声を望んでいるとも思えない。もしかすると記者会見での品格に欠ける無礼極まるカシメロの発言に、リングの上で子供扱いしてキリキリ舞いさせる事を目的にしていたかともみえる試合でもあり、カシメロは良いようにリゴンドーにあしらわれた。天才と謳われた数少ないボクサー達も余人には計り知れない感覚があるのであろう。例えば ロイ・ジョーンズ Jr.やフロイド・メイウェザーの選手の晩年の試合振りは以前とは異なるものとなり、ボクシング界や観客の要望とは違った価値観に基づいた自分だけの目標に従って試合に挑んだようにみえた。今回のリゴンドーの試合も同様の様子がほのみえたのであり、勝敗を超越した何かである。リゴンドーの能力をもってすればカシメロを倒す事はさして難しい事ではなかったと思われるからだ。

(2)WBAバンタム級暫定王座決定戦

アントニオ・ラッセル(米)28才 戦跡 18戦全勝12KO  ボクシング3兄弟の次男。長男はゲイリーで現フェザー級のチャンピオン。3男はSライト級で14戦全勝全KOの逸材である。

エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)29才 戦跡 21戦19勝12KO 2敗。元 IBF バンタム級王者井上尚弥に統一戦全勝対決で2R KOに敗れたあと、ウオーレンと闘う予定が中止となり、次にネリと闘う予定がネリの体重オーバーで中止。次にダニエル・ローマン戦中止。次いでドネア戦はドネアがコロナにかゝって中止のあと、やっと辿りついたレイマート・ガマンジョ戦で疑惑の残る1:2の判定で敗れたあと今回の試合が組まれた。

 

さて1R開始早々バッテイングでロドリゲス鼻柱負傷。出血して昏倒。レフリーは直ちに試合を中止し、1R 16秒無判定試合を宣した。

 

しかしこのレフリーのこの対応は大いに疑問があり、レフリーはこの試合を一時中断してドクターの診断を仰ぐのがすじであり、その結果、続行か中止かを決めるべきであった。試合のあと両選手とも「何ヶ月もトレーニングをして万全のコンデションを作り上げてきたのにこの結果は極めて残念」とコメントしており、もし診断の結果続行可能であったら取り返しのつかない事態を招く危険があった。レフリーの責任は一体どうなっていたのであろうか。

それにしてもロドリゲスの付の無さは極まっており、お祓いでもしてもらわないと収まるまい。

 

(3) バンタム級10回戦

ラルシー・ウォーレン(米)34才 戦跡 21戦18勝4KO 3敗。 元 WBAバンタム級王者 アテネ、北京、ロンドン五輪に出場している。アマチュア時代の戦跡318勝15敗。

 

ダミエン・バスケス(米)24才 戦跡 19戦16勝8KO 15敗1分 イスラエル・バスケスの甥 サウスポー対決である。

 

1R 右フックでバスケス ダウン、ついでの右フックでバスケス2度目のダウン。立上ったところにウオーレン倒しにかゝり猛攻。バスケス何とか堪える。

 

2R バスケスはウオーレンの右フックを警戒して左ガードを高くして防御体勢ををとるがウオーレンの左ショートフックのカウンター見事に決まってウオーレンKO勝ち。ウオーレンは2015年3月以来6年6ヶ月振りのKO勝ちを収めた。

 

会場 米国 テキサス州 サンアントニオ AT & Tセンター           (1)WBA暫定ライト級タイトルマッチ (2)4団体Sウェルター級王座統一戦 2021/7/19  (試合日 7月17日)

会場 米国  テキサス州  サンアントニオ  AT&Tセンター  2021 / 7 / 19

                                                                       (試合日 7月17日)

(1)  WBA暫定ライト級タイトルマッチ

チャンピオン  ロ―ランド・ロメロ  (米国) 戦跡13戦全勝11KO

 

挑戦者 アンソ二ー・イギット (スウェ―デン) 戦跡26戦24勝KO1敗1分 この試合は挑戦者が膝の故障の為対戦キャンセル。試合の10日前に急遽対戦が決まったが、イギットが体重制限に5ポンドオ―バ―で、ロメロは勝てばタイトル防衛、負けてもタイトルの移動はないという差別的なものとなった。尚 5ポンドは1階級上のSライト級のリミットである。

 

試合は7Rに3度のダウンを奪ってロメロが勝利したが、ロメロは相当に怒りの感情が抑えらなかったか、かなり荒っぽい試合ぶりであったし、ロメロはジャブがほとんど出ず、左・右フックを振り回す単調なもので、ロメロはテオフィモ・ロペスとやりたいと語っているが、レベルの差は相当にあり、身の程を知るべきである。

 

(2)4 団体 S ウェルター級王座統一戦

3団体統一チャンピオン ジャメ―ル・チャ―ロ 31才 (米国)  戦跡 35戦34勝18KO 1敗 アマ 戦跡 64戦56勝6敗8分。1敗はトニ―・ハリソンで1度タイトルを失っている。

双子の兄はミドル級のチャンピオン ジャモ―ルである。

ニックネームは『アイアンマン』

 

対戦者 ブライアン・カスター二ョ 31才 (アルゼンチン)  戦跡 18戦17勝12KO 1分。 

1分は 現WBA レギュラー チャンピオンの希代のテクニシャン エリスランディ・ララ戦である。アマ戦跡 191戦181勝5敗5分 試合前のオッズは5 : 2でチャ―ロの圧勝とでている。

 

 

1R  カスターニョ、やゝ圧力をかけて左ジャブを突いて前進。チャ―ロをロープに詰めて2度、3度と集中攻撃をかける。チャーロは全く手を出さず。

 

2R  チャ―ロ、左ジャブ3発、ワンツ―3発当ってはいないカスター二ョがロ―プに詰めて攻撃するところに狙っていた左フックでカスタ―二ョたじろぐところにチャ―ロ集中打、その後は違いにジャブを突き合う。

 

3R チャーロはカスターニョに打たせてカウンターを狙っているようだ。カスターニョはチャーロをロープに詰めての左フックで一瞬チャーロ腰を落しかける。

 

4R チャーロは左ジャブを出すが、カスターニョガードを固めてこれをブロック。チャーロ終始ロープに詰まって受け身。

 

5R  カスターニョ、左フックを上・下に打ち分ける。チャーロはロープに詰まって押されっぱなし。

 

6R 試合は変らずカスターニョにロープに詰められてチャーロは一貫して後手後手。手数も少ない。

 

7、8R カスターニョのパンチは正確さを増し試合は完全にカスターニョのペースとなる。

 

9R チャーロはロープに詰ったまゝ。カスターニョはチャーロを押しまくる。

 

10R チャーロ、この試合2発目のクリーンヒットが左ボディブローからの右ストレートでカスターニョぐらつく。勢いづいたチャーロは猛アタックをかけるが、カスターニョ ガードを固めて何とかこのラウンド凌ぐ。

 

11R チャーロの右ストレート、左フック、アッパーと攻撃を強めるがカスターニョも負けずに反撃する。

 

12R 両者打ち合うがやゝカスターニョ優勢のうちにゴング。

 

判定 117:111、113:114、114:114でドローとなった。

私の判定では117:111でカスターニョであった。

パンチの当った数、手数、攻勢面で明らかにカスターニョで、特にチャーロはほとんどをロープに詰まって受け身で有効なパンチも極めて少なかった。チャーロの地元でもあってのホームデシジョンもここまでくると客を呼べるかどうかが評価に大きく影響しているのは明らかであった。

 

エリスランディ・ララはWBAミドル級のタイトルを握って、Sウェルター級に戻る気はないようで、その理由はミドル級に有力選手がひしめいて居て、スーパーファィトが望めるからだ。Sウェルター級は人気のウェルター級とミドル級に挟まれて人材が乏しく、WBC1位のティム・チューしか目ぼしい選手が居ない。ジャレット・ハート、ジュリアン・ウィリアムス、リアム・スミス等は今一つ物足りない。

 

ジャーメルは確かにハードパンチャーでジャブ、ストレートと威力あるパンチを有しているが、基本的には待ちのボクシングで相手の打ち終わりを狙ってカウンターを打ち込むスタイルの為、圧力のある相手にはどうしてもロープを背負う事となる。

一方のカスターニョはガードがしっかりして防御が巧みで、突進力もあり手数も多くタフであり、大方の予想を裏切って勇敢さも相当なもので、チャーロを押しまくった。

 

審判陣にもチャーロは強いとの先入観があって、有効打が少ないにも拘らずに極めて数少ないパンチを過大に評価していたのは明らかで、試合がチャーロの地元であった事も、判定に大きく影響を及ぼしていたと思われる。 

 

会場 米国 ジョージア州 アトランタ ステート・ファーム アリーナ   WBA Sライト級タイトルマッチ Cham.マリオ・バリオス vs ジャーボンティ・デービス     外 計3試合 2021/7/5  試合日6月26日

会場 米国 ジョージア州 アトランタ ステート・ファーム アリーナ

                  2021/7/5  試合日6月26日

 

(1)WBA Sライト級タイトルマッチ

チャンピオン マリオ・バリオス 26才(米)戦跡 26戦全勝17KO  ニックネームは「エル・アステカ」身長180㎝ リーチ180㎝

 

挑戦者 ジャーボンティ・デービス 26才(米)戦跡 24戦全勝23KO  身長166㎝ リーチ171㎝ 現WBA Sフェザー級及びWBAライト級のチャンピオンでもあり同時3階級制覇を狙う。メィウェザーの秘蔵っ子である。

 

1R デービスはガードを高く掲げて構える。中間距離を得意とするバリオスは長い左ジャブを出すが、右拳をしっかりと顎に付けてデービスの左パンチに備え極めて慎重に闘う。デービス手を出さず。

 

2R バリオス上・下にパンチを振ってデービスの入り込むのを防ぐ。バリオスはデービスをロープに詰めてパンチを振うがヒットはせず。

 

3R デービスはやっと手を出し始めるがヒットはせず。

 

4R バリオスが左ジャブを出すところにデービス速い左アッパーを合わせる。当らないが相手に与える恐怖心は大きい。バリオスは充分対策を立てゝおり、思い通りの試合運びであるようだ。

 

5R デービス攻撃力を増しパンチも当たり始める。バリオス後退し始めるが、ボディブローで対抗。

 

6R デービスの圧力強まり後退気味のバリオスのパンチは当らなくなる。両者の警戒感がヒシと伝わってくる。

 

7R デービス攻勢を強めるがバリオス注意力を高めて、まともなヒットは許さない。

 

8R デービスのいきなりの右フックが初めてクリーンヒットしてバリオス ダウン。立上ったところに左フックで2度目のダウン。立上ったバリオスは反撃して何とか終了。

 

9R バリオス、反撃開始。ボディ攻撃を中心に手数を出す。デービスは一休みか。

 【このラウンド終了時コーナーでメィウェザー 「何しているんだ!」とハッパをかける。】

 

10R デービス集中攻撃を行うがバリオス防御に専心しこれを防いで、ボディ攻撃中心に反撃する。

 

11R デービスの左アッパーのボディブローでバリオス ダウン。立上ったところに左フックでたじろいだところでレフリーストップを宣言。TKOでデービス勝利。

 

これで今までに例をみない3階級同時タイトル保持者となった。果たして誰がデービスを止める事が出来るであろうか。

4団体統一王者イギリスのジョシュ・ティラーが次のターゲットになると思われる。総合力の高いティラーがデービスの壁となれるかが今後注目の的となる。

 

(2) WBC Sウエルター級挑戦者決定戦 

エリクソン・ルビン 25才(米)戦跡 24戦23勝16KO 1敗 サウスポー、ニックネームは「ハンマー」。早くから将来を嘱望された逸材でジャーメル・チャーロに挑戦したが予想外の1RでKOされたあと

復活路線を辿っている。 同位1位。

 

対戦者 ジェイソン・ロザリオ 26才(ドミニカ共和国)戦跡 23戦20勝14KO 2敗1分 ニックネームは「バナナ」 ジュリアン・ウィリアムスに番狂わせで勝利しタイトルを握ったが、ジャーメル・チャーロに敗れタイトルを失う。

 

1R ロザリオ、ガードを高々と掲げて圧力をかけて前に出る。ルビンは右ジャブを多く出してロザリオの出足を止めにかゝる。 2Rも同じ。

 

3R ルビンはロザリオの左に廻りながら自分の左ストレートをガードの合間にヒットする。ゴング直前にルビンの右フックでロザリオの足がもつれる。

 

4R ロザリオ主導権を握るべく積極的に攻撃力を強めて、ルビンをロープに詰めて連打。このラウンドをとる。

 

5R 4R同様だが終盤ルビンの左アッパーがヒット。

 

6R ロザリオ圧力をかけて前進するところルビンの左・右フックがボディにヒットしてロザリオ ダウン。立上ったが、ガードの上に右フックがボディにヒット、ロザリオ苦悶の表情でダウン。KOとなる。

 

これでルビンはチャーロに2度目の挑戦が決まったが、この試合ルビンが後退する場面もあり果たしてチャーロに勝てるか疑問が残る。

 

(3)Sウェルター級12回戦

カルロス・アダメス 27才(ドミニカ共和国)戦跡 20戦19勝15KO 1敗 トレーナーはイスマエル・サラス。

 

対戦者 アレクシス・サラザール (メキシコ)戦跡 26戦23勝9KO 3敗。トレーナーはフレデリック・ローチ。

 

アダメス3Rにサラザールを後ろから抱えてパンチを振う事2度あり、2ポイント失うが左フック一発が顎に直撃しサラザール ダウン。立上ったが足元がふらついて戦闘態勢がとれずレフリーKOを宣言。アダメスはスピードもパンチ力もあり今後に期待される。

 

会場 米国 ネバダ州  ラスベガス ヴァージン ホテル         ライト級 12回戦 ワシル・ロマチェンコ vs 中谷正義 2021/6/27    試合日 6月26日

会場 米国 ネバダ州ラスベガス ヴァージン ホテル 

                                 2021年6月27日 (試合日 6月26日)

ライト級12回戦

ワシル・ロマチェンコ 33才(ウクライナ)戦跡 16戦14勝10KO 2敗                 2020年10月17日統一戦でティモフィオ・ロペスに判定負けでタイトルを失い、その後右肩の手術を経て、今回が復帰第一戦である。

 

対戦者 中谷 正義 32才(日本)ロペスと対戦し善戦、次のスター候補選手フェリックス・ベルデホを終盤逆転KOに下してこの対戦を勝ちとった。戦跡 20勝13KO 1敗。

 

前日の記者会見でロマチェンコは「私はもっと自分を向上させたいと思ってます。中谷はとてもタフです。身長も高く、リーチも長く良いボクサーだと思っていますので対戦する事にしました。私も持っている最高のスキルで私が何者なのかをリング上でお見せします」と語った。

 

1R ロマチェンコの左ストレート2発顔面に3発顔面にヒット、バッティングでロマチェンコの頭の上を出血。中谷は右目上を傷つける。

 

2R ロマチェンコの左ストレート2発、中谷の左ボディブロー1発ヒット。

 

3R 中谷の左ジャブ当たり始める。ロマチェンコの左・右ストレート1発づゝヒット。

 

4R 中谷の右ストレート顔面、ボディにヒット。左右ボディブロー2発。中谷にとっては思い通りのラウンドであった。

 

5R 中谷の左ジャブからの右ストレート、リーチの長さを生かし順調に推移するところ、接近戦の中でクリンチのあと気が弛んだのかクリンチを振りほどかれて廻られ体勢を崩すところ、左右フックで足がもつれてダウン。中谷はスリップと意思表示したが、パンチは当っておりダウンと判定される。

 

6R 中谷攻勢に出て右ストレート浅いがヒット。ロマチェンコ左・右・左のストレートの3連打からの集中攻撃で中谷防戦一方に追い込まれる。

 

7R ロマチェンコ、中谷の左に廻りながら左ストレート、そのあとクリンチの離れぎわに廻り込みながら多彩なパンチを乱れ打ち。

 

8R  ロマチェンコ、左ストレート2発のあと左右フックをボディに連打、中谷は闘う意欲は十分に見せ、右ストレート、アッパーを打ち込む。

 

9R ロマチェンコの左ストレート クリーンヒットで中谷急速に弱るところにロマチェンコ多彩なパンチを集中的に浴びせて、中谷ついに2度目のダウン。ここでレフリーがストップを宣言した。

 

対ロペス戦ではやゝ精彩を欠ていたかに見えたロマチェンコは完全に元に戻って復活したといえよう。宣言通り存分にそのスキルの高さをボクシング関係者に見せつけた。

 

一方の中谷選手はよく闘った。彼の狙いはリーチの長さと体力差を生かし、左ジャブを突いて右ストレートを当てること、更に左フックでボディを狙う事であったが、その目標通りの試合は出来ていたが、ロマチェンコのクリンチ際の攻撃力を軽視していたのは誤算であった。クリンチで休ませてくれなかったのである。

又後半になるにつれて攻撃力を一段と増す凄さは相変わらずで、この結果はやむをえなかったと云う事ではあった。

 

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス ヴァージン ホテルズ・ラスベガス   WBAスーパー & IBF バンタム級タイトルマッチ   チャンピオン 井上尚弥 vs マイケル・ダス・マリナス  2021/6/20   現地時間 6月19日

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス ヴァージン ホテル 2021/6/20  現地 6月19日

 

WBAスーパー & IBF バンタム級タイトルマッチ

 

チャンピオン 井上尚弥 28才 (日本)戦跡 20戦全勝17KO ニックネームはモンスター

 

挑戦者 マイケル・ダス・マリナス 28才(フィリピン) 戦跡 33戦30勝20KO 2敗 1分

サウスポー  IBFバンタム級1位 指名挑戦者。

 

1R ダスマリナス 足を使って左右に動き、右ジャブで突破口を何とかひらく作戦のようだ。この右ジャブに対して、井上 左フックのカウンターで対抗、この左フックが頭上を擦ったことでダスマリナス大きく体勢を崩す。

 

2R 1ラウンドの左フックは多分その振り音が ブン "とダスマリナスには聞こえた事であろう。これでガードをガッチリと高く掲げて顔面を防御して、守り一辺倒となったところ井上の左フックが2発、2発目がボディをこすって、注意が上に集中していたダスマリナス堪らずダウン。何とか立上る。

 

3R 相手の攻撃力を見切った井上は左手を下げて倒しにかゝり、先ず顔面を攻撃したあと左ボディブロー2発でダスマリナス苦悶の表情を浮かべて2度目のダウン。必死に立ち上がるところに左アッパーからの左フックが肘で防御したそのうしろの脇腹にヒットし、そのまゝKOとなった。3R2分25秒の事であった。

 

試合前にモンスター狩りを高言していたダスマリナスであったが、当初たてた作戦はリーチの長い長所を生かし、速い右ジャブで井上の出足を止め、右まわりに回って左ストレートを当てゝヒット・アンド・アウェーで試合を組みたてる目論見であったろうが、1ラウンドその右ジャブに想像以上に速くて強い左フックを合わされて、完全に目算が狂ってしまい、肝心の右まわりが完封されては打つ手がなくなり、井上のあまりの強打にすっかり委縮してしまった。これでは勝負にならない。

 

会場にWBA、WBOのチャンピオン ドネアとカシメロが観客の中に居て観戦しており、近く行われる両者の試合のあと、その勝者が井上と戦う事が既成の事実となったようであり、井上の統一への道が近くなってきたようである。

 

現時点でのパウンド・フォー・パウンド   2021/6/

リング誌 / ESPN // ボクシング・シーン 

 

 サウル・アルバレス  / サウル・アルバレス  //  サウス・アルバレス  

 

 井上 尚弥 / テレンス・クロフォード // 井上 尚弥

 

 テレンス・クロフォード / 井上 尚弥 // エロール・スペンス

 

 オレキサンダー・ウシク / エロール・スペンス // テレンス・クロフォード

 

 ジョシュ・ティラー / テォフィモ・ロペス // テォフィモ・ロペス

 

 エロール・スペンス  / タイソン・フューリー // オレキサンダー・ウシク 

   

 テォフィモ・ロペス  / ジョシュ・ティラー // ジャメール・チャーロ 

   

 フランシスコ・エストラーゼ  / オレキサンダー・ウシク // フランシスコ・エストラーゼ

 

 ワシル・ロマチェンコ ワシル・ロマチェンコ // ジョシュ・ティラー  

 

10 井岡 一翔 / フランシスコ・エストラーゼ  // ワシル・ロマチェンコ                    

 

会場 カリフォルニア州カーソン・ディニティ・ヘルス・スポーツ・パーク  WBAミドル級王座決定戦  1試合    2021/6/7  試合日 5月1日

WBAミドル級王座決定戦  試合日 5月1日

WBA Sウエルター級チャンピオン エリスランディ・ララ (米)キューバから亡命して栄光を掴んだ。ボクシング界きってのテクニシャン 戦跡 33戦27勝17KO 3敗3分

 

対戦者 トーマス・ラマンナ(米)戦跡 35戦30勝12KO 4敗1分 同級6位

 

1R サウスポーのララは圧力をかけて前進。右ジャブを繰り出し、次いで得意の右ストレート4発 悉くクリーンヒット。5発目の大きく振り回したオーバーハンドのストレートとフックの中間のパンチが命中。ラマンナ仰向けにダウンし、立上ることなくレフリーはKOを宣した。1R1分20秒のことであった。

 

イスマエル・サラス トレーナーについたララは攻撃力を強化したようで、自身試合前に「この試合はKOで勝たなければいけない、私の目標はこのクラスの統一である。」と語っている。稀代のテクニシャン、ララは Sウエルター級でも小柄であったのに、果たして強豪ひしめくこのクラスで対抗していけるのかの心配の方が私には強い。

 

このクラス、WBCスーパースター王者にパウンド・フォー・パウンド1位に君臨するカネロ・アルバレス。WBCレギュラーチャンピオンに強打で連勝のジャモール・チャーロ。WBAスーパーに村田諒太。IBF王者に17連続KO防衛の記録を有するゲンナディ・ゴロフキン。WBOにデメトリアス・アンドレイドが居る。

 

会場  米国 テキサス州ダラス アメリカン エアライン・センター2試合 2021/6/7

(1)WBA、WBC Sフライ級王座統一戦  試合日 2021年3月15日

WBA Sフライ級チャンピオン ローマン・ゴンザレス 33才(ニカラグア)戦跡 52戦50勝41KO 2敗。2敗は共にシーサケット・ソールンビサイで完敗だった。

 

WBCチャンピオン ファン・フランシスコ・エストラーダ 30才(メキシコ)戦跡 44戦41勝28KO 3敗

 

1~5Rあたりまでゴンザレスの接近しての手数が上回って優劣であったが、6ラウンドあたりから手数の多さと前進する圧力は変らないものゝパンチに力強さが失われはじめ、パンチの精度と有効さでエストラーダにペースは移行していった。

12R ゴンザレス必死の攻撃でエストラーダ追い込まれるが、そのまゝ終了。

 

115:113、117:111、113:115 の 2:1でエストラーダが2団体統一を果たす。

ゴンザレスの中盤からの失速はさすがに年令を感じさせた。

このクラスでは強豪のシーサケット・ソールンビサイがいる。 

 

(2)WBCライト級 暫定王者決定戦     試合日2021年1月2日

ライアン・ガルシア 22才(米)WBC4位 戦跡 20戦全勝17KO ゴールデンボーイ・プロモーション所属

 

対戦者 ルーク・キャンベル 33才(英)同級3位 戦跡 23戦20勝16KO 3敗 サウスポー。2012年ロンドン五輪金メダリスト。世界戦過去2戦2敗 1人はホルヘ・リナレスに1:2。もう1人はワシル・ロマチェンコに0:3で敗れている。

 

1R ガルシア圧力をかけて前に出る。キャンベルはガードを高くしてガルシアの強打を警戒。腰が引けて押され気味。

 

2R 中盤、突然のキャンベルの左ロングフックが顎にヒット。ガルシア ダウン。本人も驚いた様子ですぐに立ち上がる。ダメージはなさそうである。

 

3R ガルシアはキャンベルの左を警戒して右ガードを高くして防衛体勢を固めて前進し、パンチは目一杯振る。

 

4R キャンベルの左ストレート当るが自分の防御に任意が主となり有効打とならず、ガルシアのパンチがガードの上を叩くがキャンベルぐらつく。

 

5R キャンベルは押されながらも時折反撃するが、一貫して後退気味。ガルシアの連打からの右アッパーに体勢崩れてリングに背を向けてロープにもたれたとこれでゴング。

 

6R ガルシア倒しにかゝるり猛攻。中盤一服のあと再び攻撃にうつる。

 

7R キャンベルの左ボディブロー2発に狙っていたかのような左フックかアッパーの中間パンチがキャンベルのボディに炸裂。キャンベル苦悶の表情を浮かべてダウン。そのまゝKOとなる。

 

22才のスターが誕生した。通常サウスポーに対しては相手の右回りに動いて闘うが、ガルシアは一切お構いなしの正面から一発一発、力を込めたパンチを繰り出す。パワーヒッターであり魅力十分である。しかし1ラウンド ダウンのあと右ガードを高くしたが、左ジャブ・ストレートを打つ際、右ガードが下がりキャンベルの左フックは見えないようであるのが気になる。今後左フッカーとの対戦に注意する必要があるのではないか。

このクラスにはジーボンティ・デービス、ラィモフィオ・ロペス、ワシル・ロマチェンコと錚々たる面々が顔を揃えており、この中に割って入るのは仲々難しい。

 

会場 米国 カリフォルニア州会場 カリフォルニア州カーソン ディグニティ・ヘルス・スポーツパーク 3試合 2021/5/30  (試合日5月29日)

(1)WBCバンタム級タイトルマッチ

チャンピオン ノルデーヌ・ウバーリ 34才(フランス)戦跡 12戦全勝12KO

 

挑戦者 ノニト・ドネア 38才(フィリピン)戦跡 46戦40勝26KO 6敗 元5階級王者 20年1月に対戦の予定があったが3度の延長ののちに今回の対戦が決まったもの。

 

試合前の記者会見を並んで行う。ドネアは『彼(ウバーリ)の事は軽視してはいません。私の経験は豊富で誰が闘っても私には苦戦するでしょう。もうすぐ40才になりますが、健康を維持しているからです。井上尚弥とのリマッチを行うことが私のすべての希望です。』と語る。椅子の上に胡坐をかいて会見に応じたがウバーリを全く問題にしていない様子が見えた。

 

1R ウバーリの右ジャブ始まる。自分の距離を守って前進。左右に動きながらドネアに的を絞らないように注意し、速いパンチでを繰り出す。

 

2R 1ラウンド様子をみていたドネアは 圧力をかけて前に出るところ、ウバーリの左フックでドネア上体を起される。ペースは1ラウンド同様ウバーリにあるがドネアの左フックの距離が合ってきたようで、ウバーリ心理的に押されてきたようだ。

 

3R ウバーリの入ってくるところにドネアの左ストレート、左フックが合ってきてウバーリがロープに詰るところに左フックが顎にヒット。ウバーリ ダウン。立上ったところゴングと同時に放ったドネアの左フックからの左アッパーdウバーリ2度目のダウン。何とか立上って、レフリーが試合続行を確認したあとゴング。

 

4R ウバーリ必死の反撃を試みるが、ドネアの左右フックに耐えきれずに屈み込むところに必殺の左アッパー顎の炸裂。ウバーリ倒れその状態を確認してレフリーKOを宣言。

 

4R1分52秒であった。

ドネアの必殺の左フックは全盛時代と些かも変わらない威力を充分に見せつけてウバーリを一蹴りした。

 

試合後ドネアは『最高の気分です。私には成長する能力があります。又精神的な部分がこの年齢になると大きいものになります。人間は鍛えれば年齢にかゝわらず、作られるということです。今日の試合は一つに井上尚弥との試合の為にあったもので、私の目標は井上尚弥とのリマッチです。私の父は病気で弱ってきています。お互いに支えあって頑張っていきましょう』と語った。

 

ドネアは1982年11月フィリピン タリポン生まれ。

2007年7月に当時無敗のIBFフライ級王者ビック・ダルチニアンを5RKOに下し戴冠3度防衛の後2009年8月ラファエル・コンセプシオンを判定に下しWBA暫定王者。

2011年2月フェルナンド・モンティエルを2R衝撃の左フックの一撃でKOに下しWBO、WBCバンタム級王者、2012年2月ウィルフレド・バスケスjrを判定に下しWBOバンタム級、2012年7月にジェフリーマセブラを判定に下しIBF、WBO Sバンタム級王者。2014年5月シンビゥィ・ベトイエカを判定に下しWBAフェザー王者となり5階級を制覇したが、しかし2013年ギジェルモ・リゴンドーに破れ、2014年10月ニコラス・ウォータースに6RTKOに破れた頃から、陰りを見せ始めて体力的にも下降線をたどることになる。

 

しかしドネアはフェザー級からもっとも自分に合ったバンタム級に体重を落として蘇ったようだ。2019年11月バンタム級スーパーシリース(その階級で誰が一番強いかを決めるトーナメント)の決勝でモンスター井上尚弥と対戦。戦前の予想を覆して9ラウンドあわや井上をKO寸前に追い込む力を示した。

これで4団体統一路線を歩む井上尚弥との念願の対戦も現実化してきた。

 

(2)Sライト級挑戦者決定戦

スブリエル・マティアス  29才(プエリトリコ)戦跡 17戦16勝16KO 1敗 IBF Sライト級7位。

 

パティルザン・ジュクムバエフ  30才(カザフスタン)戦跡 20戦18勝14KO 2無効試合  同級8位  サウスポー。

 

4R 左・右ショート フックでジュクムバエフ ダウン。後半ジュクムバエフ反撃しマラィアス足もつれる。

 

7R マラィアスの反撃急。

 

8R マラィアスの攻撃激しく、このラウンド終了。ジュクムバエフのコーナーからギブアップの申し出あり、KO。

 

ジュクムバエフはパンチを振う為に自分の距離が必要だが、マティアスの手数が多く、間合いを取り事が出来ずに後手後手にまわり、マティアスのショートパンチに押しまくられた。力敗け、体力敗けで已むを得なかったジュクムバエフのパンチはそれでも何発かヒットはしたが、何せマティアスのショートパンチに体が起こされて効果的なヒットにならなかった。それにしてもマティアスのショートパンチは大振りでない事から的中率も良く、体力も、スタミナも充分。打たれ強さも有しており、今後が楽しみ。

 

(3)Sライト級10回戦

ゲイリー・アントゥアン・ラッセル 24才(米)戦跡 13戦全勝全KO 4兄弟は全部ボクサー、長兄はフェザー級王者ゲイリー・ラッセル サウスポー。

 

対戦者 ジョバンニ・サンチャゴ 31才(プエルトリコ)戦跡 16戦14勝10KO 1敗1分 1敗はブローナに判定負けのものでやむを得ないところだ。

 

1R からラッセルの圧力にサンチャゴ後退一方で・・・

4R 右フックが顎にヒットしてサンチャゴ ダウン。

6R 一方的となりサンチャゴふらついてダウン寸前、このラウンド終了時ギブアップでラッセル全KOを守る。

 

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス ヴァージン シアター         Sライト級4団体王座統一戦  2021/5/24   試合日 5月22日

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス ヴァージン ホテル 2021/5/24   試合日 5月22日

 

Sライト級4団体王座統一戦

WBA、IBF チャンピオン ジョシュ・テイラー  30才(英国)戦跡 17戦全勝13KO サウスポー

 

対戦者 WBC、WBO チャンピオン ホセ・カルロス・ラミレス 28才(米国)戦跡 26戦全勝17KO 

共にロンドン五輪に出場、2回戦で敗退している。現地でのオッズは8:5でテイラー。

 

1R ラミレス ガードを高くしてテイラーの左を警戒し、圧力をかけて前進する。左フックをボディに。

 

2R テイラーは右手を下げてジャブを打ちやすいように構え打って出る。お互いに有効なヒットはなし。

 

3R ラミレス接近して上・下に打ち分け、右ボディブロー有効。手数も多くラミレス ベースか。

 

4R ラミレスの左アッパーからの連打でテイラー押される。後半テイラー反撃。

 

5R お互いパンチのやりとりあるが有効打はなし。ラミレスの優勢は続いている。

 

6R ラミレスの左ストレートに対してテイラーのショートストレートのカウンター決まってラミレス ダウン。

 

7R ラミレス6ラウンドのダウンを取り返すべく攻撃をかけるところ、テイラーの左アッパー顎に決まってラミレス ダウン。

 

8R テイラー倒しにかかるが、ラミレス何とか凌ぐ。

 

9R ティラー、ラミレスの逆襲を極度に警戒し無理押しせず。ラミレスは必死の攻撃を行う。

 

10~12R ラミレスの攻撃に対しテイラー クリンチで対抗。明らかに逃げ切りを図って終了。

 

判定は3者とも114:112でテイラー勝利。4団体統一なる。

しかしテイラーの後半の消極さは目に余るものがあり、7ラウンドのダウンがなければ判定はラミレスに上ったかも知れなかった。ラミレスは中盤まで主導権を握って、優位に試合をすゝめたが6ラウンド不用意なカウンターを受けたのが全てであった。

 

尚4団体統一したのはミドル級04年9月のバーナード・ポプキンス、Sライト級17年のテレンス・クロフォード、クルーザー級18年のオレクサンダー・クボジーク、ライト級20年のテオフィモ・ロペスがいて、いずれも強豪揃いである。

 

ジョシュ・テイラーはこれで4団体統一王座を手にしたが、それだけの実力はない。

このクラスにジャクール・スティーブンソンが居るが抜群のセンスとスピードを持っていて、能力はティラーより上であろうし、一階級下のWBA王者25才のジャボンティ・デービスは23戦全勝22KOで、その強さは突出しており、同クラスの4団体統一王者23才のテオフィモ・ロペスがロマチェンコを下して君臨しており、この3人にはテイラーは勝てないであろう。

 

会場 米国 フロリダ州 キシミー・シルバー・スパーズ・アリーナ   WBO フェザー級タイトルマッチ 2021/5/17  試合日 4月24日

会場 米国 フロリダ州  キシミー・シルバー・スパーズ・アリーナ 2021/5/17 

                                        試合日 4月24日

WBO フェザー級タイトルマッチ

チャンピオン エマヌエル・ナバレッテ・マルティネス  26才(メキシコ)戦跡 34戦33勝28KO 1敗 9ヶ月で5度の防衛戦を行っていた。Sバンタムの時代このクラスでの初防衛戦。ニックネームは「カウボーイ」

 

挑戦者 クリストファー・ディアス 26才(プエリトリコ)戦跡 28戦26勝16KO 2敗 2018年7月伊藤雅雪とSバンタム級の王座決定戦で敗れている。あとの1敗はシャクール・スティーブンソン。

 

1R ディアス高々とガードを掲げて、左ジャブを中心に圧力をかけて前に出る。ナバレッテは左アッパーで迎え打つ。

 

2R ディアス右フックのカウンター有効。ナバレッテの攻撃を左・右に動いてこれを躱す。

 

3R ナバレッテ左・右フックを振って猛然と攻勢にでる。左ロングアッパー2発。ディアス、ガードを固めて反撃。

 

4R ディアス軽快に左・右に動いてショートパンチを当てゝペースに乗ったところにナバレッテのロングの左アッパー顎にヒット。ディアス ダウン。

 

5R ディアス4ラウンドの挽回を図り攻勢に出て、思い切りパンチを振って前に出る。ナバロッテもこれに対抗して打ち合う。

 

6R ディアス前進し、左フックのボディブロー、左フック顔面に打ち分けて攻勢。ナバレッテ押される。コーナーに帰ったナバレッテ苦笑いする。ディアス乗ってきた。

 

7R ディアス相手とのリーチ差20㎝を殺すべく接近戦に持ち込む。ガードを固めて左ボディブローを中心として激しい打ち合いにうち勝つ。ディアス、相手の背中を打って反則マイナス1点。

 

8R ペースを掴んだかにみえたディアスの攻撃が続く中に、ナバレッテのロングの左アッパーが飛んできてディアス2度目のダウン。立上るところ、アッパー中心の連打で追い込んだナバレッテにディアス3度目のダウンシ

 

9R 8ラウンド2度のダウンを喫したディアスであったが、パンチのスピードも切れも戦闘意欲も些かも衰えず攻勢をかける。左目下カット、鼻寺も出す。

 

10, 11R さすがのナバレッテも疲れたかパンチのスピードも手数も少なくなり休む。一方のディアスは必至で攻撃を続ける。

 

12R ディアス逆転をかけて攻撃に出るが2分過ぎナバレッテの強力な連打でディアス4度目のダウン。立上ったがセコンドからタオルが投入されてTKOとなる。

 

凄い試合で、特にディアスの不屈の闘志は見事であった。ナバレッテはパンチにスピードがある訳でもないが、左アッパーを切り札に多彩なパンチを繰り出し、打ち出したら止まらない。一発必倒の力もあり、倒しどころも良く知っていて、冷静さもあり、スタミナもある。近い将来はあと1~2階級で上がっていきそうで、人気も急上昇している選手である。

会場  米国  オクラホマ州  タルサオーセージ・カジノ 3試合2021/5/10  試合日 4月10日

(1)WBO Lヘビー級王座決定戦 

ジョー・スミス 31才(米)戦跡 29戦26勝21KO 3敗 ニックネームは「ザ・ビースト」野獣。 2度目の世界挑戦であり、前回は2017年WBA王者のドミトリー・ビボルと対戦、大差の判定負けを喫している。スミスはバーナード・ポプキンスをKOに下して引退に追い込み名を揚げた。WBO1位。

 

対戦者 マキシム・ウラソフ  34才(ロシア)同位2位 戦跡 48戦45勝26KO 3敗 スイッチヒッター。

 

1R ウラソフ両手を下げてリラックス、動きが早く頭と上体を動かし、多彩なパンチを数多く出し主導権を握る。

 

2R スミスのオーバーハンド、右ストレートがヒットするがウラソフの左・右ストレートを始め細かいパンチが数多くヒット。有効打と手数の争い。スミス左の瞼カット鼻血も出す。

 

3R ウラソフの動き良く、右アッパーヒット。ウラソフの手数が止まらない。ガードの間を割って的中率も良い。

 

4R  スミス  パンチを大きく振るうがヒットせず。 ウラソフ スミスをロープに詰めて攻撃。

 

5R スミスも時折単発のパンチがヒットするが手数で断然ウラソフ。細かいパンチが実に良くヒットする。

 

6R スミス ウラソフの手数に押される。

 

7R スミス一方的に押し込まれ、ウラソフの優勢が続くところ、突然のスミスの大きなフックがヒット。これで形勢逆転。スミス勢いがつく。ボディ2発有効。

 

8R スミス このラウンド勝負に出て、ボディ中心に攻めるがこの攻撃は続かず、ウラソフはスミスをロープに詰めて連打。右アッパー、右ボディブロー、右カウンターと優勢。

 

9R ウラソフの攻撃変わらず。

 

10R ウラソフの攻撃変わらずとみるうち、スミスの相手を見ないで振った右フックがカウンターとなって、ウラソフ ダメージを受け急速に弱る。

 

11R 弱ったウラソフをスミス、右ボディブロー3発でウラソフ ピンチに陥り、クリンチ際にスミスの右フックでウラソフ ダウン。しかしこの一打が後頭部にヒットした事から、ウラソフに休憩が与えられる。ウラソフ何とか凌ぐ。

 

12R 両者死力を尽くして打ち合いスミスやゝ打ち勝って終了。

 

判定は114 : 114、115 : 113、115 : 112 でスミスの辛勝となった。

 

私の判定はスミスに甘く採点して115 : 113でウラソフであった。確かに有効打はスミスであったが如何せんヒットした数が少な過ぎ、それに対してウラソフのヒットの数が圧倒的に多いのだ。しかも的確で試合の主導権も一貫してウラソフにあったのは間違いなかったのであるが、難しい判定ではあった。

ウラソフはうまい選手で誰が対戦しても嫌な相手であったのである。

WBOのベルトは2019年11月にカネロ・アルバレスがセルゲイ・コバレフから獲得したが、1ヶ月後に返上。1年6ヶ月空位であったものである。

このクラスは、全勝全KOの強打者アルツール・ペテルビエフがおり(WBC、IBF)、同じく全勝の試合巧者ドミトリー・ビボルが居て(WBA)この二者は難攻不落で聳え立っており、これに対抗するのは至難の技である。

 

(2)ヘビー級10回戦

エフェ・アジャグバ  26才 ナイジェリア 戦跡 14戦全勝11KO リオ五輪出場 198㎝の身長、リーチは210㎝もある。体格に恵まれている。

 

ブライアン・ハワード 40才(米) 戦跡 19戦15勝12KO 4敗

 

体格差は歴然としており、圧力にハワード早速ロープに詰まる。2R 終了時消毒が行われる。3R  ハワード打って出て、右ストレートに合わせてカウンターを左フックで狙うがアジャグバの右ストレートの方が早く強烈な為にこの一発でKOされる。

 

アジャグバの実力は未知数であるがアマで鍛えた基本に忠実な選手とみえ、左ジャブからの右ストレートが中心の様で、これから強敵と対戦して速い、強いパンチがある等の対戦相手と闘い、打たれ強さはどうか等みる事になる。

 

(3)アメリカ ヘビー級8回戦

ジャレッド・アンダーソン  21歳(米)戦跡 8戦全勝8KO 

 

ジェレマイア・カーペンシー(米)戦跡 19戦16勝6KO 2敗1分 サウスポー

 

1R アンダーソン長い左ジャブを出し続け、カーペンシー後退一方で自分のパンチは届かない。アンダーソン得意の右フックボディでカーペンシー1回目のダウン。

 

2R アンダーソン右フックボディでカーペンシー2回目のダウン。そのまゝKOにカーペンシーを下す。

 

アンダーソンはトップランク社の期待の星で相手を慎重に択んで対戦させているが、今回は力の差が在り過ぎた。カーペンシーは腹の肉がたるんでおり、十分に準備して来たのか疑問である。アンダーソンの左ジャブもさほどスピードがあるようにはみえず、右フックのボディブローもナックルが鋭角的に当っておらず、威力があるようには思えなかった。

 

会場 米国 コネチカット州アンカスビル・モヒカン・サン    (1)ウェルター級12回戦 シャロン・エニス vs セルゲイ・リピネッツ (2)IBF Sフライ級タイトルマッチ チャンピオン ジェルウィン・アンカハス (2021/5/3) 試合日2月27日

会場 米国 コネチカット州 アンカスビル・モヒカン・サン 2021/5/3

    (試合日2月27日)

(1) ウェルター級12回戦 

シャロン・エニス(米)23才 戦跡 27戦26勝24KO 1無効試合 

WBOウェルター級7位 スイッチヒッター

 

対戦者 セルゲイ・リピネッツ(ロシア)32才 戦跡 18戦16勝12KO 1敗1分

ニックネームは「サムライ」、元IBF Sライト級チャンピオン マイキー・ガルシアに敗れてタイトルを失う。

 

1R~3R エニス 左・右に自在に構えを変えて力強いパンチを力一杯振う、スピードがあり足も速く、リピネッツは追い切れずに打たれ続ける。 

 

4R 左アッパーが顔面を擦ってリピネッツ ダウン。しかし実際には足が掛かって倒れたものだったが、試合の行方は歴然としてきた。

 

5R エニス倒しにかかり、勝負に出てきたリピネッツ ダウン。しばし立上がれずにリピネッツ初のKO負けを喫した。

 

エニスはこれで次のウェルター級の有力な挑戦者となる事が明らかになった。彼のターゲットはエロール・スペンスである。

 

このクラスはWBAにパッキャオ、WBOクロフォード・スペンスが共に全勝でおり、他にダニー・ガルシア、キース・サーマン、ション・ポーター等実力者が揃っており、そう簡単にはいかないクラスではある。

 

(2) IBF S フライ級タイトルマッチ チャンピオン ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)29才 戦跡 35戦32勝22KO 1敗2分 9度目の防衛戦。

 

挑戦者 ジョナタン・ロドリゲス(メキシコ)25才 戦跡 23戦22勝16KO 1敗 ニックネームは「タイタン」巨人 IBF Sフライ級3位。 初めての世界戦であり初めての国外試合である。

 

1R ロドリゲス積極的に前がかりで始める。アンカハスの左ストレート顔面にヒット、ロドリゲス危うく右手をリングに着きそうになり、あわやダウン。

 

2~5R アンカハス 左ストレートをロドリゲスのボディに集中し、スタミナ切れを狙う。ロドリゲスは次第にペースを掴み快調な動きとなる。一進一退が続く。

 

6R アンカハス このラウンド、この試合の行方を決定するラウンドと決めたか、猛然と攻撃を開始。ロドリゲスも一歩も引かずお互いに激しく打ち合うが総合力でやゝアンカハスに分があった。

 

7R アンカハスは一転してアウトボクシングを選択。打っては離れて的確なパンチを決める。

 

8R アンカハスの右ストレートからコーナーにロドリゲスを詰め、集中打でついにロドリゲス ダウン。何とか凌ぐ。

 

9R アンカハス倒しにかかるがロドリゲス逃げずに正面から打ち合う。ロドリゲスは足許もおぼつかなくなりフラフラになりながら、パンチのスピードは衰えずアンカハスと互角に打ち合う。

 

10~12R ロドリゲス驚異的な頑張りでアンカハスと打ち合い、アンカハスも打ち疲れで決めきれずに終了。

 

判定は115:112、116:111、117:110でアンカハスに軍配は上がった。

この試合はロドリゲスの頑張りで見ごたえのある試合となり、クリンチも全くない、クリーンな試合であった。

 

尚WBCではWBC内王座統一戦と銘打って、フランチャイズ タイトルマッチとして、WBAスーパー、WBCレギュラーチャンピオン エマトラーダとWBC2位 ローマン・ゴンザレスと対戦。一方で1位のシーサッケット・ソールンビサイと、3位のカルロス・クッドラスでレギュラー王座決定戦を行い勝者同士で決定戦を行うというものである。

これも面白い企画ではある。

 

会場 米国 カリフォルニア州 LA シュライン・エキスポセンター ウェルター級10回戦 ヘスス・ラモス vs ヘスス・ポホルケス(2021/5/3) 試合日 2月27日

ウェルター級10回戦

ヘスス・ラモス(米)19才 戦跡 14戦全勝13KO、 WBA Sライト級10位 サウスポー

 

対戦者 ヘスス・ポホルケス(メキシコ)33才 戦跡 26戦24勝18KO 2敗

 

1R ポホルケスは先手を取るべく前進するが、ラモスは長い右ジャブでこれを止め、右フック、左ストレートで主導権を握る。

 

2R ラモスの右フック一発でポホルケス ダウン。立上ったが、ロープに詰めて連打でレフリーストップ。

 

ラモス本人の希望はライト級から将来はミドル級までクラスを上げて闘いたい。21才までにタイトルを獲りたいととの事である。

 

会場 豪州 ニューサウスウェールズ州 ニューカッスル エンターテインメント・センター   WBOグローバル Sウェルター級タイトルマッチ チャンピオン テイム・チュー vs デニス・ホーガン     (2021/4/26)  試合日3月31日

会場 豪州 ニューサウスウェールズ州ニューカッスル ニューカッスルエンターテインメントセンター   試合日3月31日

 

WBO グローバル Sウェルター級タイトルマッチ(WBOの下部団体)

チャンピオン テイム・チュー(豪州)26才 戦跡 17戦全勝13KO WBA7位、WBC11位、IBF3位、WBO1位 父親コンスタンチンはロシア在住、テイムはオーストラリア父と同じくオーストラリアを主戦場としている。

 

対戦者 デニス・ホーガン(アイルランド)36才 戦跡 32戦28勝7KO 3敗1分 

アマチュアで150戦以上の経験あり。3度の世界戦を闘っている。ニックネームは「ハリケーン」。ジャーメル・チャーロには7R KOで敗れているが、ハメド・ムンギャはこのホーガンに大苦戦してKOを逃してる。誰もが嫌がる、動きが早くトリッキーな闘い方でいきなり頭から突っ込んでくると云う、対応に苦慮する選手である。

 

1R テイムは圧力をかけて前に出てパンチを大きく振るう、アップスタイルでガードは高く固い。ホーガンのトリッキーな動きを力で封じ込める作戦のようだ。

 

2R チュー 右フックをボディに ホーガン例によって頭から突っ込んできて、チュー左

瞼カット、出血する。

 

3R チュー 左右フックを振り回すが得意の左のボディブローを4発、右ストレートの打ち下ろしを2発みせる。この攻撃でホーガン弱ってくるが、何とか逃げてこのラウンド終了。

 

4R チュー 右フックのあと、強烈な左ボディブローにホーガン体をくの字にまげて苦しむが何とかクリンチの連続でしのぐ。

 

5R チューの右フックからの左アッパーでホーガンついにダウン。立上ったが、チューの追撃きびしく、アッパー2発のあとコーナーからタオルが投入されてTKO。

 

チューの4度目のタイトル防衛となった。

いつものチューは左ジャブを突いて、右ストレートを打ち込むのがスタイルであったが、ホーガン相手では相手のペースにのせられる恐れを思ったか、力で抑え込む道を選択したようだ。それにしてもどのパンチも強く、特に左のボディブローは威力抜群である。

彼の得意のパンチはの問いに、左ボディブローをあげて「相手を破壊する感覚が解るから」だという。

このクラスの主力WBAスーパー、WBC、IBFの3団体統一チャンピオン ジャメール・チャーロとの対戦が現実のものとなってきた。

年内には実現する事となるであろう。チャーロの体力、パンチ力は恐るべきものがあるが総合力ではチューの方が上かも知れない。

尚、WBAレギュラー チャンピオンにはボクシング界で有数のテクニシャン エリスランディ・ララがいる。

特筆すべきはデニス・ホーガンの粘り強い闘いには驚いた。あの闘い方は誰でも嫌がる訳である

 

会場 アラブ首長国連邦 ドバイ・シーザースパレス・ドバイ(試合日4月3日)(1)WBCインターナショナル Sウェルター級タイトルマッチ  チャンピオン ターシンベイ・クロクメット vs ヒバー・ロンドン  (2) WBOインターナショナルSフ ライ級王座決定戦 ドニ―・ニェテス vs パブロ・カリージョ(3)WBO  インターナショナルSフライ級 ジャメリング・ヘリング vs カール・フラ ンプトン  (2021/4/19)

会場 アラブ首長国連邦ドバイ・シーザースパレス・ドバイ (試合日4月3日)

 

(1)WBⅭインターナショナル S ウェルター級タイトルマッチ(WBCの下部団体)衛

チャンピオン ターシンベイ・クロクメット (カザフスタン)27才 戦跡 2戦2勝1KO 初防衛戦である。アマ戦跡 67勝17敗3KO 。

 

挑戦者 ヒバー・ロンドン(ベネズエラ)34才 戦跡 20戦全勝13KO サウスポー対戦である。

 

1R クロクメットのいきなりの右フック ヒット、ついで再びの右フックでロンドン ダウン。やっと立上ったロンドンは劣勢を挽回すべく打ち合いに出たが、クロクメットの右フックのカウンターがものの見事にヒットし、ロンドン ダウン。

滅多に見ない完璧なKO劇であった。

 

(2)WBOインターナショナル Sフライ級王座決定戦 (10回戦)

元4階級王者 ドニ―・ニェテス(フィリピン)38才 戦跡 48戦42勝23KO1敗5分 2018年12月井岡一翔とSフライ級のタイトルを争い2:1の判定勝ちを納めたあと休養

に入って実に2年3ヶ月振りの復帰戦である。ミニマム級、Lフライ級、フライ級、Sフライ級と4階級制覇している。ニックネームは「蛇」。

 

対戦者 パブロ・カリージョ(コロンビア)33戦26勝16KO 7敗1分 WBA Sフライ級

10位。長い休養でニェテスは引退するのではと思われていて、体調はどうか、試合はできるのかと心配されていたが、休養が体のリフレッシュに効果があったのか、スピード、テクニックと以前と変わらず、スタミナも充分で10R闘った。

 

相手のカリージョも仲々のもので、スピードもこの試合で自信を持ったことであろう。

井岡との再戦も視野に入ってきた。判定は98:92、99:91、96:95でニェテスにあがった。

 

(3)WBO Sフェザー級タイトルマッチ

チャンピオン ジャメリング・ヘリング (米)35才 戦跡 24戦22勝10KO 2敗 身長178㎝ リーチは183㎝である。伊藤雅雪からタイトルを奪取して3度目の防衛戦である。ロンドン五輪出場1回戦で敗退している。サウスポー。

 

挑戦者 カール・フランプトン(英国)34才 戦跡 30戦28勝16KO 2敗 身長165㎝

リーチ165㎝ ニックネームは「ジャッカル」。 スコット・フィックを下してSバンタム級タイトルを、サンタ・クルスを下してフェザー級タイトル獲得している。

Sフェザー級ではサンタ・クルスに敗れてタイトルを失ったが、ノニド・ドネアを下してタイトルを取り返したが、イギリスのジョン・ウォーリントンに敗れてタイトルを失っている。

 

1R ヘリング右ジャブと左ストレートを放って開始。フランプトンは18㎝のリーチ差を考えて飛び込みを狙う。ヘリングのカウンターを警戒し頭と上体を動かして立ち上がる。

 

2R フランプトン接近しようとするがヘリングが右フックを合わせ、左ストレートのカウンターも軽いがヒット。なんせ多く出る右ジャブ邪魔である。

 

3R ヘリングの左ストレート フランプトンの顔面に軽くヒット、フランプトン大きくのけぞる。フランプトン何とか積極的に前に出るが、ヘリングの右フックに遮られてパンチは当らない。

 

4R フランプトン主導権を取り返すべく強引に前に出て乱打戦を仕掛けるが、ヘリングの右フック、左ストレートに思うにまかせない。 ヘリングの右瞼カット流血す。

 

5R フランプトン 4 ラウンドの流れをそのまゝに積極的に前に出るところ、ヘリング

の左ストレート カウンターとなり、フランプトン ダウン。かなりのダメージがありそう。      

 

6R フランプトン勝負をかけて前に出るところにヘリングの左アッパーカット顎にクリーンヒット。フランプトン ダウン。立上ったところにヘリングの集中打で再度ダウン寸前となり、コーナーからタオルが投げられKOとなる。

 

この試合後フランプトンは引退を表明した。

 

フランプトンは北アイルランドのベルファストの出身。

 

アイルランドは1649年クロムウェルの征服以降イギリスの完全な植民地となった。

名誉革命後のウィリアム3世も、土地を没収し、参政権を奪い、アイルランドは土地の80%以上をイギリスの不在地主によって所有される等の大弾圧を行った為に大反乱が幾度となく起こった。

第二次大戦後アイルランドは義勇軍が結成されて、民族独立の機運も高まりイギリス軍との激しい戦いが続き、ついに1948年独立を勝ち取りアイルランド共和国が成立したのである。

ここに流れるアイリッシュ魂は今日でも脈々と流れており、フランプトンはまさにアイリッシュ魂の塊のような選手で、アイルランドはもちろんイギリス本土でも絶大な人気を有していた。

アイルランド義勇軍は遡ること1919年にアイルランド共和軍として結成された。

独立後も一部組織はアイルランド全島の統一を目標として武装闘争を継続、テロリズムに突き進む事になる。

 

開催地 モスクワ WBC、IBF Lヘビー級タイトルマッチ チャンピオン アルツール・ペテルビエフ vs アダムス・ディンズ            2021/4/12 試合日3月20日

会場 モスクワ ( 試合日 2021年3月20日 )

WBC、IBF  Ⅼ ヘビー級タイトルマッチ

チャンピオン アルツール・ペテルビエフ(ロシア)36才 戦跡 15戦全勝全KO WBC王者全勝のオレキサンダー・クボジークを激戦のうえ10RTKOに下してIBF、WBCの王者となったあと、自己の怪我やコロナ陽性となったことから、1年5ヶ月振りのリンクである。

挑戦者 アダム・ディンズ(ロシア出身ドイツ在住)30才 戦跡 21戦19勝10KO 1敗1分IBF 5位  サウスポー

 

1R ディンズはペテルビエフの出るところに左ストレートのカウンターで勝負する作戦のようだ。ラウンドの終了直前ペテルビエフの右フックがディンズの頭を掠ってディンズ ダウン。

 

2R ペテルビエフ例によって圧力をかけて前進。これを止める為にディンズはパンチを強く振るが、ペテルビエフは全てブロックで防ぐ。

 

3R ディンズの決め手 左ストレートはペテルビエフのブロックで防がれ、守勢一方に追い込まれる。

 

4R ペテルビエフはゆっくり前進し、小刻みなパンチを数多く繰り出し、合間に強烈な左アッパー2発。

 

5R ペテルビエフの絶え間ない6分程のパンチに左ボディブローを交えて、ディンズ弱ってきてコーナーでディンズの呼吸が荒くなる。

 

6R ペテルビエフ 上・下、左・右にパンチを振いディンズは後退一方となる。

 

7~9R ディンズ堪らずクリンチ。1ラウンドからペテルビエフの攻勢は止まらない。

 

10R ディンズの苦し紛れのパンチを振うところに、ペテルビエフの左フックのカウンター決まり、ディンズ ダウン。立上ったが、相手に背を向けてコーナーを見たのをみてタオルが投入されて、レフリーはTKOを宣した。

ペテルビエフの圧勝であった。

 

ペテルビエフは全KOの実績からみて強打を振って打ち倒す選手かと思われるが、防衛を第一に、ガードで顔面をガッチリ固め、5、6分のパンチでコンパクトに相手を痛めつけ、KOを狙って決して無理押しはせずに坦々と試合をすすめて最後は相手が力尽きて倒れるという径道を辿るようである。

 

しかし、弱く見えるパンチも実際は強力で相手にはダメージが大きく、さしてスピードもないパンチだが的中率は極めて高く、スタミナも体力も桁外れのようである。

過去にダウンされた経験もあることから慎重な試合振りで危険を犯す事は決してしない。よく見ると極めて技術の高い知的なボクサーである印象が強い。

 

Ⅼヘビーでは既に過去の人となった感じのあるセルゲイ・コバレフや手数の多いヒルベルト・ラミレスが居るが、何と言ってもWBAスーパーチャンピオンの若き全勝王者、ロシアのドミトリー・ビボルが強敵である。

愈々このクラス最強を決めるビボルとの統一戦が楽しみとなってきた。

 

会場  米国  コネチカット州  アンカスビル・モヒカン・サン WBC Sミドル級 挑戦者決定戦 デビット・ベナビデス vs ロナルド・エリス 2021/4/5 試合日3月14日

会場 米国 コネチカット州 アンカスビル モヒカン・サン (2021/4/5) 試合日3月14日

 

BWC Sミドル級挑戦者決定戦

デビット・ベナビデス  (メキシコ系アメリカ人) 24才 戦跡 23戦全勝20KO

前WBC Sミドル級王者 ニックネームはレッド・フラング「赤旗」(危険な奴)20才9ヶ月でWBC王座につくが以降ウェイト調整に失敗。そしてドーピング違反もありタイトルを失っている。アマ戦跡 15勝全戦勝

 

ロナルド・エリス(米)31才 戦跡 22戦18勝12KO 1敗2分1無効試合、強豪マット・コロボフを6RTKOに下しており、上り調子である。WBC同級8位。

 

1R エリス先制攻撃を仕掛けて、2度、3度とベナビデスをロープに詰めてパンチを振う。ベナビデス ガードを固めてこれを防ぐや、速くて強い左ジャブで反撃、的確にヒット。

 

2R お互いに激しい打ち合い。ベナビデス速い連打を2回に亘って試み調子は良さそう。

 

3R エリスこのままでは相手のペースとなるとみて、ベナビデスを2度に亘ってロープに詰めるが、そのあとベナビデス圧力をかけて前に出る。左ジャブ、左右ストレート、左フック ボディに強烈。エリス必死で対抗。

 

4R  ベナビデスゆっくり前進し、左ジャブを中心に多彩なパンチを振う。

 

5R ベナビデス 4R同様の動きに、エリス押されてこの試合初めてクリンチに逃れる。

 

6R  エリス戦術転換かリズム良く動き、手数も多く出すが、ベナビデス エリスの動きをみてエンジン全開。猛反撃を開始しエリス タジタジとなる。

 

7R 左ジャブは依然鋭く、左アッパーを3発、4発と振う。

 

8R ベナビデス 左ボディブロー、右アッパー3連発のあと、左右フック顔面に、あと左

ボディブロー、終盤連打で締めくくる。

 

9R レフリーチェック、エリスの体調を調べる。ベナビデス一段とスピード、パワーを加速しそろそろ終わりに近づく。

 

10R ベナビデス強烈なボディブロー3発、あとは少し休む。

 

11R ベナビデス倒しにかかり、左ジャブ、左右上下の連打、ハンドスピードを上げての

3度のアッタックでついにレフリーストップを呼び込む。

11R2分3秒TKOでエリスを仕留める。

 

ベナビデスの左ジャブは速く長く常に出る。更に右ストレート、左右フック、左右アッパーと自在にパンチを振い、必ず途中に左フックのボディブローを忘れない。

的中率も良く、忘れてならないのは後半に一段とギア・チェンジ出来る事であり、又、長い手を使ってのガードも固く、ウィービングやスウェーバックも巧みで防御もうまい。

 

WBC王座には絶対王者サウル・カネロ・アルバレスが居て、対戦が実現すればまさに大一番となるであろうが、果たしてカネロがベナビデスの挑戦を受けるかが見ものである。

 

エリスも充分に準備して試合を迎えたようでスピードも終盤まで衰えず、戦う意志も失わ

れておらず巧く戦った。実力の差はいかんともしがたく、敗れたのはやむを得ないか。

 

もしベナビデスがカネロを下す事があればスーパースターとして長期政権が続く事にあるであろう。

 

会場 米国 コネチカット州アンカスビル モヒガン サン  (1)ヘビー級12回戦 オット・ワリン vs ドミニク・ブリージール  (2)ウェルター級12回戦 エイドリアン・ブローナー vs ジョバンニ・サンチャゴ(2021/3/22) 試合日 2月20日

会場 米国 コネチカット州 アンカスビル・モヒガン・サン(2021/3/22) 

試合日 2021年2月20日 

 

(1)ヘビー級12回戦 

オット・ワリン(スウェーデン)30才 戦跡 23戦21勝14KO 1敗1無効試合 1敗はタイソン・フューリー IBFヘビー級14位

 

対戦者 ドミニク・ブリージール(米)36才 WBCヘビー級26位 

戦跡 22戦20勝18KO 2敗、2敗はアンソニー・ジョシア。 ディオンティ・ワイルダーには1R KOされており以来1年9ヶ月振りの試合である。

 

1R~5Rまでサウスポーのワリン、足を使った右ジャブからの左ストレートでブリージ

ールは圧力をかけて前に出るが出鼻を叩かれて右目腫れてくる。ペースは完全にワリンのもの。

 

6R これではならじとブリージールは左・右を強引に振って前進。ワリンの軽いパンチが当るが、圧力が上回る。

 

7R ブリージールは前進するがパンチはスイング気味となり、明らかに疲れが見える。

 

8~12R ブリージール必死で左右パンチを振り回し前進、ワリンをロ―プに詰めて攻撃するが有効打はワリンで終了。

 

判定は116:112、117:111、118:110でワリンの完勝であった。ワリンはいかにもヨーロッパ観客好みの選手で、自分の距離を守り、相手の攻撃力を正確に見定め、有効打

を的確に決めてポイントをかせぐ知的な闘い方であった。

 

(2) ウェルター級12回戦 

エイドリアン・ブローナー(米)31才 

戦跡 39戦33勝24KO 4敗1分1無効試合。 元4階級王者(Sフェザー級、ライト級、Sライト級、ウェルター級)パッキャオに敗れて引退したが1年9ヶ月振りに復帰した。

彼はそれまで何度も引退宣言している。ニックネームは「ザ・プロブレム」(問題児)

 

対戦者 ジョバンニ・サンチャゴ(プエルトリコ)31才 

戦跡 15戦14勝10KO 1分 ニックネームは「エル・ロビット」(狼)

18才から23才まで選手活動は中断している。

 

1R ブローナーは Ⅼ字ガードと覗き見スタイルを使い分け、体重を前足に掛ける以前のスタイルそのまゝで速いジャブで圧力をかける。

 

2R ブローナーの調子は良さそうだ。

 

3R サンチャゴ、このラウンド攻勢に出て左右のフックのボディーブローを4,5発ヒット。

 

4R サンチャゴ、3ラウンドでペースを掴んだが左・右のフックのボディーブロー攻勢をかけるがラウンドの終了後にパンチを振って減点1。

 

5~6R サンチャゴのボディーブロー3、4発ヒット有効打である。

 

7R ブローナー集中打をみせる。

 

8R ブローナーの左フック、カウンターとなりサンチャゴ危うくマットに手をつきかける。

      

9~12R サンチャゴの動きやゝ弱くなり、ブローナーの動きは良くなりカウンターが決まり始まり優勢のまゝ終了。

 

判定は115:112、117:110、116:111でブローナーの勝利となった。

 

問題児ブローナーの動きはまことに美しく、早く、タイミングも素晴らしい。

完成されたボクシングの一つの典型である。リングに戻ってきて又見る楽しみが増えた。

前足に体重をのせて相対し、相手のパンチには後足に体重を移して躱すやスムーズに体

重を前に移動させてカウンターを打ち込む。

彼の他には唯一人メイウェザーが良く使っていた形であった。

唯ブローナーは基本的にカウンターパンチであり受け身のスタイルである為に、ショーン・ポーター等の突進型の選手をやゝ苦手としている点がある。

 

現在のリング上でのボクシングは問題児とは無縁のクリーンなスタイルで、カッとしたり、乱暴なところは全くなく、今回の4ラウンドの時間外のサンチャゴのパンチにも平然としており感情を顕わにする事はなった。

一方のサンチャゴも予想外の好選手で、攻撃力も、特左右のボディブローにはみるべきものがあり、終盤になってもスピードが極端に落ちることもなくファイトもあって仲々のボクサーであり今後が楽しみである。

 

会場 米国 ラスベガス MGM グランドカンファレンス・センター     (1)ヘビー級6回戦 ジャレッド・アンダーソン vs キングスリー・イベ (2)ライト級10回戦 リチャード・コミー vs ジャクソン・マリネス    2021/3/15  (試合日 2021/3/13)

会場 米国 ラスベガス MGM グランドカンファレンス・センター 2021/3/15 

                                                         (試合日 2021/3/13) 

(1)ヘビー級6回戦 

ジャレッド・アンダーソン(米)21才 戦跡 7戦全勝7KO 

対戦者 キングスリー・イベ(米)27才

1~5Rまで アンダーソンの左ジャブだけでイベ1ラウンド鼻血を出し、終始ロープに

詰まって守勢に立たされた。試合の途中イベ頻繁にスゥイッチして何とかきっかけを掴

もうとしたが、一方的に打たれる。最終6ラウンド勝負をかけて攻撃に出るところに左

フックでイベ KOされる。

 

アンダーソンはスピードもありボクシングが巧でバランスの取れた良い選手である。

アンソニー・ジョシュアを思わせる中量級のような動きをするボクサーで大いに将来が

期待されてる。

 

(2)ライト級10回戦 

リチャード・コミー(ガーナ)33才 戦跡 32戦29勝26KO 3敗 前IBFライト級チャンピオン。2019年12月ティモフィォ・ロペスに2R右フックでKOされタイトルを失い、それ以来の再起戦である。

対戦者 ジャクソン・マリネス(ドミニク共和国)30才 戦跡 20戦19勝7KO 1敗     

ニックネームは「不死鳥」。マリネスのコーナーにはトレーナーでマイキー・ガルシア

の兄ロベルト・ガルシアがついており、ロベルトは今世界のトップクラスのトレーナーと

して、世界中から引っ張りだこである。

 

1R コミーは例によって体力にまかせて前に出る。ガードは高いが、遠い距離からパン

チを繰り出す時に左ガードが下がる為、マリネスはそこを狙って右ストレート、フックを打ち込む作戦のようだ。

 

2R マリネスは右を下げコミーの右を誘い、左が下がるところに右カウンターを狙うが

足も使ってヒット・アンド・アウェーでペースを握る。マリネスはコーナーに帰り際右手を突き上げて思い通りの試合運びをアピール。

 

3R コミーはこのラウンド勝負に出て、攻撃集中。マリネスのテクニックを封ずる。

 

4R マリネスは再び自分のボクシングをとり戻し、コミーの攻撃を躱して自分のパンチ

はヒットさせる。

 

5R 4ラウンドと同様マリネスはリズムに乗ってのボクシングを展開。コミーのパンチが

当らなくなる。

 

6R コミー強引にマリネスをロープに詰めて攻撃に出る途中、コミーのローブローをマ

リネス、レフリーにアピールするが受けてもらえず、こゝから弱気になったか、ワンツーストレートでマリネス ダウン。立上ったがコミーの左ジャブからの右ストレート、マリネス ダウン。レフリーはKOを宣した。

 

相変わらずのコミーの強打振りであったが、マリネスも恐れずに右のカウンターを狙い、又対等に打ち合ったがコミーの右強打に生涯初のKO負けを喫した。

 

コミーは時折、左ガード下がり、特に自分の攻撃中にそれは顕著にあらわれて、前戦、

そこをロペスの右フックカウンターでKOされており、今回も何度かヒットを許していた。マリネスのパンチがなかったから何事もなかったが、今後対戦相手は当然そこを狙ってくる事であろう。対策を立てゝいかないと前途はむつかしくなる。

このクラスには4団体統一チャンピオンの ティモフィォ・ロペス、WBAチャンピオン ジャーモンティ・デービス、そしてワシル・ロマチェンコやホルヘ・リナレスも居て強

剛ぞろいである。 

 

IBF Sミドリ級タイトルマッチ チャンピオン ケイレブ・ブラント vs ケイレブ・トゥルーアックス  2021/3/8

会場 米国 カリフォルニア州 ロスアンゼルス  シュライン・オーデトリアム・エキスポ・ホール    2021/3/8   ( 試合日 2021/1/30 )

IBF Sミドル級タイトルマッチ 

 

チャンピオン ケイレブ・プラント(米)28才 戦跡 20戦全勝12KO  

アマ戦跡 117戦97勝20 敗 ニックネーム「スウィート・ハンズ」 強腕ウスカデギからダウンを奪って判定に下しタイトル。

今回が3度目の防衛戦、前2戦は其々3R、10R KOに下して評価がうなぎのぼりに上っている。

挑戦者 ケイレブ・トゥルーアックス(米)37才 戦跡 38戦31勝19KO 4敗2分1無効試合 ’17年12月ジェームス・ディゲールを破ってタイトルを握るが初防衛に失敗している。ダニエル・ジェイコブスやジャーメイン・ティラ―に敗れているが、負けたのは強敵ばかりである。

 

1R プラントは左ジャブを上・下に打ち分けて、左右ボディブローも放って好調のようだ。左手を下げて攻撃中心のスタイル。

 

2R トゥルーアックスは前がかりで前進するところ、プラント左手顔面、ボディに、終盤上下にうまく打ってトゥルーアックスやゝぐらつく。

 

3~7R 3Rにプラントの左ジャブ、アッパーでトゥルーアックス鼻血を出す。ブラントは足を使い間断なく、左ジャブを出し続け時折休みながら主導権を握り続ける。

 

8R  トゥルーアックスの右ストレート2発プラントにヒット、顎と額である。打たれ続け

たあとのパンチでなければもっとダメージを与える事が出来たであろう。プラントの左腕を下げたスタイルは気が弛んり、疲れてきたりすると相手の右ストレート、フックを躱しきれなくなる危険を孕んでいるので今後要注意である。

 

9~12R ブラント倒しにかゝり攻撃を強める。さすがに元チャンピオンの意地もありトゥルーマックスも必死で対抗し、反撃して終了。 

 

判定は3者とも120:108のフルマークでプラント3度目の防衛成功した。 

プラント、これでいよいよWBAスーパー、WBCのチャンピオン カネロ・アルバレスとの対戦が現実味を帯びてきた。

 

今までの相手とはパンチ力が桁外れに違う。今回の試合よりも距離をとって戦う事が大事となるが、左ジャブを多用し、足を使って闘えば勝機は十分にあると思われる。

カネロはうまい相手をやゝ苦手としているからで楽しみになってきた。

 

このクラスWBAにキューバのモレトレ(23才)、WBOのビリー・ジョー・サンダースがいる。カネロはサンダースと闘う事が決定している。他に強豪ダニエル・ジェイコブス、エドガー・ベルランガ(23才)が16戦全勝1R全KOでいる。

又デビット・ベナビデス(24才)も全勝もいて、群雄割拠のクラスであり目が離せない。

会場  メキシコ  メキシコシティ TV・アステカ・スタジオ            2試合  2021/3/1  (試合日 2020/10/23)

会場 メキシコ  メキシコシティ TV アステカ・スタジオ 2021/3/1

                                                               (試合日 2020/10/23/ )

 

1.WBA スーパー、Sフライ級タイトルマッチ

 

チャンピオン ローマン・ゴンザレス(ニカラグア)33才 戦跡 51戦49勝41KO2敗 

                           4階級王者

挑戦者  イスラエル・ゴンザレス(メキシコ)23才 戦跡 28戦25勝11KO3敗 

WBA Sフライ級3位 3度目の世界戦である。

 

2人の体格差は歴然としており特にリーチはローマン・ゴンザレス160㎝に対してイスラエル・ゴンザレスは実に178㎝である。

 

1Rから12Rまでローマンがガードを固めて左ジャブから左・右ストレート、フック、

アッパーを振って圧力をかけて前進。イスラエルは終始ロープに詰められる場面が多く、クリーンヒットはウィービング、ダッキングと足を使って許さなかったが、いかんせん

手数の違いはどうにもならなかった。しかしイスラエルは左ジャブ、右左ストレートは

スピード、切れもあり12Rまで変わることなく将来性を大いにうかがわせる選手である

ことを証明してみせた。

 

判定は118:110、116:112、117:111とローマンの圧勝であったが、二人とも高地でありながら12Rまでスピードを落とすこともなく、打ち合ったのは見事であった。

ローマン・ゴンザレスは長い間パウンド・フォー・パウンドの1位にランクされ、フライ級までの間は敵なしの強さで当るを幸い、薙ぎ倒してきたがSフライに上げてからはそれまでの輝きは失われて平凡な選手となった感がある。

いずれにせよクリンチの全くないクリーンな一戦であった。

 

2.WBC Sフライ級タイトルマッチ

 

チャンピオン ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)30才 

     戦跡 43戦40勝27KO 3敗 ニックネームは「エル・ガジョ」(雄鶏)

 

挑戦者 カルロス・クワドラス(メキシコ)32才 戦跡 43戦39勝27KO 3敗1分 

ニックネームは「プリンシベ」(王子)WBC元王者6度防衛している。現 WBC3位。

 

両者は2017年9月9日 WBCフライ級 挑戦者決定戦で判定3者とも114:113の僅差でエストラーダが勝利している。

 

1R クワドラス、主導権を握るべく先制攻撃を仕掛けて左オーバーハンド ヒット。

   大振りではあるがスピードがあるので有効な攻勢である。

 

2R エストラーダも打ち始め攻勢に転ずる。

 

3R エストラーダの左ジャブが内側からヒットし始めるが、ロープ際クワドラスの放っ

   たアッパー 次いでの左フックでエストラーダ ダウン。

 

4R エストラーダ ダウンのダメージ少なかったか猛然と反撃、ペースを握る。

       途中エストラーダやゝ失速。クワドラス攻勢に転ずるが二人とも疲れが出てスピー

      ドが落ちる。

 

5R クワドラスのスピードが落ちた大振りにエストラーダのコンパクトな左ジャブ、左

   フックがまともにヒットするようになる。

 

6R クワドラスは元来のボクシングが正統派でないことゝ、ボディが弱いことからボデ

       ィを打たれてフォームがバラバラとなり、顔面が空きエストラーダのショートパン

       チを受けて、ダメージを重ねてくる。

 

7~10R お互いに打ち、打たれの疲れでスピードは極端に落ちたがクワドラスのパンチ

   はボディを打たれ続けたことから全く威力を失い、基本に忠実なエストラーダのパ

       ンチは疲れても的確で、ボクシングの違いが現れてくる。

 

11R  疲れたクワドラスにエストラーダの左フックがヒット。ダメージが重なっていたク

      ワドラスはたまらずダウン。立上ったところに右フックのカウンターで2度目のダ

  ウン。立上って必死に打ち合うクワドラスであったが、エストラーダの連打でレフ

  リーストップとなる。

 

4ラウンドから、大振りでトリッキーなクワドラスと、正統派エストラーダの左ジャブ

と左フック等の相手の打ち終わりを内側からくり出すショートパンチの威力とボディを

必ず打つ地味な戦術は結局勝利に結びついた。

これでエストラーダは10年前に敗れたローマン・ゴンザレスとのリベンジ戦が現実のものとなった。

 

会場 米国  ラスベガスMGM・グランド・カンファレンス・センター 3試合 試合日2021年2月22日

会場 米国  ラスベガス MGM グランドホテル・カンファレンス・センター 

                                                                     試合日 2021年2月22日

【メーンイベント】

WBC Sフェザー級タイトルマッチ

 

チャンピオン ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)29才 戦跡 39戦38勝34KO 1敗 

アマ戦跡 68戦62勝6敗 ニックネームは「サソリ」7度目の防衛戦。

 

挑戦者 オスカル・バルデス(メキシコ)30才 2008年北京、2012年ロンドン五輪にバンタム級で出場している。WBOフェザー級で6度防衛している。 アマ戦跡 204戦177勝27敗 プロ戦跡 28戦全勝22KO。

 

1R ベルチェルト ガードを高く掲げて慎重に立ち上がる。バルデス 積極的に前に出て左

ジャブ速い。

 

2R ベルチェルト圧力をかけて前進、バルデスの左ジャブでベルチェルト鼻血を出す。

 

3R ベルチェルト前に出るがバルデスのパンチが先手をうって出された左フックが浅い

がヒット。ペースはやゝバルデス。

 

4R ベルチェルト ペースを取り戻す為に前に出るが、バルデスの左フックまともにヒット。ベルチェルトぐらつく。嵩にかゝってのバルデスの左アッパー、ついでの左・右・左フックでベルチェルト足がもつれてダウン寸前。ロープにもたれてロープダウンを取られる。

 

5R ベルチェルト4Rのダウンから回復しておらず足許がおぼつかない。バルデス中盤か

ら休む。ベルチェルト徐々に回復、しだいに力が入ってくる。

 

6R ベルチェルト劣勢を挽回すべく左右の連打で攻勢を強める。4Rの攻撃でバルデス疲

れてくる。このラウンドをとったかにみえたベルチェルトだったが終盤バルデスの強烈な左フックがヒットで形勢挽回。

 

7R ベルチェルト必死で攻撃するが、有効なパンチはなく、しかしバルデスも防戦一方

       のところ、突然の左フック2発で形勢逆転。

 

8R バルデスの左・右フックが速く強い為にベルチェルト防ぎきれない。又足に足に力が入らない為に動きがぎこちないく、パンチも力が入らない。 

 

9R ベルチェルト、バルデスをロープに詰めるがバルデスの動きが早く、詰め切れない

。バルデスの右フック、ついでの右アッパーからの左・右フックでベルチェルト

       2度目のダウン。

 

10R バルデスの左フック、右フック、右ストレートについでの左フックでベルチェルト

  前のめりにダウン。しばし立ち上がれず壮絶なKO劇となった。

 

6度防衛のうち5度のKO勝ちを納めて実に87%のKO率を誇ったWBCの絶対王者ベルチェルトが王座陥落となった。

 

この試合は4Rのバルデスの左フックが総てで、これでベルチェルトの戦闘能力は6割方

失われてしまった。ベルチェルトにはバルデスの大振りの左フックは全く見えていなか

ったのではないか。4Rのダメージの為に足に力が入らず、パンチ力も著しく減速し、何とか劣勢を挽回しようと前進してパンチを振ったがスピードも力強さもない事から、顔

面ががら空きとなり、バルデスの格好の左右フックの標的となってしまった。

 

ベルチェルトの5R以降の選択は9~10まで極力ダメージの回復を図り、防御に専念すべきであった。回復をひたすら図り最後の一発逆転しか見込みはなかったのである。

ベルチェルトのこの試合の選択は最悪で、ダメージを抱えたまゝ前進して打たれ続けた結果で、コーナーの作戦も思わぬ展開に動転して、冷静な判断がつかなかったのであろう。一方のバルデスにとっては4Rのラッキーパンチがヒットし、ボクシング人生最高の試合であったろう。

 

Sフェザー級にはWBAスーパーチャンピオンのジャボンティ・デービスがいて、24戦全勝23KOを誇り、右ジャブの鋭さと左ストレートの速く強くまた至近距離でのアッパーカットとまさに全階級有数のハードパンチャーで異次元の強さで君臨している。25才。

 

WBO 1位にはリオ五輪銀メダリストで15戦全勝9KOのスピードとテクニックで次世代のホープ ジャクール・スティーブンソンがいる。

バルデスの武器である左・右大振りのフックではこの2人に勝つのは至難の技であろう。

 

ミドル級10回戦

エスキーバ・ファルカン(ブラジル)31才 IBF、WBOミドル級5位 戦跡 27戦全勝19KO 2012年ロンドン五輪で村田諒太に僅差で敗れて銀メダルに終わっている。

 

対戦者 アルツール・アカボフ(ロシア)戦跡 23戦20勝9KO 3敗 

                        2度の世界戦の経験あり。

1R ファルカン圧力をかけて前に出る。

2R、3R ファルカン攻撃力をつよめ、ロープに詰めて集中打をみせる。

4R ファルカンはアカボフをロープに詰めて軽いパンチを数多く打つ。アカボフは後退

   の一途。全く手が出ずにこのラウンド終了時TKO。

 

ファルカンは5試合連続KO勝利となる。ファルカンはさすがにバランスの取れた攻防兼備の選手ではあるが、迫力不足は否めない。

 

 

 Sフェザー級10回戦 

ガブリエル・フローレス(米)20才 戦跡 19戦全勝6KO  アマ戦跡 98戦91勝7敗

 

対戦者 ジェイソン・ペレス(プエリトリコ)32才 戦跡 37戦29勝21KO 7敗1分 

ニックネームは「驚異の男」 37戦目でオスカル・バルデスに10RKOで敗れている。

 

1R~3R フローレス、左手を下げて左ジャブを多く出す。これが速くペースは

      フローレス。

4R、5R ペレス、ペースを取り戻すべく攻勢に転じて前進。フローレス足を使って

             これを躱す。

6R フローレスの左フック、テンプルにヒットでペレス、ダウン。立上ったところに左

       フックでKO。

 

7試合振りのKO勝ちである。フローレスは期待の新人であるが、未だ身体が出来ておらずひ弱さが残っている。

WBO Sウエルター級 10回戦 テイム・チュー vs ボーウィン・モーガン                                               2021/1/25

会場 豪州 ニューサウスウェールズ州 パラマタ バンク ウェスト スタジアム  

                                                 2021年1月25日    (試合日2020/12/16)        

WBO Sウェルター級10回戦 

ティム・チュ―(豪州)26才 戦跡 16戦全勝12KO WBO Sウェルター級2位。 

 

父親は1995年から2005年に亘って、Sライト級WBA、WBC、IBFの主要3団体でタイトルを獲得し、長期に亘ってこのクラス最強であることを証明した。ロシア スヴェルドロフスク生れのベン髪のコンスタンチン・チュ―(51才)である。生涯戦跡 34戦31勝25KO 2敗1無効試合。

 

対戦者 ボウィン・モーガン(ニュージーランド)31才 戦跡 23戦21勝11KO 1敗1無効試合、現在14連勝中の元世界ランカー

 

1R チューの左フック、左アッパーで始まり、左フックのボディブローから右アッパー

   2発、ついでの左フックでモーガン ダウン。立上ったところに右フックで2度目の

       強烈なダウンでレフリーストップ、TKOで終了。

 

チューはガードを高く掲げて左ジャブを突き、ついでの右ストレートが主体であるが、

右アッパーや左・右のボディブローも強く、顔もスタイルも父親にそっくりであり、父

親よりも防御は固そうである。このクラスは強打のWBCのジャメール・チャーロがWBA、IBFはジュリアン・ウィリアムスを下したジェイソン・ロザリオがいて、実力者揃いだが、チューの実力から見て、この一角を崩すのはあながち不可能でもないであろう。端正な風貌でスタイリッシュ。しかも強打者のチューはこれから人気上昇していく

事であろう。

会場 米国 ラスベガス カンファレンス・センター 3試合   2020/12/14

会場 米国 ラスベガス MGMカンファレンス・センター 3試合 

                            2020/12/14

1)S ミドル級8回戦

エドガー・ベルランガ(米)両親ともプエルトリコ出身 WBA Sミドル級6位 

戦跡 15戦全勝全KO すべて1R KOである。

尚世界一は21連続1R KOがある。

対戦者 ウリセス・シェラ(米)31才 戦跡 18戦15勝9KO 1敗2分 

 

ベルランガ、ガードを固めて左ジャブを中心として圧力をかけて前進。ストレート、

フック、アッパーを上・下に打ち分け、中盤耐えきれずにシェラ ダウン、立上ったところに左・右の連打で2度目のダウン、3度目のダウンでレフリーストップ。

1R2分50秒TKOに下す。ベルランガは次世代のスーパースター候補として急浮上してきた。  実績もあり基本がしっかりしており将来が望める新人である。

 

2)WBOインターコンチネンタル ライト級王座決定戦

中谷 正義(日本)31才 戦跡 19戦18勝12KO 1敗。 1敗は19年7月 IBF ライト級挑

戦者決定戦でテオフィモ・ロペスに12R判定で敗れたもの。その後すぐに引退したが

「自分にはボクシングしかないと思い、もう一度チャレンジしたいと思った」と語ったが、現ライト級4団体チャンピオンのティオフィモ・ロペスに善戦した事で評価が高まったことも復帰の原因となっていることであろう。1年5ヶ月振りの試合である。

対戦者 フェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)27才 戦跡 28戦27勝17KO 1敗。

1敗はアントニオ・ロザダに敗れたもので後半に失速している。

両者共に生き残りを賭けた一戦である。

 

1R ラウンド中盤、ベルデホの右ストレートで中谷ダウン、そのあとベルデホ、中谷を

   倒しにかかるが、中谷対抗して打ち合ったことから未だ力が残っている事をみてベ

      ルデホは中谷のパンチを警戒。中谷圧力をかけて前進する。

2R ベルデホの左フックは脅威であり、中谷の右フックのボディブローに合わせてベル

       デホ左フックを振う。ベルデホはカウンター・パンチャーで右ストレートと返しの

       左フックが武器である。中谷臆せず打ち合う。

3R 中谷の左ジャブ、右フックの打ち終りをベルデホ狙う。ベルデホの左ショートスト

   レート、中谷辛うじてダウンせず耐える。

4R 中谷の右ストレートに合わせての右ショートフックで中谷膝をついてダウン。し

       かしさほどダメージはなさそうで、ベルデホに圧力をかける。

5R ベルデホの右ショートストレート ヒット。ベルデホは下がり気味でのカウンター戦

   術をとり続けるようだ。

6R 中谷圧力をかけ続けるが有効なパンチがみられず手数も少ない。ベルデホの手数は

       少ないが有効打は多くスピードも衰えない。

7R ベルデホのは一貫して待ちのボクシング。中谷はこのラウンド打たれても前進を止

   めない。

8R 両者疲れてくる。ベルデホはポイントで大きくリードしている事を知っており、危

     険を犯す事なく距離をとって逃げ込みを図っている。

9R 中谷の左カウンターストレートでベルデホ、ロープに飛ばされる。ついでいきなり

   の左ジャブがカウンターとなってベルデホ ダウン。立上ったが既に戦闘能力なく

   右フックが頭に当ってベルデホ顔面からマットに沈みレフリーストップ。

       それまでの判定では79:71と絶望的な経過をたどっており、99%敗戦のところ奇

       跡の逆転劇で勝利をものにした。

中谷の諦めを知らない不屈の闘志がこの奇蹟をを呼び込んだもの。

ベルデホは既に1敗したとは云えプエルトリコの英雄であり、チャンピオンの有力候補であったのだ。

しかし中谷はこのスピード、パンチ力ではこれ以上の期待は難しいであろう。

 

3)Sフェザー級10回戦

ジャクール・スティーブンソン(米)戦跡 14戦全勝8KO リオ五輪銀メダリスト 

前WBOフェザー級王者を返上してSフェザー級に転身2戦目である。

対戦者 トカ・カーン・クラリー(米)戦跡 31戦28勝19KO 2敗1無効試合 

共にサウスポー、クラリーは「大人と子供の違いを見せてやる」と豪語している。

 

しかし1Rから10Rまでスティーブンソンの右ジャブから右・左フック、ストレート、アッパーを上・下に打ち分け、的中率も抜群。相手のパンチはほとんどもらう事なく、圧

力をかけ続け、ワンマンショーで10Rを闘い、3人の審判が100:90のフルマークで圧勝した。右手を下げたスタイルで、相手のパンチはガードではなく、スウェーバックで避け、なおの攻撃にはステップバックで対応する2段構えで対応する。

 

ボクシングの巧さには驚くものがあるが、これだけクリーンヒットを連発してダウンを

奪えないというところに一抹の物足りなさを感ずるのは私だけであろうか。

ライト級のジャーボンティ・デービスの攻撃力とつい比べてしまうのだ。

 

ヘビー級エキシビションマッチ マイク・タイソン vs ロイ・ジョーンズ 会場 米国 LA ステープルズ・センター 2020/11/28(LA 現地時間)

会場 LA ステープルズ・センター 2020年11月28日(LA 現地時間)

 

ヘビー級エキシビションマッチ 

マイク・タイソン  元ヘビー級統一王者 WBA、WBC、IBF 

                    (当時WBOは格下の団体だった。)

戦跡 58戦50勝44KO 6敗2無効試合、ニックネームは「アイアンマン」鉄人54才(米)引退して実に15年5ヶ月ぶりの試合。

 

対戦者 ロイ・ジョーンズ 元4階級王者 51才(米)戦跡 75戦66勝47KO 9敗

ニックネームは「ジーニアス」天才 ミドル級からヘビー級まで4階級を制覇した天才ボクサーで、長い間パウンドフォーパウンドの1位を独占していた。

ジョーンズは引退して2年9ヶ月振りの試合である。

 

この試合のオッズは15:8でタイソン有利。ファイトマネーはタイソン10億、ジョーンズ3億。 ペーパービューは49ドル99セントであり2人で合計50億円となる予定である。(ファイトマネーを含めて)

 

タイソンは体重を45㎏落して99.97㎏に仕上げ、ジョーンズは95.2㎏としている。

タイソンは試合前のインタビューで「これからが楽しい、これ以前は地獄のトレーニングだった。現役時代以上のトレーニングをした。開始一日目は15分のランニングマシンから始めてそれしか出来なかった。今は妻と子供の為に試合をしたい」と語った。

 

ジョーンズは「あのタイソンと闘うのだ。スパーリングをした選手は1RでKOされている。前半は何とかやり過ごし、後半勝負をするつもりだ」と勝っている。

 

さて、試合は始まった。1R 2分で8Rの決まりである。

 

1R タイソンは現役と同じようにウィービングをしながら左ジャブを突いて前進する。

      ジョーンズは足を使って距離を取り接近するとすかさずクリンチ。左手を下げてチ

      ャンスを窺う。タイソンの左フックが軽いが当る。

 

2R タイソンの左フック2発ボディにヒット。ジョーンズの左ジャブ、ジョーンズはタ

      イソンに入られるとすぐにクリンチ。

 

3R タイソン往年得意だった右にステップを切り、左フックをボディにみせる。

 

4R タイソン、ジョーンズをロープに詰めるがジョーンズ クリンチで逃れる。タイソン

       の右ボディブロー2発ヒット、タイソンのスピード落ちず。ジョーンズ コーナーで

       肩で息をして苦しそう。

 

5R ジョーンズ、左・右のショートレンジの連打をみせる。前半と後半の2度に亘る初め

   ての攻勢。

 

6R タイソンの左フック ボディにヒット。ジョーンズ息が上がってくる。

 

7R ジョーンズ ショートの左右を振う。タイソンは左右のボディブロー。

   7R 終了時コーナーでタイソン笑う。今まで見たことのないシーン。

 

8R 7Rまでと同じ。タイソン攻勢、ボディ中心に攻撃。ジョーンズ疲れる。

 

8Rのフルラウンド闘い。当日の出演者ジョー小泉、浜田剛史のふたりの判定は80:72 タイソンのフルマークであった。

勝負はつけない決まりでドローとなったが、タイソンは「引分けでいいですよ」と云い、ジョーンズは「彼のパンチは凄かった、特にボディへのパンチは強くて、試合前やろうとした事は全く出来なかった。ボディへのパンチで体力をすっかり奪われてしまった」

タイソン「いや君も打ち返しただろう。この2分はまるで3分のように感じた。8ラウンド闘い抜けた事に喜びを感じている。またやりましょう」

 

司会者がジョーンズに「あなたが故障するんじゃないかと心配しましたよ」との呼びかけにタイソンは「私だって故障したかもしれないのに、それも考えて下さいよ」と応酬。

現役時代の狂気をおびたタイソンとは全く異なった温和なタイソンがそこにはみられた。

 

この後について、ジョーンズはもう出来ないと語ったのに対し、タイソンはタイソン・フューリー、アンソニー・ジョシュア、デオンティ・ワイルダー等とエキシビション試合をやりたいと意欲を見せた。

いずれにしてもタイソンの現在は引退前の2試合に比べても数段良く準備され、体調も充分に仕上がっており、スピードもパンチの切れも素晴らしく、現役復帰も出来るのではと思わせるものであった。ジョーンズもタイソンがこれ程であるとはさすがに思わなかった事であろう。何れにしても真に楽しい試合であり、充分に堪能できた試合ではあった。

 

2020/11/16  会場  米国 ラスベガス MGM カンファレンス  センター 3試合

会場 米国 ラスベガス MGM カンファレンス・センター 3試合

                         2020/11/16

 

1)バンタム級 8回戦

ジョシア・グリア(米)26才 戦跡 25戦22勝12KO 2敗1分 WBOバンタム級6位

対戦者 エドウィン・ロドリゲス(プエルトリコ)27才 戦跡 17戦11勝5KO 5敗1分 

 

グリアは本来フットワークを使い、打たせてカウンターをとる選手であったが、前戦、

挑戦者決定戦で1:2の判定に敗れ、もしこれに敗れればスター街道は絶望となる。

この試合はグリアが何ラウンドで倒すかだけが注目された試合であった。

 

1R グリアは従来の戦い方から一転、 ガードを固めて打ち合うスタイルに変更して接

   近戦で闘う。ロドリゲスにとっては願ってもない状況になり、力の出せる試合と

      なる。

2R 1Rと同じ、ロドリゲス前進し主導権を握る。グリア後退。

3R 同上

4R 相変わらず接近戦で打ち合うがロドリゲス優勢。

5R 4Rと同じ。ロドリゲス優勢。

6R グリアこのまゝではダメと感じて頭をつけて必死で前に出る。

7R 6Rと同じ。6,7R やゝグリア優勢。

8R グリア、ボクシングに戻って距離をとり従来のスタイルに変更する。

 

判定は77:75、76:76が2人でグリア0:1で辛くもドロー。グリアは井上と対戦した

いと希望しているが、この試合をみて到底無理であると思われる。

 

2)WBA Sフライ級 タイトルマッチ

チャンピオン ジョシュア・フランコ(米)25才 戦跡 20戦17勝8KO 1敗2分

対戦者 アンドリュー・マロニー(オーストラリア)29才 戦跡 22戦21勝14KO 1敗 

1敗はフランコでこの試合で王座陥落 終盤ダウンを奪われて敗れている。

 

1R フランコの右目バッテイングで負傷完全に右目つぶれる。

3R 開始早々負傷引分。

マロニー試合後自分が勝っていると強く主張したが見苦しい。

 

3)WBO ウエルター級 タイトルマッチ

チャンピオン テレンス・クロフォード(米)33才 戦跡 36戦全勝27KO  4度目の防衛である。

挑戦者 ケル・ブルック 英国 34才 戦跡 41戦39勝27KO 2敗

尚2敗はミドル級のゲンナディ・ゴロフキンとウエルター級のエロール・スペンスであり、納得の相手である。この試合従来のトレーナー、ブレンダー・イーグルから試合の

都合でカルロス・トルネィユに代わっている。

 

1R クロフォード最近では珍しく右構えで始まる。体格はやゝブルックが大きいか。

   互いにジャブを出すがほとんど様子見。

2R ブルックの左ジャブ当りカウンターの右ストレート浅いがヒット。終盤クロフォー

   ド左構えにスイッチ、ブルックの左ジャブも右ストレートも的確で速く威力あり。

3R クロフォードのパンチが浅いが当たり始める。

4R ブルック右パンチを出して、出てくるところにクロフォードの右フックとストレー

   トの中間のショートパンチがカウンターとなってブルックふらついてロープに飛ば

       され上半身ロープの外に出る。レフリー、クロフォードの攻撃を止め分けて再開。         クロフォードの嵩に懸っての連打でレフリーストップ。

       TKOにクロフォード過去最強とみられた相手を下した。

 

これでタイトルマッチ8連勝KOである。

クロフォードは今まで強い相手と闘ってこないと云われて、たしかにキース・サーマン、エロール・スペンス、ダニー・ガルシア、ショーン・ポーターと云った名のある相手と

闘ってこなかった。今後彼等と対戦する事によって真価が問われる事になるであろう。

現在ではエロール・スペンスが一歩前にいる。

 

2020/11/9 会場 米国 テキサス州サンアントニオ・アラモ・ドーム 4試合

会場 米国 テキサス州サンアントニオ・アラモ・ドーム 4試合  

                     2020年11月9日

        

1)IBF ライト級王座決定戦

イッサク・クルス(メキシコ)22才 戦跡 21戦19勝14KO 1敗1分 ニックネームは「ミニ・タイソン」

対戦者 ディエゴ・マグダレノ(米国)戦跡 35戦32勝13KO 3敗 2度の世界挑戦の経験あり。

1R クルス猛然と突進。左・右のボディブローでマグダレノをロープに詰めて、左・右

   のボディブローからの右フックついで右アッパーでマグダレノ ダウン。

       クルス1R53秒でKOし挑戦者に決定。

 

2)Sライト級10回戦 レジス・プログレィス (米)戦跡 25戦24勝20KO 1敗 前WBA Sライト級王者 1敗はWBC S決勝でジョシュ・テイラーに1:2の判定負け。

対戦者 ファン・エラルデス(米)30才 戦跡 17戦16勝10KO 1分 

この試合ノンタイトル戦の為、プログレィスが1.5ポンドオーバーであったが一定金額をエラルデスに支払う事で合意し、試合する事となった。

1R プログレィス サウスポー、右手を下げてその右で牽制しながら、自慢の左強打

   でエラルデスを追い込む。

2R プログレス多彩な左ジャブ、左フック等を使って自分の距離を計る。

3R プログレス得意の左フックでエラルデス ダウン、立上ったところに連打を続けレフ

       リーストップを呼び込む。TKOにエラルデスを下し復帰戦を飾った。

 

3)WBA Sライト級タイトルマッチ チャンピオン マリオ・バリオス メキシコ生まれ(米)26才 戦跡 25戦全勝16KO  初防衛戦 ニックネームは「アステカ」

対戦者 ライアン・カール(米)28才 戦跡 20戦18勝12KO 2敗 ニックネームは「カウボーイ」

1R~5R カールは積極的に前進、バリオスは足を使って躱しながら左・右ボディブロー

       を中心にアッパーを混えてパンチを当てゞ次第にカールを弱らせる。

6R バリオス、足腰の定まらなくなったカールを見定めるや、右ストレートでダウンを

      奪い、立上ったところに左アッパーで2度目のダウン。ここでレフリーストップ。

      バリオスTKOで初防衛に成功。

 

4)WBAライト級チャンピオン ジャーボンティ・デービス(米)25才 戦跡 23戦全勝22KO ニックネームは「タンク」

対戦者 WBA Sフェザー級チャンピオン レオ・サンタ・クルス(メキシコ)32才 

戦跡 39戦37勝19KO 1敗1分 1敗はカール・フランプトン 1:2の判定 ニックネームは「テレモト」(地震)

この試合はWBAライト級とWBA Sフェザー級のタイトルを賭けるという変則の試合

である。対戦前のオッズは6:1でデービス

1R サウスポーのデービスは左アッパーを中心にしてボディ顔面とパンチを繰り出し、

       サンタ・クルスは両腕で顔面、ボディとガッチリとガード。終盤サンタ・クルスの

       左脚にデービスの左脚がかかってスリップダウン。

2R デービスこのラウンド距離をとって左アッパーを突き上げる。デービス1Rのお返し

      とばかり、サンタ・クルスを押し倒す。サンタ・クルスはデービスをロープに詰め

      て連打。クリーンヒットはなし。

3R サンタ・クルスは圧力をかけて前進、デービスはサンタ・クルスのガードが予想以

     上に固いのをみてサンタ・クルスをロープに誘い、相手の攻撃の空いた隙を狙う作

       戦に出る。

4R このラウンドお互いに主導権を握る為に激しく打ち合うがクリーンヒットはなし。

       お互いに一歩も引かずに打ち合う。

5R サンタ・クルスはこのラウンド2回コーナーにデービスを詰めて連打を狙うが、

       デービスの誘いを警戒して攻撃できず。

6R デービス、このラウンドで勝負を決めようとしてかガードを固めて接近戦を挑む。

   お互いにパンチの交換のあと、サンタ・クルスがロープ際で右ストレート2発、

       3発目にデービスの左アッパーからカウンターとなりサンタ・クルス ダウン。

       しばし倒れたまゝ立ち上がれずデービスのKO勝ちとなった。

 

サンタ・クルスは2012年6月プシ・マリンガを判定に下し、IBFバンタム級チャンピオンとなり、以後Sバンタム、フェザー、Sフェザー級とタイトルを獲得、4階級を制した。

軽量級歴戦の兵(つわもの)として、長きに亘って君臨してきた。

手が長く、ガードが固くタフで、手数が多く、どの対戦者も嫌がる選手であり、この試合もデービス相手に善戦したが、デービスのスピードとパンチ力に大きな差があって、これを突破する事が出来なかった。

難敵デービスと対戦したその意気や誉めるべきではあった。デービスはこの試合でパウンド・フォー・パウンド上位にランクされることになるであろう。Sフェザー級から今のライト、近い将来はSライト級でも活躍する事になると思われる。その才能は驚くべきものを有している。尚デービスはあのメイウェザーの秘蔵子であり、右も強いが左ストレート、特に左アッパーの切れ味は一発必倒の超一級品である。

 

会場 米国 ネバダ州ラスベガス MGM グランド・カンファレンス・センター WBA、IBF バンタム級タイトルマッチ チャンピオン 井上尚弥 vs ジェイソン・マロニー 2020年10月31日(現地日時)

WBA、IBF バンタム級タイトルマッチ     2020年10月31日(現地日時)

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス MGMグランド・カンファレンス・センター

 

チャンピオン 井上 尚弥(日本)27歳 戦跡 19戦全勝16KO 3階級王者

ニックネームは「モンスター」 ラスベガス初登場

 

挑戦者 ジェイソン・マロニー(オーストラリア)29歳 戦跡 22戦21勝18KO 1敗 

1敗は対エマヌエル・ロドリゲスに2:1の判定で敗れている。WBOバンタム級1位。

 

1R マロニーはガードを高く揚げて万全の防御体制を固めて前に出る。井上は左アッパ

  ーを始めて、長い左ジャブを連続して出し、まずは様子見。井上はリラックスして

  調子は良さそうである。

 

2R 井上、一転して前に出ながら左ジャブを多用、右ストレートをボディに。

   マロニー押される。

 

3R マロニーの左ジャブで井上顔をあげられる。又マロニーのボディブロー2発。

   対する井上は左ジャブの3連発から右アッパー4発でマロニーの上体を起こしにかゝ

   る。マロニーの左額に裂傷。

 

4R 井上の圧力一段と高まり、マロニー後退。マロニーの戦略は接近しての連打と、得

   意の左フックのボディブローであったと思われるが、接近前に左ジャブが強烈に来

   るのと、接近した後のアッパーが邪魔になって思うにまかせない。

 

5R マロニーは井上をコーナーに詰めて連打するが、井上 余裕をもってこれを受けと

   め、右フックからの早い左フックのダブルに打ち返され、後盤右ストレートでマロ

   ニーぐらつく。

 

6R マロニーの左ジャブからの右フックに井上頭を右に傾けて左ショートフックにマロ

       ニー尻餅をつきダウン。立上ったあと、マロニー足を使って逃げるが井上ガードを

   下げて、これを追い仕留めに入る・・が、焦る様子は全くない。

 

7R マロニーは足を使って打ち合いを避けているうちに、回復してきたかと思われた

   この回井上は左ジャブを盛んに出し、右は一発も出さずに あれッ 故障でもしたの

     かとみるまにマロニーの左ジャブからの右フックに合わせての右ショートストレー

   トのカウンター決ってマロニー ダウン。必死に立ち上がろうとするが足腰きかずそ

   のまゝカウント・アウトされた。

 

マロニーは挑戦者らしく「井上にこれまで味わったことのない経験をさせてやる」と豪語して計量の際の身体も充分鍛錬して来たことを窺わせた。又このクラス最強と謳われる井上を倒して自分がその栄光を手にする気力は充実していた。

しかし井上のパンチ力はマロニーの想像を遙かに超えて、左ジャブの威力は他の選手のストレートであり、右は一発で相手を倒す必殺の威力であったのである。

防御に自信のあったマロニーも防ぎきる事が出来なかった。

 

井上は防御技術も優れており、試合の流れの中で戦術を変更する能力も高く、総ての面でマロニーとの差は歴然たるものがあった。

マロニーは試合前の評判で圧倒的不利を予想されていた。

しかしマロニーは第1に自分は過去にSバンタム級で闘ってきて、この数試合でバンタム級に落としてきたのに対し、井上はLフライ級から体重を上げてきており基本的な体格差には約6㎏あり、体力的には有利である。

第2に自分のガードの固さ、足の速さ、打たれ強さに絶対の自信を持っていて、井上の打ち終わりを狙って接近戦に持ち込み、得意の左ボディブローを決め、手数で勝負するとの戦略をたてゝ試合に臨んだのであろう。

 

しかし井上のパンチ力はマロニーの想像を超えて早く強く、特に左ジャブの威力はマロニーの思惑を打ち砕くものであった。

井上は試合運びのうまさ、防御力も高く、総ての面でマロニーとの実力が違いすぎたのである。井上は今後アメリカを主戦場として試合を展開することによって、スーパースターへと昇りつめて行く事であろう。

 

     パウンドフォーパウンド  ( 2020年11月1日現在) 

 

【 リング誌 】     【ESPN】        【ボクシング・ シーン】  

1.サウル・アルバレス   1.テレンス・クロフォード 1.ワシル・ロマチェンコ

2.井上 尚弥         2.サウル・アルバレス   2.サウル・アルバレス

3.テレンス・クロフォード 3.井上 尚弥         3.エロール・スペンス

4.オレキサンダー・ウシク 4.エロール・スペンス   4.井上 尚弥      

5.エロール・スペンス   5.テモフィオ・ロペス   5.ジョシュ・テイラー

6.テモフィオ・ロペス   6.ワシル・ロマチェンコ  6.寺地 挙四朗

7.ワシル・ロマチェンコ  7.オレキサンダー・ウシク 7.ホヤ・ラミレス

8.フランシスコ・     8.タイソン・フューリー  8. アンソニー・ジョシュア

     エストラーゼ

9.ゲンナディ・ゴロフキン 9.フランシスコ・     9.テレンス・クロフォード

                  エストラーゼ

10.アルツール・     10.ゲンナディ・ゴロフキン  10.オレキサンダー・

     ペテルビエフ                                                                   ウシク

 

会場 米国 ラスベガス MGMグランドカンファレンス・センター3試合    ⓷ライト級4団体統一戦WBA、WBC、WBOチャンピオン ワシル・ロマチェンコ vs テオフィモ・ロペス ⓶ WBOインターナショナル Sライト級王座決定戦 アレックス・サウセド vs アーノルド・バルボサ ① Sミドル級8回戦 エドガー・ベルランガ vs ラネル・ベルランガ   2020/10/17

会場 ラスべガル MGMグランド・カンファレンス・センター

                      (試合日2020/10/17)

⓷ ライト級4団体統一戦 

WBA、WBC、WBOチャンピオンワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)32歳 

戦跡 15戦14勝10KO 1敗 15戦のうち14戦が世界戦。パウンドフォーパウンドÑo.1の評価されている。ボクシング史上最高の評が高い選手。

 

対戦者 テオフィモ・ロペス  ホンジュラス生れのアメリカ人 23歳 

戦跡 15戦全勝12KO 前戦で強豪リチャード・コミーを2RKOに下してIBFチャンピオン

となる。

 

1R ロペスの左ジャブで右ストレートで試合は始まった。ロペス前進。ロマチェンコは

      左ジャブ一発のみで様子見。

2R ロペス前に出てボディを何発か打つがガードの上。ロマチェンコは前後、左右に動

       きながら左・右ストレート軽いが2度ヒット。

3R ロペスはボディ2発ガードの上。ロマチェンコの左・右ストレート軽いがヒット。

       手数はロペス(全く当らないが)ヒットはロマチェンコ。

4R ロペス前進し圧力をかけるが繰り出すパンチは当らない。ロマチェンコの右ジャブ

   2発当たる。

5R ロペス相変わらず前に出る。ロマチェンコは左ジャブ一発のみ。

6R ロマチェンコの右ジャブ、右フックヒット。ロペスの左目腫れてくる。コーナーで

  休憩中腫れ止め金具で手当て。

7R 前半ロペス攻勢。後半ロマチェンコ巻き返す。

8R ロマチェンコ、一転して攻勢を強める。ロペスも対抗するが的中率は圧倒的にロマ

   チェンコ。

9R ロマチェンコ攻撃一層強まる。ロペスも必死で応戦。

10R ロマチェンコ距離を詰めて攻撃一段と強め、ロペス守勢に回る。

11R ロマチェンコの接近戦でのスピードにロペス煽られる。

12R ロペス右目上負傷、出血。お互いに死力を尽くて打ち合う。

 

判定116:112、119:109、117:111でロペスに軍配が上がって4団体統一となる。しかしこの判定はどうみても不可思議である。

ボクシングの判定評価は 有効な<1>、クリーンヒットに<2>、手数に<3>  攻勢である。確かにロペスは攻勢を続けたが、クリーンヒットは唯の一発もないのである。

全て躱されるがガードの上であった。一方のロマチェンコは守勢に回っているように見

えるが、的中率はロペスの数段上で、私見ではあるがロペスに大甘の点数をつけても116:112でロマチェンコであった。119:109や117:111は一体何を根拠に出した数字であろうか。今後に問題となる判定で、こんな事をしていると、ボクシング自体の人気はおろか、判定の権威が失われる事となる。

ボクシング界上げてこの結果を問題とすべきであろう。

勝ったロペスは奮闘したが、自分の出すパンチは一発も当たらず、試合後の顔は充分フラストレーションが溜まった顔であった。

 

試合前にロマチェンコは「この試合は12R闘うつもりだ」と語っており、試合に勝つことを重視していた。何故ならば4団体統一する事が目的であったからで、安全運転に徹した為にこの結果を招いた。彼は思い通りの試合をしたのにとの思いで一杯であったろう。

 

この判定に従えば、メイウェザー対パッツキャオの試合は120:108でパッツキャオの完勝となっていた事であろう。何せメイウェザーは軽い左ジャブがわずかにヒットしていたが、一貫して攻撃していたのはガードの上とは云えパッツキャオだったのだから。

 

ボクシングの試合は時に不可解な判定がまゝみられるが、今回ほど酷い判定は、やっと市民権を得る為に努力してきたボクシングをいかがわしいスポーツとはいえない代物に貶める事になりかねない事を肝に銘ずるべきである。

 

② WBOインターナショナルSライト級王座決定戦

アレックス・サウセド(米)26歳 戦跡 31戦30勝19KO 1敗 1敗はWBO世界王座決定戦でモーリス・フッカーに敗れている。

 

対戦者 アーノルド・バルボサ(米)28歳 戦跡 24戦全勝10KO 

 

オッズは9:4でバルボサ

 

1R バルボサ左構えで開始途中左・右に構えを変えて対戦。お互いに有効なパンチの交

   換がある。

2R バルボサは依然として左・右に構えを替えながら対応。サウセドは左ジャブを中心

   に相変わらず手数を多く前進。

3R バルボサ右構えでパンチを上・下に打ち分けて〇勢。

4~6R 手数はサウセド、有効打はバルボサ。

7R 互角の打ち合いの中、バルボサもつれてダウン。スリップと判定される。

8R 開始前、ビデオでダウンと判定変更。バルボサこの判定で、これではならじと攻勢

      にでる。8~9R距離をとったバルボサの攻撃は明らかに優勢となり、10Rにかけて

      サウセド手数も減り守勢に回る。

 

判定は96:93、97:92が2人でバルボサの勝利となる。

 

① Sミドル級8回戦 

エドガーベルランガ(米)23才 戦跡 14戦全勝オール1RKO 

 

対戦者 ラネル・ベローズ  (米)34歳 戦跡 29戦20勝13KO 5敗3分 1無効試合

 

オッズは41:1でベルランガ。 べローズはKO負けはない。この試合はベルランガが果たして1RKO出来るかである。

 

1R 立上りから、左ジャブ、左右フックを振ってベローズを追い込み、左フックから

   連打で1RKOにベローズを下す。

 

これで15戦オール1RKOを続けた。ちなみに連続 1RKOの記録は

 1.アリ・レイミ(2001~2014) 21

  2.タイロン・ブルンソン(2005~2008)19

   3.エドウィン・バレロ(2002~2006) 18

   3.ワンラウンド・ホーガン(1910   ) 18

 

このうち日本を主戦場にしたエドウィン・バレロはおなじみで「賭け試合も行った」

誰でも1Rで倒れなかったら1千万円支払うと云ったパフォーマンスを行い、世界チャンピオンとなった。

ちなみに他の選手でタイトルを獲ったものはいない。

 

会場 米国 コネチカット州アンカスビル モヒカン・サンカジノ ①WBC Sバンタム級王座決定戦 ルイス・ネリ vs アーロン・アラメダ ⓶WBC、WBA、IBF 統一Sウェルター級タイトルマッチ ジャメール・チャーロ vs ジェイソン・ロザリオ  2020/10/5

会場 米国 コネチカット州アンカスビル・モヒカン・サン・カジノ  2020/10/5 

 

①WBC Sバンタム級王座決定戦 

元WBCバンタム級チャンピオン ルイス・ネリ(メキシコ)25才戦跡 30戦全勝24KO 

WBCバンタム級1位 ニックネームは「バンテラ」(豹)バンタム級で中山をKOに下して戴冠し、2階級制覇を目指す。しかし過去ドーピング疑惑や規定体重オーバーを繰り返しており、日常生活にも問題が多い選手である。

 

対戦者 アーロン・アラメダ(メキシコ)27才 戦跡 26戦全勝13KO

両者共にサウスポー

 

1R ネリは左右フックを大きく振るって立上る。アラメダはガードを高く掲げて、長い

       右ジャブで対抗。彼は右利きのサウスポーである。

 

2~9R ネリは左、右フックを上下に打ち分けるが、アラメダのガードがかたく、全て

      がガードの上。

 

10R アラメダの左右ボディブローが利き、ネリのスピードが落ちる。

 

11R ネリ攻勢に出るが、ダメージと疲れからパンチを打つときに身体が流れる。

 

12R ネリ遮二無二身体が前に泳ぎながらパンチを繰り出し、アラメダは後退を続

         けて終了。

 

判定は115:113、116:112、118:110でネリ、2階級制覇達成。ネリは従来のたゝ

見かける連打が出ず、一発のパンチにも迫力に欠け不出来の試合であった。

一方のアラメダは一体勝とうとしてリンクに上っているのか首を傾げる試合振りで、これではタイトルは獲れない。

 

 WBC、WBA、IBF 統一Sウェルター級タイトルマッチ。

WBCチャンピオン ジャーメル・チャーロ(米)30才 戦跡 34戦33勝17KO 1敗 ニックネームは「アイスマン」

 

対戦者 WBA、IBF チャンピオン ジェイソン・ロザリオ(ドミニカ共和国)25才 

戦跡 22戦20勝14KO 1敗1分 チャンピオン ジュリアン・ウイリアムスと対戦オッズ

16対1の前評判を覆してKOに下し戴冠。今回チャーロと激突することとなった。

 

1R ロザリオ、ガッチリとガードを高く掲げ顔面とボディを防御し、チャーロにプレッ

   シャーをかけて前進。しかし接近した際コーナーでもつれてロザリオ倒れ込む。

       これをレフリーはダウンと認定、ロザリオ ダメージ全くなく、圧力をかけてチャー

   ロをロープに詰める。

 

2R ロザリオはプレッシャーを掛け続けて前進。チャーロのパンチは全て完全ブロッ

       ク、ロザリオの左・右ボディブロー ヒット。チャーロを追い回す。

 

3R 追い回されたチャーロは、手が出ずにロープに詰まり続ける。

 

4、5R 3ラウンドに同じ。

 

6R ロープに詰められたチャーロは苦しくなり自らクリンチに逃れる。優位に立ったロ

   ザリオのガードが弛んだところに左フックと次いで右ショートフックが顔面にヒッ

   ト、ロザリオ ダウン。ゴングに救われるが、コーナーに戻る際のロザリオの足許が

   ふらつく。このダウンのダメージは大きい。

 

7R 心配されたロザリオは6ラウンドまでと変わらずにチャーロにプレッシャーを掛け続

       けて追い回す。

 

8R 立上りチャーロの左ジャブが顔面にヒット、次いで左ジャブがボディを直撃。さほ

      ど強烈にはみえなかったが、ロザリオ ダウン。苦悶の表情を浮かべて身体を痙攣さ

      せて立上れずKOされる。

 

これでジャーメル・チャーロは3団体統一を決めた。戦前の予想と異なり1ラウンドのダメージのないダウンを除けば一貫してロザリオ優勢が続き、チャーロは押されっ放しで敗色の気配がみえた6ラウンド、突如左からの右ショートフックの威力凄まじく試合の行方をひっくり返してしまった。

全階級を通しての強打者の一角に名を連ねたと言えよう。ジャーメル兄弟恐るべし‼

一方のロザリオの実力も充分ファンに見せた事であった。

会場 米国 コネチカット州アンカスビル モヒカン・サンカジノWBC ミドル級タイトルマッチ ジャモール・チャーロ vs テレビヤンチェンコ  2020/9/29

会場 アメリカ コネチカット州 アンカスビル モヒカン・サン・カジノ

WBC ミドル級タイトルマッチ   

ジャモール・チャーロ(米)戦跡 30戦全勝22KO Sウエルター級王座防衛戦3度、

             ミドル級王座3度防衛中

 

挑戦者 セルゲイ・テレビアンチェンコ(ウクライナ)戦跡 15戦13勝10KO 2敗

         2敗はダニエル・ジェイコブスとゲンナディ・ゴロフキン 共に世界戦で判定

           に敗れている。

 

1R テレビヤンチェンコはガードを高く揚げて防御を固め、体を前後、左右に動かして

       体を丸めてチャーロの懐に入って接近戦に持ち込み、得意の左フックを中心に連打

       の作戦であろう。チャーロはいつもの通り足幅を拡くして強い左ストレートのよう

       なジャブで闘う。

 

2R テレビヤンチェンコ 左ジャブを多く出しながら頭を小さく振って前に出る。

 

3R テレビヤンチェンコ 前に出るところ、チャーロ左フック、右アッパーで迎え打つ

       が正確には当らない、終盤右打ち落としのフックが頭部にヒット。テレビヤンチェ

       ンコ腰砕けで体勢を崩し、そのあとのチャーロの追撃に危うかったが辛うじてゴン

       グに救われる。

 

4R テレビヤンチェンコ、開始と同時に接近戦での打ち合いに活路を求めてパンチを振

       う。チャーロは左アッパーカット2発でその勢いを止める。

 

5R テレビヤンチェンコ、チャーロをロープに詰めて左右を振るがチャーロの左アッパ

       ー、フックを打たれ、左フックでテレビヤンチェンコの右目尻カット。

 

6R テレビヤンチェンコ接近戦に持ち込むがロープに詰める事は出来ない。入るところ

      にチャーロの強打を受ける為に入る事は出来ても連打する余裕がない。しかし、当

      初考えた作戦通りの闘い方は出来たが打たれてもいるのだ。

  後半戦にどうひびくか?

 

7R チャーロ、6ラウンドやゝ攻められたので積極的に前に出る。

 

8R テレビヤンチェンコ、ロープに詰めて連打するがチャーロにダメージを与える事は

   出来ない。チャーロの左フック、右ストレートのタイミングはピタリと照準が合っ

       てきて、まともに当ればダウン必定の予感あり。

 

9R チャーロの右ストレート2発、左ストレート1発ガードの上ながらヒット。テレビ

       ヤンチェンコ左目尻も切り苦しい戦いとなってきたがガンバル!

 

10R テレビヤンチェンコにドクター・チェックが入る。目の傷の為だ。しかし前進を止

        める事なく闘いチャーロはこのラウンド休み。

 

11、12R チャーロの手数少なくなり、テレビヤンチェンコの前進は止まず12ラウンド

       にはチャーロ、ロープに詰められて連打を受けたところで終了。

 

判定は116:112、117:111、118:110でチャーロ4度目の防衛に成功。

 

テレビヤンチェンコは途中2度程のダウンの危機を迎えたが何とか持ちこたえて、不屈の闘いをみせ、12ラウンドはチャーロをロープに追い込み連打には、見るものを熱くさせた。強豪ボクサー3人と激闘を演じた事には敬意を表したい。

 

一方のチャーロは今度もその強打の威力を発揮してみせたが、強打で鳴らしているチャーロの本当の姿は待ちのボクシングではないかと思われる。

相手が出てくるところに左ジャブ、右ストレート、左右アッパーで迎え撃つのがスタイルのようで自分から相手を追い込むゴロフキンとは異なるようだ。

足幅が拡すぎて、体重がやゝ後ろに残り、これでは攻撃の際連打は出来ない。

又力一杯パンチを振う為か後半失速気味の試合が最近に良く見られるが、スタミナに難

があるようで、チャンスに畳かけることが出来ないのはその不安があるのではと思われ

せた。

 

会場 米国 コネチカット州 アンカスビル モヒカン・サンカジノ⓵ WBA ライト級暫定王座決定戦 WBA ライト級暫定王座決定戦 ローランド・ロメロ vs ジャクソン・マリネス ⓶ WBC Sミドル級タイトルマッチ チャンピオン  ディビット・ベナビデス vs ロアメル・アングロ  2020/9/7

⓵ WBA ライト級暫定王座決定戦

 

ローランド・ロメロ(米)キューバ生れ 24才 戦跡 11戦全勝10KO メィウェザー プロモーション所属の逸材で関係者の評価も高い。WBAライト級7位

 

対戦者 ジャクソン・マリネス(ドミニカ)29才 戦跡19戦全勝7KO WBAライト級6位

 

1R ロメロ左足を大きく出して左ジャブを上・下に打ち、左右パンチを力一杯振って立上る。マリネスは様子見。

 

2R 圧力はロメロだが、距離はマリネスの方が長く、左ジャブが邪魔で接近出来ない。

 

3R ロメロのジャブは身体を沈めて左足を大きく踏み出して打つが、体重は右足にのっ

  いる為に、連続して攻撃が出来ない。ロメロの前進にマリネス巧みに躱して自分の

  パンチは軽いが当たる。

 

4R マリネスの左ジャブがカウンターとなり、主導権はマリネスに。ロメロのパンチは

  全く当らない。

 

5R マリネスのボディワークのうまさが目立ってきて、ロメロの力まかせのボクシング

  にうまく対応、細かいパンチがヒット。

 

6R 攻勢はロメロ。ヒットしているのはマリネス。ロメロは11戦のうち最長ラウンド

   は6ラウンド。1、2ラウンドで決着がほとんどである。

 

7R ロメロは人生初のラウンドに入り、そのプレッシャーは急速に弱まる。反面マリネ

   スの動きは良くなってくる。

 

8R ロメロの圧力に退遁していたマリネスは足を止め正面から打ち合う。

 

9R ロメロ 左目上カット。これに勢いづいたマリネス積極的にパンチを振う。

 

10R ロメロ 中盤前進するがマリネスに出鼻を叩かる。

 

11R マリネスのショートパンチでロメロ足がふらつく。大分弱ってきたようだ。

 

12R マリネスは勝利を確信してボクシングしながらラウンド過ごす。

 

判定は115:113、116:112、118:110 でロメロに上った。

 

しかし116:112や118:110判定は疑問がつく。ボクシングは前進すれば良いものではなく、相手にいかにダメージを与えたか、又はパンチをどれだけ当てたか、試合をどち

らが支配したのかで決まるもの。この試合は中盤から明らかにマリネスのペースで進み、私の判定は115:113 でマリネスだった。

 

スター候補とみられたロメロに傷をつけたくない業界の思惑が垣間見える。

このクラスはワシル・ロマチェンコ、テォフィモ・ロペス、ジャーボンティ・デービス、ホルヘ・リナレスと実力者が揃っており、あまりにも実力差がありすぎる感がある。

 

 

⓶ 同会場 WBC Sミドル級タイトルマッチ

チャンピオン ディビット・ベナビデス(米)23才 戦跡 22戦全勝19KO ニックネームは「RED FLAG」

 

挑戦者 ロアメル・アングロ(コロンビア)36才 戦跡 27戦26勝22KO 1敗 

 

ベナビデス、計量で1.25㎏超過でタイトル剥奪され、ドーピングで過去タイトル剥奪されており今回で2度目。従って勝ってもタイトルは守れず、アングロが勝てばタイトル獲得となる。アングロは22KOのうち1R KOが10回、平均KOラウンド回数は2.0回である。

 

1R アングロ開始早々ロープにベナビデスを詰めて猛然と攻撃するが、ベナビデス完全に

   防御し長いジャブと右フック ボディにヒット。

 

2R アングロ、 ガードを高く掲げてベナビデスをロープに詰めて連打。これを凌いだあ

   とベナビデス、右ボディブロー強烈、アングロの固いガードの内から外からパンチ

   を送り込み、仕上げは左右のボディブロー70%程の力を使用している。

 

3R アングロ突然突進してベナビデスをロープに詰める。これを余裕を持って凌ぐや左

   ジャブ、右ストレートのあとボディに多彩なパンチを浴びせると、たまらずアング

   ロ ダウンしたがスリップと認定される。しかしアングロの勢いやゝ弱る。

 

4~9R ベナビデス、アングロの出るところに左アッパーのカウンター、フリッカージ

  ャブ、左右ストレート、フックと自在に打ち分け、一方的な試合となった。

 

10R ベナビデス倒しにかゝり、力を入れたパンチを浴びせアングロ辛うじて耐えるが、

   この回終了時ギブアップでベナビデスのTKOに終わった。

 

ベナビデスは下半身を使ったパンチは振わずに手打ちであるが、スナップを効かせた

シャープなパンチを上・下、左・右に自在に打ち分け、手数も多いし、スピードも充分。アングロの覗き見スタイルに対し中央を攻め、ガードを締めさせた上で左右のフックを

空いた顔面に打ち、顔面をカバーとみてボディブローを左右から打つ。まさに頭脳的な

ボクシングをみせて完勝した。

 

アングロも自分のスタイルを貫いて突進。あれだけ打たれても終盤までスピードを落と

すことなく闘ったのは余程準備してきたのだと思わせた。

 

このクラスはWBAにカラム・スミス、IBFにカレフ・ブラント、WBOにビリー・ジョー・サンダースがいずれも全勝で並んでおり、WBAレギュラーにサウル・アルバレスがいて、最近になって急速に強豪が並ぶ事となった。

 

会場 米国 ラスベガス MGM グランド カンファレンス センター① Lヘビー級ヘビー級8回戦 エドガー・ベルランガ vs エリック・ムーン   ⓶ フェザー級8回戦 アイザック・ドグボエ vs クリス・アバカス    ③ Sフェザー級10回戦 オスカル・バルデス vs ジェイソン・バルデス             2020/8/31

① Lヘビー級ヘビー級8回戦 

 

エドガー・ベルランガ (米)23才 戦跡 戦13全勝全KO  WBOミドル級12位

 

対戦者 エリック・ムーン (米)29才 戦跡 13戦11勝6KO 2敗

 

ムーン 彼我の力関係を考えて先制攻撃をかけるが、ベルランガ少しも騒がず圧力をかけ

てロープに詰め、左・右ボディブローのあと右フック2発 顔面にヒット、ムーンダウン

して立ち上がろうとしたが足が立たずKOとなる。

これで14戦総て1RKOとした。楽しみな選手がまた一人出てきた。

 

 

⓶ フェザー級8回戦

 

アイザック・ドグボエ(ガーナ)25歳 戦跡 22戦20勝14KO 2敗 

12年ロンドン五輪出場 元WBO S・バンタム級王者 ナバレッティに判定負けでタイトルを失い、第2戦でTKO負け。1年2ヶ月振りの再起戦を1階級上げて闘う。

ニックネームは「勇敢な息子」

 

対戦者 クリス・アバロス(米)30才 戦跡 34戦27勝20KO 7敗 

ニックネームは「ヒットマン」

 

1R ドグボエは163㎝の小柄な身体を有効に使い、スピードを生かして接近戦に持ち込

みパンチの的中率、手数で一貫して圧力をかけて前に出る。

4R の左ボディブロー強烈、このラウンド終了時アバロスにドクターチェックが入る。

やゝ打たれすぎた為。 その後 7R まで試合は一方的となり、8R ロープに詰めての連打

でレフリーストップ、再起戦を飾った。

 

ドグボエはタイトルを獲った頃の凄みはやゝ薄れて平均的な選手になった感がある。

 

⓷ Sフェザー級10回戦

 

オスカル・バルデス(メキシコ)29才 戦跡 27戦全勝21KO

WBOフェザー級王者6度防衛。Sフェザー級転向2戦目。

 

対戦者 ジェイソン・ペレス(米)32才 戦跡 36戦29勝K21O 6敗1分

 

1R ペレスは体力的に優れる利点を生かして前に出る。これに対してバルデスは例に

      よって目一杯パンチを振う。4Rまでこの流れは変わらず、ペレスは5R、体力にま

      かせてペースを握って優勢に試合をすゝめたが、外側から大きく回したフックで

      ペレス ダウン。

 

7R ペレスのパンチ力、スピードともに落ちてくる。

 

8R ペレス前に出るがパンチ力がなく、しかも当らない。

 

9R バルデスの左フックでペレスぐらつくが、めげずに反撃。

 

10R ペレス一発逆転を狙ってロープに詰めるが、バルデスの左フックで2度目の

        ダウン。立ち上がったところに右フックでダウン。レフリーストップ。

 

バルデスは階級を上げて闘うことになったが、その1戦目アダム・ロペスに2回左アッ

パーでダウンを奪われており、今回の試合でも左・右フックが思うようにヒットするが、ペレスの体力に押され続けて決して楽な闘いではなかった。

1.81㎏の体重差は思ったよりもバルデスに重くのしかゝり、今後も苦しい戦いが続く事であろう。大きく振るう左・右フックも自分の体力を削ることになり、もっと鋭いショートパンチを身につける事が大事となる。

 

① WBO S・バンタム級王座決定戦 アンジェロ・レオ vs トレメイン・ウィリアムス ⓶ ウエルター級10回戦 (キャッチウェイト) ホヤ・ペトラザ vs ミッケル・レスピエール                2020/8/17

① WBO Sバンタム級王座決定戦 

会場 米国 コネチカット州アンキャッツビル モヒガンサン アリーナ

 

アンジェロ・レオ(米)26才 戦跡 19戦全勝9KO  WBO2位、WBC5位、IBF3位 

メイウェザーの秘蔵っ子

 

対戦者 トレメイン・ウイリアムス(米)27歳 戦跡 20戦19勝6KO 1無効試合

サウスポー  バンタム級のケイリー・ラッセルに良く似たスタイルで、試合前のオッズは11:10でこのウイリアムス有利と出ており評価が高い選手である。

 

1R ウィリアムスの立ち上がりは評判どおり右ジャブは早く、次いでの左ストレート

   の切れは抜群で流石と思わせる。

 

2R レオの前進を右ジャブとカウンターの左ストレートで対抗。パーネル・ウィテロ―

   の再来かと思わせる評価は伊達ではない。

 

3R レオは委細構わず自分のスタイルを貫いて前進、ウィリアムスはその迫力にやゝ押

       される。

 

4R レオの前進でウィリアムスの右ジャブでは止められなくなり、フィジカルの強さは

       ウィリアムスの予想をはるかに超えて、懐に入り込まれクリンチするも、ボディブ

       ローを打ち続ける。

 

5R ウィリアムスは右ジャブを攻撃的に使えなくなり、防御的になり受け身に追い込ま

       れるがウィリアムスに未だパンチ力が残っており一方的展開にはならない。

 

6R 接近戦となり、頭を付けて打ち合いウィリアムスもこのまゝではレオのペースで

   あり、このラウンド打ち合って勢いを止める為に打ち合ってレオの打ち合いに活路

       を見出す決意したようだ。

       このラウンド終了時でボディブローの数レオ35発、ウィリアムス24発。この結果

       はフィジカルの強さでレオに軍配が上る。

8R~12R  試合は一方的になり、レオの勢いは終盤に向かって勢いを増し、その馬力は

       驚くばかり。

 

判定は117:111、118:110が2人でレオに上がった

ウィリアムスは自分が過去闘ってきた相手とは桁違いのレオに驚いたことだろう。

完敗であった。

 

WBOのチャンピオン エマヌエル・ナバロッティは前王者の絶対王者ドグボエを番狂わ

せで破り、スーパーマッチとして両戦でも完勝。一躍このクラスのトップ選手となり、

一階級下の井上尚弥との試合を望んだがコロナ禍で実現せず。体重苦もあってライト級

に転向した為に空位となった王座を決定するこの試合となったのである。

 

レオは新チャンピオンとして異色のボクサーで、その突進力と体力、スタミナ、疲れを

知らぬ攻撃は脅威的である。又一人魅力的な選手が出て来た。

 

尚、井上選手は更に一階級を上げてS・バンタム級により適合するであろう。減量苦の緩和と、このクラスに強豪が少ない事による。 

 

⓶ ウエルター級10回戦 

会場  米国 ネバダ州 ラスベガス MGM グランドカンファレンス センター

 

契約はキャッチウェイト(契約体重)S・ライト級リミット140ポンドのところ3ポイント半上回る143.5ポイント契約の試合。

 

ホセ・ペトラザ(プエルトリコ)31歳 戦跡 29戦26勝13KO 3敗 元2階級王者 3敗はジャーボンティ・デービス、ワシル・ロマチェンコ、ホセ・ペセタである。ライト級からSライト級へ転向の試し試合。スイッチヒッター ニックネームはスナイパー(狙撃手)

 

対戦者 ミッケル・レスピエール (米)35才 トリニダートトバコ出身

戦跡 24戦22勝10KO 1敗1分 サウスポー

 

1R 両者とも手数が多く、パンチの交換あり。

 

2R ペトラザ、ミッケルをロープに詰めて一方的に打ちまくる。ミッケルはロープに釘

   付け、ガードを固めて防御に専念。リング中心に戻ってもペトラザ打ち続ける。

       ミッケルのダメージは殆んどない。

3R ペトラザ一転してアウトボクシング、サウスポーに変えて闘う。

   ミッケルは前に出る。

 

4R ミッケルはペトラザのボクシングに慣れてきて自分の本来の右ジャブ、左ストレー

   トのスタイルを回復。

 

6R 左ボディブローが胸に当りペトラザ ダウン。ダメージは無く、今度はペトラザの

   右ストレート、ついでの左フックでミッケル ダウン。ミッケルのダメージは深く、

   このラウンド、足を使って逃げる。

 

7R 開始早々、試合をストップ。レフェリーはテレビのリプレイをみる為にリングを降

   り、6Rのペトラザのダウンはミッケルの右足にペトラザの左足が引っ掛ったものと

   判明、ダウンをスリップと変更再開。この時間休んだミッケルはダメージから回

   復、攻撃を強める。

 

8R ミッケル明らかな劣勢を挽回すべく攻勢を強めるが、ペトラザ、これを足を使って

   躱す。

 

9R ペトラザ攻撃を強めてパンチも当たり、ミッケル右目切る。

 

10R ミッケル攻撃強めてパンチを振うところペトラザの左カウンターでミッケル

        ダウン。 10R終了

 

判定は100:88、99:88が 2人でペトラザ完勝。S・ライト級へ転出の目途がたった。

ペトラザは相手の嫌がるような対応をして、変幻自在、フェイントを使い、左・右に構え

を変える。圧力をかけると思えばアウトボクシングに切り替え、相手が攻撃の意志とみるや、これに付き合うことなく往なす等スピードが凄いわけでもなく、パンチ力がとび抜けているわけでもないペトラザの存在感があるのはボクシングに関しての知恵が他の人と比べて頭抜けている為に他ならない。ペトラザの試合は従って見て面白いのだ。

 

① WBO バンタム級 ジェイソン・マロニー vs レオナルド・バエス  ⓶ WBA S・フライ級タイトル・マッチ チャンピオン  アンドリュ―・マロニー vs ジョシュア・フランコ      会場 米国 ラスベガス 2020/8/10

① WBO王者ジョンリェル・カシメロに対する挑戦者決定戦

WBC バンタム級2位ジェイソン・マロニー(オーストラリア)29才 

戦跡 21戦20勝17KO 1敗、1敗はIBF王者エマヌエル・ロドリゲスに挑戦1:2の僅差の判定で敗れたもの。因みにロドリゲスは2019年5月19日  WBSSの準決勝戦で井上尚弥に2RにKOされている。

 

対戦者 レオナルド・バエス(メキシコ)24才  戦跡 21戦18勝9KO 2敗1無効試合 WBO王者ジョンリェル・カシメロに対する挑戦者を決める重要な試合である。

バエスはWBA S・バンタム級5位。

試合は終始マロニーの主導権のもと闘われた。左ジャブからのコンビネーション、攻撃

の終りには左フックのボディブローとセオリー通りの試合運びであり、脇を締めて繰り

出すパンチは切れもあり、バランスも良く、一回り大きくなバエスを問題にせずに攻め

切って、7R ボディを打たれ続けたバエスはこのR終了後ギブアップ。

マロニーのTKOに終った。

総体的にボクシングのレベルが違い過ぎた感がある。それでもマロニーがチャンピオン

になれるかと言われゝば難しい。WBAスーパー、IBFの王者にモンスター井上、WBAレギュラーにギジエルモ・リゴンドー、WBOにカシメロ、WBOにノルディーヌ・ウバーリ(仏)がいるが12月12日ノニト・ドネアとの対戦が決まっている。何れも強力な相手ばかりでこの非力なマロニーではとても対抗出来ないと思われる。

 

②WBA S・フライ級タイトル・マッチ 

チャンピオン アンドリュー・マロニー(オーストラリア)29才 戦跡 21戦全勝14KO  ニックネームはモンスター 初防衛戦で、ジェイソンとは双子の兄弟である。

挑戦者 ジョシュア・フランコ(米)24才 戦跡 19戦16勝8KO 1敗2分 ニックネームはエル・プロフェソル(教授)。

アンドリュ―はジェイソンと全くと言ってよい程良く似たボクシングスタイルで左ジャブは兄より多い、まさに教科書通りのボクシングで前年は足を使い、打っては離れの自分のボクシングでリードしたが7Rあたりから失速し、フランコの追い上げを受け苦しくなり

11R急速に弱ったところに連打を浴びてダウン。12Rも何とか持ちこたえて終了。

 

判定は115:112、114:112が2人でマロニーは初防衛に失敗した。このパンチ力とスタミナではチャンピオンは荷が重い。だいいちニックネームのモンスターとは何をもって付けたのかとあきれる。モンスターとはヘビー級のワイルダーのように44戦42勝41KO 1敗1分けに示されるように右ストレート一発が当ればだれでも倒れる凄みや、17連続KO防衛を果したゲンダディ・ゴロフキンや井上尚弥に当てはまるもので、これは誇大広告というものである。身の程知らずと言うものである。

 

ライト級10回戦 WBC Sフェザー級チャンピオンミゲール・ベルチェルト vs エレアザール・バレンズエラ 2020/7/28

ライト級10回戦  会場 メキシコシティ 

WBC S・フェザー級チャンピオン ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)28才 

2017年1月フランシスコ・バルガスを11RKOに下し戴冠、以降6度防衛中(内5KO)。

Sフェザー級最強と誰もが認める強豪である。今回はクラスを上げて試験的に行う事で

ライト級でも通用するかを確認する目的である。戦跡38戦37勝33KO 1敗。

 

対戦者 エレアザール・バレンズエラ(メキシコ)25才 戦跡 39戦21勝16KO 13敗4分1無効試合、ニックネームは「トロンコ」(屈強な肉体)

 

1R ベルチェルト ガードを高く掲げて立上る。相変わらず手数は多い。29秒前に間違

  ってゴングが鳴り中断。検めて再開、両者激しく打ち合うなかゴング寸前ベルチェ

  ルトの左フックでバレンズエラ ダウン。

 

2R ベルチェルト、ここぞと倒しにかゝるがバレンズエラ打たれながらも前進を止め

      ずにベルチェルトを押し込む。ベルチェルトも仲々倒れないので倒すのを諦めた

      ようだ。

 

3R  ベルチェルトは顔面、ボディと有効打を連発するがバレンズエラ怯えることなく平

     然と圧力をかけつゞけベルチェルトを押し続ける。ベルチェルトにローブローあり。

 

4R 3R同様だがバレンズエラのパンチも当たり始める。

 

5R   ベルチェルト、相手のタフさを考えてボディ、フック、アッパーを多用して弱らせ

      る作戦をとり始める。

 

6R バレンズエラこれまでの劣勢を挽回すべく猛然と打って出る。一段落のあとベルチ

      ェルト、バレンズエラをロープに詰めてパンチをまとめレフリーストップを呼び込

      こんだ。TKOで決着した。

 

ベルチェルトは左右ストレートが中心で何発も続ける事ができ、必ずその間に左アッパー、左フックのボディブローを打つのを忘れない。

止まるところを知らない手数の多さと的中率は相変わらずで、接近戦も中間距離もアウ

トボクシングもこなす幅の広さも持っており、今脂の乗り切っている選手であるが、今

日の試合を見ると、ライト級では難しいのではと思わざるを得ない。

いくら相手がタフであってもあれだけまともに打って倒れないという事はリミット2.26kgの差が体力的、パンチ力にどれ程の差をつけているかを明らかにしている。

 

しかもライト級にはパウンド・フォー・パウンド1位に挙げられるハイテク ワシル・ロマチェンコが居り、天才メィウェザーの秘蔵っ子で桁外れの強打者ジャーボンティ・デービスが居り、更に若手No.1の倒し屋ティモフィオ。ロペスが居り、いずれも一発でNOする強打の持ち主である。

今日のベルチェルトではとても対抗できるとは思えないからだ。

好漢ベルチェルトは矢張りS・フェザー級で各団体統一を狙うのが順当であろう。

 

私の選ぶスーパースターNo.1「モハメド・アリ」とは   「キンサシャの奇跡」って?    2020/6/30

モハメド・アリ
1960年代はじめ、全米各地のボクシングジムは廃業に追い込まれるところが多く、主要なテレビ局もボクシング放映をしなかった。当時のボクシング界はまさに腐敗にまみれ

ていたからで、八百長が蔓延していると世間からみなされていて正統なスポーツとは認

められていなかったのである。

そんな時代の救世主として1960年のローマ五輪の金メダルを引っさげて登場したアリは、大言壮語してビッグマウスと評される何かと話題を提供した。

しかしアリは当時のヘビー級のスタイルを一新し、腕力にまかせた殴り合いのヘビー級

へ「蝶のように舞い、蜂のように刺す」の言葉通り、まるで軽・中量級ように軽やかに

ステップを踏み、左ジャブは鋭く速くストレート主体の華麗なるボクシングスタイルを

リングに繰り拡げてみせたのである。

アンジェロ・ダンディ トレーナーのもとスター街道を突き進むことになる。


1964年2月マイアミビーチで長年ヘビー級王者として君臨していた「最強にして最凶」と称されていたソニー・リストンと対戦。戦前ほとんど勝算はないと関係者の誰もが思

った試合を6Rリストンの試合放棄という形で下し初タイトルを握る。22才であった。

1967年ゾラ・フォーリー戦のあと、ベトナム戦争に対する徴兵拒否を表明、ボクシングの統括団体はライセンスを剥奪した。取り戻すのに実に3年の月日を要した。

1971年3月復帰したアリはジョー・フレージャーと対戦。判定で敗れ初の一敗を喫した。更に1973年3月ケン・ノートンに顎骨折のあげく敗戦。

 

1974年10月時のチャンピオンは40戦全勝37KOの「象をも倒す」と評されたジョージ・フォアマンに挑戦。

戦う場所はザイール(現在のコンゴ人民共和国)のキンサシャである。
1.試合は当初ジョー・フレージャーと戦う予定であったがジョージ・フォアマンに2R 6度のダウンを食らってKOで敗れた為にフォアマンに挑戦することゝなった。

フォアマンはそのあとホセ・ローマンを1R KOで下し、74年3月ケン・トートンを2RでKOしている。
2.ザイールの大統領は2千万ドルをかけてスタジアムを建設したが、アリが戦った国

として世界中の人々がザイールを覚えてくれた事の方が大きく得をしたと語っている。

アリが入国するやザイールの国民は歓呼してこれを迎え、街中に「アリ・やっちまえ」

のポスターが張り巡らされた。アフリカ入りをしてアリの人気は更に高まり、彼はあら

ゆるエネルギーを引き出しているようだった。ここがアリの故郷だという実感が力を与

えていた。

時がたつ程フォアマンは不利だった。彼はホテルのスウィートに泊り、食べ物や水を

アメリカから空輸させており、又ザイールを侮辱していて、番犬まで連れて来てザイー

ルの人々を警戒し、ザイールの人々の気分を害して何もかもうまくいかなかった。

彼はアフリカに居たくなかったのである。

試合は9月24日に予定されていたが、その一週間前のスパーリング中、パートナーの

ビル・マクマーリの肘が当ってフォアマンの目の上がパックリと裂けてしまった為に10月30日に延期された。延期はむしろアリにとっての方が痛手とみられた。

年齢を重ねたボクサーの方が短期間に2度もピークを作るのは難しかったからだ。しかしその間アリは精力的に様々なイベントに立ち続けたのである。


3.世界ヘビー級タイトルマッチ 1974年10月30日 場所 ザイール キンシャサ 

契約報酬各500万ドル チャンピオン ジョージ・フォアマン(米)24才 

戦跡 40戦全勝37KO 過去8試合は全て2R以内でKOに下している。強打のリストンより10倍強いと云われた。
挑戦者 モハメド・アリ(米)32才 戦跡 46戦45勝1敗 同級1位


1R アリは足を使って左ジャブ、右ストレート、フォアマンの左フックが顔面にヒット。中盤からアリはロープに詰まるようになる。フォアマンの連打、アリ胸に受ける。

フォアマンのパンチはアリをロープに詰めて当たり始める。

 

2R フォアマンの右がアリの顎にヒット。フォアマンはアリの動きを止めるべくボディを集中的に叩く。アリはロープに詰まって、しかしロープの反動を利用してフォアマン

の強打の衝撃を柔らげる。アリのショートの右ストレート鋭い。コーナーはアリに「ロ

ープに詰まるな、足を使ってリングの中央で戦え」と指示するがアリは「俺の作戦だ」

とうそぶく。過去に例をみない ロープ・ア・ドープ 作戦の開始である。


3R フォアマン アリのボディを集中的に叩き続けるがアリの腹筋は強く、さほどの効果はないようだ。アリはロープに詰まりながらも左・右のショートパンチは速く鋭い有効打

となってフォアマンを苦しめている。フォアマンのパンチのスピードは急速に弱まり、

それに伴って大振りが目立つようになる。

ロープに詰まりながらもアリの優勢が見えてくる。


4R アリの連打をまともに受けてフォアマンぐらつく。アリは3Rから足を止めてロープに釘付けとなりフォアマンの攻撃を受け止めながら、まともにパンチを受けないように

対処し、機を見て繰り出すショートのストレート・ジャブはフォアマンの戦闘能力を次

第に奪って行く。


6R アリの左ジャブが連続5発、6発とフォアマンの出鼻にヒット、フォアマンの右目ふさがってくる。アリは依然としてロープに身体をもたせかけてフォアマンを挑発。

弱ったフォアマンは自分の意志を失った如くにたゞ威力のないパンチを振り回す。


7R アリは弱ったフォアマンに「どうしたジョージ、すげえパンチを出してみろよ。

それでおしまいか?」と嘲笑。


8R フォアマンはアリをロープに追い込み最後の力をふりしぼってラッシュをかけるがガードを固めてこれをたゞ凌いでいたアリは突然ロープ際をすり抜けて、左フックをヒットさせるかと思うと、そのあと4連打フォアマンがバランスを崩したところ長い右ストレートでフォアマンはゆっくりとマットに沈んでいった。

フォアマンは十分に意識があったがあまりにも消耗し闘争心も失っていた為に、カウント内に立つ事ができなかった。人々はこれを『 キンシャサの奇跡 』と呼んだ。

 

モハメド・アリの 全試合 成績 61試合56勝4敗 

 

私の選ぶスーパースターNo.2「マニー・パッキャオ」とは 2020/6/27

マニー・パッキャオ 1978年12月17日生れ フィリピン/キバウェ出身 41歳

アマチュア戦跡 64戦60勝KO4敗 プロデビュー1995年1月(16才1ヶ月)
プロ 戦跡 71戦62勝39KO 7敗2分 世界戦の戦跡 25戦19勝8KO 4敗2分 
身長166㎝ リーチ170㎝
【 獲得王座 】 
1998年12月WBC フライ級 19才
2001年6月 IBF S・バンタム級 22才
2008年3月 WBC S・フェザー級 29才
  〃  年6月 WBC ライト級 29才
2009年11月 WBC ウェルター級 30才
2010年11月 WBC S・ウェルター級 30才 
2014年4月 WBO ウェルター級 35才
2016年11月  ー 〃 -    37才
2018年7月 WBA ウェルター級 39才

 

【 パッキャオ 伝説の試合 】

◎ 2006年11月 S・フェザー級12回戦
 エリック・モラレス(メキシコ)30才 戦跡 52戦48勝34KO 4敗
  vs マニー・パッキャオ(フィリピン)27才 戦跡 47戦42勝32KO 3敗2分
両者過去1勝1敗 パッキャオ 左  : モラレス 右

モラレスは当時軽量級のスーパースターであった。
1R 前回TKOで敗れているモラレスはパッキャオが前に出ると強いことを知っていて、自ら前進し攻勢をかける。

ロープに詰めて連打、パッキャオの左ボディストレート2発ヒット。

 

2R モラレスは攻撃を緩める事なく前進。両者激しく打ち合う。モラレスはパッキャオをロープに詰めて連打を仕掛けるところ、左に回ったパッキャオの左フックぎみのストレート顔面にヒットしてモラレス 1度目のダウン。

このまゝでは劣勢は免れないとみたモラレスは逃げることなく激しく打ち合う。


3R モラレスは正面からパッキャオの攻撃を受けて立ち、前に出るところ左右フックのカウンターからの連打で2度目のダウン。立上ったところ左ストレート顎に受けてロープまで飛ばされて3度目のダウン。倒れて上半身をあげたところでモラレス 力なく首を振って、そのまゝKOとなる。栄光のテリブル・モラレス新旧交代であった。

 

◎ 2009年5月 S・ライト級12回戦 会場 ラスベガス・グランドガーデン
 元2階級王者 リッキー・ハットン(英)28才 戦跡 46戦45勝32KO 1敗 

   (1敗は対フロイド・メィウェザー戦)

  vs  マニー・パッキャオ(フィリピン)30才 戦跡 53戦48勝36KO 3敗2分
1R ハットンは2008年にはS・フェザー級のパッキャオに対し、自分はウエルター級から1階級下げて最も力の出るS・ライト級に下げて対戦する事とした。実に7.7㎏の体重差があったのである。パンチ力も体格もスタミナも自分に敗れる要素は全くないと自信満々でこの試合に挑んできたハットンは体力にまかせてパッキャオをロープに詰め連打するところパッキャオの右フック顔面ににヒット。ハットン ダウン、更に左右のコンビネーションのあと左ストレートでハットン2度目のダウン。辛うじてゴングに救われる。


2R ハットンの意識は半ばもうろうとしているようで、しかし前に出てパンチを振うが力強さは失われており右カウンター顎にヒット、更に左フック(ストレートぎみ)の一発でハットン3度目のダウンはマットに頭を打ちつけ完全なノックアウト。意識はなくしばらく立上ることが出来なかった。実に衝撃的なノックアウトで、数多いパッキャオの試合で一番のものであろう。


更にこのあと

2009年11月WBOウェルター級ミゲール・コットに挑戦、一方的に打ちまくって2度の

ダウンの末12R TKOで下す。

2010年3月これも1敗のみの強豪ジョシア・クロッテイを”鎧袖一触” 何もさせずに大差

の判定で下す。

2010年11月S・ウェルター級の王座をかけて人間風車と云われた強打でタフガイの

アントニオ・マルガリートを一方的に打ちまっくって11Rにはレフリーにこれ以上は

危ないから試合を止めるように催促する余裕をみせて圧勝。

 

その後も一時引退を挟んで現在もWBCウェルター級王座に君臨している。

ニックネームは「パックマン」

私が選ぶ ” 誰が真のスーパースターか ”    2020/06/26

WOWOWの報道が始まってからの40年で、誰が本当のスーパースターかと考えてみた。

  No.1 に挙げるのは   モハメド・アリである。

            No.2 マニー・パッキャオ

            No.3   ナジーム・ハメド

              No.4 リカルド・ロペス

                      No.5 フロイド・メイウェザー 

      

No.1 モハメド・アリ

 

唯強いだけであればヘビー級のマイク・タイソン、ディオン・ワイルダー、ミドル級のゲンナディ・ゴロフキン等多くの名前が浮かぶがアリは一体どこが違うのか。

 

(イ)それまでのヘビー級のボクシング腕力があり打ち倒せば良いと思われていたが、アリはヘビー級に中軽量級のボクシングを持ち込んだ。

「蝶のように舞い、蜂のように刺す」の言葉通り軽やかにステップを踏み、鋭い左ジャブシャープな右ストレートを武器に速さをヘビー級に持ち込んだこと。

 

(ロ)泥にまみれたボクシングをスポーツに変える事に大きく貢献した。

(ハ)ベトナム戦争への兵役を拒否。
兵役拒否は国家に敵対する犯罪行為であり激しい非難を浴びたが一貫してこれを貫き、ついにはベトナム反戦運動の象徴的存在となり、ついに2005年11月市民に与える最も栄誉ある勲章「大統領自由勲章」を政府は彼に与えたのである。

 

 

No.2 マニー・パッキャオ


(イ)フライ級からウエルター級まで10階級に亘って6階級を制覇した。 50.88㎏~69.85㎏へ 事実上10階級制覇である。

 

(ロ)階級を上げるたびに全て強敵に当たったことから関係者は皆もう無理だろうと思い、対戦相手も負ける筈はないと皆思った事であろう。

(ハ)10代、20代、30代、40代でそれぞれチャンピオンであった事。

 

(ニ)フィリピンでは長く下院議員を務めていて2足の草鞋を履いている。特に驚くべ

きはフライ級骨格でSフライ級まで制覇した事で、上る度タイトルマッチでその階級で

その階級に馴らす猶予期間はなかったのである。ボクシングあ史上、この偉業は過去

そして未来に亘って誰一人として成す事の出来ないもので不滅の記録である。

(更に詳しくは6月27日付けにて人物、試合内容等紹介)

 

No.3 ナジーム・ハメド

 

(イ)入場の派手さ、リング内への入り方。

 

(ロ)ノーガードで相手の攻撃はすべてステップ、上体の柔らかさで躱す。

 

(ニ)セオリーに全く反して、アゴは上げたまゝパンチは打

ちっ放し、どんな体勢からでもからでも必殺パンチを繰り出す、まさにボクシングの常

識を破った選手である。多くのボクサーがこれを真似したが誰一人として成功した者は

いなかった。彼は一貫してWBOのタイトルのみ保持、その他の団体のタイトルは放棄

している。ハメドの活躍によって一段落ちるとみられていたWBOは一流の団体に認め

られるようになった。(更に詳しくは6月15日付け人物、試合内容等を紹介)

 

No.4 リカルド・ロペス


ミニマム級で20回、Lフライ級で2回防衛。プロ、アマ通じて全勝のまゝ引退。試合を重ねるに従って、自分の欠点を改善し完璧なボクサーを目指した。

常に冷静に試合に臨み、乱戦を嫌い、いかなる場合にも理性的に対処、ボクシングに打ち込む姿勢はストイックで修行僧を思わせた。

総てのボクサーが手本となるようなスタイルを残した。多くの選手は年齢に従い減量が厳しくなりクラスを上げていくが、ロペスは一番軽いミニマム級47.62㎏を1990年~1998年11月まで死守した事も特筆される。

(更に詳しくは6月8日付けで人物、試合内容等紹介) 

 

No.5 フロイド・メイウェザー

 

ミシガン州グランドラッピズ出身1977年2月24日生まれ(43才)

父親のフロイド・シニアはレュガー・レイ・レナードやマーロン・スターリングと戦った経験があり、叔父のジェフは若きデラ・ホーヤと対戦。叔父のロジャーは2階級制覇した元世界王者である。

1996年アトランタ五輪で銅メダルを獲得したメイウェザーは父親が収監中にプロに転向。1998年10月S・フェザー級のテクニシャン ヘナロ・エルナンデスに挑戦。

ヘナロは鼻柱骨折により8R TKOで下しタイトル奪取。当時はS・フェザー級にはWBA

キューバのテクニシャン ホエル・カサマヨル。IBFには長身強打のデイゴ・コラレス

が共に全勝、WBOにブラジルのアセリノ・フレイタスが全勝全KOで其々安定政権を保持。メイウェザーはこの中で3~4番手と見られていた。

 

2001年1月ライト級に転向の意向をもったディゴ・コラレスと対戦(本試合は6月17日

付けアップ)10R TKOに下してから評価を上げた。階級をライト級に上げ2002年4月

ホセ・ルイス・カスティージョに挑戦。一階級2.26㎏の体重差は想像以上に大きくカスティージョに体格で押しまくられて辛うじて薄氷を踏むような勝利を得た。


2005年6月サンダー・アルツロ・ガッティを6R TKOに下してWBC S・ライト級タイト

ルを得るやこれをすぐに返上し、2006年11月カルロス・バルドミーを判定に下しWBCウェルタータイトルを獲得。2007年12月全勝のリッキー・ハットンを10R TKOに下し引退。2011年現役復帰してWBCビクトル・オルチスを4R KOに下し再びWBCウェルターのタイトルを獲得、その後2戦し、2015年5月マニー・パッキャオと対戦12R判定で下したが2015年9月MGMグランドガーデンマリーナでアンドレ・ベルトを大差の判定でくだしそのまゝ引退。2007年5月WBC S・ウェルター級でオスカー・デラホーヤを判定

で下したがこれも疑惑の残るものであった。

 

しかしホセ・ルイス・カスティージョを下した頃からメイウェザーのボクシングは完成

の域に達し、スピード溢れる動きは洗練され特筆すべきは防御技術でまともにパンチを

受ける事は全くなかったのである。

その技術は誰も真似る事の出来ないものであった。終盤に至ってはKOを狙う事もなくなり、当面する試合を劇場のように考えているように、自分のみが納得するように試合を

行ったのである。


一方でデビュー当時はニックネームは「プリティボーイ」と評したが、後半復帰するあ

たりから「マネー」(守銭奴)と自ら評して世界を韜晦(トウカイ)した。

彼のボクシング人生は負けない事により自分のネームバリューをいかに最大にするかに

力を注ぎ、一貫して危ない相手には注意深く回避し、名はあるが既に峠を越した相手を

選択して自らの力量が上昇するに従い、相当する相手を選んだのである。

まことに計算高い選手ではあった。リングを劇場と化し、ボクシングをいかに美しく、

いかに肉体の極限をみせるかボクシングを芸術に高めた唯一の人物である。

 

WBC S・フェザー級タイトルマッチ フロイド・メイウェザー vs ディゴ・コラレス(2001年1月)     2020/6/17

会場 アメリカ ネバダ州ラスベガス グランド・ガーデン 

2001年1月  WBC S・フェザー級タイトルマッチ

チャンピオン フロイド・メイウェザー(米)23才戦跡 24戦全勝18KO

挑戦者 ディゴ・コラレス(米)23才 戦跡 33戦全勝27KO
コラレスは減量苦からIBFのベルトを手放しライト級に転身を図るが、S・フェザー級で

の最後の試合として大金が稼げるWBC王者のフロイド・メィウェザーとの対戦をに同意、一たん体重をあげて、また戻すことはコラレスにとっては予想外の負担となり、

この結果となった。
1R 長身でメイウェザーより一回り大きいコラレスは体力で圧力をかけ前に出る。

メイウェザーは左ジャブを多く繰り出し左・右のフックで上・下に打ち分ける。コラレ

スは圧力をかけて出て行くが手は出さない、様子をみ。
2R メイウェザー左フックボディ2発、右フック顔面へコラレス メイウェザーをロープに詰めてボディを狙い動きを止めにかゝるがメィウェザーの動き早すぎて打つ前に打た

れる。
3R メイウェザーにコーナーからもっとガードを上げろの指示。コラレスはメイウェザーをじぐざぐに追い横への動きを止めようと図る。
4R コラレスの右ストレート メイウェザーにヒット。コラレスのパンチがメイウェザーの身体に当たり始める。
5R コラレス、 メイウェザーをロープに詰めて連打するがほとんど当らない。メイウェザー突然右からのジャブでコラレス右目が腫れてくる。
6R 突然の左フック コラレスの顔面にまともにヒット。コラレス体勢を崩したじろぐ。
7R 開始早々左フックでコラレスダウン。メイウェザーはトップギアーに入りスピードは一段とあげて、左・右フックボディに、ついでの左フックでコラレス2度目のダウン。ロープ際連打で3度目のダウン。
8, 9R メイウェザーの速さは更に一段アップ、自信をもってきた。
10R コラレス 左フックのカウンターでダウン、更に右ストレートで5度目のダウン、

コーナーからタオル投入でTKOで終了。

 

1Rから10Rまでコラレスは思った以上のメイウェザーのスピードに全くついて行くことが出来ず、更に減量も原因していたのか戦前のやゝ有利ではないかの予測にも拘らず惨

敗を喫した。コラレスはこの試合の数ヶ月あとドメスティック・バイオレンスの罪で刑

務所に送られ、出所後の成績はまずまずだったが2007年5月ラスベガスでオートバイ事故で死亡している。
S・フェザー級で3~4番手であったメイウェザーの株は急上昇する事となった。

往年の名選手(その2) ナジーム・ハメド      2020/6/15

ナジーム・ハメド 

両親がイエメンから英国に移住(シェフィールド)。
1974年2月12日ハメドは英国で生まれた。


86年2月アマチュアデビュー 戦跡 67戦62勝5敗18KO 
92年4月 プロデビュー トレーナーにブレンダン・イングルに付く
94年5月 欧州バンタム級タイトル獲得
94年10月 WBCインターナショナル Sバンタム級タイトル獲得
95年9月 WBOフェザー級タイトル獲得。

       時のチャンピオンは同国人スティーブ・ロビンソンで、この試合が8度目の防衛戦

      である。

1R ロビンソンはハメドの強打を極度に警戒し顔面を両腕でガッチリと貝に閉じこもるようにガードして開始。何せ試合前のハメドの戦跡が29戦全勝27KOであったからだ。

ハメドはガードを胸の前にお義理ののように構えて相手を挑発し、変則自在のボクシン

グを展開。ロビンソンはパンチを繰り出すとハメドのカウンターが飛んでくるのを恐れて、全く手が出ずに腰が引けて防御一辺倒に追い込まれ、ハメドに翻弄されたあげくに5Rにダウンを奪われると足がもつれて勝負の行方は決まって8Rに必殺の左フック一発でダウン。レフリーはTKOを宣してハメド タイトル獲得となった。


96年3月 Ⅴ1 サイド・ラワル(ナイジェリア)戦は試合開始のゴングが鳴って両者が

    リング中央に進んだとみる間にハメドの右フック一閃ラワル ダウン。立上っ

    たところにコンビネーションを打ち込まれ、2度目のダウン。

    レフリーはTKOを宣した。


96年6月 Ⅴ2 ダニエル・アルシア戦
1R アルシアの右ストレートが予想外に伸びて、ウィービングしたハメドの顔面にパンチが届きハメド ダウン。

2R開始早々ハメドの攻撃凄まじく連打が決まってKOにアルシアを下す。


96年8月 Ⅴ3 マヌエル・メディナ(メキシコ)に苦戦したが、11R TKOに下す。

     メディナは98年4月 IBFタイトルを獲得している。


96年11月 Ⅴ4 レミヒオ・モリナ(アルゼンチン)戦跡 27戦全勝12KO 26才 

モリナは若手の有望株であったが、1R ハメドは右ジャブから飛び込んでの右アッパー2発をみせる。2R ハメドは右アッパーからの左ストレートでモリナ ダウン。

ここでレフリーはストップを宣した。モリナはリングで何もしないうちに敗れた訳で

さぞ不満であった事だろう。

 

97年2月 Ⅴ5 IBF、WBO のフェザー級の統一戦である。
     IBFの王者トム・ジョンソン(米国)戦跡は 48戦44勝25KO 2敗2分。2敗はフラン

   ク・オーレンとマヌエル・メジナであり11度タイトル防衛中の32才。

     このクラスで  一番強いとみられており、油の乗り切った選手である。

     ハメドはゴンドラに乗って上空から降りて登場。

     例をみない派手なスタイルである。リングに上るときは最上段のロープを掴んで

     前転してのリングイン。
1R 両者の体格は明らかにジョンソン一回り大きい。ジョンソン169㎝、ハメド158㎝。いきなりのハメドの右ジャブはとび込んで打つので届くのである。更に右ストレートが

軽く当って、ハメド調子にのる。ジョンソンは様子見。

2R ハメドの右ストレート軽いがヒット。ハメドのパンチはクリーンヒットではないが当り始め、手数も多い。ジョンソンはスピード重視で対抗する作戦のようだが、ハメド

の攻撃の対応に追われ攻撃にかかれない。
3R ジョンソンの右ストレート ハメドのボディにヒット。ハメドはジョンソンにフェイントをかけ脅しながら圧力をかける。ハメド多彩な集中打でジョンソンを追い込む。

ラウンド終了時ジョンソンの右フックでハメド手を衝いたがレフリーはゴング後と判断しダウンとはせず。
4R ハメドは完全に両手を下げてジョンソンを挑発、いきなりの右アッパー、飛び込んでの左アッパーとやりたい放題となってきた。
5R ハメドの動きにあおられて、ジョンソンのパンチは相手を見ずに出していて、結果一層打たれる事になる。
6R ジョンソンの左ストレート ヒットして唯一のチャンスであったが打って出るとハメドのカウンターが怖い為に追撃が出来なかった。
7R ハメドの短い左フックでジョンソン足がふらつき、その後のコンビネーションでダウン寸前に追い込まれるがゴングに救われる。
8R ハメドのワンツーがヒット、左右ストレートでジョンソンが前かがみにダッキングするところに右アッパーを突き上げられてジョンソン堪らず仰向けにダウン。それまでのジョンソンの弱り具合をみていたレフリーはストップを宣した。
これで2団体統一した。

 

97年7月 Ⅴ6 ファン・カブレラ(アルゼンチン)戦跡 24勝20KO 2敗 身長169㎝
1R ハメドいきなり左・右アッパーを振って先制攻撃。カブレラ ガードを固くして

防御のみ。
2R ハメドの右ストレート、右アッパー ヒット、カブレラが防御の為頭を下げると

ころアッパーカットの連続攻撃で試合続行不能とみたレフリーはストップTKOとなる。

顔が腫れ上がったカブレラは何もしない間に終了してしまった。

 

97年10月 Ⅴ7 ホセ・バデージョ(プエルトリコ)27才 戦跡 20勝15KO 1敗、

1位指名挑戦者。1敗はトム・ジョンソン 未だダウンの経験なし。
1R 例に似ずハメド右ジャブ多く出す。それがよくヒットする。バデージョ打って

出るところに躱して右フックを合わせる。
2R 1R 同様右ジャブを多く出す。バデージョのパンチは全く当らない。
3R バデージョのパンチはハメドに届かない。ハメド大きな右アッパーを振う。

右ジャブと右アッパーショートヒット、バデージョの顔面腫れてくる。
4R   バデージョのパンチは相変わらず空を切るばかり。ハメドは両手を下げてバデージョを追い掛け回す。
5R ハメド右アッパーをみせたあと、アリシャッフルをしてみせる。
7R ロープに詰めて左・右アッパーの連続、左・右ストレートでバデージョ コーナー

からタオル投入で7R TKO。バデージョの顔は傷だらけだった。

 

97年12月 Ⅴ8 ケビン・ケリー(米)30才 戦跡 50戦47勝32KO 1敗2分。

      93年WBCフェザー級タイトル獲得2度防衛。3度目はアレハンドロ・コブリタ・

      ゴンザレスに初の1敗タイトルを失っている。同級3位 地元ニューヨーク出身、

      ニックネームはフラッシンク(閃光)身長170㎝。ハメドはアメリカ初進出の試合

      で(試合は2ケ月振り)過去最強の相手と目されている。観客は1万2千人。
1R ハメドの右フックで開始され、そのあとケリーをロープに詰めて連打するところ、ケリーのカウンターのショートストレートでハメド一度目のダウン。ケリーは最高の

スタートを切る。
2R お互いに右ジャブを突合せ中、ケリーの左フックでハメド2度目のダウン。

立上ったところにケリーは嵩(カサ)にかゝって攻撃するところ、ハメドの左フック

のカウンター決まってケリー1度目のダウン。
3R ペースは1Rからケリーのものでケリーの左ストレートに2度にわたってハメド

のけぞる。終始ケリーに押されていつものハメドの動きがギクシャクして悪く、この

ラウンド自身の回復の為にアウトボクシングする。
4R ケリーの前進はとまらず、パンチも良く当るが突然ハメドの左ダブルでケリー

2度目のダウン。更にお互いの打ち合いの中でハメド グローブを床についてハメド

3度目のダウン。お互いにもつれた中でハメドの左ショートフックでケリー3度目の

ダウン。これでカウント内にケリー立ち上がれず劇的な幕切れとなった。

試合は一貫してケリーが優位に進めており有効打も多く、ハメドの前評判に臆する事

なくハメドの後ろに大きくのけぞって相手のパンチを躱すスタイルを良く研究して、

更に一歩踏み込んでの左ストレートが極めて有効であったが、如何せんケリーの打た

れ弱さが致命傷となって惜敗。ハメドは3度のダウンを喫したが身体の柔らかさで

ダウンの割にはダメージが少なかった。これでハメドは国際的スターとなった。


98年4月 Ⅴ9 WBCフェザータイトルマッチ チャンピオン ナジーム・ハメド 

      挑戦者 ウィルフレッド・バスケス(プエルトリコ)37才 87年 WBAバンタム

      級防衛1回、92年 WBA Sバンタム級防衛4回、96年 WBAフェザー級タイトル防

      衛 4回、戦跡 60戦50勝37KO 7敗3分 元3階級制覇王者である。

      タイトル維持から9ヶ月の間に試合をしなければならないところ、今回はWBA

      から指名挑戦者を決められていた。アントニオ・セルメニョである。

      しかしバスケスはその試合の前にハメド戦を行いたいとWBAに懇願したがWBA

      はこれを認めず自身のWBAタイトルを返上してハメド戦を選択した。

      理由は80万ドル(当時の一億円)の為である。

      今回はイギリスのマンチェスターに2万人の観衆を集めた。

1R ハメドの右ジャブで開始。踏み込んでのショート右アッパー、左ストレート2発、

正確にはヒットせず、バスケスは自分からは手を出さず明らかなカウンター狙いに

徹している。
2R ハメドのとび込んでの右フック、アッパー、左ストレートに対しバスケスの右フックのカウンター浅いが当る。しかしバスケスはハメドの早い動きについていけない。

ハメドのアッパーにバスケス ダウンするがスリップと認定される。
3R ハメドの左アッパーぎみのストレートでバスケス1度目のダウン。バスケスは

ハメドの右パンチに右フックを合わせようとするがワンテンポ遅れて奏功せず。

試合中ハメド笑う。
4R バスケスはハメドのフェイントに悉く泳がされて自分のパンチは空を切る。

ハメド跳び込んでの右アッパー、左フック、左ストレートと自在にパンチを繰り出す。

バスケスこのラウンド積極的に前に出てハメドを追うがハメド足を使って、これを巧

みに往(イ)なす。
5R このラウンド バスケス勝負をかけて前に出るが、くり出すパンチは全く当らず。

狙いは圧力をかけて前に出て、ハメドが反撃に出るところに得意のカウンターを決め

る作戦であるが、ハメドこれに付き合わず、この作戦に乗ってこない。
6R ハメド、顔でフェイントをかけるや、突然の右ストレートでバスケス ブロック

するが体勢が崩れたまゝ右フックを打った為にバランス更に崩れて倒れた。

バスケスはスリップと主張したがレフリーはダウンと認定。そのあとすぐにリングの

2段目のロープ緩んで試合を中断、これを修復しようとするが手間取りロープ3本のまゝ再開10分間の中断。ハメドこのラウンド流す。
7R バスケス攻めに行ったところハメドの左フックで3度目のダウン。

更に追い打ちをかけられたが、すでにバスケスに戦闘能力は失われて足許おぼつかな

いところ、左フックで4度目のダウンを喫し、立上ったが右アッパーを受けたところ

でレフリーはTKOを宣した。

さすがにバスケスは勝機をハメドのパンチに合わせてのカウンター狙いに定め、最後

迄これを狙ったが、予想外のハメドのスピードについて行く事が出来ずに、手も足も

出ない状況で完敗した。

 

2000年8月19日 Ⅴ13 会場 ロンドン オリンピア・アリーナ

      挑戦者 ブヤニ・ブング(南アフリカ)33才,  94年8月 IBF Sバンタム級タイトル

      獲得 13回防衛、戦跡 39戦37勝19KO 2敗 無尽蔵のスタミナを有する。

      今回階級を1クラス上げて挑戦。S バンタム級タイトル返上。
1R ハメドは右ジャブを出していつもの立上り。ブングはガッチリとガードを固め、

体勢を低くして上体を揺すって警戒。
2R ハメド、ショート右フック、左アッパー、ガードの上にヒットし、パンチが当

り始める。
3R ハメド、相手を呑んでかゝり、多彩なパンチでブングを追い込み左ストレート

ヒット。ブング打たれて後退、左目切る。
4R ブングの動きがやっといつものように柔らかくなり、パンチも出しながら前進を

始めたところ、ハメドの左ストレート 一閃、ブング ダウン。立上れずKOとなる。

 

2000年8月19年 Ⅴ14 今回の挑戦者は同級8位オーギー・サンチェス(米)22才、

       戦跡27戦26勝23KO 1敗 
1R ハメド例の通り右ジャブ、左ストレート、ボディに2発、左アッパー1、

サンチェス臆する事なく正攻法で前に出る。
2R サンチェスの右ストレート2発でハメド ダウンするもスリップと判定。

終了間際に右ストレートでハメド床にグローブがつくがレフリーこれを見逃す。

尚スリップとの判定は明らかに間違いでダウンである。
3R サンチェスの右ストレートの3連打でハメド顎をあげられ危うくダウンするピンチ、

サンチェスの攻勢は順調であったが、クリンチするうちにハメドは自分の腕を引き抜い

て左、右のショートフックを放つと、これがサンチェスに大きなダメージと

なり、ついでの左フック、ストレートでサンチェスは足にきて急速に弱る。
4R こうなると、あとは仕上げが残るのみ。右左、右左のコンビネ―ションの4連打

でサンチェス ダウン。サンチェスはしばし立ち上がれず、ダメージの強さがうかがわ

れた。


2000年10月 ハメドは最強の挑戦者イッシュトヴァン・コバチ(ハンガリー)との

対戦を回避、タイトルを返上した。
その後マルコ・アントニオ・バレラと無冠のまゝ対戦、判定で敗退するやそのまゝ引退。
生涯戦跡は 35戦34勝30KO 1敗 KO率86% 26才での早い引退であった。   

 

       ☆☆☆☆ ハメドについて ☆☆☆☆
ハメドは過去、現在そして恐らく将来も見ることができない異能のボクサーである。

生まれながらのエンターテイナーと云って良い。


1.先ず、登場が派手でゴンドラに乗って空中から降りてきたり、花火を盛大に打ち

上げたり、空飛ぶ絨毯にのって登場したりして観客を楽しませる。

リング入りはトップロープを握って前転でリングに降り立ち、試合のあとはバック転

を行うなどやりすぎる程サービスをする。


2.ボクシングの鉄則は相手のきめ手のパンチに合わせてグローブをしっかり顎に

つけて防衛体制をつくり、パンチを出すときは打ったあと素早く元の位置に直す。

打ち終わりの反撃を防ぐ為だ。

顎は常に引いて上目づかいに相手をみる。顎は最も危険な部分であるからだ。
しかしハメドはグローブは大方だらりと下に下げて、相手のパンチはステップとウィー

ビング・ダッキングだけで躱す。ブロックする事はない。顎は常に上げっぱなしにし

ており、パンチを振うときは顎をあげて打ちっぱなしでありおよそセオリー破りの

スタイルを貫いている。

ハメドの快進撃をみて多くの選手がこれを真似たが、誰一人成功した者はいない。

皆痛い目にあっているのだ。


3.それでも勝ち続けてなをKOの山を築くのは一発必倒のパンチ力があるからで、

しかも連打型でなく唯一発で倒す。左・右いずれでもストレート、フック、アッパー

どれをとっても脅威の威力を有しており、特に右アッパーの威力は凄まじいものがある。誰も恐ろしい為に先ず防御を考え、ガードを固めるが身体が委縮してノーガードで迫っ

てくる相手に気分的に圧倒されて、翻弄されてしまうのだ。

又ハメドの表情や仕草がまるで歌舞伎役者のように大見得を切り、自信満々の表情で

凄みをきかせたり、嘲笑したり、フェイントをかけたりして、パンチの威力を更に倍

にしていて、皆その脅しに呑まれて彼のペースにはめられるのだ。

しかも右、左どちらでも構えることができるので、まるで180°の拡がりを持ってい

るようである。ハメドは自称160㎝の身長と云うが、実のところは158㎝しかない。

身体が柔らかでしかもバネがあり、復元力もある為に時にダウンするもダメージを最

小限に留める事ができるのだ。

ハメドのニックネームは「プリンス」又は「悪魔王子」
世界戦は15戦であり、そのうち判定ではスリップとしたが事実は明白なダウンが3回、

ダウンと認定されたのが4回 計7回もダウンを喫している。

しかも全勝でボクシング界でこんな選手は私の知るかぎりでは見当たらない。

 

往年の名選手(その1)プロ、アマ通算 89戦 88勝1分    リカルド・ロペス の 軌跡と全勝の訳  2020/6/8

リカルド・ロペス 1966年7月25日メキシコ生れ
身長166㎝ リーチ165㎝
アマチュア戦跡40戦全勝
1985年プロデビュー
90年10月  大橋 秀行に5R KO勝してWBCストロー級後の(ミニマム級)タイトル獲得

91年5月

 1Ⅴ 平野 公夫 戦 8R TKO 7回までワンサイド
91年12月 

  2Ⅴ  李 敬渕 戦(韓国)22才 
         当日は会場が寒い等トラブルが続いて、本人の出来も悪かったが、12Rあわ

           や KOかと思われたがロペスのグローブのテープが2度剥がれてその間に李が

    立直り大差の判定となった。

92年3月

  3Ⅴ ドミンゴ・ルーカス戦 大差の判定勝ち
92年8月

     4Ⅴ  シンプラサート・キティカセム戦 同級7位 場所タイ
             5R 左フックのカウンターでキティカセム ダウン 5分近く起き上がれずKO
92年10月 

  5Ⅴ ロッキー・リン戦 2R KO
93年3月 

      6Ⅴ 呉光洙 9R 出血多く負傷KO勝ち 同位3位 呉はアマの世界戦で銀メダル

             を獲得しており有望視されプロ7戦目の挑戦であったが、プロの厳しさを味

             わう事となった。
同年7月 

     7Ⅴ サマン・ソーチャトロン戦 同位4位
            1R ロペスの右ストレートのカウンター決まってサマンは1度目のダウン
            2R 左アッパーからの左フックでサマン2度目のダウン。立上るところ左ス

           トレートでサマン3度目のダウンでTKO。サマンはそのあと1階級上げてライ

           トフライ級でチャンピオンとなっている。突進力がありパンチもあり、スタ

           ミナもある精力的な選手であった。
93年12月

  8Ⅴ  マニー・メルチョー戦 タイで試合は行われ11R TKO 

            メルチョーはIFBのチャンピオン

           この試合アメリカ ロペス初登場 メルチョーは同級6位 ロペスはこの試

           合慎重に闘い11R右ストレートのカウンター決まりKO勝ち

94年5月 

      9Ⅴ  ケルミン・ヴァルティア戦 (コロンビア) 同級1位 戦跡12勝全勝6KO 

             この試合は指名試合である。

             ラスベガスで行われ、ヴァルティアはサウスポーで防御も動きも良い選手

     である。2Rヴァルティアの右ストレートでロペスやゝ腰くだけたが持ち越す。

             5R後半からロペスは立直り始めペースを握って闘いヴァルティアは前半飛ば

            した為に後半失速。大差の判定でロペス勝利したが点差以上の苦戦であった。

            サウスポーとの対戦はこの試合までやゝ苦手としていた。
94年9月 

     10Ⅴ ヨドシン・センガーモロコット(タイ)会場ラスベガス

           1R 右クロスカウンターでダウン、更に左フックで2度目のダウン。

           1R 53秒でTKO。
94年11月 

     11Ⅴ ハビエル・バルデス戦 タフガイのメキシコ人 短身のバルデスは接近戦を

    狙うが前進するところ、ロペスに出鼻を叩かれて、これがことごとくカウン

    ターとなり、接近出来ないまゝ8R、コーナーで打たれ続けた為レフリーストッ

    プ TKOとなる。
94年12月 

      12Ⅴ ヤミル・カラバジョ戦 (コロンビア) 同級9位 会場メキシコ・モントレー

             立ち上がり右ストレート一発でKO 1分10秒。

             この試合のあとロペスは1階級上げてライト・フライ級で闘いたい旨公表し

             たが、想定されるマイケル・カルバハルやウンベルト・ゴンザレス等から対

             戦を断わられて対戦相手が見当たらずにいた。
95年4月 

  13Ⅴ アンディ・タバナス戦(フィリピン)同級3位 オッズは12:1

     1Rから持ち味の突進が出来ずに一方的な試合となり12Rついにレフリースト

     ップとなる。突貫小僧タバナスの良い所が発揮されなかった。
96年3月 

  14Ⅴ  アラ・ビアモア戦  フィリピン人 25才 ジョー小泉配下の選手でアマ戦跡

     50勝1敗 プロ戦跡31戦29勝26KO1敗1分 同級1位 サウスポー 

     1Rから身体を左右に振りながらアラ・ビアモアの左・右に回り左ジャブ、

     右ストレート、アッパーと多彩なパンチを振う。5Rあたりから攻撃に一段

     と力を入れ始め、前進してきたそれまでのビラモアは後退を始めて、ロペス

     のボディブローも集中的に受けて一方的展開となってきた。6R ロペス鼻血を

     出し7Rは右目切る。7Rアラビア・モア力をふりしぼって打って出る。

     8R ロペス短いフェイントのあと長い左アッパーでアラ・ビアモア仰向けに

     ダウン。そのまゝ起き上れずにKO。8R40秒であった。

96年6月 

  15Ⅴ キティチセイ・ブリーチャ 同級4位 元ムエタイの選手 3R 3連打のコン

     ビネーションの最後は左アッパーでKO。
96年9月 

     16Ⅴ モーガン・ニドウモ戦(南アフリカ)同級4位 ロペスは風邪で体調優れな

     いまゝの試合だが、5Rでモーガンの顔は腫れ上がる。

     6R一方的となって55秒レフリーストップTKO。
96年12月

  17Ⅴ 朴 明燮戦 同級5位 戦跡11勝10KO4敗 会場カリフォルニア・インディオ 

               1R 右ストレートで一度目のダウン、立上ったところで、左ストレートから

               の右アッパーでレフリーストップTKO。
97年3月 

      18Ⅴ  モンコル・チャーロン戦(タイ) 戦跡17勝5KO1敗 ラスベガスのヒルトン

              ホテル内を会場。ワンサイドで判定勝ち。

97年8月 

  19Ⅴ BWC、WBO統一戦 WBOチャンピオン アレックス・サンチェス 戦跡

              25戦25勝18KO 会場はマディソン・スクエアガーデン オッズは10:1
             1R サンチェスとは距離が違う為にサンチェスは距離を詰めようと前に出る

             が、そこを打たれる。2R ロペスの右ストレートでサンチェス ダウン。

             3R サンチェスは接近戦しか勝機はないとみて前に出る。途中ロペスを引き

             倒して、そのあとボディにパンチ。これでレフリーは減点1を告げる。

             ロペス終盤に上・下に集中打。5R 集中打でサンチェス ダウン。

             試合が一方的であった事もあってレフリーはストップを宣言。

            力の差がありすぎた。

98年3月 WBA・WBC 統一戦 ロセンド・アルバレス戦 

            7R ロペス負傷の為引き分け。

98年10月 

    20Ⅴ ロセンド・アルバレス戦 12R 判定勝ち。この時点で20度連続防衛を記録。

99年9月 WBC タイトル剥奪
99年10月 

    IBF ライトフライ級タイトルに挑戦。 

    ウィル・グリッグスピー戦 12R判定でタイトル獲得。
2000年12月 

  1Ⅴ  ラタナポン・ソーウォラビン 3R TKO。
2001年9月 

               ゾラニ・ペテロ戦 8R KO。
2002年11月 引退 


記録 ① プロ 戦跡49戦48勝35KO 1分 
     アマ 戦跡40戦全勝      
     プロ/アマ通算89戦88勝1分   
   ⓶ミニマム級最短KO 94年12月 ヤミル・カラバジョ戦 1R 70秒
         ③ミニマム級防衛 20回 
    ライトフライ級   2回   

ロペス全勝の理由
その1.ほとんどのボクサーは試合のあとは必ずスタッフ一同で打ち上げを行い、過酷

な減量から解放されて日常生活に戻し、次の試合まで減量を忘れて生活し、試合が決ま

ると徐々にリミットまで戻す作業に入るのである。ミニマム級でも5~7㎏の減量は普

通の事である。しかしロペスは試合のあとも打ち上げ等する事なくすぐホテルに引きあ

げて、試合のあとも体重制限を緩める事なく節制していた。


その2.「ボクシングは打たれない」を身上とし、コーナーを出る時にはガードを高々

と揚げて準備し防御をしっかりすることを常に自分に言い聞かせていた。


その3.接近戦を嫌がる。接近戦は頭がぶつかったり、思わぬパンチを受けたり体力の

消耗も多い事から極力これを避ける為に徹底して自分の距離をとる為に、左の長いリー

ドパンチを多彩に駆使、ジャブ、アッパー、フックを上下に打ち分け相手を内に入れ

ない。


その4.打つパンチは踏み込みの良さでより長く感じられ、すべてのパンチが身体のし

なりをきかせて打つ為に威力があり、しかも左ジャブはまるでストレートの様であり左

フック、左アッパーは短いものも長いものも一発必倒の威力を有している。


その5.打たれるのが嫌い。
攻撃の際に自分のパンチを出すとすぐその場~離れて相手の射程の外に位置を変える。

防御はフットワーク、身体を常に動かして自身を動く標的にし、危険な位置に自分を置

かない。いかなる時でも相手を冷静に観察し、当る所を見つけてはそこにパンチを送り

込み、決して無理押しはせず、充分判断したあと、仕上げに入る。1Rから12RまでKO出来るすきを狙う。


その6.試合のたび毎に自分の弱点を修正し改善を怠らない。試合毎に着実に技術を身

につけ、安定感を増していった。その試合振りは「精密機械」と謳われ、その姿はまる

で修行僧を思わせるものであった。ロペスのボクシングはまさに完成されたもので理想

的なボクサーと云えるのである。
ボクシング史上最高の選手の数少ない一人である。     

会場 中国 江西省 撫州市 撫州市体育館   2試合   WBA フェザー級タイトルマッチ Champ. シュー・ツァン vs 久保 隼 / WBA Lフライ級タイトルマッチ Champ.  カザルス・カニザレス vs 木村 翔   2019/6/3

会場 中国 江西省 撫州市 撫州市体育館          2019・06.03


 WBAフェザー級タイトルマッチ
チャンピオン シュー・ツァン(中国)25才 戦跡 18戦16勝2KO 2敗 

ニックネームはモンスター このニックネームはパンチ力のことではなく無尽蔵の

スタミナがある事を指している。


挑戦者 久保 隼(日本)29才 戦跡 14戦13勝9KO 1敗
1R~5Rまで 久保はボディブローを中心にシューのスタミナを奪って後半勝負に持ち込む作戦である。しかしシューの手数の多い多彩なパンチに、終始受け身となり、両者ともに175、176㎝の長身もあって、リーチの長い選手と闘ったことがない為か、ガードが低く、しかも甘いことから顔面にまともにパンチをもらい続けたのに対し、シューは高々とガードを固め顔面へのパンチはほとんどブロック、久保のガードの甘さをついてショートで鋭いパンチを空いたところに的確に決め、一貫して試合を有利に進めた。
シューはチャンスとみるやパンチに一段と力を込めて連打を繰り出し・・・・


6R 集中打でレフリーストップを呼び込んだ。

 

過去18戦2KOの戦跡とは思えない力強さを示した。防御技術、パンチの正確さ、スタミナ総ての面で久保と実力が違いすぎた。当然の結末である。

 

 同会場  WBA Lフライ級タイトルマッチ  チャンピオン カルロス・カニザレス

(ベネズエラ)26才  戦跡 22戦21勝17KO 1分


挑戦者 木村 翔(日本)30才 戦跡 22戦18勝11KO 2敗2分
フライ級で中国の連続五輪で金メダルをとってプロ転向後チャンピオンとなったゾウ・シンミンを破ってタイトルを獲得したが初防衛戦で敗れて、以来1年9ヶ月振りにLフライ級に1ランク下げての挑戦である。


1R~12R 木村はガードを固めて終始前進し、カニザレスは左・右に動いて木村の前進を左ジャブ、左右ストレート、フックを力一杯振って対抗。木村はウィービングや首を振って標的とならないように接近すべきであったが直線的に、しかもジャブを出しながら前進すべきところ、手を出さずに前に出る為にカニザレスの恰好の餌食となった。

カニザレス自らは頭の位置を変え、前後左右に軽やかにステップを踏んで木村の出鼻を叩き、時に強烈な左・右を思い切り振って木村を翻弄。木村のボディ打ちにやゝ苦しむも打たれたらその3倍も打ち返すファイトで木村を封じ切った。

力強く振るパンチとボディに受け続けたパンチにも拘わらず、終盤までスピードもパンチ力も落とすことなく闘い切った。


判定は119:109が2人、118:110が1人でカニザレスの完勝であった。


この2試合をみて日本の選手の弱点が良くみえる。

  ・漫然と練習をやっていないか、実践を想定して練習をしているか?

  ・ガードを固めていれば良いのか?

  ・練習時からウィービング、ダッキング、打ったら自分の位置を変える

            事を常に頭に入れているか?

  ・パンチを当てる為にどう組み立てを行うか?

いきなり狙っても進歩した現代のボクシングではほとんど当らない。

  ・試合途中で相手の出方に応じて作戦を変更できるか? 等また

  ・勝つ為にどの時点でどう勝負するか? 

を考えなければ、現代のボクシングの進歩に追いついていくことは出来ない。

たゞ漫然と練習しているとこの2試合のように不様な姿をファンに曝すことになる事を知るべきである。

 

会場 ニューヨーク バークレイズ・センター 3試合       ① WBOアジア・パシフィック ヘビー級王座決定戦                 ② ヘビー級10回戦 ③ WBA ヘビー級挑戦者決定戦     2020/3/16

① WBOアジアパシフィック ヘビー級王座決定戦


フランク・サンチェス(キュバー)27才 戦跡 15戦14勝11K 1無効試合 

ニックネームはキュ―バ・フラッシュ(キューバの閃光)

 

ジョーイ・ダウエィユ(米)29才 戦跡 31戦20勝11KO 7敗4分

アマチュア時の戦跡 68戦56勝12敗

 

サンチェスはキューバ特有のアマチュアで鍛えたボクシング技術を駆使して左ジャブ、右ストレートでダウエィユを内懐に入れる事なく、距離をとって終始試合をすすめ、ダウエィユが攻撃を仕掛けるとみると足を使ってアウトボクシングと、自分の思い通りの試合を行い判定勝ち。98:92が一人、100:90が二人で完勝。

 

ダウエィユは身体が柔らかくパンチを殺すテクニックは有しているが、打ち合って自分の持ち味が出るスタイルの為にアウトボクシングされて試合にならなかった。
しかしプロで客を喜ばせなければ人気も上がらず、良い相手とも戦えない。

ファイトマネーも稼げない事をサンチェスは知るべきであろう。

 

② ヘビー級10回戦


エフェ・アジャバ(ナイジェリア)25才  リオ五輪でベスト8 

戦跡 12戦全勝10KO  WBCヘビー級16位


ラズバン・コジャヌ(ルーマニア)32才 戦跡 23戦17勝6敗


1R アジャバ、左ジャブを突いて右ストレートをつなげるこれも正統派スタイル。


2R 1R押されたコジャヌは前に出てパンチを振るう。コジャヌはストレートは使わずほとんどが左右フックを振るう選手である。有効打はない。


3R,4R アジャバは左ジャブからの右ストレート、左右フックのあと、必ず左ボディブローを使う。


5R アジャバは自分が打ったあと距離を取ってコジャヌの出方を見て反撃を躱す。


6R アジャバは攻撃を強め上下を打ち分け、忘れずにボディブローをも交ぜる。


7R アジャバはストレート顔面に2発ガードが閉じたとみるや左・右左フックだ顔面側面を打ち、ついでボディに。


8R アジャバは手数を増やし軽いながらも的中率良く、コジャヌは打たれすぎて遂に

ダウン。


9R コジャヌはすっかり弱って集中打でダウンして9Rコジャヌ ロープ際で打たれダウン。レフリーストップ。

 

アジャバは未だアマのスタイルを抜け出せておらず、一発必倒のパンチが無いために相手を恐れさせる事が出来ない。技術ではすでに充分であるのに、これではもっと突進力やパンチ力ある相手に通じないと思われる。

 

③ WBA ヘビー級挑戦者決定戦


アダム・コウナッキ (ポーランド)30才 戦跡 20戦全勝15KO  
WBC 6位、IBF 3位、WBO 4位、 ニックネームはベビーフェイス


ロバート・ヘレニウス(フィンランド)36才 戦跡 32戦29勝18KO 3敗 

ニックネームはノルディック・ナイトメア(北欧の悪夢)

 

1R コウナッキ 1Rから倒しにかかり前に出る。ヘレニウス後退。


2R ヘレニウスの右ストレート威力あり。しかしコウナッキ倒れても平然として前進。

ロープにつめて集中打をみせる。攻勢はコウナッキだが、パンチの有効打はヘレニウス。


3R コウナッキの攻勢続くが時折放つヘレニウスのストレートが総てカウンターとなっている。


4R ヘレニウスのワンツーが攻めるコウナッキの顔面にヒット。コウナッキ ダウンしたがレフリーはこれをスリップと判定、立ち上がったところにヘレニウスの右ストレートでコウナッキ立ち上がったがコウナッキ戦う意欲なくヘレニウスのここぞとばかり集中打でレフリーストップとなる番狂わせとなった。


しかし見たところ前評判の高かったコウナッキの防御はなっておらず、左右フックも腰が入っていない手打ちで威力なく、この結果は当然であった。
防御技術が拙い上に威力がないパンチを振るって前進すれば、さして強くないストレートも悉くカウンターとなる結果をみる典型である。


ヘビー級のフューリー、ワイルダー、ジョシュア、ルイス、オルティスの後に続くボクサーはいずれも差が大きすぎる感が否めない。こんなコウナッキが上位にランクされているヘビー級は層の薄さを露呈している。

 

会場 テネシー州ナッシュビル・ブリジストン・アリーナー    IBF Sミドル級タイトル・マッチ  チャンピオン ケイレプ・プラント vs ビンセント・フェイゲンブッツ     2020/3/9

チャンピオン ケイレプ・プラント(米)27才

戦跡 19戦全勝11KO ニックネーム「スウィートハンド」
アンドレ・ディレルを一方的に破ってタイトルを握ったベネズエラの強豪で、評価の高かったホセ・ウスカデギを大番狂わせで破ってタイトル奪取。

今回が2度目の防衛戦である。

 

挑戦者 ビンセントフェイゲンブッツ(ドイツ)24才 

戦跡 33戦31勝28KO 2敗  WBA、IBF 同級3位

 

1R プラントは半身の構えで左手を下げて得意の左ジャブを上・下に打ち分け左ジャブからの右フックをボディに2発。ヘイゲンブッツは圧力をかけて前進するが手は出ず。


2R プラント左ジャブ、フック、アッパーと自在なパンチをスピード豊かに、特に左ジャブからの右アッパー更に左フックとリズムにのる。


3R ヘイゲンブッツはガッチリとガードを固めた覗みスタイルだがプラントは左ジャブ、左・右フックで顔面側部を打ち、ガードをあけて左アッパーを中央から突きあげてこのガードを崩す。中盤左ジャブのカウンターでヘイゲンブッツよろめく。


4R~8R すっかり余裕を持ったプラントは自在なボクシングで相手を見下し、途中や休みながら自分の思い通りの試合をすすめポイントでも1Rも落とすことなく経過。


9R プラント、相手の動きが鈍ったのをみて倒しにかかり集中打。ヘイゲンブッツ鼻血を出しガードはしているが相手をみておらず一方的に打たれる。


10R プラント攻撃力を一段とあげて集中打。ヘイゲンブッツは反撃できずに攻撃を受けつづけた為に2分23秒レフリーストップとなる。


これだけ一方的に打たれて、しかも自分のパンチは全く当たらなくてはやむを得ない結果で、実力が違いすぎた。
これでプラントの評価は大きくあがる事であろうが、この試合の前にカネロ・アルバレス(WBA王者)との対戦の話があったが「自分には未だカネロと戦う実力が無い」と断っている通りカネロのパンチのパワー左でも右でも一発KOの威力を秘めており、ボクシングもうまくスタミナもあるのを考えると、いまだ実力に差を感じるのは否めない。

WBAスーパーチャンピオンのカラム・スミスも長身で懐が深く長い強力なパンチを有する難敵である。他にべナビデンスやビリージョー、サンダースと他団体のチャンピオンも居てこの勝利で喜んではいられないはずである。
しかしプラントの左ジャブ、左フック、ストレートについでの左アッパー、左ボディブローの巧みさは傑出しており、流石にチャンピオンと唸らせるが、あれだけ的中率が高いにもかかわらずダウンも奪えない事から見ても、非力であるのは否定出来ない。特に右がいかにも弱い、KO率が低い事もうなづけるのだ。

会場 ラスべガス MGMグランド・ガーデン・アリーナ   WBC ヘビー級タイトル・マッチ   チャンピオン デォンティ・ワイルダー vs タイソン・フューリー                                             2020/2/23

製本用 修正済み

会場 米国 ラスベガス MGMグランド・ガーデン・アリーナ

 

チャンピオン ディオンティ・ワイルダー(米)34才 戦跡 43戦42勝41KO 1分

ニックネームはブロンズ・ボマー

11回目の防衛戦であり、フューリーとは1戦目引分けで1年2ヶ月振りの再戦となる。

尚3戦目も予定されておりファイトマネーの最低保証は28億円と定まっている。

 

挑戦者 タイソン・フューリー(英)31才 戦跡 30戦29勝20KO 1分 

前回より8㎏ウェィトをあげて試合を迎えた。ニックネームは「ジプシー・キング」

試合前にフェリーは「12Rワイルダーの周りをぐるぐる回るつもりはない。2RにKOしてやる」と語っている。

 

試合前のアメリカのオッズは1:1。 チケット収入は19億円、ゴング前に解説のジョー小泉は「判定でフューリー、KOでワイルダーが大方の予想であるが違う可能性もあるような気がする」と不気味な予言を述べている。

 

さて1R 始まる。フューリーは前回と違ってワイルダーの右ストレートの脅威があるにも拘わらず、左手を下げてワイルダーの射程距離に踏み込み、左のフリッカージャブを多く放って前進、ワイルダーに圧力をかけジャブが予想以上に強力でワイルダー後退。

右ストレートを2発放ったが後退しながらの為に威力が半減以下となる。

フューリー左・右フックでワイルダーを追う。

 

2R フューリーのフリッカージャブが良くヒットしワイルダーの上体が起きている為に武器の右ストレートにウェイトが乗らずにフューリーに押され右ストレートを当てられ、ペースはフューリーに握られる。

 

3R フューリーの左ジャブからの右アッパーでワイルダーの体勢が崩れるところフューリーの左ジャブからの右フックが側頭部にヒットしてワイルダープロ入り初のダウン。

立ち上がったが足元ぐらつく。右耳から出血する。

 

4R フューリー、クリンチからの右アッパーの後もつれてワイルダー スリップダウン。

フューリーの右フック テンプルにヒット。ワイルダーは何とか時間を稼いで回復を図るがフューリーはこれを許さない。

 

5R フューリーのワンツーを受けてワイルダーふらつく。両者の距離が一層接近し、フューリーの左ボディストレートでワイルダー2度目のダウン。ワイルダーから戦闘能力が著しく失われて後退一方、足元が定まらず、レフリーはワイルダーの顔を見続けてストップの時点を窺う。

 

6R フューリーは倒しにかかり、ロープに詰めてパンチを振るうが、焦りもあってかやゝ大振りになり、ワイルダーはこれを辛くもかわしつづける。ロープ際でお互いにアッパーを振るうがワイルダーにはるかにダメージが大きく気息奄奄の状態。

 

7R フューリーの左フックでワイルダーの顎が完全にあがり、軽いジャブを受けても大きくぐらつく。コーナーに詰められての右ストレート顔面に受けたところでレフリーはストップを宣言。コーナーからもタオルが投げられた。7R1分39秒の事であった。 

長くヨーロッパに渡っていたヘビー級をアメリカに取り戻したが、タイトルは再びヨーロッパに渡ったのである。

 

試合後ワイルダーはインタビューに応えて「言い訳はしない。ボクシングにはこんなことはある。今日は強い者が勝った。コーナーが続けさせてくれなかった。もっと強くなって戻ってくる。イベントを支えてくれた皆様に感謝したい」と語った。

 

フューリーは「キリストに感謝する。ワイルダーはハートの強さを示した真の戦士だ。

トップランク ボブアラムそしてイギリスの人達有難う」と語り、歌を唄おうかなと歌を一曲唄い切る。「音楽は僕の心に成功を与えたんだ」と。

 

試合前の大方の予想を覆し、フューリーは前回よりも8㎏も増量したことは疑問視する見方が多い中ワイルダーの必殺の右ストレートの危険にも拘わらず左のガードを下げて、左ジャブを最大の武器にして、その威力を上げて、ワイルダーを下げさせる事に成功、上体を起こさせて、後退させるさ事でワイルダーの特に右足にかゝる体重は踵に乗って、右ストレートは右足を蹴って打ち出されるが、これができずその為に手打ちにならざるを得なかった。

ワイルダーの右ストレートの威力を大きく減殺させたのである。

誰もがフットワークを使ってチャンスみてパンチを当てゝポイントを取るとみられたフューリーの作戦に真っ向から反して、増量した体力とジャブをストレートの威力をもって

ワイルダーの右ストレートを封殺した戦略は見事で、フューリーのインテリジェンスの高さに驚愕するしかない。また試合会場に登場するスタイルは観客の度肝を抜くもので、フューリーは王冠を被り、マントを羽織って王座に座り輿に乗って現われた。

ワイルダーも黒い騎士スタイルで仮面に電飾を飾って登場したが、この戦いは明らかにフューリーに軍配が上がったのである。

両者の予定される3戦目は果たしてダイレクト・リマッチが行われるかは疑問となった。

ワイルダーのダメージの大きさがうかがわれるからだ。それ程にワイルダーの負担は重かったようにみえる。 

 写真 右)輿に乗って登場するフューリー

上) 輿の上のフューリーアップ 

左下)黒い騎士姿で登場のワイルダー

下)ワイルダー アップ

 



会場 アトランタ ステートファーム・アリーナ      ①WBA Lヘビー級タイトルマッチ ②WBAライト級王座決定戦                       2020/2/3

会場 アトランタ ステート」ファーム・アリーナ  2020/2/3

①WBA Lヘビー級タイトルマッチ 

チャンピオン ジャン・パスカル (カナダ)37才
戦跡42戦34勝20KO 6敗1分1無効試合 マーカス・ブラウンを敗って8年振りに王座帰り咲く。
挑戦者バドウ・ジャック(スウェーデン)36才

戦跡27戦22勝13KO 2敗3分 元2階級制覇王者


4R ジャック、 12Rパスカルともにダウンし一進一退の攻防の末判定にもつれ

114:112、114:112、112:114の2:1でパスカル防衛に成功したが、この判定には大いに疑問が残った。

いずれにしてもすでに盛りを越した両者の戦いは迫力に乏しい凡戦であった。
 
② WBAライト級王座決定戦
ジャーボンティ・デービス(米)25才
戦跡 22戦全勝21KO  ニックネームはタンク。メイウェザーの秘蔵っ子である。
Sフェザー級のタイトル返上。


ユリオルキス・ガンボア(キューバ)38才 

ニックネームはグアンタナモのサイクロン。フェザー級、Sフェザー級、ライト級の

元3階級制覇チャンピオンである。


1Rから12R までデービスの一方的試合となり、3度のダウンを奪ってレフリーストップ、TKOでデービスWBAライト級のタイトルを獲得した。

試合は12R総てで優勢完勝であった。


この試合は明らかなミスマッチでパンチカ、スピードで段違いの差があり、2014年7月ガンボアはテレンス・クロフォードに全勝同士で対決しKO敗けを喫しており、この頃がピークでその後は下り坂であったのである。

 

会場 ニューヨーク マジソン・スクエアガーデン                ①  IBF ライト級タイトルマッチ ② WBO ウェルター級タイトルマッチ    2019/12/15

製本用 修正済み

会場 ニューヨーク マジソン・スクエアガーデン 2019/12/15

 

IBF ライト級タイトルマッチ 

 チャンピオン リチャード・コミー(ガーナ)32才 戦跡 31戦29勝26KO 2敗


挑戦者 ティフォモ・ロペス(米)22才 戦跡 14戦全勝11KO

 

1R  体格的に優るコミーの左ジャブと右ストレートは共に長く早い。

リーチの短いロペスの入り込むところ、コミーの右カウンターのストレート、距離は合っている。ロペスのパンチは遠くてコミーに届かない。


2R  1R様子をみていたコミーは前に出て得意の右ストレートを狙う。ロペスは待っていたかコミーの右ストレートに対して首を左に傾けて、同時の右ストレートのカウンター

一発にコミー ダウン。

ダメージは大きくやっと立ち上がったところにロープに詰めて乱打。

レフリーが割って入りTKOを宣した。


2R 1分13秒、若き新チャンピオンの誕生となった。2020年は愈々ロマチェンコとの統一戦が現実のものとなってきた。

 

② WBO ウエルター級タイトルマッチ


チャンピオン テレンス・クロフォード(米)32才 戦跡 36戦全勝26KO  3階級制覇しており、Sライト級では4団体統一チャンピオンでもあった。パウンド・フォーパウンドの上位に常に位置している。ボクシング界のスーパースターである。


挑戦者 エギディウス・カバラウスカス(リトアニア)31才 

戦跡 22戦21勝17KO 1分 プロ・アマ通じてダウン経験ないタフさを誇る。同級1位。


1R  最近の試合のほとんどが左構えで挑むクロフォードはこの試合も左構えで開始。

188㎝の長いリーチを有効に使っての長い右ジャブで距離をとる。カバラウスカスはガードを固め、頭を左右に振って、パンチは出さずに様子をみる。


2R  カバロウスカスの左ジャブ、始めての右を出しての右フック浅いが当る。


3R  カバロウスカスの右フック一発の直後もみ合いでクロフォード膝をつく。

スリップと判断されるが、レフリーによってはダウンと判定されたかもしれない。

4R  クロフォード、主導権を狙って前進、右ジャブを多用。カバロウスカスは右フックのカウンターを狙うタイミングは合っているようだ。クロフォードの右フックのボディ、左フックのカウンター当る。


5R  クロフォードのプレッシャー少しずゝ強めてカバロウスカスの右フックには左コブシを顎につけて対応。エンジンが掛かってきた。

力とスピードにカバロウスカス後手に回って押されてくる。


6R  クロフォードは相手のパンチをさほど危険を感じなくなったのか接近戦を挑み、試合は一方的な様相を呈してきた。


7R  クロフォードはすっかり余裕を持って動きも軽やかになり、自在に動き始めるやパンチに力を込めて打ち出すや、右フックでカバロウスカスついにダウン。


8R  クロフォード右構えに変え、倒しにかゝり自在にパンチを振ってカバロウスカスを追い込みカバロウスカスはダウン寸前。


9R  クロフォード、右アッパーでダウンを奪うや立ち上がったところに右フックでダウン。レフリーここで試合を止め、9R 44秒 TKOで3度目の防衛戦を飾った。

 

会場 ペンシルバニア州フィラディルフィア リアコーラス・センター WBC・IBF Lヘビー級王座決定戦 2019/11/4

会場 ペンシルベニア州フィラデルフィア リアコーラス・センター 2019/11/4

 

WBC・IBF Lヘビー級王座統一戦
WBCチャンピオン オレキサンダー・クボジーク(ウクライナ)32才 

戦跡 17戦全勝14KO  ロンドン五輪 Lヘビー級銅メダル
IBFチャンピオン アルツール・ペテルビエフ(ロシア)34才 戦跡 14戦全勝全KO


1R ペテルビエフ ガードをしっかり固めて圧力をかけて前進、クボジークは足を使って動き、左ジャブで距離をとって立ち上がる。ペテルビエフはほとんど手を出さず。


2R  ペテルビエフ 1R 同様圧力をかけて右クロス有効。パンチのあと直ぐにガードに戻し防御体勢をつくる。


3R 前に出てのペテルビエフの左・右フックはヒットはしないが力強く迫力はある。

クボジークは退きながら右ストレート当る。


4R クボジークは試合の主導権を握るべく攻勢をかけるが、相手の強打を警戒して腰が入っておらず、ペテルビエフに恐怖感を与える事が出来ない。


5R クボジークはペテルビエフのパンチを極度に警戒し心身を擦り減らしているようだ。一方のペテルビエフは相手のパンチにさほど心配していない戦い方、省エネスタイルで体力を温存している。このRあたりから左右ボディ打ちが終盤に向けて有効とみて集中してきている。


6R ペテルビエフの右ボディストレート2発有効。クボジークは懸命に手数を多く対応しているが、次第に押されてくる。ロープ際に追い詰められてクボジーク、ダウン・スリップと認定されて辛うじてダウンは免れる。


7R ペテルビエフの左アッパー、右フックと共にボディーに的中し、クボジーク苦しくなる。


8R クボジークも右ストレート2発で対抗するが、右ストレートのボディブローと右フックの相打ちで劣勢。


9R ペテルビエフは右ストレートのボディブロー2発、左フックのボディブローを始めとして一気に攻勢を強め倒しにかかり、後半は ダウン寸前にクボジーク追い込まれる。


10R クボジークは開始早々2発の右ストレートのカウンター狙いをみせるが、ペテルビエフの攻撃の前についにダウン。左・右フックで2度目のダウン、右フックで3度目のダウンでペテルビエフTKOでクボジークを下す。

 

9Rまでの採点は87:84、86:85と2人がクボジーク。87:83でペテルビエフが1人であった。
クボジークは相手の強打に軽打でパンチを当てゝ各ラウンドを取る作戦であったが、相手の圧力に次第に疲労を深めていった。ペテルビエフは相手の足を止め、スタミナを奪って後半勝負に持ち込んでいく作戦をとり、相手に圧力をかけて自分は適当に休みながらの省エネボクシングで体力を温存し、9R勝負にでて見事に倒し切った。

勝ち方を知った戦い方は知能的でもあった。これで全階級のチャンピオンを通じて唯一の全勝全KOを守った。
クボジークはペテルビエフの前進を止める為にもっと左ジャブ、右ストレートを早く強く繰り出す必要があった。従来の戦い方で成功してきたが今回の相手はこのパンチ力とスピードでは止めることが出来なかった。しかし王者同士の戦いはお互いにしっかり作戦を立てて計画に従って実行されており仲々味わい深く、見るべきところが多い試合であった。

 

会場 さいたまスーパーアリーナ ワールド・ボクシンズ・スーパーシリーズ 2019/11/07

製本用 修正済み

会場 さいたまスーパーアリーナ 2019/11/07  

ワールド・ボクシンズ・スーパーシリーズ

※その階級で誰が一番強いかを決めるトーナメント

 

井上尚弥(日本)26才

戦跡18戦全勝16KO ニックネームはモンスター

3階級制覇チャンピオン 準々決勝は1R、準決勝は2RでKO勝ちしている。

 

ノニト・ドネア (フィリピン) 36才

戦跡45戦40勝26KO5敗 ニックネームはフィリピーノ・フラッシュ

5階級制覇チャンピオン

 

8年程前にWBC・WBOチャンピオンとの統一戦でフェルナンド・モンティエルを2R左フック一発でKOに下し倒れたモンティエルを2R左フック一発でKOに下し倒れたモンティエルが両・手足をばたつかせてもがいた姿が今でも鮮明に脳裡に焼き付いてる。

この一戦で、ドネアの左フックは世界にその名を轟かせた。しかし2014年10月フェザー級の頂上決戦で豪腕ニコラス・ウォータースと対戦6R KOと完膚なきまでに惨敗を喫し、ドネア時代も終焉かと思われたが、クラスをバンタム級に引き下げて復活。

戦前の不利との予想を覆して、モンスター井上と互角に渡り合った。

9Rにあわや井上をKO寸前に追い込んだのだから。

 

さて、1R井上の左ジャブのボディブローで試合は始まった。ドネアは圧力をかけて前に出る。中盤両者激しく打ち合う。左フック不十分ながら両者相打ち。

スピード差で井上やや優勢。体格はドネアが3kg程は大きいようだ。

2R 井上の左フック2発でドネアたじろぐ。

終盤ドネアの左フックで井上右目上瞼切る。かなりの深傷のようだ。

3R 井上、右拳で石顔面をガッチリガードしてドネアの左フックに備える。ドネアは2Rの余勢を駆って攻めるが、井上、左ジャブを出しながら足を使ってアウトボクシングする。

4R 井上、ガードを固めて左リードジャブを間断な出して距離をとる。ドネアは井上のパンチに左フックを合せる作戦のようだ。

5R ドネアの前に出るところに井上のパンチが的確にヒット。右ストレート・左フックでドネアぐらつく。

6R 両者ともにこのラウンド、一休みか、井上後半ポイント獲得を狙って攻勢をかける。最後の左フックで優勢をとったか。

7R 相変わらずドネア前進。井上の右ストレート、左フックのボディブロー決まる。

8R ドネアは何れが優勢か判断できないこの試合の主導権を明確にとるべく攻勢を強め、右ストレート等で追い上げる。

9R ドネアの右ストレート強烈で井上腰がくだけかかるが辛うじてクリンチに逃れる。ドネアは当然井上が反撃に出るとみて、それに合わせての左フックのカウンターを狙ってか追撃の手を弛めるうちに井上立ち直る。

10R 井上、このラウンドからが勝負とみて猛然と攻撃。右フック2発を始めとしてドネアに打ち勝つ。

11R ドネアの打ってくるところに左フックのボディブローがカウンターとなってこれまでボディーを打たれて疲労してきたドネアはついにダウン。辛うじて立ち上ったところに井上追撃するが、ドネアは弱ったうちにも必殺の左フックの切れ味は依然として健在。その威力は衰えていない。

12R ドネアは最後の勝負をかけてカウンター狙いに徹したが、井上かさにかっての攻めは自重し、攻勢は維持したまま終了。

判定は116:111、117:109、114:113で軍配は井上に挙った。

ドネアは全盛期をすぎたとは云え、プレッシャーのかけ方、左フックの切れ味、相手にプレッシャーをかけながら自分は適当に休む等試合運びのうまさ、スピード・スタミナも十分計算して終盤におとすことなく、良く準備してきた。

さすが、レジェンドと云うべき試合であった。

一方井上は右目上に深い傷を負うハンデを抱えながら、冷静に戦況を判断し、この試合に勝利する最善の方法を選択する能力を発揮。危険を犯す事を避けながら、ポイントも計算。終盤に至るもスピードもパンチ力も落とす事なく、チャンスとみると必殺の左フックのボディブローを放つなど勝負師らしさを示した。

打たれ強さも証明。総合的な強さを改めて世界に示した。この試合で世界的人気も一段と上る事であろう。

会場 ミネソタ州ミネア・ポリス アーモーリー                        ①ヘビー級12回戦、② NABO北米ヘビー級王座決定戦     ③WBA Sウエルター級王座決定戦 2019/10/21

①  ヘビー級12回戦 

ジョー・ジョイス(英国)33才 戦跡 9戦全勝全KO リオ五輪銀メダリスト WBCヘビー級14位 ニックネームはジャガーノート(圧倒的破壊力)
対戦者 ブライアント・ジェニングス(米)34才
戦跡 27戦24勝14KO 3敗 ニックネームはバイバイ 世界戦2試合で敗れている。ウラジミール・クリチコとルイス・オルティス。


試合は12R判定118:109、117:110、115:112でジョイスの勝利であった。

体力と手数の多さで優位に立ったが有効打はほとんどなく、有効打はジェニングスの方が多かったが如何せん手数が少なすぎた事とロープに詰まる事も多く、見た目が著しく悪かったことが災いしたのは明かである。

ジョイスは輝かしい経歴でイギリスのホープではあるが、スピードもパンチ力も無く、体格と手数の多さで押し切って勝ってきたが、今後強豪と対する事を考えると将来は極めて厳しいの現実であろう。

 

②  NABO北米ヘビー級王座決定戦
フランク・サンチェス(キューバ)27才 戦跡 13戦12勝10KO 1無効試合
対戦者ビクトル・ビスパル(プエルトリコ)39才 戦跡 26戦23勝17KO 3敗 

体重125㎏両者の体重差は25㎏


1R サンチェスの左ジャブは早く長く鋭い。右ストレート、左右フックは力感溢れる力強さでスピードも満点。ビスバルはそのスピードに対応出来ず。2R からは相手のパンチに合わせてのカウンター狙い一本に絞って対抗するが不首尾に終わり、為す術なく4R に至って一方的に打たれ  4R終了時コーナーに戻る際に足がもつれてよろめき、このR 終了でギブ・アップ、KOとなる。

 

サンチェスの動きパンチの速さはまるで中量級で、今後大いに期待できる逸材とみた。

 

③  WBA Sウェルター級王座決定戦
エリスランディ・ララ  キューバ生まれのアメリカ人36才 戦跡 31戦25勝14KO 3敗3分 サウスポー ニックネームはアメリカン・ドリーム。14年7月ミドル級カネロ・アルバレスと戦って1:2の僅差の判定負け。しかし中盤以降アルバレスを子ども扱いにして翻弄、そのテクニックの冴えを存分に発揮して明らかに優勢で疑問の残る判定であった。
その後Sウエルター級の王者となり7度防衛したが8度目の防衛でジャレット・ハード相手に優勢に試合を進めていたが12R不覚のダウンを喫し1:2で判定負け。その2の1つは1ポイント差であった。


対戦者  ラモン・アルバレス(メキシコ)33才 戦跡 39戦28勝16KO 7敗3分1無効試合
アルバレスは男7人、女1人の8人兄妹であり、その内リコベルト、リカルド、ラモン、カネロの4人がプロボクサーである。
計量日の体重は2㎏オーバーして、もしこの試合に勝ってもタイトルはとれない。しかも試合当日の体重差は3.6㎏であった。


1R  ラモンはこの事態に気落ちしてか精彩を欠いて、スピードも切れもない。

ララは伸びのある右ジャブからの左ストレートが的確で 2R 右ジャブでラモンの顔をあげての左ストレート3発でラモンをロープダウンに追い込んみ、試合再開でロープに詰めての連打でレフリーストップを呼び込んだ。

 

流れるような理詰めのテクニックを見せてチャンピオンに帰り咲く。
全階級を通じて屈指のテクニシャンであり、その技術の素晴らしさはまさに惚れ惚れする選手である。

 

会場 ロンドンD2アリーナ 三団体統一ライト級タイトルマッチ 2019/09/01

会場 ロンドンⅮ2アリーナ 三団体統一タイト級タイトルマッチ 2019年9月1日

WBA・WBO チャンピオン ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)

オリンピック2大会 連続ライト級金メダリスト

戦跡 14戦13勝10KO1敗 ニックネームはハイテク

挑戦者 ルーク・キャンベル イギリス

戦跡22戦20勝16KO2敗 ロンドンオリンピックフェザー級金メダリスト

この試合はWBC王座決定戦(ミゲール・ガルシアの王座返上による)も兼ねて勝者は3団体王者となる。

お互いにサウスポー、オッズは12:1でロマチェンコ

 

1R 身長で5cmリーチで14cm優れ、キャンベルはこの特長を生かして、右ジャブを盛んに繰り出し左はしっかり顎に付けてロマチェンコの右フックに備える。

ロマチェンコはほとんど手を出さずに相手の出方をみるが、距離の長さは感じているようだ。

 

2R ロマチェンコの動きが始まり距離はやや詰まってきたが、未だロマチェンコの距離ではない。

 

キャンベルはロマチェンコの入ってくるところに左・右のボディアッパーで対抗。

 

3R ロマチェンコの右ジャブは鋭く、当り始め、キャンベルの顎があげられ、やや上体が起され始める。

 

4R キャンベルの右・左のボディアッパー2発ヒット

ロマチェンコの左ボディブロー一発は強烈で、キャンベルたじろぐ。

 

5R キャンベル、ロマチェンコに入り込ませない為に右ジャブを多用するが、ロマチェンコの左フック顔面にヒット。

ついでの左フックのカウンター顔面に直撃。更に連打でキャンベルダウン寸前に追い込まれゴングで辛うじて救われる。

 

6R キャンベル、5Rの盤回を図るべく前に出る。

これをみたロマチェンコは相手をみて巧みに躱し、中盤以降に攻撃を強めキャベル、ロープに詰る状態が多くなる。

 

7R キャンベルの左アッパーがカウンターとなり、ロマチェンコ怯む。Rの後半、ロマチェンコ猛攻に転じ、試合は一方的な様相を呈してくる。

 

8R ロマチェンコのスピードは次第に上ってきて独壇場となってきた。が、一方的にならないのはキャンベルが右・左のアッパーで対抗してくる為。

 

9R ロマチェンコはこのRやや休む

 

10R ロマチェンコ、右ジャブを上・下に打ち分けてキャンベルの上体を起こす。

 

11R チャンピオンシップラウンド

ロマチェンコは倒しにかかり、猛然と打って出る。

左フック顔面にヒットぐらつくところ、上・下に雨あられの連打を浴びせてキャンベルついにダウン。終わったかにみえたが、キャンベル立ち上る。

 

12R ロマチェンコ中盤最後のKO狙いで、攻撃をかけるがキャンベル辛うじて凌いで終了

判定は118:109が1人、119:108が2人でロマチェンコの圧勝であった。

 

ロマチェンコの凄さは11Rになってもこの攻撃力を発揮出来る事と、後半になるほどスピードパンチ力を上げる事が出来る事を改めて示した。

判定まで持ち込んだのはキャンベルの斗い方にあり、右ジャブを多発して距離を保った事を入り込んで来た時に恐れずに右・左のアッパーのボディブローを打ち込んだ事にある。特に中盤までロマチェンコはパンチに力を入れる事が少い為に打たれるのを覚悟してアッパーを振ってダメージを与えようとした作戦は見事であった。又何よりもオリンピック金メダリストプライドにかけて不様な試合は出来ないとのキャンベルの気持ちが大きかったのではと思われる。

会場テキサス州ヒューストンNRGアリーナ WBC Sウェルター級挑戦者決定戦 2019/08/26

とは云っても、決定戦の準決勝で決定まであと1試合が必要。

 

エリクソン・ルビン アメリカ 23才

戦跡21戦20勝16KO 1敗 同級4位

ニックネームはハンマー 2年前に、当時チャンピオンのジャーメル・チャーロに挑戦したが、初回右アッパーを受けてKOに敗れている。

当時の予想ではややルビン有利と出ていたが、再挑戦を目指す。

対戦者ザカリア・アトー フランス 37才 同12位

戦跡37戦29勝7KO6敗2分

ルビンは、早い右ジャブできついプレッシャーをかける。

右手を下げたデトロイト・スタイル

 

3Rまで、攻撃は厳しくアトーは防戦一方

 

4R ルビンはアトーをロープに詰めて連打でダウン。コーナーからタオルが投げられてKOにアトーを下す。ルビンはここらで足踏みしている訳にはいかない。チャンピオンになる素材だからだ。ただ直線的な攻撃のみに疑問は残る。

 

同会場 WBC ミドル級タイトルマッチ

チャンピオン ジャーマル・チャーロ アメリカ 29才

戦跡28戦全勝21KO ニックネームはヒットマン

往年の名選手トーマス・ハーンズが使っていたものだ。

 

挑戦者ブランドン・アダムス アメリカ 29才

戦跡23勝21勝13KO2敗 ニックネームはキャノン(大砲)

 

1R アダムスは小柄で身体も柔らかく、防衛技術に秀れており、チャーロのパンチが全く当らない。

 

2R以降 中盤まで、この状態は続き、チャーロのパンチはまともに当る事がなく、アダムスは距離を置いて飛び込む時は素早く接近して、チャーロの内懐に入り込む。自分の考えた作戦通りの試合振りである。

後半に入るとアダムスのスピードはやや落ちてきてチャーロのパンチが不十分ながらガードの上に当たりだし、主導権を握る。そのまま12Rまで推移して終了。後半はチャーロ・アダムスが出来るところに右ストレートのカウンターを狙い、入り込むところに右アッパーを突き上げる方針に変更した。

 

判定は119:109が1人、120:108が2人でチャーロの完勝であった。チャーロは早くうまく、かつ小柄な相手にパンチを強振しても当らないことを自覚して懐に入り込ませないようにうまく対応して斗った。

 

派手なKOを狙うことが墓穴を招くことを警戒し、勝つ事に徹したのは賢い選択であったと思われる。依然としてS・ウェルター・ミドルクラスの台風の目である事は変らない。

会場 米国 カリフォルニア州ラメキュラ・ペチャンプ・リゾート&カジノ

                                                                                       2019/8/19 

IBFライト級タイトルマッチ

チャンピオン リチャード・コミー (ガーナ) 32才

戦跡30戦28勝25KO2敗

初防衛戦

 

挑戦者レイムンド・ベルトラン  (メキシコ) 38才

戦跡46戦36勝22KO8敗1分1無効試合

元WBOライト級チャンピオン 4度目の挑戦でたいとるを獲得した経験を有する歴戦の雄である。

 

1R 右ストレートでベルトランダウン。立ち上がったところにロープに詰めて乱打でレフリーはロープダウンを宣する。

 

2R~4R ベルトラン立ち直って互角の斗い。

 

しかし、5R、体力で押されて3度目のダウン

 

ベルトラン、左目上切る。6~7R、一進一退。

 

8R コミーの左フック一発で4度目のダウン

これをみて、レフリーストップを宣しコミーは初防衛線に勝利。

ベルトランは未だ身体が暖まっていないときにいきなり先制攻撃を受けての2回のダウンによるダメージが大きく、後半に盛り返す。

 

いつもの斗いが出来なかったコミーはこのクラスでロマチェンコの対抗馬と目されているが、確かにフィジカルが強く、パンチの強さもスタミナもあるが、パンチがやや大振りで的中率が悪く、スピードに欠けている為にロマチェンコに勝つのは難しいと考えるのが妥当なところだ。

むしろ若手のテモフィオ・ロペスの方にチャンスがあるやも知れない。若くして完成された技術とスピードを有しているからだ。

 

        **********************

 

会場 米国 ニュージャージー州ニューアーク プルテンシャル・センター

NABO北米フェザー級タイトルマッチ 2019/08/05

 

シャクール・スティーブンソン WBA・WBOフェザー級1位

戦跡11戦全勝6KO 16年リオ五輪銀メダリスト

ニックネームはフィアレス(怖いもの知らず)

アルベルト・ゲバラ相手に1Rから押しまくり2Rにダウン2度。3Rに2度ダウンを奪ってKO勝ち。年内にはタイトルマッチが組まれる事であろう。

プロ転向時にはスピードとうまさが目立っていたが、体力がつきパンチも強まり、倒しやになりつつある。

 

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会場 米国 ラスベガス・MGM・グランドガーデン・アリーナ 2019/08/05

WBOインターコンチネンタルヘビー級 タイトルマッチ

タイソン・フューリー (イギリス) 30才

戦跡28戦27勝19KO 1分 元3団体王者

トム・シュワルツ ドイツ 25才

戦跡24戦全勝16KO

 

フューリーは黒いフード付ガウンをまとって登場。これを脱ぐとアメリカ国旗をあしらったシルクハットとガウンでロッキーを思わせるパフォーマンスで、そのエンターテイナー振りを披露し観客の気持ちを瞬時に掴んだ。

シュワルツは全く霞んでしまったが、その上スーパーファイトに怖気づいたか実力も胆力もついていけない様子であった。

 

1Rフューリーは鋭くて早い左ジャブを繰り出し、時に右ストレートで主導権を握る。

 

2Rフューリー左構えにチェンジ。左ストレートでシュワルツ鼻血を出し、これではならじと攻撃に出るが総て躱された上、ロープに詰められて、左ストレートを受けてダウン。立上がったところ連打でレフリーストップ。2分54秒であった。フューリーは開始早々から相手を完全に呑んでかかり、格下にスパーリングをつけるような試合振りでヘビー級の2大実力者の力を世界に示した。ワイルダーとの再戦が待たれる。

 

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会場  米国 ラスベガス・マンダレイベイ・リゾート&カジノ 3試合 2019/07/29

 

1. ミドル級 6 回 戦

ジョーイ・スペンサー アメリカ19才

戦跡7戦全勝6KO

白人のスター候補生として期待の星

 

アキーム・ブラック アメリカ24才

戦跡7戦5勝2KO2敗

スペンサー59:55の判定(3人とも)で勝利したが、左手を曲げたデトロイトスタイルで斗ったが、ブラックの早いパンチに対応できず大苦戦。防御も攻撃も基本から練習し直す必要ありとみた。今のままでは大成はおぼつかない。

2.WBC Sバンタム級 挑戦者決定戦

 

 

ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)38才

戦跡20戦18勝12KO 1敗1無効試合

シドニー、アテネ オリンピックで連続金メダル獲得

WBA王座を10度防衛し、ライト級のロマチェンコと対戦したが、途中ギブアップで完敗。大いに株を下げた。

 

対戦者 フリオ・セハ (メキシコ) 26才

戦跡35戦32勝28KO3敗

1R~8Rまでリゴンドーは試合の運び方を根本的に変えて斗った。従来は相手との距離を取り、相手の出てくるところに右ジャブからの長い左ストレートのカウンターで迎え打ち、当ったとみるや連続攻撃で止める。相手に打たせないで打つ。徹底したスタイルで斗ってきたが、人気が今一つ出ないことから試合のプロモーターが仲々つかず、ビッグマッチにも恵まれなかった。やっと掴んだロマチェンコとの対決に惨敗。戦略を変更して、接近戦で正面から打ち合う作戦をとる事とした。

汚名挽回と人気獲得の為である。

 

セハにとっては得意の分野で願ってもない接近戦で目一杯闘った為に、一進一退、リゴンドーにとっては始めてハセは時折り強烈なパンチを振う。始めての経験であり、相当に打たれたが8R、左フック一発でセハをKOに下した。しかしこれだけ打たれては、選手生命を縮める事になる。年齢の事もあって果してリゴンドーの今後はどうなるか。

3.S ウエルター級12回戦

前WBC Sウェルター級チャンピオン

ジャーメル・チャーロ アメリカ 29才

戦跡32戦31勝15KO1敗

トニー・ハリソンにまさかの敗戦で王座陥落した。復帰戦である。ニックネームは「アイアンマン」

双子の兄はミドル級王者

 

対戦者 ホルヘ・コタ(メキシコ)31才 戦跡31戦28勝25KO3敗

ニックネームはテモニオ(悪魔)

 

3R 右ストレートでコタダウン 立ち上ったところに右ストレート見事に顎にヒット。コタ・ダウンしてしばらく立上れず、壮絶なKOであった。

ジャーメルはタイトル獲得前は技術優先のスタイルであったがその後強打者に変身。中量級の有数のハードヒッターとなった。今やチャーロ兄弟はSウェルターとミドルのクラスの台風の目となっており、サウル・アルバレスの最強の敵となった。

 

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会場 米国 ラスベガス MGM グランドガーデン・アリーナ  2019/07/22

WBAウェルター級王座統一戦 

 

WBAウェルター級スーパーチャンピオン

キース・サーマン (米)30才 戦跡30戦29勝22KO 1無効試合 

6年間で8度の防衛を果している。2年前に強豪ダニー・ガルシアと突貫ショーン・ポーターと斗い打ち勝ってウェルター級最強と謳われたが、故障によって2年間ブランクをつくり、復帰第1戦に勝利し、6ヶ月振りの試合である。

 

ニックネームは「ワンタイム」

挑戦者 WBAレギュラーチャンピオン マニー・パッキャオ(フィリピン)40才

戦跡70戦61勝39KO 7敗2分。10代、20代、30代、40代にかけてフライ級からS・ウェルター級までのうち6階級を制覇しておりいずれもボクシング史上初めての選手である。強打のルーカス・マティセをKOに下して何度目かの戴冠を果し、自身2度目の防衛戦でもある。

 

1R サーマンは自信満々にドッシリと構えてゆっくりと前進圧力をかけてパッキャオをロープに詰めて攻勢をとったが、終盤近く左から返しの右フックを受けてまさかのダウ

ンを喫した。サーマンの足が揃ったところにパンチを受けてバランスを崩してダウンし

たもの。ダメージはなかったが、精神面での負い目は図り知れないものがあった事であ

ろう。

 

2R サーマンの従来の試合は、左右のパンチを大きく振って攻めるスタイルであるがスピードがある為に、付け入られる事がなかった。しかし今回ダウンを奪われて戦術を転

換したか、左ジャブを多くし、右はショートストレートを主体に切り換えて慎重に対処するようになる。パッキャオはダウンを奪って、動きが良くなり、右フック、左ストレートが不十分ながらヒット、ペースを握った。

 

3R お互いにフェイントをかけ合い、有効なパンチはなく一進一退。

 

4R サーマンは主導権をとり戻すべく攻勢に出るが、パッキャオも反撃、両者の手数が多くなる。

 

5R サーマン4R同様流れを取り戻す為に攻撃力を強める。このラウンドをどちらが取るかによってこの試合の帰趨を決める重要なラウンドとみて、互いにベースを取り合う。

サーマン鼻血を出す。

 

6R 両者手数は多いが有効打はない。

 

7R サーマン、積極的に攻撃。右ストレート・左ジャブのカウンターを当てて、サーマンのペースとなってきた。

 

8R パッキャオ、前ラウンドの劣勢をとり戻す為に動きも良くパンチも当り出す。

 

9R 一進一退

 

10R サーマン局面を打壊する為にパンチを振って前進するところ。パッキャオの左アッパーのボディブローを受けて、サーマン明らかなダメージを受けて以降スピードもパンチの力強さを失われる。

この試合で1Rのダウンを除けば両者にとって唯一のクリーンヒットであった。

 

11R サーマン必死で右ストレート2発有効打あり。このRをとる。

 

12R パッキャオ優勢のまま終了

 

判定は114:113が1人サーマン。115:112が2人パッキャオでパッキャオがタイトルを統一した。

明確な差は1Rのダウンと10Rのボディブローであとはどちら有利とも云えない試合でありこの2つのラウンドが勝敗を決定したのである。

試合前サーマンはパンチ力、パンチのスピード、スタミナ、体格、すべての面で自分有利は動かないと確信していたし、何といっても自分は脂の乗り切った絶頂の30才。相手は引退していて当然の40才で体力の衰えは誰も否定できない事実であったからだ。従ってパッキャオのパンチを少々食らっても大丈夫と思っていたであろう。

やや相手を甘くみたか、体力にまかせて圧力をかけロープに押し込んだが、ショートの右フックを受けてまさかのダウンを喫した。2R以降、倒すのを断念して、ポイントを獲得する作戦に切り換えて、コンパクトの左ジャブと右ストレートと主要武器としたが、いかんせん迫力に乏しくなったのは否めない。中盤から主導権を取るべく何度も仕掛けたが、その都度反撃にあって果せず。

一進一退をくり返すなか、1R、10Rの2ラウンドの有効打が勝敗を決した。10Rのボディブローにみるパッキャオの攻撃力はサーマンの予想をはるかに超えていたのである。パッキャオ恐るべし。

    

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会場 スコットランド グラスゴー      2019/05/19

バンタム級4団体の中で誰が一番強いのかを8人で争うトーナメント。WBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)の準決勝戦である。

 

WBAチャンピオン 井上尚弥 26才

Lフライ級 Sフライ級 バンタム級の3階級制覇チャンピオンで準々決勝はファン・カルロス・マヤノを1R70秒でKOに下している。

戦跡17戦全勝15KO 内世界戦12戦全勝11KO ニックネームはモンスター

対するIBFチャンピオン エマヌエル・ロドリゲス

プエルトリコ 26才 戦跡19戦全勝12KO

ニックネームはマニー

 

現地のオッズは5:1で井上と出ており、計量時のロドリゲスはこれを知って、これまでの試合で戦前の予想で自分が劣勢に立ったことが始めての事もあって、表情がやや硬く、緊張しているのがみてとれた。井上はリラックスして笑顔もみせていた。

 

1R ロドリゲスは井上を前に出させてはその攻撃力からみて勝機はないと考えたのであろう。序盤に主導権を握ることが、何より大事とみて積極的にパンチを出し、井上の左リードに右ストレートを合せる等、圧力をかけて前に出て、先ずは作戦通りに1Rを終了

2R 1Rで様子をみていた井上は打って出るとロドリゲスもここが勝負とみて正面から対抗するが、井上の左ショートフックが顔面を捉えるや、ロドリゲス堪らずダウン、鼻血も出す。何とか立ち上ったところに顔面警戒のロドリゲスに左フックのボディブロー決まってロドリゲス苦悶の表情を浮かべて2度目のダウン。この時点で首を振ってもう駄目の意思表示をしたが、それでも立上ったところ、再びの左フックのボディブローで3度目のダウン。レフリーストップとなった2R1分19秒であった。司会者が今回は何故2Rもかかったのか質問したように今や井上のパンチの威力はヘビー級を除けば、全階級のトップに位置するといって過言でない。

年内に決勝戦が行われるが相手は歴戦のつわものノニト・ドネアだが、余裕のアクシデントでもないかぎり井上の圧倒的有利は変らないであろう。

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会場 ロサンゼルス ステイブルス・センター   2019年4月13日

WBOライト級タイトルマッチ 

チャンピオン ワシル・ロマチェンコ ウクライナ31才 

戦跡13戦12勝9KO1敗 3階級制覇している13戦のうち12戦が世界戦であり、パウンド・フォー・パウンド1位にランクされているスーパースターである。

挑戦者 アンソニー・クロラ イギリス 32才 戦跡43戦34勝13KO2敗1分

ニックネームはミリオンダラー 元WBAライト級王者ホルヘ・リナレスと統一戦を戦い敗れてタイトルを失う。

戦前のオッズは18:1で当然ながらロマチェンコであるクロラの計量時の自信に満ちた表情とその体型をみても体調は完璧に仕上げて来たことがうかがえた。

1R ロマチェンコはフェイントを掛けて威嚇、早い右ジャブを上・下に終盤はコーナーに詰めて上・下・左・右にコンビネーションを打ち分ける。

クロラは戦前の予想では前に出て、左右フックをボディにとであったが、ロマチェンコのスピードとパンチの早さに防御するので手一杯。

2R ロマチェンコは右ジャブの連打から、右フックをボディ、左アッパーを顔面ボディにと一段とスピードを上げる。クロラは右フックをボディに一発のみ一方的に押される。

3R ロマチェンコは右フックを上・下に、体を入れ替えて左ストレートをボディに上・下・左・右にパンチを散らし、クロラは防戦一方、ロープに詰めて左・右の連打で、打たれ続けたクロラを見て、レフリーは両者の間に割って入った。ロマチェンコもコーナーも試合終了と判断しコーナーもリングに入ってきたが、レフリーはロープダウンを宣言し、試合は続行すぐコングでクロラは救われる。

4R ロマチェンコは倒しにかかり、左ボディブローは強烈。ついで右フックがテンプルを直撃、クロラは顔面からマットに沈んでしばし立ち上がれず、壮絶なKO敗けとなった。クロラはリングに上って何もさせてもらえずに唯打たれて完敗した。

ロマチェンコの強さの秘訣は一体どこにあるのか、第一に相手との距離がある。自分は自在に動けてパンチも当たるが相手は戦えない距離で動きが早くてクリンチもできない。

リング上で相手と対峙した時点で瞬時に距離を把握するやフェイントをかけて威嚇。更に右ジャブをつきながら一気に距離を詰める。相手は異常スピードで接近する敵との距離をとる為に後進するが、それを許さず距離を確保するのだ。

 

第ニに相手は接近する敵を止めるべく、ジャブ・ストレートを繰り出そうとするが、その気配を察知して先にパンチを出し、相手の攻撃を封ずる、又はステップバックして攻撃をかわすやいなや、すぐさま元の攻撃位置に戻る。

第三に、接近された相手が自分の距離を確保する為に後退し体制が整わない時点で多彩なパンチ、右ジャブ、左右ストレート、フック、アッパーを上・下・左右に打ち分けられ相手は防御に追われて体制が崩れたところにパンチを受けて、ダウンに追い込まれる。強いパンチでなくても良いのだ。

第四に相手の力量を見極めたら、あとは変化自在に自分の予定通りに試合を進めて打たれた相手が体力的にも消耗し、それ以上に子供扱いされて一方的に打たれ続けた為に気力を奪われてもう何をやってもやがて倒されるだけだと戦斗意欲を失ってしまう。

唯一、ホルヘ・リナレスのカウンターのショートストレートを食ってダウンを喫したのが、あの至近距離であのショートストレートを打てるのは今ホルヘしかいないので、天才のホルヘの技術はさすがのロマチェンコの予想を超えたものであっただろう。

 

リナレス戦とペトラザ戦でやや苦戦したことでロマチェンコもこの2戦のモヤモヤを払拭する意気込みが感じられて前半から攻撃的であった。2度の防衛戦を終え、3度目となったこの試合で、このクラスによって一段と凄みが増した。相手のパンチを受けない技術は生来のものが絶対の自信をもっており、そうでなければアマの戦跡396勝1敗などというとてつもない記録は生まれなかったであろう。ライト級での最後の敵はミゲール・マイキー・ガルシアであるが、この強敵もこの調子でいけば問題なく下すことであろう。この選手は一体どこまで高みに登って行く事であろうか。

 

テレビで試合をみて、さほど力を入れていないパンチなのに、何故倒されるのであろうと不思議に思われる。レオ・サンタクルス(WBAフェザー級王者)のようにあれだけ打っても、仲々KOは出来ないのにと、ロマチェンコは相手の打たれると思わない時に、その個所を打たれると思わない処を打つので、通常の2倍・3倍とダメージを与える事ができるのであろう。