会場 米国 ニュージャージー州ニューアーク プルデンシャル・センター WBC ライト級8回戦 アブドウラー・メイソン vs ルイス・レブロン (試合日 2024年7月6日)

WBC ライト級 8回戦

アブドウラー・メイソン(米)20歳 戦跡 13戦全勝11KO

WBC ライト級27位 トップランク社と17歳で契約 サウスポー

対戦者 ルイス・レブロン(プエルトリコ)30歳 戦跡 26戦20勝13KO 5敗1分

1R メイソンは右手を下げて右ジャブを打ちやすいように構える。レブロンは両手を高く揚げて防衛体勢。

2R メイソン右アッパーからの左フックでレブロン ダウン。ついでの右フックでレブロン2度目のダウン。レブロン コーナーを2度見て戦闘意識を失ったようだ。

3R 右アッパーからの左右連打でレブロン コーナーからタオル。

 

メイソン前評判通りのスピード、テクニックを披露した。キャリアを積んで近い将来スターダムにのし上がって行く事であろう。

 

会場 米国 アリゾナ州フェニックス WBC Sフライ級タイトルマッチ  チャンピオン ファン・フランシスコ・エストラーダ vs ジェシー・ジェームス・ロドリゲス(試合日 2024年6月30日)

WBC Sフライ級タイトルマッチ

チャンピオン ファン・フランシスコ・エストラーダ (メキシコ)34歳 戦跡 47戦44勝28KO 3敗

2012. 11.  WBA Lフライ級王座挑戦に敗れる。相手は全勝で無敵 パウンド・フォー・パウンドに位置されていたローマン・ゴンザレス。

2018. 02. WBC Sフライ級王座に挑戦敗れる。相手はローマン・ゴンザレスを2度にわたって破った強打のシーサケット・ソールンビサイである。

常に激闘型のボクシングでエキサイティングな試合が多く、人気の高いボクサーである。

2022. 12.  ゴンザレスからSフライ級王座を獲得して現在に至り、10年に亘る、軽量級の中心選手の一人。

挑戦者 ジェシー・ジェームス・ロドリゲス(米国)24歳  ( 「 西部のならず者」 のあのジェシー・ジェームスを使ったリングネームか?戦跡 19戦全勝12KO 

2022. 02.  WBC Sフライ級で王座 歴戦のカルロス・クワドラスを下す。

2023. 04.  WBO フライ級王座獲得 対クリスチャン、ゴンザレス、ついで あのシーサケットをKOに下して一躍スターダムにのし上がった。現在 軽量級 Sフライ級までの No.1のボクサーと言えるだろう。

1R ロドリゲス スピードでエストラーダ押される。エストラーダは様子見でロドリゲスの力を見る。

2R ロドリゲスは威力のある右ジャブでペースを握り攻勢をかける。エストラーダは受け身。

3R ロドリゲス右から左に動いて、右フック効果的。

4R エストラーダ右ストレートのカウンター ヒット、力を入れ始めて攻勢をかけ、ボディ中心に攻める。ロドリゲスは左アッパーのあと、左ストレート ボディでエストラーゼ ダウン。

5R ロドリゲス攻勢を強め、エストラーダ再三ぐらつく。

6R KOを狙ってロドリゲスが前のめりになったところに、エストラーダの右ストレートにロドリゲス  ダウン。

しかしエストラーダに溜まったダメージが大きく追撃できない。ロドリゲスはまるでダウンを忘れさせる勢いで、攻撃してエストラーダを追い詰める。

7R ボディを打たれ続けたエストラーダは限界に達したか、ロドリゲスの左アッパーのカウンターで悶絶し立上ることが出来ずにKOとなる。

 

ロドリゲスは自信に満ちており、それまでも技術的に素晴らしさが目立っていたが、最近の試合は力強さが出てきて、強いなあーと感ずるようになった。このクラスが身体に合っているようであるが、数年の内には上のクラスに上って行くことだろう。軽量級に人材が多い日本のボクサー、特にバンタム級の中谷潤人との闘いが見たいものである。

現在の軽量級はKO勝負が増えて、人気も急上昇。魅力ある選手も多くなり、スリリングな試合も多くなった。

一方 ワイルダーとフィュリーの全盛期が過ぎたヘビー級の現状、次のスターが育っておらず、心配なところだ。

 

会場 米国 ニュージャージー州 ニューアーク  プルテンシャル・センター   ➀ WBC Sフェザー級タイトルマッチ チャンピオン オシャキー・フォスター vs ロブソン・コンセイサン  ② WBC ライト級タイトルマッチ チャンピオン シャクール・ステーブンソン vs アルテム・ハルチュニヤン  TV観戦日2024年8月12日(試合日2024年7月6日)

会場 米国ニュージャージー州 ニューアーク プルテンシャル・センター

2024年8月12日(試合日2024年7月6日)

 

① WBC Sフェザー級タイトルマッチ

チャンピオン オシャキー・フォスター(米国)30歳 戦跡 24戦22勝12KO 2敗 3度目の防衛戦。

挑戦者 ロブソン・コンセイサン(ブラジル)35歳 戦跡 22戦18勝9KO 2敗1分1無効試合  2016年リオ五輪金メダリスト4度目の世界戦挑戦である。

1~12Rまでコンセイサン 左ジャブを中心に時折右ストレートを交えて攻勢をとり前進するがパンチは殆んど当たらない。

フォスターは足を使って距離を取り、自分からは決して攻めずに相手の出てくるのに合わせて左ジャブ繰り出すスタイルで一貫しており、コンセイサンの有効なパンチは全く受けないが自分の左ジャブは相手の身体に触れるだけの果たしてこれが有効なパンチかどうかは評価の分かれるところであった。コンセイサンは終盤疲れてきたが、フォスターは省エネボクシングの為終盤になってもほとんどスピードも落ちることなく、このあと12Rも出来るのではないかと思わせるほどであった。

判定は116:112、115:113、112:116 の2:1で軍配はコンセイサンに上がった。審判もあまりのフォスターの試合振りに苛立ちを感じたのではなかろうか。当のフォスターは試合の途中で薄笑いを浮かべており、自信満々、自分の勝利を信じて疑わなかったようだ。「俺は有効なパンチを一発も受けていないぜ」と思った事であろう。

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② WBC ライト級タイトルマッチ 

チャンピオン  シャクール・ステーブンソン(米国)27歳 戦跡 21戦全勝10KO  リオ五輪バンタム級銀メダリストでプロ3階級を制覇している。全階級を通じてのNo.1テクニックである。

挑戦者 アルテム・ハルチュニヤン(アルメニア/ドイツ)33歳 戦跡 13戦12勝7KO 1敗 リオ五輪 L ウェルター級銅メダリスト。

1~3R ハルチュニヤンは上体と揺すって相手の攻撃に対処しながら、左・右パンチを振って前進する。ステーブンソンは様子見から殆んど手を出さず、ロープに詰まることが多い。

4R 相手の攻勢力を見切ったか、ロープに詰まることなくリング中央でパンチを出し始める。

5R 以降ステーブンソンは相手に圧力をかけて前進。一貫して接近戦に持ち込み、左右ボディブローを的確に決めて相手の攻撃力を弱め、自分は絶対の自信を持った防御勘でパンチを貰う事なく、ボディを集中的に打たれたハルチュニヤンのパンチに全く威力が無くなったのを確認するや、ステーブンソンの攻撃は一方的となり、9Rは倒しにかゝって集中打を浴びせる。しかしSフェザー級時代とは対戦する相手の体力も一段と上回っており、今のパンチ力では容易に倒すことはできないようで、元来防御を第一に考えるボクサーで、一発必倒のスタイルでない事からも、已むをえない事かも知れない。

しかし観客にとっては、試合をみた後消化不良の思いが残るのは明らかで、今後に課題を残した。

さて、今後の相手はWBAチャンピオンのジャーボンティ・デービス(30戦全勝/28KO)となるのが明らかで、あの恐るべき強打者ディービスを止められるかが焦点となってきた。

ボクシング界で今一番待ち望まれている試合である。デービスは思ったよりも防御技術もあり、長い距離でも至近距離でも一発必倒のパンチ力を有し、しかも速い。今全階級の中でパンチの威力は随一であろうから。

現在最もスリリングで最も客が呼べるボクサーである。彼は又こうも言っている。井上がSフェザー級に上ってくるなら、自分もSフェザー級に落として闘ってみたいとも。

 

会場 東京ドーム S バンタム級4団体統一タイトルマッチ チャンピオン 井上尚弥 vs ルイス・ネリ  試合日2024年5月6日 TV観戦日 7月15日

S バンタム級4団体統一タイトルマッチ 

チャンピオン 井上尚弥 (日本)31歳 戦跡 26戦全勝23KO 世界戦21戦全勝19 ニックネームは「モンスター」

挑戦者  ルイス・ネリ(メキシコ)29歳 戦跡 36戦35勝27KO 1敗  サウスポーの強打者で、このクラス最強の挑戦者として誰もが認める選手である。WBC1位、WBO2位、WBA4位 ニックネームは「パンテラ」豹。

 

1R 井上は立ち上がりから大振りの右フックを3発放ってネリに圧力を掛ける。接近してもつれるところ、井上の左フックに合わせてネリの左フックで井上、プロ初のダウン。こうした事態を予め想定していたと後に語った井上は冷静に片膝をついてカウント8まで待った上で立上るや、ネリはこゝぞと猛攻を仕掛けて2度コーナーに井上を追い込み乱打するが、井上はダッキング、ウィービング、クリンチ、又は足を使って躱すや、ショートアッパーと右フックで反撃、正確にネリにヒット。

 

2R ネリは攻撃を強めるべく前進するが、井上に隙がなく、パンチが出せない。井上はボディブロー2発のあと、ネリの左フックに合わせた左ショートフックのカウンターでネリ ダウン。

 

3R 井上は左のボディブロー、右ストレート2発、ネリの顔面にカウンターとなりペースは完全に井上のものとなる。

 

4R ネリの大振りの左フックを躱したあと、井上は自分の顎をグローブで指差してみせたパフォーマンスのあと、いきなりの長い右ストレートをネリに浴びせる。

 

5R 井上のパンチはボディ、顔面と面白いように的中。ネリのスタミナは削られてきてパンチの力もスピードも失われてきた。井上の左フックでネリ2度目のダウン。

 

6R ネリ、相手をKOするしか勝利はなくなり、左フックを振うが全て空振り。ロープに詰まったところに井上の右アッパーからの右ショート ストレートでネリ ダウン。レフリーストップとなる。

 

ネリの勝利の方程式は、井上の打ち終わりに、左フックを振う唯一点であった。1ラウンドはこの作戦が見事型に嵌って成功したが、2ラウンド以降は柳の下に泥鰌は2匹はおらず惨敗した。井上の左ジャブからの左右ボディブロー、左右アッパー ストレート・フックとスピード豊かなパンチが自在に放たれ、しかも当て勘も良く、パンチ力も強く、防御もうまい、スタミナもある。ネリとの実力差はネリが考えたよりはるかに大きく、2ラウンド終了で敗北を悟った事であろう。

 

多分 Sバンタム級で井上に対抗出来る選手は残ってはいまい。Sバンタム級はバンタム級に比べても選手層が薄い感があるり、フェザー級への転向しか好カードは組まれないと思われる。

 

さて、今回は会場を東京ドームとし、5万人観客が入った。  この会場でのボクシング興行は2回目である。1回目は1990年2月11日、全勝のマイク・タイソンとジェイムス・バスター・ダグラスの一戦で、歴史的大番狂わせでタイソンがKOで敗れたものである。

また、東京ドームの前身 後楽園球場での試合は1960年8月29日 フェザー級タイトルマッチで、チャンピオン デビー・ムーアに高山一夫が挑戦して以来、63年8ケ月振りとなる試合であった。

 

ちなみに井上の対フルトン戦のファイトマネーは6億4千万円、ネリ戦は10億円と言われる。

 

会場 米国 ラスベガス MGM グランド・ガーデン  ⓵ WBC Sライト級暫定王座決定戦 ⓶ WBC Lヘビー級暫定王者決定戦 ⓷ WBAライト級タイトルマッチ   試合日2024年6月15日

① WBC  Sライト級暫定王座決定戦 ゲイリィー・アントゥアン・ラッセル(米)28歳 戦跡 17戦全勝17KO WBC Sライト級2位  対戦者 アルベルト・プェジョ(ドミニカ共和国)29歳 戦跡 22戦全勝10KO Sライトで2度戴冠の実績あり ニックネーム「ラ・アビスバ」(スズメバチ)オッズは6:1でラッセル。彼は17戦のうち1RKOが8回もあるハードパンチャー。

1Rから例の通りラッセルは攻勢に出てパンチを振うが、今までの試合と異なりプエジョが右ジャブと左ストレートで迎え打ち、ラッセルのパンチが充分にヒットせずに、攻勢はラッセルだが、パンチはほとんど有効打なく、プエジョの軽いパンチが的確にヒット、1R~12Rまで攻勢点はラッセルだが、有効打はとなると果たして?の難しい試合となった。その判定は118:109でラッセルの勝利とした審判が1人、あとの2人は115:112、114:113でプエジョの勝利とし、2:1でプエジョの勝利となった。判定については時折首をかしげるものがあるが、この試合程見方によってこうも違う結果が出るのは珍しい。 ラッセルはこれまで相手をロープに詰めての連打で勝ってきたが、今日の試合は手が長く、懐の深い、しかもカウンターの巧みで、ボクシングの上手い選手にから回りさせられた結果である。

 

⓶ WBC Lヘビー級暫定王者決定戦  デビット・ベナビデス(米)27歳 戦跡 28戦全勝24KO WBC暫定Sミドル級チャンピオン

オレクサンダー・クボジーク(ウクライナ)37歳 戦跡 21戦20勝16KO 1敗 WBC Lヘビー級2位 1敗はアルトゥル・ペテルビエフと両者保持するタイトルを賭けて対戦したが10R KOで敗れたもの(KOまではポイントでリードしていた)

オッズは9:2でベナビデス  

1Rから9Rあたりまでベナビデスはいつもの通り前進して数多くパンチを繰り出す。クボジークは足を使ってアウトボクシング、一貫して攻撃するベナビデスに防戦一方となるが、クリーンヒットは許さない。終盤反撃にまわり、ベナビデス失速し終了。

判定は 116:112、117:111、119:109でベナビデスの勝利となる。これでベナビデスは2階級制覇となるが、体格差は思ったより大きく、ベナビデスのパンチ力ではLヘビー級で戦っていくのは難しいのではないかと思わせた。

一度引退して復活したクボジークのボクシングは思った以上に、左ジャブからの右ストレートの基本に則った美しいもので、スタミナも終盤まで衰える事なく、年齢に負けていなかったのには感心した。ベナビデスはLミドル級に戻ってカネロ・アルバレスとの対戦に再び目指すのが正しい選択ではなかろうか。

 

⓷ WBAライト級タイトルマッチ チャンピオン ジャーボン・ディービス(米)29歳 戦跡 29戦全勝27KO 3階級制覇王者

挑戦者 フランク・マーティン(米)29歳 戦跡 18戦全勝12KO WBAライト級2位

お互いサウスポーである。

1R~3R マーティン足を使って距離を取り、右ジャブと左ストレートを放って序盤リード。デービスは圧力を掛けて前に出るが、パンチは殆んど出さず様子をみる。4Rからデービス接近して右フック、左アッパー、フック、ストレートと攻撃を強め、マーティンは一方的に押されロープに詰まるようになる。デービスは6Rあたりから本格的に倒しにかゝり、8Rマーティンをロープに詰めるや左アッパー、左フックを放ってマーティン ダウン。ダメージが深くマーティン立ち上がれずKOで終了。

そもそもマーティンにデービスと正面から戦う気構えがあったのか⁉ 強打を恐れていた事は1Rから右のガードを極端に高く掲げてデービスの左強打を決して受けない体勢を見ても分かる。何とか足を使ってのテクニックで誤魔化して、ポイントを取っての下心が見え透いており、戦う前から気持ちで負けていた。デービスは1~3R 両ガードを高く掲げて様子見であったが、マーティンの戦略を察知するや右ガードを下げて平然と前進し、右ジャブ、左アッパー、フック、ストレートと自在に強打を繰り出し、前半にリードされても委細かまう事なくKOで終了するまでのレールを敷き、段取りをして予定通りKOで終了させている。全てに於いて力の差がありすぎた。

デービスの一発のパンチの威力は全階級を通じてNo.1であろう。その速さ、角度、タイミングは群を抜いている。しかも防御もうまい。現在最も観客を集める事が出来る選手で、毎試合がドラマチックな終わり方で締めている。今回の試合は1年2ヶ月振りで、従来から試合数が少なく、年に2~3回は試合をして欲しいところだ。残る相手にロマチェンコが居るが、何といってもWBC王者全勝のテクニシャン、 シャークル・ステーブンソンしかいない。ステーブンソンは何といってもその技術は素晴らしく、対戦する相手を悉くそのテクニックで下している。但し試合は「もう技術の凄いのは良く解った。もっと決めるところは決めろ‼」と観ている者が言いたくなるような退屈なところがあるのも事実である。スティーブンソンの抜群の技術でデービスを止められるか楽しみである。

 

  ちなみに2014年7月14日に

Sウェルター級のタイトルマッチが行われ、当時から既にスーパースターであったカネロ・アルバレス(当時23歳)と対戦したエリスランディ・ララ(当時31歳)はテクニックを存分に発揮し、前半はアルバレスに押されていたが中盤から本領を発揮、アルバレスを子供扱いに翻弄した。判定は115:113でララ、115:111、117:111でアルバレスであったが、試合を全体的に支配していたのはララであった。当時ボクシングは力だけではないのだを痛感したものである。しかもララは単に足を使って逃げていたのではなかった。ララは現在40歳になってもミドル級王者である。

シャクール・ステーブンソンにはフランク・マーティンのような及び腰でない、ララのような戦いを、対デービス戦がもし実現するとすれば要望したいものだ。

 

会場 米国 フロリダ州 ペンブロックパインズ WBOフェザー級タイトルマッチ 会場 チャンピオン ロベイシ・ラミレス vs ラファエル・エスピノサ 2024/6/3 試合日 2023年12月9日

WBOフェザー級タイトルマッチ

チャンピオン ロベイシ・ラミレス(キューバ)29才 五輪2大会で連続金メダルを獲得して鳴り物入りでプロデビュー。第一戦は思わぬ敗北を喫したが、その後は順調に実力を発揮して現在このクラスで最強と目されており、アマで鍛えたテクニックを存分に生かし、攻防兼備の王者とみられる。戦跡 14戦13勝8KO 1敗

試合前のオッズは12:1でラミレス。

挑戦者 ラファエル・エスピノサ(メキシコ)29才  戦跡 23戦全勝20KO  WBOフェザー級10位 フェザー級では例をみない身長185㎝ リーチは188㎝である。

 

1~4Rまで エスピノサは左ジャブを間断なく繰り出し、右ストレート・アッパーとラミレスと桁違いのパンチの数でラミレスを寄せ付けずリードを拡げる。

5R ラミレスはこれではならじと踏み込んでの右フックがまともにエスピノサの顎に直撃し、エスピノサ ダウン。辛うじて立ち上がったものゝ足はもつれてフラフラしていたが、このラウンド終盤であったことが幸いしゴングに救われる。

6R ラミレスはこゝが勝負とエスピノサをロープに詰めてこゝぞと集中打を浴びせたが、予想に反してエスピノサも猛然と反撃して、激しく打ち合う。

7、8R エスピノサは5Rのダウンと6Rの打ち合いの為か、スタミナ切れを起して極端にスピードも落ち、パンチの威力も著しく失われてきた。一方のラミレスも疲れたか、エスピノサを追い込むことが出来ない。

9~11R お互いに疲れてスピード、パンチ力も弱まり、そのなかでもエスピノサの驚異的な頑張りで、手数のめっきり減ったラミレスを押しまくり、、

12R 押され続けたラミレスはこれに耐え切れずについにダウン。やっと立上ったがここでゴング。

判定は113:113、114:112、114:111でエスピノサに軍配が上がった。大番狂わせである。ラミレスは2度目の防衛に失敗。

 

関係者の間では、もし井上がフェザー級に転向したら対抗馬の一番手とみなされていたラミレスが、これでこの対戦は無くなった事であろう。しかしラミレスが、185㎝の長身エスピノサを何故挑戦者に選んだのであろうか? 相手は10位の選手であったのに、敢えて選ぶまでもなかった。Sウェルター級の197㎝の長身セバスチャン・フンドラが、全勝のチャンピオン ティム・チューを下した試合でもわかる通り、長身選手との闘いは難しい。相手の長いジャブを掻い潜って懐に飛び込むことが出来なければ苦戦を免れない。

しかもエスピノサは左ジャブを軽いが数多く間断なく出し、それを掻い潜って入り込むとストレートの右カウンター、右アッパーをくり出して迎え撃つのが誠に巧みな選手であり、ラミレスもこの罠にまんまと嵌ってしまった。しかもあれだけ打たれゝば、いくら軽いパンチでもダメージは蓄積して体力を奪われるので敗北もやむを得なかった。

長身選手の常として後半のスタミナ切れと、打たれ弱さを勘定に入れて、後半には倒せるとラミレスは甘く考えていたのかも知れない。それにしてもエスピノサの終盤の粘りは驚異的であった。

 

しかしエスピノサが今後安定したチャンピオンとなるかは疑問が残る。あまりにもパンチも、スピードも乏しいし、防御にも問題がある為である。

一方のラミレスの敗北は策の無さすぎと、予想外のスタミナの無さがみられた事である。

 

この試合でフェザー級の総体的な実力がどの程度であるかが窺い知る事が出来、井上のフェザー級への転向が本人の意向とは別に周囲が動き出す可能性が高まったとみられる。

 

ボクシング関係者の間では井上の対戦相手の物色が始まっているようだ。

誰も為し得なかった3階級、4団体統一の夢の現実がみえてきたようである。

 

 

会場 米国 フロリダ州 ペンブロックパインズ フェザー級10回戦 ブルース・カーリントン vs ジェイソン・サンチェス 他 1試合 WBOフェザー級タイトルマッチの前座試合 試合日2023年12月9日

① フェザー級10回戦

ブルース・カーリントン(米)26才 戦跡 9戦全勝5KO WBCフェザー級39位

対戦者 ジェイソン・サンチェス(米)29才 戦跡 20戦16勝9KO 4敗 2019年オスカル・バルデスとの世界戦の経験あり、ニックネームは「小さなサソリ」

1R サンチェスは是が非でも先手を取ることが勝敗のカギの握とみて積極的に前に出て、攻撃を仕掛ける。

2R カーリントンのいきなりの左フックでぐらついたサンチェスついでの右フックでダウン。立上ったところに連打で2度目のダウン。TKOとなる。 

カーリントンはスピード、パンチ力ともに総体的なレベルの違いを見せて圧勝した。試合後ぜひとも井上と試合をしたいと発言している。

 

 

②下部団体のNABF、NABO Sフェザー級タイトルマッチ

チャンピオン サンダー・ザヤス(プエリトリコ)21才 戦跡 17戦全勝11KO  WBO3位、IBF 14位。 

ザヤスはアマの戦跡118勝14敗 16才でトップランク社にスカウトされてプロ入りした逸材である。

挑戦者 ホルヘ・フォルティア(スペイン)33才 戦跡 28戦24勝9KO 3敗1分

ザヤスは1Rに左フックのボディブローでダウンを奪うや、試合はワンサイドとなり、5R 左・右フックのあと、返しの左フックのボディブローでKOにフォルティアを下す。

ザヤス攻撃、防御ともに完成されたボクサーで、絶えず上半身を動かし、攻撃時も必要以上に深入りする危険を冒さず、能力の高さを窺わせた。近い将来のチャンピオンと誰もを予感させる選手である。

 

 

会場 豪州 パース、パース・アリーナ IBFライト級王座決定戦  ジョージ・カンボソス・Jr  vs  ワシル・ロマチェンコ   試合日2024年4月12日

会場  豪州 パース、パース・アリーナ IBFライト級王座決定戦 ( 試合日2024年4月12日)

IBFライト級王座決定戦 ジョージ・カンボソス・Jr.(豪州)30才 戦跡 23戦21勝10KO 2敗 ’20年ワシル・ロマチェンコを敗って4団体統一チャンピオンとなったティモフィオ・ロペスを ’21年11月ダウンを奪うと云う大番狂わせの判定に下してタイトル奪取したが、22年6月、22年10月にデヴィン・ヘイニーに連敗してタイトルを失った。

ニックネームは「Ferocious」獰猛な奴。

 

対戦者 ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)36才 戦跡 20戦17勝11KO 3敗 

3階級で王者となっていたが、’20年10月ティモフィオ・ロペスに判定に敗れてタイトルを失う。’23年5月デヴィン・ヘイニーに敗れて以来の試合である。

 

1R お互いに様子見で静かに試合は進んだが、ロマチェンコが前進し、手数の多さでやゝロマチェンコ優勢。

2R ロマチェンコの圧力が強まり、左ストレート、右、左のコンビネーション 右フックが軽くヒット。カンボソス左ボディブロー 一発。

3R ロマチェンコ常に先手で軽いパンチを当てる事を主体としているが、カンボソスの強打を警戒し、力をセーブしてパンチを振う。カンボソスは待ちのボクシング。カンボソスの顔が赤くなってくる。

4R ロマチェンコのプレッシャー次第に強くなる。両者の距離が近くなり、ロマチェンコの左ストレート、右フック、左フックが軽いが数多くヒット。

5R カンボソスのコーナーから” ロマチェンコのボクシングはハイレベルだ、もっと積極的に闘え" と檄が飛ぶ。

6R カンボソス、これではならじと右ストレートがボディに2発。右ストレートがボディに1発と有効打がありカンボソス始めて攻撃らしさが出る。

7、6R やゝ休んだロマチェンコはこのラウンド攻撃を強めて、左ストレートのボディブロー4発、左フック2発と集中打を見せる。カンボソス右目上カット。

 

** このラウンドまでのパンチの的中率はロマチェンコ37%、カンボソス10% **

 

8R ロマチェンコ、カンボソスの攻撃パターンをすっかり把握して動きが一段と自由になり、ほゞ試合の大勢は決定的となってきた。

9、10R 試合は一方的となり、カンボソスの攻撃は弱まりほとんど手が出なくなる。

11R ロマチェンコの左ストレートのヒットのあと、もつれてカンボソス、ダウン(スリップと判定)立上ったところに強烈な左のボディブローでカンボソス、ダウン。立上ったところに再び左ボディブローで2度目のダウン。

こゝでコーナーからタオル投入。TKOとなった。

 

ロマチェンコの談話

 「先ず神に感謝したい。そしてジョージ有難う、強力なチームでした。私のチーム、ファミリー、みんなに感謝。ウクライナの皆さん、ボクシングを愛する皆さん有難う」と語った。

カンボソスの談話

「今日の相手は強敵でした。彼は歴史に残るボクサーです。私は充分に準備してこの試合に臨みましたが敗れました。トレーニングキャンプではやる事は全部やりましたが。」と語った。

 

さて、今回の試合だったがロマチェンコの実力を充分評価しており、慎重に対応していた。踏み込みは浅く、パンチは50%程に抑えて、防御に細心の注意を払って闘っていた。しかし軽いパンチでも的確にヒットし、次第にカンボソスの気力、体力を奪っていった。顔面は傷つき、ダメージの跡はあきらかであり、後半はスピード、パンチの数も威力も弱まって11ラウンドTKOに終わった。

一方のカンボソスは対ロペス戦、対ヘイニー戦と比べて、スピード、パンチの切れ、体幹の強さと一段とアップしており、準備も万全と見えた前半で一発のクリーンヒットがあれば試合の趨勢はどうなったか分からなかったかもしれない。ロマチェンコのインテリジェンスが上回っていたのであろう。

 

改めてボクシングをの現状を考えると健康状態が考慮されて、ダメージの少ない時点でストップが宣言されることが多くなった。ならば採点の中にあまりにも防御技術の評価点がほとんどない事は再考されるべきであろう。

もし、防御技術がもう少し評価されていれば、ロマチェンコの対オルランド・サリド、ティモフィオ・ロペス、デヴィン・ヘイニー戦の採点は変っていたかもしれない。

ボクシングが単なる殴り合いから、高度なスポーツにと望むなら、防御技術の冴えも充分に観客の要望に答えるものとなると思えるのに残念な事である。

それにしても二人のボクサーの試合後の態度は惚れ惚れする程にの美しさであった。

ちなみに10Rまでの判定の評価はロマチェンコ99点、カンボソス 91点であったと思われる。

 

会場 米国 ラスベガス T-モバイル・アリーナ  ミドル級4団体統一タイトルマッチ チャンピオン カネロ(サウル)・アルバレス vs ハイメ・ムンギア 2024年5月5日 (試合日 5月4日)

ミドル級4団体統一タイトルマッチ  

チャンピオン カネロ(サウル)・アルバレス(メキシコ)33才 戦跡 64戦60勝39KO 2敗2分

挑戦者 ハイメ・ムンギア(メキシコ)27才 戦跡 34戦全勝34KO 

1R~3R ムンギア、左ジャブと左ストレート フックとハイペースで攻勢に出る。カネロは何時ものようにゆったりと立ち上がり力を抜いて対応。

4R カネロの右アッパーでムンギア プロ入り初のダウン。

5R~12R ムンギア怯えることもなく果敢にパンチを振って挑むが、的確性が乏しくなり、クリーンヒットはほとんど見られなくなった一方で、カネロの的中率は高く、予想以上の防御技術も相俟っての省エネボクシングと、肝心なところで力のあるパンチを振い、その他は力を抜いてエネルギーの無駄使いを抑える試合運びはさすがであった。カネロ試合が始まってすぐに相手のパンチ力を把握し、あとは自信に満ちた試合振りで、ムンギアとの大きな差がみられた。ムンギアも良く戦ったが、この差を埋めることはなかったのである。カネロはSウェルター級の4団体王者ジャメール・チャーロを下したことで大いなる自信を持ったようである。

判定は7.5.3ポイント差であった。

 

会場 米国 ラスベガス T-モバイル・アリーナ WBC暫定フェザー級タイトルマッチ チャンピオン ブランドン・フィゲロア vs 挑戦者 ジェシー(ヘスス)・マグダレノ 試合日2024年5月4日

WBC暫定フェザー級タイトルマッチ 

チャンピオン ブランドン・フィゲロア(米国)27才 戦跡 26戦24勝18KO 1敗1分 1敗はスティーブン・フルトン

挑戦者 ジェシー(ヘスス)・マグダレノ(米国)32才 戦跡 31戦29勝18KO 2敗 

3Rまでマグダレノの変幻自在のボクシングのスタイルとパンチの速さが目立っていたが4R以降フィゲロアの前進が始まり、手数が極端に多くなりマグダレノをロープに詰めてのラッシュが続くようになった。9Rついに左フックのボディブローでマグダレノをKOに下した。

近い将来、このクラスに転向すると思われる井上尚弥を考えるとフィゲロア、WBAのレイモンド・フォード、WBCのレイバル・ガス、IBFのルイス・アルベルト・ロペス、WBOのラファエル・エスピノサ等の現在に関心が高まっている。

 

会場 両国国技館 WBCバンタム級タイトルマッチ チャンピオン アレハンドロ・サンチャゴ vs 中谷潤人  2024年4月22日 (試合日 2月24日)

WBCバンタム級タイトルマッチ (試合日2024年2月24日)

チャンピオン アレハンドロ・サンチャゴ(メキシコ)28才 戦跡 36戦28勝14KO 3敗5分

ノニト・ドネアを破ってタイトル、初防衛戦。

挑戦者 中谷潤人 26才  戦跡 26戦全勝19KO 2階級制覇して今回クラスを上げて挑戦となた。サウスポー。

1R~5Rまで、170㎝の長身を生かしての右ジャブで相手の出足を止め、尚入り込んでくるところに左ストレート、左アッパーで迎え打つスタイル、距離が保たれゝば、長いストレートを打ち込み、危なげないまゝリードを保ち 6R 左ストレート顎にヒット、サンチャゴ プロ入り初のダウン、やっと立上ったところに右フックからの連打で2度目のダウン。コーナーから試合ストップの意志表示があってTKOとなる。中谷はこれで3階級制覇なる。このまゝいけばSフェザー級あたりまで行けるかもしれない。

 

会場 カナダ ケベック州ケベックシティ チャンピオン アルツール・ペテルビエフ vs カラム・スミス  2024年1月15日

会場 カナダ ケベック州 ケベック シティ  試合日 2024年1月15日

WBC、IBF、WBO L ヘビー級タイトルマッチ

チャンピオン アルツール・ペテルビエフ (ロシア ハサビュルト出身 カナダ在住)38歳

戦跡 19戦全勝全KO  08年北京、12年 ロンドン五輪出場 世界戦8戦全勝8KO 身長182㎝ リーチ185㎝ 

挑戦者 カラム・スミス(イギリス リバプール) 33歳 元WBA Sミドル級チャンピオン 

戦跡 30戦29勝21KO 1敗 この1敗はSミドル4団体王者カネロ・アルバレス戦の判定負けである。身長191㎝ リーチ198㎝ 

両者の身長差は9㎝ リーチは13㎝も違う。

 

1R ペテルビエフ先制攻撃を仕掛けて、連打でスミスをロープに追い込む。ペテルビエフの戦い方は相手の攻撃はすべてガードに受け止め、自分の距離になったら始めてパンチを振う毎度おなじみのスタイルで変わる事がない。

2R ペテルビエフは左を突いて前進、スミスはこのペースで進むと相手の術中にはまるので果敢にパンチを振って対抗。

3R スミスは積極的に手を出し、ヒットはするが、ペテルビエフは顔色を変えることなく前進。左ボディ、左ストレートを決め、スミス圧力にロープに詰まる。

4R ペテルビエフの何気なく出すジャブが予想以上に威力があり、ストレートのようにスミスのスタミナを削ってゆく。試合の趨勢は大きくペテルビエフに傾く。

5R 3ラウンドに右眼下を傷つけたスミスはこのラウンドで鼻血を出し、顔面の傷は多くなる。ペテルビエフはリラックスしながら楽しそうにボクシングをしている。

6R ペテルビエフの右ストレートが顔面に、ペテルビエフのパンチは派手でもなければ、そんなに力を入れてもなく、スピードもさほどではないのに、スミスに与えるダメージは明らかで、スミスのパンチの威力は失われてきた。

7R ペテルビエフの右フックのボディブローからの右フックのテンプルへのヒット2発でスミス ダウン。やっと立上ったところへ雪崩のごとくの連打に、スミスの2度目のダウン。これで立ち上がれずにKOとなった。

 

ペテルビエフにとって、今までの中で難敵の一人はであろうとみられた。スミスは過去ダウンした事が無く、体格もペテルビエフより大きく、リーチも13㎝長く、スピードもあったが、まさに何の苦も無く一蹴した。見た目それ程パンチが強いようには見えないが、その威力は私達の想像以上なのであろう。スミスもペテルビエフの過去の試合を見て、これは勝てると思った事であろうが、1ラウンド戦ってみたら、これは駄目だと思ったに違いない。ペテルビエフはこれで残る相手はWBA王者ドミトリー・ビボルのみとなった。

 

カラム・スミスはボクシング一家4人の4男で、兄のリアム・スミスもミドル級で王者となっていた。カラム・スミスは過去ダウンした経験が一度も無い防御技術を有しており、対アルバレス戦も判定まで持ち込んでいる。

ちなみに試合前のオッズは4:1でペテルビエフであった。

 

試合後のインタビューでペテルビエフは「まぁ、運が良かったんです。彼はいいファイト振りでした。強かった。彼に感謝しています。でも運が僕にあったのです。」一度もダウンした事のない相手を倒した事については「僕のチームの皆さんのお陰です。」最後に「ケベックの皆さんファンの皆さんありがとうございました。」と語っている。

 

ペテルビエフ程見た目と実態が違う選手も珍しい。髭もじゃで熊のような風貌に比して、試合後のインタビューに対する答えは極めて控え目で、知的な事はいつもながら驚くばかりで、温和な性格なのであろう。

過去長くヘビー級を独占していたビタリ・クリチコ(彼は現在ウクライナ、キーウの市長である)とウラジミール・クリチコ兄弟以来の、まさに好漢ここにありの感がある選手である。

 

2023年 ボクシング 総集編   2023年12月25日

1位 WBC、WBO Sバンタム級タイトルマッチ(12月26日)【 チャンピオン スティーブン・フルトン 対 井上尚弥 】

試合は一方的なものとなり8R 左フックでダウンを奪うや、そのあとの連打でフルトンをTKOに下し、2022年12月13日 ポール・バトラーを11R TKOに下してバンタム級の4団体統一を果たした後、王座を返上し、階級を上げてこの試合に臨んだ井上は 12月26日マーロン・タバレスとSバンタム級の統一戦 を行いこれに勝利すれば2階級で4団体統一となる。余程の事がない限り統一は現実となろう(12月26日4団体統一戦が行われ10R TKOでタバレスを下す。)

 

2位 4団体統一 ウェルター級タイトルマッチ (7月29日) 。【 エロール・スペンス(WBA、WBC、IBF)対 テレンス・クロフォード(WBO)】

2R 右ストレートでスペンス ダウン、7R 右フックで2度目のダウン、9R 連打でレフリーストップでクロフォード圧勝。待望のライバルで全勝同士の対決は思わない結果となった。

 

3位 ライト級12回戦  (4月22日) 【 ジャーボンティ・デービス 対 ライアン・ガルシア 】 

両名強打者同士で喫迫した二人であったが、2R突然のデービスの左ストレートでガルシア ダウン。その後拮抗した攻防が続いたが7R デービスの左ボディブローがヒット。一呼吸後ガルシア ダウン。その後の攻撃を避ける為に膝をついて休んだが結局立ち上がれずにカウントアウトでデービス勝利。一発の威力と勘の良さ、スピードは群を抜いている。人気も高く、入場収益は34億円であったそうだ。

 

4位  WBO Sフライ級王座決定戦 (5月20日)【 中谷潤人対アンドリュー・マロニー】 

2R 右ストレートでマロニー  ダウン、その後マロニー立ち直って対抗したが、11R 右ストレートで2度目のダウン。12R判定になると思わせたが、左ストレートに合わせて、右フックのカウンターでマロニー ダウン。しばし立ち上がれずに凄絶なダウン、12RTKO。中谷は2階級制覇となる。中谷は170㎝の長身で技術、体力、パンチ力に優れて、特に日本人には少ないアッパーカットを巧みに操り、強力な武器となっており、やがてフェザー級あたりまで制覇しそうな素材とみた。

 

5位 WBA、WBC Lフライ級タイトルマッチ(4月8日)【チャンピオン 寺地拳四朗 対 アンソニー・オラスクアガ(同4位)】

統一戦の予定であったが突然対戦相手が変わって代役としてオラスクアガとなって寺地の楽勝と思われたが予想外の強剛で恐るべき相手であったが、9RTKOに下した。寺地は1敗のあとボクシングが変わって、離れても打ち合っても戦える選手に変貌し、脂がのってきた。

 

6位 4団体統一ライト級タイトルマッチ(5月20日)【 チャンピオン デビン・ヘイニー 対 ワシル・ロマチェンコ 】

技術的に高いレベルでの一戦となったが、僅差でヘイニーがタイトルを守った。以前のロマチェンコに比べて力の衰えを感じさせる試合となった。圧倒的な技術力で、圧倒的にテクニックの差を見せていたのに、その冴えは失われていたようみえる。

 

7位 3団体統一 L ヘビー級タイトルマッチ(1月28日)【 チャンピオン アルツール・ペテルビエフ 対 アンソニー・ヤード 】

接戦、激戦となり最近の試合では最も苦戦した試合となったが、9R右のオーバーハンドでヤード ダウン。立上ったが、レフリーがこれ以上危険とみてレフリーストップ。ヤードが8Rまで審判3人の判定でリードしており、まさに冷や汗の勝利となったが、ペテルビエフはこれで19戦全勝全KOの記録となった。

 

8位  WBC暫定 Sミドル級タイトルマッチ(3月26日)【 チャンピオン ディビット・ベナビデス 対 ケイレブ・プラント 】

前半はプラントのペースで推移してきたが中盤からベナビデスが反撃に出て、8Rにはブラント鼻血を出し、ダウン寸前に追い込まれるが、9R以降ブラント必死の反撃に出て見ごたえのある打ち合いを演じて終了。判定はベナビデスに大差で下る。

 

9位 Sミドル級のサウル・カネロ・アルバレスとSウエルター級のジャーメル・チャーロ がお互い4団体の王者の王者の戦いで、アルバレスの4団体のタイトルをかけて対戦(9月30日 )。チャーロの左ジャブが当るが、カネロは平然とした前進に圧力負けしたチャーロは7Rアルバレスの右フックがテンプルにヒット、チャーロ初めてのダウンを喫したが、その後プライドをかけて頑張り判定に持ち込んだ。判定は大差でカネロに上った。体重差はいかんともならなかったという事であった。

 

10位  WBO Sフェザー級王座決定戦(2月3日)【 エマヌエル・ナバレッテ 対 リアム・ウィルソン 】

4Rナバレッテまさかのダウンを喫したが、その後のウィルソンの経験の無さから詰められず、やがて立上ったナバレッテが経験を生かして9RTKOに辛うじて下した。この試合の後ロブソン・コンセイサンと対戦引き分けている。ナバレッテは階級を上げて闘っているがフェザー級まではその体力とパンチ力で相手を圧倒してきたが、一階級違うだけで、試合は苦しくなり苦戦が続いている。

 

11位  WBO Sライト級タイトルマッチ(6月10日)【 ジョシュ・ティラー 対 ティモフィオ・ロペス 】

ロペスは階級を上げてパンチ力が生きティラーを判定に下す。ティラーは元4団体統一チャンピオンだった。

 

12位 WBO ヘビー級タイトルマッチ(暫定)(4月16日) 【  ツァン・チレイ 対 ジョー・ジョイス】 前戦でジョイスは初黒星でタイトルを失い、リターンマッチであったが、チレイの左ストレートの威力に腰が引けて一方的な試合となり、2R右ストレートの一発でジョイスTKOで敗れる。

 

13位  WBO Sウェルター暫定王者タイトルマッチ()【 チャンピオン ティム・チュー 対 トニー・ハリソン 】

9R 右フックからの右アッパー連続6発でTKOにハリソンを下す。

 

14位 IBF ウェルター級暫定チャンピオンタイトルマッチ()【 ジャロン・ユンス 対 ロイマン・ビリヤ 】

一方的な試合で10RKOにビリヤを下す。これでエンスは31勝28KO となりテレンス・クロフォード打倒の一番手となる。

 

15位 WBC 暫定 Sウェルター級タイトルマッチ () 【 チャンピオン セバスチャン・フンドラ 対 ブライアン・メンドサ 】

フンドラは身長が197㎝でニックネームはタワーリング・インフェルノ、しかし接近戦を好み打ち合う選手だが7Rメンドサの左フックでダウン。立上ったところに右ストレートからの左フックでKO負けを喫した。6Rまではフンドラのパーフェクト採点だったのに。

 

16位 WBC ライト級王座決定戦  () 【 シャクール・スティーブンソン 対 エドウィン・デ・ロス・サントス】

戦前の予想ではスティーブンソンの圧勝でであったが、予想に反して大苦戦。同じサウスポーでスタイルがよく似ている両選手でスティーブンソンはやりにくかったようだ。以後スティーブンソンと対戦する選手はサントス戦を大いに参考にする事であろう。

 

17位 IBF フェザー級タイトルマッチ ()【 ルイス・アルベルト・ロペス 対 マイケル・コンラン 】

ロペスは常識外れの選手でジャブは殆んど出さずにフック、アッパを振り回しストレートは出さない。しかしスピードはありパンチ力もスタミナもあり右アッパー 一閃TKOに混乱を下す。ロペスは面白い選手で人気を集めそうだ。

 

18位 WBC バンタム級王座決定戦 ()【 ノニト・ドネア 対 アレハンドロ・サンティアゴ 】

12R 判定でドネア敗れる。ドネアも40歳老いたか。

 

19位 WBA、IBF バンタム級タイトルマッチ ()【 チャンピオン ムロジョン・アマダリエフ 対 マーロン・タバレス 】

オッズは4:1でアマダリエフだったが、番狂わせでタバレス判定勝ち。

 

20位 IBF バンタム級王座決定戦 () 【 エマヌエル・ロドリゲス 対 メルビン・ロペス

ロドリゲス 】ダウンを奪ったうちで判定にロペスを下し戴冠。井上に敗れてそのあとツキがなかった。ロドリゲスが実力を発揮してやっとタイトル。

 

2023年のボクシングは2022年に比べて好試合が多く充実していた。ちなみに22年は 

井上尚弥 対 ノニト・ドネア 戦、

ゲンナディ・ゴロフキン 対 村田諒太 戦、

ジャーメル・チャーロ 対 ブライアン・カスターニョ 戦、

ジャボンティ・デービス 対 ローランド・ロメロ 戦、

カネロ・アルバレス 対 ゲンナディ・ゴロフキン 戦、

タイソン・フューリー 対 ディリアン・ホワイト 戦、

アルツール・ペテルビエフ 対 ジョー・スミス 戦、

カルロス・クワドラス 対 ジェシー・ジェイムス・ロドリゲス 戦、

ディオンティ・ワイルダー 対 ロバート・ヘレニウス 戦

等が上位を占めた。全体的には低調であった年である。  

 

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス Tモバイル・アリーナ   WBCライト級王座決定戦 エドウィン・デ・ロス・サントス vs シャクール・スティーブンソン  試合日 2023年11月16日

会場 米国 ネバダ州ラスベガス・Tモバイル・アリーナ 試合日 2023年11月16日

WBCライト級王座決定戦 

エドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ共和国)28歳 戦跡 17戦16勝14KO 1敗 14KOは全て4 R以内の強打者である。

シャクール・スティーブンソン(米国)26歳 元2階級王者(フェザー級、Sフェザー級)戦跡 20戦全勝10KO ボクシング界きっての技巧派、リオ五輪の銀メダリスト。

お互いサウスポー

1R サントスは顔面へのヒットは難しいとみてボディ中心に攻める。

2~12Rまで、お互いにフェイントの掛け合いをしながら、左のパンチは危険とみて、ほとんどが右ジャブ、右フックを出し合うがクリーンヒットはおろか身体にパンチが当らないまゝ終了。

判定は困難とみられたが試合の流れが強打のサントスのパンチが当らず、技巧派のスティーブンソンのペースで進んだとみた審判がスティーブンソンの方に軍配をあげた。

判定は115:113、116:112、116:112であった。

このような試合は大分予想する事が出来たが、スティーブンソンの試合は毎度このような形になるので観客は消化不良のまゝ終了する為に、今後観客動員の上からも、TV観戦の上からも、何とかスティーブンソンに考えてもらわずばなるまい。キューバのギジェルモ・リゴンドーのようにオリンピックで2回金メダルを取り、プロに転向してもサウスポースタイルからの右ジャブ、左ストレートのカウンターで待ちのボクシングではあるが、面白味が乏しく強いが対戦相手が見つからず、マッチメイクがなかなか出来ないのはボクシングファンから好まれないからであった。

スティーブンソンもこの轍を踏むことのないように考える事を望むばかりである。

ファンが喜ぶ事で成り立つプロボクシングであるのだから、何はともあれ、スティーブンソンは無敗のまゝ3階級制覇を制覇を成し遂げた。

 

会場 豪州 ブロードビーチ ゴールド・コースト・コンベンションセンター WBO Sウェルター級タイトルマッチ チャンピオン ティム・チュー vs ブライマン・メンドサ  2023年11月13日 ( 試合日 10月15日 )

会場  豪州  ブロードビーチ  ゴールド・コースト・コンベンションセンター 

試合日 2023年10月15日

WBO Sウェルター級タイトルマッチ 

チャンピオン ティム・チュー(豪州)28歳 戦跡 23戦全勝17KO 

対戦者 ブライマン・メンドサ(米国)29歳 戦跡 24戦22勝16KO 2敗

4団体統一王者 ジャメール・チャーロは暫定王者ティム・チューと対戦する義務があったが、これを回避して、4団体統一 Sミドル級王者カネロ・アルバレスに挑戦した為、WBOは王座を剥奪し、チューが正王者となった。一方のメンドサはWBC Sウェルター級の暫定王者だったがセバスチャン・フンドラが2023年4月9日メンドサに7回逆転の右アッパーカットでKOされ、メンドサはこの一戦で注目度が急上昇した。チューにとっては過去最強の相手である。

1~4Rあたりまで チューは回ったり構えて圧力をかけ前進、手数は少ないものゝ左ジャブ、右ストレート、フックと正確なパンチで優位に立つ。

5R 左フック、左アッパーを顔面に右ストレート3発と有効打が増え始め、メンドサの右目下腫れて傷ついている。

6R メンドサ、これではならじと反撃を開始。

7~9R チュー、左ジャブ、左右フック、アッパーと多彩な攻撃を強めて、メンドサ終始ロープに詰められて劣勢に陥る。

10R チュー、ボディに3発、残り30秒から猛攻。メンドサ  ダウン寸前に追い込まれる。メンドサ左目下マブタ切る。

11R チューの攻撃は続く。

12R チュー KOを諦めて終了。

判定は116:111、116:112、117:111でチューの完勝。

試合は1ラウンドから終始チューに押されぱなっしで、たまらず反撃するメンドサであったが、身体が起きてしまっている為に力強いパンチは打てずに、チューの省エネ・ボクシングに思うように運ばれた。チューは堅いガードと柔らかい身のこなしで、相手の攻撃をことごとく躱して、ほとんどパンチを喰わない上、チャンスを見るや猛然と集中打を浴びせ迫力満点の試合であった。メンドサも堅い防御と威力のあるパンチと強靭な体力で渡り合ったのはさすがであったが、終始チューの圧力に押されっぱなしで、ロープ際に詰まっていては勝ち目はなかった。

チューは過去3戦で急速に実力をつけ、自信も確たるものとなった。

予定通りジャーメルと対決していたら勝ち目は薄かった事であろうが、現在ではやゝ対等に近づいたと思われる。しかし、今まで通りチャーロに圧力をかけて前進する事が出来るかは疑問である。チューはSウェルター級からSミドル級まで誰とでも闘うと発言しているが、それはチャーロとカネロを念頭に置いている事である。もしチャーロに勝つ事があれば文字通りのスーパースターとなる。

 

会場 ロンドン ウェンブリー・アリーナ WBO 暫定ヘビー級タイトルマッチ チャンピオン ツアン・チレイ vs ジョー・ジョイス 2023年10月30日 ( 試合日 現地 9月23日 )

WBO 暫定ヘビー級タイトルマッチ    試合日2023年9月23日

チャンピオン ツアン・チレイ(中国)40歳 戦跡 27戦25勝20KO 1敗1分 2008年北京五輪銀メダリスト ニックネームは「ビッグバン」(大爆発)

挑戦者 ジョー・ジョイス(英国)38歳 戦跡 16戦15勝14KO 1敗 前戦でチレイに判定で敗れてタイトルを失っており、今回はそのダイレクト・リマッチである。2016年のリオ五輪の銀メダリスト。

ちなみに前戦のオッズは8:1でジョイス。今回のオッズは13:11でチレイである。

前回の戦いでジョイスは体重差を感じていたか、今回は11㎏増量して127.45㎏、これに対してチレイは4.1kg増量して130.18kg でこの試合に臨んでいる。ジョイスの増量は果たして正解であったのか。

1R ジョイスは盛んに左ジャブを出すが距離が合わずに届かない。チレイの左ストレートに前回散々に痛い目にあった事から痛い目に遭った事から極度に警戒して、右拳をしっかりと右顎につけてて構える、お互いに様子見のラウンドである。

2R ジョイスは頭を絶えず動かし、上体も揺すって、チレイの左ストレートを警戒していたが、その立ち位置が悪い為に、チレイの左ストレートを4、5発受けてタジタジとなる。

3R ジョイスはチレイの左ストレートは充分に警戒していたが、左のガードは下がったまゝで、そのまゝ右フックを振った際にチレイの右ショート、フックのカウンターの直撃を受けてダウン。そのダメージは大きく、立上る事が出来ないまゝKOで敗れることとなった。

ジョイスはチレイとの体重差を考慮して増量、また右のガードも高く掲げて試合に臨んだが、元来サウスポーが苦手であり、基本的には左回りに動いて、相手の左の攻撃を遠ざけて闘うものであるのに、チレイの正面に立つことによって左ストレートの恰好のターゲットとなってしまった。悪いことに前戦で数多くの左ストレートによるダメージを受けた事による恐怖心が拭いきれずにいた為か、及び腰に腰が引けており、自分のパンチに全く威力がない為、チレイに見縊られる結果を生んでしまった。

チレイは前回の戦いで自信を持ったのか今回はどっしりと構えて、ジョイスに圧力をかけて、前回とは見違えるような試合であった。

これによってジョイスの世界戦への見透しは消滅したとみてよいであろう。もともと戦跡ほどの実力があったとは思えない選手で、銀メダリストとしての平均的レベルではあったが、スピード、パンチの威力、スタミナ等に特に秀でているとは言えない選手ではあった。

チレイはタイソン・フューリーと戦いたいと語っていたが、その実力の差は歴然としており、多分勝負にならないであろう。

そもそもチレイ、ジョイスの初戦でチレイが勝つと予想した関係は居なかったのが実情で、チレイの実力はその程度とみるのが妥当であるとみられる。

 

『 井上 尚弥 』 について  2023年10月27日

はじめに

2023年7月25日WBC、WBO Sバンタム級王者でこのクラス最強と云われて21戦全勝のスティーブン・フルトン(米国)にバンタム級4団体統一王者井上尚弥が階級をあげて挑戦した。井上はこれを8RTKOに下し、4階級制覇王者となった。両者のファイトマネーは軽量級としては破格の各5億円であった。

 

1.井上尚弥 経歴 

神奈川県横浜市出身1993年4月10日生まれ。18才の時世界アマチュア選手権でベスト16に残っている。

 

2.戦跡 

・2012年10月2日 クリソン・オマヤオ(フィリピン)を4RKOに下してプロデビュー。

・2013年1月5日 ガオプラチャン・チューワッタナ(タイ)を1RKOに下す。

・2013年4月16日 佐野 友樹を10RTKOに下す。

・2013年8月25日 田口 良一を10R判定に下す。日本 Lフライ級王座獲得。

・2013年12月6日 ヘルソン・マンシオ(フィリピン)を5RTKOに下し東洋太平洋 Lフライ級王座獲得。

・2014年4月6日 アドリアン・エルナンデス(メキシコ)を6RTKOに下しWBC Lフライ級王座獲得。

・2014年9月5日 サマートレック・ゴーキャットジム(タイ)を11R TKO に下す。

・2014年12月30日 オマール・ナルバエス(アルゼンチン)2R KOに下す。WBO Sフライ級王座獲得。2階級下げて王者ナルバエスに挑戦したが、ナルバエスは当時39歳、11度の防衛を誇っており、絶対王者であったが井上尚弥は2Rまでに4度のダウンを奪って2階級制覇を果たした。21歳である。 

・2015年12月29日 ワルリト・パーナス(フィリピン)を2R KOに下しす。

・2016年5月8日 ダビド・カルモナ(メキシコ)を12R判定に下す。

・2016年9月4日 ペッチバンボーン・ゴーキャットジム(タイ)を11RKOに下す。

・2016年12月30日 河野 公平を6RTKOに下す。

・2017年5月21日 リカルド・ロドリゲス(米国)を3RKOに下す。

・2017年9月9日 アントニオ・ニエペス(米国)を6RTKOに下す。

・2017年12月30日 ヨワン・ボワイヨ(フランス)を3RTKOに下す。

・2018年5月25日 ジェイミー・マクドネル(英国)を1RTKOに下す。WBAバンタム級王座獲得。

・2018年10月7日 ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を1RTKOに下す。

・2019年5月18日 エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を2RKOに下し、IBFバンタム級王座獲得。

・2019年11月7日 ノニト・ドネア(フィリピン)を12R判定に下す。WBCバンタム級王座獲得。

・2020年10月31日 ジェイソン・マロニー(豪州)を7RKOに下す。

・2021年6月19日 マイケル・ダスマリナス(フィリピン)を3RKOに下す。

・2021年12月14日 アラン・ディパエン(タイ)を8RKOに下す。

・2022年6月7日ノニト・ドネアを2RTKOに下す。

・2022年12月13日 ポール・バトラー(イギリス)を11RKOに下す。WBO獲得で4団体統一。

・2023年7月25日 Sバンタム級WBC、WBO王者スティーブン・フルトン(米国)に挑戦 8RTKOに下し4階級王者となる。

 

3.井上尚弥の強さは一体どこにあるのか?

近年ボクシングの防衛技術は長足の進歩をみせて、プロボクサーなら誰でも、普通にストレートやフックを振っても絶対と言って良い程当たるものではない。強打をヒットする為には相当の技術を凝らさなければならない。

井上の初の渡米戦の相手(2017年9月9日)アントニオ・ニエベスは敗戦後『アマチュアでもスパーリングでもあれ程のボクサーと対戦した事はありませんでした。世代に一人現れるかどうかという選手でしょう。井上に負けて、リングを降りる時に、これ以上のボクサーと戦う事はもう二度とないと感じたんです。階級最高の選手と戦い、多くを学びました。その経験があったから、あの試合の後はより自信を持ってリングに立てるようになったのです』『井上はとてつもないボクサーでした。パワーは跳び抜けており。すべてのパンチが強打で、軽いパンチはありませんでした。ジャブの上手さは自分が戦ってきた階級では段違いでした。フィジカル面も強く、本当に何でも出来る選手でした。』と語っている。

 

4.立ち位置と顔の傷との関係

見た目は攻撃的なスタイルだが、過去の試合の終了時、彼の傷ついた顔を見たことがない事からも分かるように、自分の立ち位置を良く知っていて、自分はパンチを貰わない位置に絶えず移動しており、攻撃された時の頭の位置の動かし方がうまく、この防御技術があってこその、攻撃力が光っているのだ。

 

5.戦い方

離れている時は左ジャブを繰りだしているが、井上の左ジャブの威力は全階級の中で、天才ワシル・ロマチェンコと1,2を争う巧さがあり、井上の最重要な武器なのである。

接近すると、フック、ストレート、アッパーとボディブローと多彩を極め、しかもいずれも強力である。この攻撃の間に防御を挟んでの波状攻撃をとる。このリズムが極めて速い。しかも立ち位置が良く、また相手の動きが良く見えている事から、常に余裕を持つことができる。そして恐るべきは左ボディブローで、この必殺の武器は世界戦で何度も、これによって倒された選手は多いのだ。ボディブローは何故重要か。”みぞおち”は呼吸を困難にし、肝臓は打たれる事で激しい鈍痛と身体的機能の低下を引き起こす。”みぞおちは”は力を入れゝば耐えられるが、肝臓は耐えられないからだ。井上は試合中にボディブローを数多く打つが、しかしここぞと云う時に強烈なボディブローは必殺の威力がある。

 

6.試合を構成する能力

対戦する相手により、また試合中でも瞬時に作戦を切り換える能力があり、自在に試合を組み立てることが出来る。ジェイソン・マロニー戦ではマロニーが技術的にも高度なテクニックを有し、タフで足も早い事から序盤ではジャブの差し合いで優位に立つや(そもそもジャブの威力が全く違う)その優位を生かし、中盤に差し掛かるとみるや、圧力を掛けるのを止めて距離をとり、マロニーを自分の懐に誘い込むと見る間に、右ストレートのカウンター  一発でマロニーをダウンさせている。フルトン戦でもジャブに絶対の自信を持っており、リーチの長さでも優位に立っていたフルトンに対してスピードと距離に測り方の巧みさで優位に立つや、フルトンの焦りを誘って、蟻地獄に誘い込み 8RTKO に下している。頭脳戦でも彼等を凌駕していたのである。

 

8.次回の対戦への期待

WBA、IBFの王者マーロン・タパレス(フィリピン)との対戦も決まっており、余程の事がない限り4団体統一は成し遂げる事であろう。近い将来、フェザー級への転身も現実のものとなってきた。

***2023年10月17日の戦跡 25戦全勝22KO ***

 

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス T モバイル・アリーナ4団体統一Sミドル級タイトルマッチ チャンピオン サウル・カネロ・アルバレス vs ジャーメル・チャーロ (試合日 2023/9/30 )

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス Tモバイル・アリーナ 試合日2023年9月30日

4団体統一Sミドル級タイトルマッチ 

 

チャンピオン  サウル・カネロ・アルバレス 出身メキシコ 33歳 戦跡 63戦9勝39KO 2敗2分 ニックネームは「カネロ」

戦歴 WBA、WBC、WBO S ウェルター級王者 WBA、WBC、IBF ミドル級王者

(現在)WBA、WBC、IBF、WBO S ミドル級王者  WBO L ヘビー級王者

世界戦の戦跡 23戦20勝11KO 2敗1分

 

挑戦者  ジャーメル・チャーロ(米)33歳 戦跡 37戦35勝19KO 1敗1分

(現在)WBA、WBC、WBO、IBF Sウェルター級王者 ニックネームは「アイアンマン」

1R チャーロ 左ジャブ8発、中盤まではリング中央でお互い様子見だが、中盤以降カネロ間合いを詰めて左フック、左・右フックをチャーロのガードの上を叩き、チャーロをローップに詰める。

2R カネロ、右フック顔面、左フック、右フックボディ、共にガードの上ながら叩く。その迫力にチャーロ押されてロープに詰まってペースはカネロに。

3R チャーロの得意の左ジャブはカネロの前進を止められず、一方的に押されて後退しロープにロープに針付けとなる為に腰が浮き上体は起こされることで威力のあるパンチが打てない。

4R カネロの左フック ボディに。圧力は一段と強まる。チャーロはこのまゝでは勝つことは難しいと判断したか、反撃に出て、左・右フックがヒットするが、カネロの圧力を止められずに又も後退を余儀なくされる。

5R チャーロの最大の武器である右ストレートが全く出ないのは、カネロの、チャーロのパンチに合わせて繰り出す左フックが恐ろしいからで、止むなく左フックが唯一の武器となっているが、カネロの左右フックが上・下に打ち分けられ、時折放たれる右アッパーが至近距離から出されるので防御に追われる。

6R 前ラウンド同様。

7R カネロの左ジャブ2発のあと狙いすました右フックとストレートの中間程のパンチがチャーロのテンプルにヒット。チャーロ ボクシング生活初めてのダウン。

8R チャーロ反撃に出てこの試合始めてのワンツーが顔面にクリーンヒットするがカネロは何事もなかったかの如く前進を止めない。チャーロは攻撃に出て何とかこのラウンド凌ぐ。

9R チャーロも顔、ボディと打ち分けてくる。カネロの強打を上手くガードで守りクリーンヒットは許さないが、カネロはガードの上を執拗に叩いて、チャーロを防御に専念させる。

10R カネロの圧力と多彩なパンチに一方的になり、このラウンド終了時チャーロは首をかしげる。

11、12R チャーロも何とか逆転を狙ってリング中央で足を止めて打ち合い終了。

 

判定 119:108が2人 118:108が1人でカネロの圧勝となる。

Sウェルター級のリミットは69.853㎏、Sミドル級のリミットは76.203㎏ と約6.5㎏の体重差があり、これがチャーロに重くのし掛かってきたのである。

チャーロはSウェルター級での闘いでは対戦相手に対して自分の体力、パンチの爆発力が常に優位にある事から、対戦相手が防御中心に対応してくる為に存分に自分のパンチを振る事が出来、相手は警戒心で腰が引ける為にパンチの威力が半減する事から圧勝してきた。チャーロはカネロの過去2試合を見てこれなら勝てるかもしれないと思ったことであろう。

チャーロの戦略は相手より長い自分の左ジャブでカネロの前進を止めて右ストレートで勝負する。それでも前進してきたら足を使っていなし、カネロの焦りを誘う作戦であったろう。

しかし始まってみると肝心の生命線である左ジャブではカネロの前進を全く止められなかったし、次いでの右ストレートはカネロの左フックの迫力で出すことが出来ない羽目に陥って、左フックしか打つ手がなくなった。カネロの圧力は想像を遙かに超えており、いくらジャブを出しても、ワンツーを振っても、顔色一つ変える事なく平然と迫ってくるカネロに精神的にも押されて、対抗する手段を見出せないまゝラウンドを重ねてしまったものである。

中盤に何とかしようと攻撃に転じた場面もあったが全く通ぜず、後退を繰り返す事となってしまった。

しかし試合を振り返ってみると、パンチの有効打はむしろチャーロにあったが、カネロの7ラウンド右ストレート 一発の威力で、すべてが吹き飛ぶようでその他のカネロのパンチは大部分チャーロはガードしていたにも拘らずガードの上から叩かれ続けてチャーロは消耗し劣勢に追い込まれて行ったのである。それも当然、カネロはLヘビー級のタイトルも獲った実力者であるからである。

ライトヘビー級のリミットは79.379kgとLウェルター級とは10㎏の差があるのだ。

そのクラスを相手にして来たカネロにとってチャーロのパンチの威力は「まぁ、こんなものか」と思ったに違いない。チャーロはリング上で対面したとき「しまった!」と思ったことだろう。

Sウェルター4団体統一チャンピオンとSミドル級4団体のチャンピオンが撃突する過去に類を見ない試合は激戦の勇カネロに軍配が上がった。

カネロは従来の威力は些か衰えたとは云うものゝ4クラスに亘って多くの強豪と渡り合った経験はチャーロの及ぶところではなく現在も依然としてボクシング界のスーパースターである事を証明してみせた。

なおカネロの破れた相手は天才フロイド・メィウェザーに1:2の惜敗、及び Lミドル級のドミトリー・ビボルでの判定での完敗がある。

 

会場 有明 アリーナ  WBC、WBO Sバンタム級タイトルマッチ チャンピオン スティーブン・フルトン vs 井上尚弥       2023/9/11 (試合日 7月25日)

WBC、WBO Sバンタムタイトルマッチ

チャンピオン スティーブン・フルトン (米)29歳 戦跡 21戦全勝8KO、3度目の防衛戦 ニックネームは「クールボーイ」

挑戦者 井上尚弥(日)30歳 戦跡 24戦全勝21KO、バンタム級4団体統一後すぐにこれを放棄してSバンタム級で今回の挑戦となる。このクラス最強と目されるフルトンに挑戦した。ニックネーム「モンスター」

世界戦の戦跡  フルトン 3戦全勝, 井上 19戦全勝17KO 

1R 井上は珍しくL字ガードで立ち上がる。左ジャブをボディに4発顔面に1発。フルトンの左ジャブは届かない。井上はこれはいけると自信をもったようだ。

2R 井上はこのR大きな右フックを数発顔面に見舞う。当てるのが目的ではなく、これが当ったらと相手に恐怖感を与えるのが目的のようだ。ジャブは速くて長く良くヒットしている。井上はあまり深追いせずに前半はポイントを挙げて優位に立つ事を考えている。

3R  フルトンはペースを取り戻すべく左ジャブを突くが井上右を被せてくる。井上は左右をガードの上から叩く。ボディも抜かりなく攻撃。フルトン鼻血を出す。

4R フルトンペースを掴みたいところから自慢の左ジャブから足を使って相手の攻撃をかわしたいところだが、左ジャブがヒットせず仕方なく打ち合いに出るが打ち負ける。

5R フルトン出たいところだが、井上の威力あるパンチに思うように出られない。フラストレーションが溜まっているようだ。

6R 井上、ぺーすを落として後半に備えるラウンド。

7R フルトン強めに出て、左右パンチが数発ヒット。

8R 井上の左ボディ、ストレートからの右ストレートでフルトンダウン。立上ったところに連続攻撃で再び左ボディブローからの右ストレート、左フックでフルトン2度目のダウン。レフリーストップを宣言。

 

フルトンは自分のリーチの長さが井上よりも9cm 長い有利さを生かし、得意の左ジャブで先手を取って井上の出鼻を挫き、なお井上が自慢の強打を振って前進するところを足を使って往(い)なし、巧みに翻弄する作戦を描いていた事であろう。

今までこれで成功してきたのだから。

しかし始まってみると、肝心の左ジャブが届かない上に、井上の左ジャブが的確にヒットするではないか。更に井上の左ボディジャブも有効で、1~3R 井上にすっかりペースを握られてしまったのである。

井上は左ジャブを有効に使って尚ボディを中心に攻撃を集中し序盤優位に立つや、フルトンを追い掛け回すような愚は冒さず、相手の反撃せざる得ない立場に追い込んで深追いすることなく冷静に優勢を続けた為、フルトンは足を使う事も出来ず、挽回するには攻撃をするしかない立場に追い込まれてしまう。

フルトンは井上の仕掛けた罠にまんまと嵌ってしまったのである。勝つためには攻撃するしかなく、ここで井上の強打の餌食となってしまった。

フルトンの得意技を封じて、終盤焦ってきたフルトンを強打でし止める井上の頭脳の勝利でもあった。多分井上は1~3R終了時で勝利を確信した事であろう。

 

Sバンタム級最強と評されたフルトンを破って4団体も見えてきた。多分年内にもWBA、IBFスーパーバンタム級王者マ-ロン・タバレス(40戦37勝19KO 3敗)との試合は実現しそうで、気の早いトップランク社のボブ・アラムはもうフェザー級の対戦相手を探していると噂されている。

なおリング上で観戦していたタバレス選手が上がって、年内には対戦しようと合意している。井上選手は外にジョンリエル・カシメロ 戦跡 37戦33勝22KO 4敗とルイス・ネリ 戦跡 36戦35勝27KO 1敗 とも対戦したい旨語られた。多分これ等の試合を前後して、フェザー級への転向もあり得るのではないかと関係者の多くが望んでいるようである。

 

開催地 米国 NJ州 アトランティック シティ IBFウェルター級暫定王座タイトルマッチ チャンピオン ジャロン・エニス vs ロイマン・ビリャ  2023/8/28(試合日7月8日)

IBF ウェルター級暫定王座タイトルマッチ

チャンピオン ジャロン・エ二ス(米)26歳 戦跡 31戦30勝27KO 1無効試合 スイッチヒッター

挑戦者 ロイマン・ビリャ(ベネズエラ)30歳 戦跡 27戦26勝24KO 1敗 IBF 同級2位

1R 両者右構えで始まる。エ二ス右ジャブを数多く上・下に打ち分ける。ビリャはガードを高く掲げて前進するが、エ二スの右ジャブが邪魔で手が出ない。ビリャ鼻血を出す。

2R エ二スは1Rから9Rまでコーナーで座らずに立ったまゝ。エ二ス  テンポをあげてこのR終盤左右の連打を連射砲のようにくり出す。

3R 接近戦でお互いに一歩も引かずペースを取り合う。

4R エ二スの右ストレートが堅いガードの真ん中を通して再三ヒット。ボディに左ストレートついでの右アッパー、ビリャも接近してパンチを振うがヒットせず。

5R お互いに接近して打ち合うが的中率は断然エ二ス。ビリャはロープにエ二スを詰めてパンチを振うがほとんど当てさせてもらえない。

6R エ二スのクリーンヒットが次第に多くなり中盤左右フックがヒットするや猛攻を見せてビリャグぐらつく。エ二ス 倒しにかかる。

7R エ二ス左ボディブアッパーの連打、顔面、ボディにフック、アッパーを打ち分け、いよいよ終盤が近くなってきた。

8R ビリャ右フックを思い切って振うが残念ながらまともにヒットせず。エ二スの左・右フック、アッパーがボディに集中。ビリャ マウスピースを落とす。

9R エ二スの左ストレート、ついでの右アッパー更に左フックでビリャついにダウン。レフリーここでKOを宣言した。

 

ビリャも強打者ではあったが如何せんこれまでの相手とまるでレベルが違う相手で、自分の自慢のパンチは一発も当てさせてもらえず完敗となった。エにスの強さは先ず勘が良く、正面に立っていても、接近戦でも、防御に自信をもっており、堅いいガードの相手にも、その真ん中を打ち抜く技術を持ち、試合の途中でも自在に左・右の構えを変更し、前半はスピードを優先し、弱らせたあとはテンポを上げて強烈なパンチを打ち込む。試合を自分で構成する能力を有しており、足腰も確りしており、倒すパンチは強烈である。4団体統一チャンピオン テレンス・クロフォードの最強の相手としての実力を遺憾なく発揮した。クロフォードも大一番を終えたばかりと言う事もあって、直ぐにとは言えないがクロフォード対エニスの試合が今後の焦点となってきた。

 

会場 米国 オハイオ州 トレド・ハンティントン・センター   ヘビー級10回戦 ジャレッド・アンダーソン vs チャールズ・マーティン 試合日2023年7月1日

ヘビー級 10回戦

ジャレッド・アンダーソン(米)23歳 戦跡14戦全勝14KO

現在4団体のうち、過去はアメリカの独壇場であったチャンピオンは一人もいないのだ。その中で数少ないホープがこの全勝のアンダーソンであり、アメリカの希望の星でもある。

対戦者 チャールズ・マーティン(米)37歳 戦跡 33戦29勝26KO 3敗1分 元 IBF ヘビー級チャンピオン。イギリスの全勝できたアンソニー・ジョシアに敗れてタイトルを失っている。3敗の内容はジョシアとルイス・オルティス、アダム・コウナッキである。

サウスポー

1R アンダーソン自信満々で圧力をかけて前に出る。マーティンはアンダーソンの周りを回って様子を見る。

2R アンダーソンは前進しながら攻撃の体勢をとる。マーティンはカウンターのチャンスを窺う。

3R アンダーソンの右フックがオープンブロー気味であったが、ヒットしマーティン ダウン。ゴングに救われる。

4R アンダーソン、 マーティンを追い回し途中集中打をみせる。終盤アンダーソン ノーガードで構え、余裕をみせる。

5R マーティンの左ストレート3発、左フック2発いずれもクリーンヒット。アンダーソン足がもつれふらつく。かなりのダメージを受けたようだ。

6~9R 6Rマーティン終盤のスタミナ切れを考えてかこのR休む。アンダーソンは4Rのダメージを引きずり、またマーティンのカウンターを警戒して攻撃力が弱まる。

10R マーティンの集中打を浴びて辛うじてゴングに救われる。

 

判定は98:91が2人、99:90が1人でアンダーソン勝利したが、アンダーソンはマーティンが既に37歳で力も落ちてきている事を考えれて、KO勝ちは確定と判断したのであろう。自信満々、相手を呑んでかかったが流石に元チャンピオンの実力は伊達ではなかった。5Rマーティンは切れ味鋭く、あわやダウンに追い込まれて、6Rマーティンが追い打ちを掛ければどうなったか分からない。どうもマーティンには何が何でも勝とうとする様子が見られず、KO負けだけは避けたいとの思いがみられ、元チャンピオンの体面だけは保ちたいという考えがみられた。

 

*** アンダーソン対マーティンの対戦に思い出される或る一戦 ***

2022年11月 ルイス・オルティス 44歳 戦跡 33勝28KO 2敗) アンディ・ルィス (33歳 戦跡 30勝22KO 2敗)でWBCヘビー級挑戦者決定戦が行われた。

オルティスが3度のダウンにも拘わらず12R闘い、僅差の判定で敗れている。両者とも12Rに至ってもスピード、パンチ力、スタミナに些かも衰えを見せず、共に一発必倒のパンチを警戒する緊張感溢れる一戦であった。オルティスは長い右ジャブ、を断えず突いて圧力をかけチャンスとみるや左ストレートを打ち込む。かたやルイスは肥満体にも拘らずスピード豊かな右ストレートのカウンターの力強さはさすがと思わせた。

両者の相手の一発必倒のパンチに細心の注意をはらいながらチャンスとみるや畳みかけるその迫力はこれぞ元チャンピオン同士と見応えがあった。一方のアンダーソンは目を見張るパンチ力がある訳でもなく、的確なリードパンチも打たれ強さも、スタミナもそこそこで、何ら特徴がみられず、この実力ではタイトルを取るのは難しいのではと思われる。ただヘビー級戦線は老齢化が進んでおり、ワイルダー、フューリー、ジョシア等が峠を過ぎてウシクが孤塁を守っている状態なので、このアンダーソンはもタイトルを獲れるかも知れないと思わせるのは誠に淋しい現状ではある。それにしてもオルティス、ルィス両者とアンダーソンではあまりにも格の違いが有り過ぎた。

 

会場 豪州 ゴールドコースト WBO Sウェルター級暫定王座防衛戦 チャンピオン ティム・チュー vs カルロス・オカンボ 試合日 2023年6月18日

WBO Sウェルター級暫定王座防衛戦  2023年8月7日 (試合日 6月18日)

チャンピオン ティム・チュー(豪州)28歳 戦跡 22戦全勝16KO 

挑戦者 カルロス・オカンボ(メキシコ)27歳 戦跡 37戦35勝23KO 2敗 3度目の世界戦である。

1R オカンボ 左ジャブ、フックを振って開始。チューはガードを高く掲げて接近する、やいきなりの右ストレートでオカンボ足が縺(もつ)れるところ、追い打ちの右、左ストレートのあと右ストレートでオカンボ ダウン。立ったところにチュー猛然と襲いかかるや、右ストレートからの左フックでオカンボ仰向けにダウン。レフリーはこれを見るや直ぐスットプを宣言。ティム・チューの1RTKOとなった。

 

チュ―は右ストレートがヒットするやワイドオープンでオカンボの反撃に委細かまわずに強打を決めた。ダメージを受けたオカンボのパンチは恐くないと踏んだのであろう。

余りにも派手なKO劇で、関係者もファンも2年間待たされていて、今年やっと対戦が決まった4団体統一チャンピオンのジャーメル・チャーロ戦がチャーロの怪我でキャンセルとなり、その代わりに組まれたのがこの試合であった。その事もあり、溜まった行きどころのない怒りがあったのであろう。チューの勢いは激しいものがあった。対戦したオカンボも世界戦の経験を持っており、まさかチューが初回から全開で来るとは思っていなかったであろう。チューの23年3月の対トニー・ハリソン戦をみても体力、スタミナ、パンチ力、スピード共に以前と比べて一段と力強さが増しており、自信に満ちている。

このハリソンはチャーロを下してタイトルを奪取した実績を有する実力者であったが、チュ―は彼を圧倒的に下している。

このクラスで無敵を誇っていたチャーロも果たしてチューを下せるか微妙になってきた。

試合前のオッズで多分チュ―に傾く事であろう。楺てて加えてチューの獰猛な戦い振りに対して、チューの颯爽とした風貌と試合振りは否が応にも人気を煽る事となるであろう。

 

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス T・モバイルアリーナ ウェルター級4団体王座統一戦 エロール・スペンス vs テレンス・クロフォード 試合日 2023年7月29日

ラスベガスでウェルター級4団体王座統一戦が行われた。世紀の一戦である。

 

 エロール・スペンス(米)33才 WBA、WBC、IBF ウエルター級3団体統一チャンピオン。戦跡 28戦全勝22KO ウェルター級通算7度目の防衛戦。

テレンス・クロフォード(米)35歳  WBOウェルター級チャンピオン  10連続KO中

 

②  両者の経歴

エロール・スペンス       

アマ戦跡  147戦135勝12敗   

獲得王座  3団体統一       

      ウェルター級王座   

世界戦成績 7戦全勝4KO     

 

 

テレンス・クロフォード  

アマ戦跡 70戦58勝12敗

獲得王座 WBOライト級王座

     4団体Sライト級王座

    WBOウェルター級王座

世界戦成績 17戦全勝14KO

 

  試合前の日本のファン予想

スペンス 32% クロフォード 63% 引分 5%

アメリカにおけるオッズは11:8でクロフォードである。

 

④  過去にも何度か大一番が戦われた。その最大の一戦はフロイド・メィウェザー対マニー・パッキャオ戦であったが、一方のパッキャオが既に晩年で相当体力が衰えていた為とメイウェザーが真剣に戦ったとも思えず、適当に試合を流した感があり、もしパッキャオがミゲール・コットやアントニオ・マルガリートを倒した頃に対戦して欲しかったとファンなら誰でも願った事であった。ゲンナディ・ゴロフキンとカネロ・アルバレスの一戦も然り。

それに比してスペンス、クロフォード戦は両者脂の乗り切った時点での対戦であり、しかもスピード、パンチ力体力と最も充実した実力者の揃った人気のクラスでの無敵の全勝同士で、KO率も高い二人とあって、近年で最も注目される試合となった。

やゝ心配さるのは2021年8月スペンスが網膜剥離で予定されていた対パッキャオをキャンセルしたあとウガス戦で勝利のあと1年3ケ月の空白がある事事のみである。ちなみにクロフォードは7ヶ月は振りの試合である。

 

⑤  さて試合である。 

スペンスはサウスポー、クロフォードはスイッチヒッター。

1R スペンスは先手を取るべく、右ジャブを突いて前進、ついで左ストレートの攻撃を2度。クロフォードはいつもの通り相手の出方、パンチのスピード、タイミングを図って手は出さず。

2R スペンスが右ジャブから左ストレートを出す間を狙っての右ジャブからの左ストレートでスペンス ダウン。

3R スペンスは2Rのダウンの挽回を図って攻勢を強めるが、焦りもあって攻撃が前がかりとなり、パンチも大振り、しかも攻撃が単調となり、余裕をもったクロフォードの右ジャブが悉くカウンターとなり、ペースはクロフォードのものとなる。

4R クロフォードは右ジャブ、左右アッパー、ストレートを顔面、ボディに巧みに打ち分けて、自信をもってきた。スペンス鼻血を出す。

5R スペンスに医者チェックが入る。クロフォード余裕しゃくしゃく。スペンスが攻撃に出れば右ジャブを主武器とし、時に左ストレート、アッパー、フックと自在に迎え打ち、相手が出なければ、追い込んで打ち込む変幻自在のボクシングを展開。

6R クロフォードはそろそろスピードをあげて攻撃を強めてくる。相変わらず右ジャブはストレートのように威力があり、スペンスは接近出来ない。無理に前に出ると右ジャブが悉くカウンターとなり、時折の左ストレートの威力は素晴らしい。 

7R スペンスは何が何でも接近して自分のパンチを打ち込むしかないが、威力は落ちてくるところに右ジャブ、左ストレート、右フック、アッパーでスペンス2度目のダウン。そのあと左ストレートを顔面、ボディに打たれ、右フックのダブルでスペンス3度目のダウン。

8R このRクロフォード一休み。

9R クロフォードの追い込み厳しく、連打でスペンス ダウン寸前に追い込まれてレフリーストップを宣言。

スペンスの顔面は腫れ上がり鼻血も止まらなかった。

 

⑥  この試合は2Rにスペンスのまさかのダウンで、あれ程の技術とパンチ力、スピードを有したスペンスがダウンを挽回しようとの焦りから攻撃が前がかりとなり、ワンパターン化して、自分の距離もつかめず、大振りのパンチを振り回すこととなて、クロフォードの術中に嵌ってしまった。3R以降は攻撃しても自分のパンチは全く当らないで、クロフォードの右ジャブはまるでストレートのように威力があり、ダメージを蓄積していき、何が何やら解らなくなってしまったようだ。

2Rのダウンがこの試合を決めたのである。3R以降は実力者が新人ボクサーに稽古をつけているようであった。

 

 クロフォードは元来スイッチヒッターであるが、最近はほとんどサウスポーで戦っている。右ジャブが速く、長く、かつ鋭くこれが主要な武器である。また右も左もパンチがコンパクトで且つ強い、ガードも固く、身体も柔らかく、防御技術も高い。

相手の出方に順応して、即座に対応する能力を有し、試合を支配する能力も高く、後半に一段とスピードをあげ、パンチ力も強めるテクニックもある。相手の力量を図る能力に長けて、どこから崩していくかを考える力がある。

近年の最高ボクサーはフロイド・メィウェザーであると考えているがクロフォードのKO率の高さはメイウェザーをはるかに凌いでおり、もし戦えばメイウェザーを上回る選手であるかも知れないとこの試合をみて思った。

現在すべての階級の中で最強の選手である事は間違いないと誰もが思うことであろう。

 

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス MGMグランドアリーナ  WBO Sフライ級王座決定戦  前WBO王者中谷潤人 vs アンドリュー・マロニー   試合日 2023年5月20日

会場 米国 ネバダ州ラスベガス MGMグランドアリーナ(試合日 2023年5月20日)

WBO Sフライ級王座決定戦

前WBOフライ級王者 中谷潤人(日本)25歳 戦跡 24戦18勝KO 無敗 今回階級をあげての試合。

対戦者 アンドリュー・マロニー(豪州)32歳 戦跡 25戦16KO 2敗 

中谷は全勝のまゝSフライ級でタイトル戦。身長170㎝、リーチ179㎝と軽量級では長身である。

2R 左アッパー3発のあと右アッパーでマロニーダウン。その後マロニー立上り、プレッシャーをかけて前進するが 11R 中谷の左ストレートにマロニー2度目のダウン。

12Rこのまゝ判定かと思えたがマロニーが左フックを振うのに合わせて頭を右下に傾けて躱しながらの左フックがマロニー顎に直撃。マロニー ダウンし、しばし立ち上がれず衝撃のKOとなる。

中谷は長い右ジャブで相手をコントロールし左ストレート、フックを武器とするが、日本人には珍しいアッパーを多用、長いジャブをかいくぐって内懐に入ってくる相手にアッパーを有効に突きあげる。懐の深いサウスポーは、相手にとっては極めて戦いにくい有利さがある。

中谷はこれに加えてスピードとパンチ力あり、攻撃力もあるし、闘争心も旺盛であり、将来的にSバンタム級あたりまで対応できそうである。井上に次ぐ有力候補である。

軽量級ではフライ級のジェシー・ジェィムス、ロドリゲスと並んで スーパースターになりそうな雰囲気を持つ候補の一人であろう。

 

なお対戦相手の双子の兄ジェイソンはバンタム級で25勝19KOで井上尚弥と戦7RKOで敗れている。試合のあと母国のラジオで井上について「彼は私にとって強すぎる」「とてつもなく速い、たゞたゞ尋常じゃない、信じられないはど素早い、彼はとてつもなく速くて、恐ろしいパワーを持っている」と語っている。

 

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス T-モバイルアリーナ WBAライト級タイトルマッチ ジャーボンティ・デービス vs ライアン・ガルシア   試合日 2023/4/22

WBAライト級タイトルマッチ 2023年4月22日 会場 米国 ラスベガス Tーモバイルアリーナ

 

ジャーボンティ・デービス(米)28歳  戦跡 28戦全勝26KO 3階級制覇チャンピオン

挑戦者  ライアン・ガルシア(米)24歳  戦跡 23戦全勝19KO 元WBCライト級暫定チャンピオン

両者の体格  

    デービス  ガルシア 

身 長   166㎝   174㎝

リーチ   171㎝   178㎝

と下から上がってきたデービスはやゝ小柄である。

試合前のオッズは13:6でデービス 。 

ファイトマネー デービス6億74万 ガルシア 3億3千5百万円。 

ペーパービューは別。

 

1R ガルシアは強烈な右フックを主武器として、攻撃優勢で防御はやゝ甘いが、この試合右拳をしっかり顎につけてデービスの左に対応しながら左ジャブを突いて圧力をかける。デービスは相手のスピード、パンチ力、出方を計ってパンチを出さず。

2R デービスは攻撃を強めたガルシアの左フックのあとの右フックを頭を下げて躱したとみるまに左フックを顎にヒット、ガルシア ダウン。立上ってガードに専念。

3R~6R ガルシアは両腕を高く掲げてガードを固めながら前進。左ジャブを中心に圧力をかけ続ける。

7R中盤 ガルシア左、右フックを振うところ、身をかゝめて内懐に入るや、左ショートパンチがガルシアの右フックで身体がのびたところに左レバーブローのカウンターとなり、やゝ時間をおいて膝をつき、そのまゝカウントアウトとなる。デービスの7回KO勝ちとなる。

ガルシアは元々攻撃型の選手で、その攻撃力が防御の役割を果たしてきた。今回デービスの強打を警戒してガードを高く掲げて対抗しようとしたが、左ジャブ、右ストレート、フックを繰り出したときに右ガードが下がり、そこをデービスに狙われた。両者にボクシングのレベルに歴然とした差があり、パンチ力も然りであった。デービスの相手の力を見極める能力は極めて高く、防御技術も思ったよりも高い。この選手を倒す可能性のあるのは唯一人シャクール・スティーブンソン以外にはない。両者の対戦がみたいものだ。

 

会場 オーストラリア ・ シドニー クドヌバンク・アリーナー    WBO S ウェルター級 暫定王座決定戦  ティム・チュー vs トニー・ハリソン 試合日 2023年3月24日

2022年10月31日以来中断していた観戦記はコロナ禍によって、好試合を組む事ができない為もあり、取り上げる程の試合が乏しかったからである。

しかしこの試合は久方振りに見事な闘いでありスーパースター誕生を思わせるものであった。

 

WBO Sウエルター級暫定王座決定戦

ティム・チュー(オーストラリア)28才 戦跡 21戦全勝15KO WBⅭ、WBO1位 

さてテイムの父親のコンスタンチン・チューはロシア、スヴェルドロフスクに1969年9月19日生まれの東洋系のロシア人である。95年にIBFスーパーライト級のジェイク・ロドリゲスをTKOに下しタイトル獲得、2年間保持した後1997年5月にビンセント・フィリップスに番狂わせの10R TKOに敗れてタイトルを失うが、1999年ミゲル・アンヘル・ゴンザレスを下してWBCタイトルを奪取、その後WBA、IBFのタイトルを獲得、怪我による1年以上のブランクの為WBA、WBCはタイトルを剥奪、再起戦でシャンバ・ミッシェルを3R TKOに下してIBFのタイトルを保持するが、2005年リッキー・ハットンと戦ったが、11R棄権してタイトルを失った。戦跡 34戦31勝2KO 2敗1無効試合 2敗はフィリップスとハットンによるものである。全試合をスーパーライト級で戦った。試合前も試合中も後も一切表情を変える事がなかった。パンチ力は際立っており、空手の掌底打ちのように右ストレートを打った。辮髪スタイルが珍しかったものである。

 

ティム・チューは2団体1位でタイトル挑戦を2年間待たされた揚げ句、やっとジャーメル・チャーロとの対戦がきまったが、そのチャーロの怪我によって延期となりその替わりにトニー・ハリソンとの対戦がきまった。

 

トニー・ハリソン(米国)32歳 戦跡 33戦29勝21KO 3敗1分 前WBC  Sウェルター級チャンピオン、 WBO3位 4団体チャンピオンに挑戦して、これを判定に下したがリターン・マッチで好試合を繰り広げたが敗れてタイトルを失っている。左ジャブのスペシャリストで試合巧者である。ニックネームは「スーパー・ハード」(とてつもなく凄い奴)。試合前両者を紹介時にハリソンに観客から大ブーイングが浴びせられた。

チューのオーストラリアでの人気は絶大なものである。

 

1R チューはガードを高く掲げてゆっくりと前進、圧力をかける。ハリソンは左手を下げて、左ジャブを打ち易くする為にデトロイト・スタイルである。ハリソンはロープに詰まるが、チューの接近のスタイルが掴めず、左ジャブが少く、ヒットもしない。チューの左ジャブ、右ストレートは鋭い。

2R 1ラウンド同様チューの圧力は変らず、ハドソンはロープに詰まったまゝ。両者接近したまゝ速いパンチを振うが、お互い僅かの差で躱すスピード感ある緊迫した戦いに会場静まる。

3R 距離は一段と狭まり、チューのハリソンの左ジャブを右拳で防御するや、右フックでハリソンぐらつく。チュー、それ以上の深追いせず、ハリソンはこのラウンド先制のジャブから相手の打ち終わりを狙うスタイルに変更している。

4R ハリソンの左ジャブにいささかも構わず、チューの圧力は強まる一方。自信をもってきた。

5R チューは接近してからのボディブロー5発、ワンツーからの左ボディ、右アッパーと多彩な攻撃で、一方的となってきた。

6R チュー圧力をかけて前進するが攻撃は一服か?

7R チュー、コーナーで集中打のあと、一呼吸。さほど相手がダメージを受けていないと判断したようだ。

8R チューの左ジャブ、右ストレート、左ボディ3発、右アッパーと攻撃。途中レフリーは試合をストップして床を拭かせる。濡れたようだ。

9R チュー、圧をかけることなくリング中央で戦い、ハリソンの左ジャブを右でブロックするや右フックを強打。ぐらつくハリソンに右フックからの右アッパーの5,6発連打でハリソンついにダウン。辛うじて立ち上がったものゝファィテングポーズがとれずにレフリーストップとなった。9R 2分42秒 

終盤の止めは迫力満点の力強さであった。これで4団体王者のジャーメル・チャーロを下すことになれば、文字通りスーパースターとなる。華があり、スターの条件を兼ね備えた人気も世界的なものとなるであろう。

 

ちなみに父子二代の世界チャンピオンは過去5組ある。

1.グティ・エスバダス  (父)

グティ・エスバダス Jr (息子)

2.レオン・スピンクス

 コーリー・スピンクス

3.ウィルフレド・バスケス

 ウィルフレド・バスケス Jr

4.フリオセザール・チャベス

 フリオセザール・チャベス Jr

5.クリス・ユーバンク

 クリス・ユーバンク Jr

例外として  

 モハメド・アリ

  レイラ・アリ (娘)

 

会場 ニューヨーク マディソン・スクエアガーデン・シアター  ライト級12回戦 ワシル・ロマチェンコ vs ジャーメイン・オルティス 2022年10月31日 (試合日10月29日)

会場 ニューヨーク マディソン・スクエア・ガーデン・シアター 2022年10月31日(試合日10月29日)

ライト級12回戦

ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)34才 戦跡 18戦16勝11KO 2敗 元3団体統一ライト級チャンピオン。

挑戦者 ジャーメイン・オルティス(米)26才 戦跡 17戦16勝8KO 1分 NABF北米 / USBA米国ライト級チャンピオン。

 

1~4Rまでやゝ体格的に勝るオルテスが積極的に左ジャブを突いて主導権を握って優位に試合を進める。

5Rに入るとロマチェンコにエンジンが掛かり右ジャブを突いて前進。そのまゝ12ラウンドまで優勢を守って終了。

しかし試合はかなり競ったものとなって、従来ロマチェンコの右ジャブを中心にして圧力をかけ相手の上体を起して試合を進めてきたが、今回オルティスはロマチェンコの圧力に後退することなく左ジャブ、右ストレートで対抗、一方的になる事はなかった。ロマチェンコ対策を充分に練って試合に挑んできた事を窺わせた。

また、ロマチェンコの過去の栄光とボクシングの巧さに臆する事なく立ち向かったことも、この接戦を生んだと思われる。

判定は115:113、116:112、117:111でロマチェンコ勝利であったが、予想外の苦戦を強いられた前2試合の対中谷戦とリチャード・コミー戦の強く速い右ジャブで、相手を追い込み、そのあとは接近戦に持ち込んで自在にパンチを浴びせて、相手の戦意を失わせるその鋭さとスピードが明らかに欠けていたのである。

今年2月下旬ロマチェンコは兵役に就き機関銃を携えた軍服姿が報道されている。「私の故郷で戦争が続いているんだ。家族と一緒に過ごし、仲間たちと共に祖国を守らねばならなかった。ボクシングの事は考えない。未来の事も考えない。人生と家族を救う事だけを考えたんだ。」と語っている。

今年5~6月に4団体統一王者への挑戦が内定していたにもかかわらず。その機会を棒に振って母国防衛軍に加わったのである。8月トレーニングの為に再度渡米を果し、10ヶ月振りにリングに戻る事を決断。しかし兵役によるブランクの影響は予想以上に大きく、加えて加齢の影響もある。2023年に予定される統一王者デビン・ヘイニー(米国)に勝利するかは分からないが、しっかりトレーニングをして、しっかり準備をすることができればまだその実力はずば抜けており勝利する可能性は高いと思われるし、心情的に応援したい気持ちがある。ロマチェンコ頑張れ!!

 

なお ウクライナの首都キーウの市長は元ヘビー級の絶対王者のウラジミール・クリチコの兄 同ヘビー級王座に二人で君臨していたビタリ・クリチコである。

 

また、2020年10月17日の4団体統一戦で負けた対ティモフィオ・ロペス戦は前半ロペスの圧力に後退していたが、中盤以降主導権を取り返し終盤はロペスにダメージが蓄積しており、また有効打は断然ロマチェンコであったが不可解な判定で敗れたものである。

 

会場 米国  NY 州 ブルックリン バークレイズ・センター     3試合 2022年10月17日( 試合日10月15日 )

会場 米国 ニューヨーク州 ブルックリン バークレイズ・センター 2022年10月17日

( 試合日10月15日 )

1.WBC 米大陸ヘビー級タイトルマッチ フランク・サンチェス vs カルロス・ネグロン

2.WBC Sミドル級 挑戦者 決定戦 ケイレブ・プラント vs アンソニー・ディレル

3.WBC ヘビー級 挑戦者 決定戦 デオンティ・ワイルダー vs ロバート・ヘレニウス

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1.WBC 米大陸ヘビー級タイトルマッチ

フランク・サンチェス(キューバ)30歳 戦跡 21戦20勝13KO 1無効試合 WBC、WBOヘビー級3位に位置する実力者である。

対戦者 カルロス・ネグロン(プエルトリコ)34歳 戦跡 28戦25勝20KO 3敗

1R サンチェス早い決着を目指し積極的にパンチを振ってのKO狙いに出る。

2Rから5Rまでネグロン足を使って回りながらの左ジャブでサンチョスの前進を阻みながら距離をとって主導権を握って闘う。サンチェス踏み込みが足らず空回り。

6R サンチェス右ストレートがやっと当たって7Rからサンチェス勢いがでてきてパンチも当たり始める。ネグロンはじぶんの優位を確かなものとする狙いからか、やゝ攻撃を中心に前がかりの姿勢をとってきて、その為にサンチェスのパンチも●に始める。

8R サンチェス パワーパンチを振ってラッシュ、ネグロン鼻柱カット。

9R サンチェスの右ストレートでネグロン ダウン。立上ったネグロンも必死で打ち返し乱打戦となったが、こうなってはパンチ力に格段の差があるサンチェスのもの。ロープ際での連打でレフリーストップ。タイトル挑戦も目前であったサンチェスは大苦戦であった8R終了時ではイーブンであったろう。サンチェスはそもそもカウンターパンチャーで前に出てこないで、ジャブを多く突く相手は苦手なのであろう。これではタイトル挑戦はむづかしい。

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2.WBC Sミドル級 挑戦者 決定戦

ケイレブ・プラント(米国)戦跡 22戦21勝12KO 1敗  前IBF Sミドル級チャンピオン サウロ・カネロ・アルバレスとの統一戦で有利に闘いながら最後は力負けしてTKOに敗れてタイトルを失っている。

対戦者 アンソニー・ディレル(米)38才 戦跡 38戦34勝25KO 2敗2分 元WBC WBC Sミドル級チャンピオン。2019年ディビット・ベナビデスに敗れてタイトルを失い、以後これが3戦目である。

オッズは19:3でプラント。

1R プラント先手をとってジャブ、ストレートで攻撃開始。ディレルは始めから相手の打ち終わりを狙ってのカウンター狙いに徹しているようだ。

2Rも同じ展開でディレルのカウンター狙いが奏功して1,2Rやゝリード。

3R 両者とも特にディレルはエキサイトしているが手はでず。

4R プラント右回り動きながら左ジャブ、右ボディ3発が軽くヒット。ディレルの待ちのボクシングに対応してバリエーションをつけて闘い始める。

5R プラントの右パンチでディレル バランスを崩しロープに飛ばされる。ディレルこの流れを戻すべく前に出るが、プラント足を使ってこれを巧みに躱す。終盤ディレル猛攻を見せるがほとんどパンチは当らない。

6R 手数は断然プラントのもので、このラウンドの終盤プラントはディレルのパンチはこんなじゃないかとディレルのパンチのマネのパフォーマンスをみせる。

7R お互いのパンチの交換の少なさに観客からブーイングが始まる。

8R ディレル今の状態を何とかしたいとの思いから左にスイッチするが、状況に変化なく客からブーイングの嵐。

9R ディレルの右フックは初めてまともにヒットしてプラント タジタジとなる。プラントはその後何とかディレルのパンチは食わない事をを重点として闘っていたがラウンドの終盤プラントは左フックのボディブローのあと打ち終わりを狙ったディレルの左フックに合わせて速い左フックを顎にカウンタとして直撃、ディレルはマットに頭を打ちつけてしばし、立上れず衝撃のKO劇となった。

この試合はお互いにスピードのある技術戦でフェイントの掛け合い、後の先の狙いあい等スリルに満ちた試合となった。ディレルのカウンター狙いも良かったが前半に一発でも当たっていればどうなったか分からなかった。プラントは様々なテクニックを披露しどこからパンチが出るかわからなかったり、パンチに強弱をつけたり、やゝ変則的な動きだったりと流石と思わせた。これでアルバレスとの再戦となるか?

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3.WBC ヘビー級 挑戦者 決定戦

デオンティ・ワイルダー(米)36才 戦跡 45戦42勝41KO 2敗1分 ニックネームは「ブロンズ・ボマー(銅の爆撃機)」戦跡の2敗1分はいずれもタイソン戦である。

対戦者 ロバート・ヘレニウス(スウェ―デン)38才 戦跡 34戦31勝20KO 3敗 ニックネームはノ「ルディック・ナイトメア(北欧の悪夢)」

試合前のオッズは11:2でワイルダー。

1R ヘレニウス プレッシャーを掛けて前に出る。ワイルダーは足を使ってロープ伝いにサークリングしジャブ一発、右ストレート一発打つ。ヘレニウス ワイルダーをコーナーに詰めて前のめりになりながら右から左のフックを振うがその左フックに合わせてのワイルダーの右ショートフックが前頭部にヒット。ヘレニウス ダウン。目を見開いたまゝ暫らく立ち上がれずにKO決着となった。

 

ヘレニウスは全勝のアダム・コウナッキを二度に亘ってTKOに下し、一気に急上昇してきたが、今回体重を114.87㎏に増量し充分な体調に仕上げてきたが、ワイルダーのパンチのスピードとその威力は想像を超えていたようだ。ワイルダーとしては全力でない腕だけの右ショートフックで、倒すつもりで放ったものではなかったであろう。

 

しかしヘレニウスにとっては、しばらく立ち上がる事の出来ない程の威力であった。

全勝を続けてきたとはいえ、その相手コウナッキとはまさに異次元の実力であったのである。ヘレニウスの緩慢な動きとガードの甘さでは、ガードをガッチリとしても、その上からこれを打ち破る強力なワイルダーのパンチにはまして対抗できるわけもなかった。

ワイルダーの強打について過去に「俺に2秒くれ。そうすれば必ず一発で仕留めてやる。」と本人が豪語しているのだ。

 

何せ42勝のうち41がKOである。2敗1分けの相手はタイソン・フューリーだけが、その豪打に耐えうる唯一の選手で、彼以外は悉く倒されているのだ。そのフューリーでも3戦の中で何度もダウンを喫しているが、他の人にない驚異的な復元力がある為に激戦を制している。ワイルダーは対フューリー戦で壮絶なTKO負けを喫したあとの再起戦で、体重を97.29㎏に絞ってスピードを重視して仕上げてきており、以前と比べてかなりシェープアップした身体となり、見るからに細いなぁという感じであった。これでは痩せすぎの感あり、従来通り103㎏くらいが丁度良いのではと思うのだが・・・・。

 

ワイルダーの復活で、3団体統一チャンピオンのオレキサンダー・ウシクのテクニック、ワイルダーの豪打、タイソン・フューリーのインテリジェンスと無尽蔵なスタミナと横一線の様相を呈してきて、その他の選手達とはあまりにも実力の差があり過ぎるのが現状である。多分ヘビー級史上稀にみる状況となって面白い展開となってきた。

しかしワイルダーもフューリーも年齢の事もあり、決着はこの1~2年の間の事となるであろう。

 

会場 米国 ニュージャージー州 ニューアーク・プルテンシャル・センター 2試合 2022年10月10日  ( 試合日9月23日)

1.ライト級8回戦 キーション・デービス vs オマル・ティエンダ

2.WBC、WBO Sフェザー級タイトルマッチ 元2階級制覇チャンピオン シャクール・スティーブンソン vs ロブソン・コンセイサン

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1.ライト級8回戦

キーション・デービス(米)23歳  戦跡 5戦全勝4KO  2021年東京オリンピック ライト級銀メダリスト。プロで3戦のあとオリンピックで銀メダル。そのあとでプロに再転向2勝している。ニックネームは「ビジネスマン」

対戦者 オマル・ティエンダ(メキシコ)戦跡 30戦25勝18KO 5敗 ライト級中南米ライト級チャンピオン。

1R ティエンダ圧力をかけて前進。デービスはやゝ退きながら左・右ストレートを打ち込む。

2R デービスは自分のテクニックに自信をもっており、防御も固く相手の出鼻を叩き、ティエンダが出るところにカウンターで対処の作戦。ティエンダが出てくるのはデービスにとっては有難いところだ。

3R ティエンダ前進してパンチを振うがデービスの足が速く追いつけない。出ないと左ジャブがとんできて、出ると出鼻を叩かれる。

4R デービスの左アッパーのカウンター巧い。

5R デービスの右ストレートのカウンターでティエンダ ダウン。立上ったところ、ロープに詰めての連打でレフリーストップ。5R TKO デービスの勝利。

さすがにオリンピックの銀メダリストはダテではなく、基本に忠実でスピード、テクニックも完成されたボクサーで、今後はランキングボクサーとの対戦で真の実力が試されるところだ。

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2.WBC、WBO Sフェザー級タイトルマッチ

元2階級制覇 チャンピオン シャクール・スティーブンソン   25歳 戦跡 18戦全勝9KO リオ 五輪でバンタム級銀メダル。前日計量でリミット130ポンド(58.96 kg) のところ131.6ポンド(59.69 kg )で2度目の計量を受けずにタイトルを剥奪された為、勝っても引き分けてもタイトルは空位となり、コンセイサンが勝った場合にはコンセイサンがタイトル獲得となる。サウスポー。

挑戦者 ロブソン・コンセイサン(ブラジル)33歳 戦跡 18戦17勝 8KO 1敗、1敗はタイトル戦でオスカー・バルデスに惜敗しての1敗である。 リオ五輪でライト級金メダルを獲得。アマ戦跡420戦405勝15敗。

1R 圧力をかけて前に出る。コンセイサン力を込めて左右を振う。

2R スティーブンソン前に出て、お互いの距離が近くなり、お互いのパンチが当たる距離である。圧力をかけられたコンセイサンは力を込めてパンチを振い、圧力を防ぐがスティーブンソンの防御能力の恐るべき高さにあって全く当らない。スティーブンソンの左ストレートでコンセイサンやゝぐらつく。

3R スティーブンソンは正面から圧力をかけて出る。退りながらコンセイサンの力一杯のパンチは全く当らず、当ってもガードの上で、スティーブンソンのパンチは相手の打ち終わりを狙ってコッン、コッンと軽いパンチを当ててくる。重点はボディブローだ。コンセイサンは自分の力一杯のパンチは全く有効打とならず、一方でスティーブンソンの軽いパンチはすべてカウンターとなり、ボディブローもあってスタミナが奪われていく。

4R スティーブンソンの圧力が強まりコンセイサンは押されて、やむなく力を込めてパンチを振い相手の前進を止めにかゝるが、精神的にも追い込まれ左ボディブローを打たれて膝をついてダウン。

5R コンセイサン挽回を図って左右を強振りするが全くヒットせず、一方のスティーブンソンの圧力は強まる一方で、そのプレッシャーに押されての反撃でスタミナが奪われ、ボディブローで腰が引けてきてパンチに力が無くなってきた。

6R 大勢は決定的となりコンセイサンは有効な反撃ができなくなる。

7~12R  スティーブンソンは8R、10Rとコンセイサンを投とばし反則減点1をとられる。一方的な試合は変らずに終了。判定は117:109が2人、118:108が1人でスティーブンソンの圧勝であった。

スティーブンソンの試合振りは予想通りであったが、コンセイサンの場合はまことに無様なもので醜態を晒した。単調極まりない試合振りで、これでは、スティーブンソンを相手に対抗出来ないことは分かり切った事なのに何も対策を打ってこないことには対抗できないのは自明の事であった。

スティーブンソンの防御技術はとりわけ優れているので、いきなり強振りしても当たるわけもなく、軽いショートパンチを何発か打って、そのうち一発でも当たれば強いパンチを打っても良い。またはロープに詰めてボディを集中的に狙う手も良し。ボディを執拗に打てば相手のスピードも弱まるし、嫌がるためだ。無策のコンセイサンが良くオリンピックで金メダルを取ったものだと思う。

さて、スティーブンソンだが、防御技術の高い事は誰もが認めるところだが、その理由は強いパンチを打たない事が大きい。強打を振うと身体が固くなり、パンチを受けた時にダメージが大きい。為に50~60%の力で打ち、打たれた時のダメージを防ぐ事を優先しているのだ。その為に著しく魅力が失われるのだ。観客はテクニックもあるが、何といっても一発必倒の強打を求めており、この要求に応えるのがプロというものであろう。ライト級に転向して、テモフィオ・ロペスやジャボンティ・デービスや技術の粋ロマチェンに対抗できるか大いに疑問が残る。

尚、スティーブンソンは決まっている体重を落とす努力を拒否(730g)し、2度目の計量の時間に減量する努力を放棄して試合をする事は許すべからざる事であると思う。全ての競技は、ルールがあって行われるものである事からすれば、ルールを破ってもこれが許されるとなれば競技がそもそも成りたゝない。もっと厳しい罰が下されるべきであろう。

スティーブンソンは自分にはSフェザー級でもきつくなっているので今後はライト級で闘うことになるだろうと語っているが、なればSフェザー級の王座を返上して新階級で闘うのが筋というものだ。 

会場 米国 カリフォルニア州ロスアンゼルス クリプト・ドットコム・アリーナ 1試合    2022年10月10日   (試合日9月4日)

WBC米大陸ライト級タイトルマッチ 試合日2022年9月4日

チャンピオン ホセ・バレンスエラ(米)23歳  戦跡 12戦全勝8KO WBCライト級9位。

挑戦者 エドウィン・デ・ロス・サントス(ドミニカ共和国) 22歳 戦跡15勝14KO 1敗

サウスポー。

1R 立上り サントス 右左フック ヒット。2分過ぎサントスのパンチでバレンスエラぐらつく。右ジャブがカウンターとなりついでの右ストレートがヒット。

2R サントスの右ジャブからの左ボディブロー、ついでの右フックでバレンスエラぐらつく。しかし2分過ぎ、たたみかけるサントスに肩ごしの左フックでサントス ダウンのあとパンチを浴びせてサントスにー1の判定。しかし右・左のパンチでバエンスエラ ダメージ深刻。

3R サントスの左ストレートでバエンスエラ ダウン。立上ったがサントスの連打に対抗出来ずにバエンスエラにレフリーストップが宣せられてTKO負。バエンスエラは将来のスター候補でタイトルに挑戦する話もあったが可能性はなくなった。

 

会場 米国カリフォルニア州 サンディエゴ ペチャンガ・アリーナ 1試合 2022年9月19日 (試合日8月20日)

WBOフェザー級タイトルマッチ 試合日2022年8月20日

チャンピオン エマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)27才 戦跡 36戦35勝29KO 1敗 フェザー級と2階級制覇している。10度目の世界戦である。2020年10月10日ルーベン・ビラ戦に判定で勝利してタイトルを獲得。2021年4月24日クリストファー・ディアスを12R TKOに下し、2021年10月15日ジョエ・ゴンザレスを12R判定に下し、今回が3度目のタイトル戦である。

挑戦者 ドゥアルド・バエス(メキシコ)27才 戦跡 25戦21勝7KO 2敗2分 

試合前のオッズは9:1でナバレッテ。お互いにオーソドックス。

1R バエスは左ジャブを盛んに突いて圧力をかけ前に出る。スロースターターのナバレッテは例によって手を出さず。

2R バエス、ロープに詰めて連打。しかしクリーンヒットはないが攻勢、手数でナバレッテを抑える。

3R バエスの左フック3発、ナバレッテはすかさず反撃するがバエス優勢。

4R 互角の戦い。

5R バエスの左・右のフック2発ヒット。後半ナバレッテ打ち始めるが依然バエスのペースは続いている。

6R ナバレッテそろそろ反撃しないとゝ思ったか攻撃を強めてきた。右アッパーからの左フックのボディブロー 一発でバエス ダウン。膝をついたバエスはやがて仰向けに倒れ苦悶の表情で立ち上がれず6RKOとなる。

ナバレッテはバンタム級時代はその強打でKOの山を築いてきたが、フェザー級に上って相手の体も格段に大きくなり簡単にKOするのは難しくなり、過去3戦ともに12Rまで闘っている。この試合がナバレッテの価値が問われる大事なものとなった。6RのKOはさすがと思わせたが、それまでの5Rはバエスに押されておりフェザー級のクラスに順応したかは判断できない。そもそもナバレッテのパンチはスピードもなく大振りで、体力があり且つ突進力のある相手や、ボクシングが巧みで動きが早い相手に対してどうかとの一抹の不安は拭えない。Sバンタム級ではその迫力とパンチ力で弱点をカバーしてきたが、今後このまゝで乗り切れるか見ものである。 

 

会場 米国 フロリダ州ハリウッド セミノール・ハードロック・ホテル 1試合 2022年9月19日(試合日 8月20日)

WBA Sライト級王座決定戦 試合日 2022年8月20日 

スーパーライト級はイギリスのジョシュ・テイラーが2021年5月 4団体統一したが、2022年5月アルベルト・プエジョとの指名試合の拒否によりWBAの王座剥奪。2022年7月にはWBC王座返上。2022年8月 IBF王座返上し、現在はWBO王座のみ所有している。そこでWBA王座決定戦が今回行われた。

WBA Sライト級元暫定王者アルベルト・プェジョ(ドミニカ)28才  戦跡 20戦全勝10KO   WBA Sライト級1位 ニックネームは「スズメバチ」

バティル・アフメドフ(ウクライナ)31才 2016年リオ五輪 L ウエルター級ベスト8(トルコ代表として出場)戦跡 10戦9勝8KO 1敗 WBA Sライト級2位 

2人ともサウスポー。

アフメドフはガードを固めて前に出る。プエジョは長い右ジャブと左ストレートで迎え打つ。1~5Rあたりまで後退しロープに詰まりながらのプエジョの前進するところに右ジャブと左ストレートを的確に当てゝリードするが、中盤次第にアフメドフに内懐に入られて苦しくなり、常にロープに詰められての戦いとなる。12Rまでこの流れは変わらず、手数の多さと攻勢でアフメドフ、パンチの正確さと有効度でプエジョでこれを審判がどう見るかにかゝてきたが、有効打を取って審判の結果は117:111が2人プエジョ、115:113が1人アフメドフでプエジョが勝利してチャンピオンとなった。

試合の終了時にはアフメドフは勝利を確信していたようであった。また反対にプエジョは負けたかも?の表情であったが、自分の予想外の結果に喜びを爆発させていた。

 

会場 米国 ニューヨーク州 ブルックリン バークレイズ・センター  2試合 2022年8月29日 (試合日7月30日)

1.Sライト級10回戦 

ゲーリー・アントゥアン・ラッセル vs ランセス・バルテレミー

2. Sウエルター級12回戦  ダニー・ガルシア vs ホセ・ベナビデス

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1.Sライト級10回戦

ゲーリー・アントゥアン・ラッセル(米)26才 戦跡 15戦全勝全KO WBC Sライト級7位。 

ランセス・バルテレミー(キューバ)36才 戦跡 32戦29勝15KO 1敗1分1無効試合 元2階級王者(Sフェザー級、ライト級)

1~5Rまでラッセル フィジカルの強さを前面に出して攻撃を仕掛ける。バルテレミーはリーチが長く長身であるが、足を使って距離をとることなく正面から打ち合う。接近戦でお互い一歩も引かずに激しく打ち合うが、6R ラッセルの右フックでバルテレミー ダウン。立上ったがファィテングポーズをとらなかった為にレフリーはTKOを宣言。

バルテレミーは猛然と抗議するも後の祭りとなる。バルテレミーは変則のスィッチヒッターで、誰もがやりにくい選手で、しかもパンチ力もあるカウンターも巧いところ、ラッセルは力でこれをねじ伏せた。ラッセルの兄は元フェザー級王者ゲーリー・ラッセル Jr.である。弟もいてボクシング3兄弟である。

 

2.Sウエルター級12回戦

ダニー・ガルシア(米)34才 戦跡 39戦36勝21KO 3敗 元2階級王者。

3敗はキース・サーマン(17/3/4)、ショーン・ポーター(18/9/8)、エロール・スペンス(20/12/5)の強豪ばかりではある。

ホセ・ベナビデス(米)30才 戦跡 29戦27勝18KO 1敗1分。 テレンス・クロフォードに12回TKO負して(18/10/13)王座から陥落している。

弟は現WBC Sミドル級王者の全勝の デビット・ベナビデス。

1R ガルシアの左ジャブで始まり、上・下に上手く打ち分ける。ベナビデスはガードを高くして圧力をかけて前に出る。ベナビデスの方がリーチが長く、ガルシアは自分のパンチの出る距離すなわちベナビデスの距離内で闘う方針のようである。

2R ガルシアは右アッパー、左右ボディブロー、コンビネーションとベナビデスのパンチを巧みに躱しながら実に上手く闘う。

3R ガルシアは予想外のディフェンスの冴えをみせベナビデスに当てさせない。

4R ベナビデス攻撃を強めて優勢に試合をすゝめこのラウンドをとる。

5R ガルシア右ストレートのボディ、左右の連続攻撃とメリハリの利いた攻撃を見せる。途中両腕をブラリ振って余裕をみせる。

6R ガルシアはこの試合振りに余裕をもったか、面白いように軽いパンチがヒット。

7R ガルシア最小限の動きでベナビデスの攻撃をみきり、試合の主導権を譲らない。

8、9R ベナビデスこれではならじと攻勢に転じて手数を増やす。

9R ガルシアの見た目の広い攻撃が冴えてリードを広げる。

10R 変わらず。

11R ベナビデス、左ジャブ、右フックで攻撃を強める。

12R ガルシア勝利を確信し自在にパンチを振って終了。

判定は116:112、117:111、 114:114で2:0 ガルシアの勝利。 

 

ガルシアは元来受け身のカウンターパンチであったが、この試合は見違えるように左ジャブを多く出し、先手先手に攻めて主導権を渡さずに終始。至近距離でのベナビデスのパンチを悉く躱す技術の冴えをみせて見事であった。伝家の宝刀 左フックはついに一発も見せることなく終わったのは残念ではあった。

Sライト級では全勝。ウエルター級でも強打を生かし攻撃力、特に左フックの威力で対戦相手を後退させてきたが、Sウエルター級となると従来のようにはいかないようで、左ジャブ、左右ストレート・フック・アッパーと多彩なパンチを、時にはコンビネーションを使って早い攻撃を仕掛け、常に防御を考慮しながらポイントを稼ぐ方針に転換したようにみえる。今までとは別人のような試合振りであったが、基本がしっかりしており安定した姿勢を常に保ちながらのボクシングは流石に中量級強豪の一角を担い続けていただけはあると感心したが、このクラスには強打の4団体王者のジャーメル・チャーロがいて、その強打と圧力は段違いのもの。果たしてこれに対抗出来るのかとの域は否めない。また打倒チャーロの一番手にコンスタンチン・チューの息子チィム・チューが全勝で迫っている。

 

会場 米国 カリフォルニア州 テメキエラ ベチャンガ リゾート&カジノ 1試合 2022年8月29日 (試合日7月15日)

Sライト級8回戦

レイモンド・ムラタラ(米)25才 戦跡 16戦全勝12KO WBCライト級37位

ジャイール・バルティエラ(メキシコ)20才 

4R 左フックでバルティエラ ダウンその後8ラウンドまで戦って80:71のフルマークでムラタラ勝利。

ムラタラはトップランク社所属の期待のホープであるが、確かにガードは高く、左ジャブも良く出て、堅実なボクシングではあるがスピード、パンチ力ともにさほどみるべきところなく、今後強敵と戦ってどう化けていくか疑問符がつく。

 

会場  埼玉県 さいたま スーパーアリーナ 2022年8月8日(再放映) 2 試合  ( 試合日4月9日)

1.WBOフライ級タイトルマッチ  チャンピオン 中谷潤人 vs 山内涼太

 

2.ミドル級王座統一戦IBFミドル級チャンピオン ゲンナディ・ゴロフキン vs WBAミドル級スーパーチャンピオン村田諒太

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1.WBOフライ級タイトルマッチ

チャンピオン 中谷 潤人(日本) 24才 戦跡 22戦全勝17KO 2度目の防衛戦。

挑戦者 山内 涼太 (日本) 27才 戦跡 9戦8勝7KO 1敗 同級2位 

 

1R サウスポーの中谷は両拳をやゝ前に構えるデラホーヤを思わせるスタイルから、長い右ジャブ、左ストレートで試合を始める。懐の深い構えからストレート、左右のアッパー、上下のフックと多彩なパンチを振い、左アッパーで山内ぐらつくところに右アッパーで突き上げる。

2R 中谷、右アッパーからの左フックで山内ぐらつく。左ストレート上・下に、更に左ストレートを上から打ち下ろす。

3R 山内攻勢をかけるが、そのあと中谷の右アッパー ヒット。1Rからペースは完全に中谷に。

4R 自信をもった中谷は自在に動き、的確なパンチを次々にヒット。山内鼻柱傷つき左目の下腫れ上がる。

5R 山内、内懐に入り左右フックを振うがクリーンヒットせず。接近戦でも予想に反してショートパンチも巧みに操って、中間距離でも接近戦でも主導権を握っていた。

6,7R 中谷、右左ストレート、フック、アッパーを面白いようにヒット。山内の時折反撃にはしっかりとガードをかためて対処、防御も巧い。

8R 中谷の一方的なラウンドとなる。

9R 中谷、中盤以降倒しにかゝり、連打で山内ダウン寸前に追い込まれたところ、試合の趨勢を見ていたレフリーが、もはやこれ迄とストップを宣言TKOとなる。

 

試合は中谷のフルマークであったろう。山内も試合前に自分の特技は強打であり、技術的には明らかに不利であるので何とか強打を決めたいと語っていた。山内は中谷の右ジャブを躱して内懐に入り、持ち味の強打を決める作戦であったであろうが、中谷の右ジャブ、右フック、やっと入り込むと右・左のアッパーが待っており、技術的にも大きな差があった。あれだけ一方的に打たれ続け、しかも自分のパンチは当らないラウンドが続いたのによく闘った。

中谷選手は170㎝のサウスポーには珍しく攻撃的であり、しかもその利点を最大限に生かした長い距離からの右・右のジャブ、左ストレート、右・左のフック、右・左のアッパーを肩の力を抜いて自然にパンチを繰り出しており、山内はさぞやりにくい事であったろう。特に目をひいたのは接近戦での右フック、右アッパーで、これ程のアッパーカットを巧みに使える選手は日本にはいないのではないか。パンチ的中率も高く、防御も巧み日本ボクシング界で井上尚弥に次いで世界に知られる日も近いと思われる。前途洋々の逸材で、そのボクシングスタイルも今迄日本になかったものである。本人もフライ級4団体の統一と、Sフライ級での活躍の希望を持っており、やがては井上の達成したパウンド・フォー・パウンドも目指したいと語り、自信に満ちたその言や良し。

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2.ミドル級王座統一戦 

IBFミドル級チャンピオン  ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)40才  戦跡 43戦41勝36KO 1敗1分。世界タイトル戦17連続KO防衛の記録を持っている。ニックネームは「トリプルG」(グレイト・ゲンナディ・ゴロフキン)、1敗1分はいずれもサウル・カネロ・アルバレス戦で、1分は押しまくっての引き分けで大いに疑問の残るものであった。

WBAミドル級スーパーチャンピオン 村田 諒太(日本)37才  戦跡 18戦16勝13KO 2敗 対戦が計画されてから様々な障害があって2年4ヶ振りに実現した。

1R ゴロフキン左ジャブから始まり、右ストレート、左フックのボディブロー。村田もワンツーで対抗。

2R ゴロフキン一気に攻撃を強めて左ボディブロー2、右フック・ストレート、右アッパーと多彩なパンチを振う。中盤以降村田反撃、左ストレートを連発。

3R 前半はゴロフキンの攻撃が続き、上・下特にボディ攻撃は有効。後半1分は村田の反撃、特にボディに集中。村田鼻血を出す。

4R ゴロフキン中盤から攻撃を強め、手数の多さとパンチの多彩さ、的確さがめだつ。

5R 村田は攻撃の中心をボディと決めたか集中的にボディを狙う。顔面は仲々当らない為であるか。ゴロフキン ボディ攻撃を大半肘でブロック。村田も頑張って反撃するもパンチの精度に差がありペースはゴロフキン。

6R ゴロフキンの右フックで村田マウスピースをとばす。着装のあとゴロフキンの集中打で村田ダメージが蓄積してきたようだ。村田の主武器の右ストレートが真っすぐに出なくなりフックがかってきて、急速に威力が弱まる。ゴロフキンの攻撃が強まるが村田も時折反撃する事で、いまだ一方的とは至らない。

7R ゴロフキンの6~7割の力で振うコンパクトなパンチが実に的確。村田反撃するも劣勢は否めない。

8R 試合はゴロフキン優勢が一段と明らかとなり、村田も必死の反撃で何とか凌ぐ。

9R ゴロフキンの集中打で村田ダウン寸前に追い込まれるが、それでも村田最後の力を振り絞り猛然と反撃するところ、一歩下がったゴロフキンの右フックでぐらつくところ左フックの追い打ちで村田我慢の限界に達しついにダウン。試合の状況をみてきたコーナーがこゝまでとみてタオルを投入。ゴロフキン 9R2分11秒のTKO勝ちとなる。

 

村田も予想以上に頑張り、特にボディ攻撃は有効であったが、ゴロフキンの村田の堅いガードを破る技術、左ジャブだけでなくガードを横から攻撃する左フック、開いたガードを狙ってのアッパーカットと相手の隙を突いての冷静な判断による理詰めの攻撃は見事と言う外なく、機を見るに敏、チャンスとみれば集中打でたたみかけ、村田のパンチはまともに貰わない技術とスタミナ温存のテクニックと剛腕と思われていたゴロフキンとはまた異なるボクシングの奥の深さを我々に披露してくれた。相手の様々な出方に対しての柔軟な対応能力の高さはさすがのものがある。

 

試合後ゴロフキンから自分の愛用しているリングガウンが村田に贈られた。カザフスタンの民族衣装チェバンである。彼は「最も尊敬する人に贈るものです。だから村田選手に贈りました」と述べている。

村田のボクシングは左ジャブが圧倒的に少なく、その目的は試合をコントロールする為でもなく、相手にダメージを与える事でも、相手の出鼻を叩く事でもなく、たゞ得意の右ストレートを打つ為に相手との距離を計る事のみの役割しか与えていないようである。

それでもディオンティ・ワイルダーやアドニス・スティーブンソンのどこでも当たれば相手が倒れる程の威力があれば、それでも許されるが、それほどの威力はない。この右ストレートだけでパンチパンチ力もあり技術的にも優れた強敵とは戦えない。その右ストレートを当てる前の準備、つまり段取りが必要でもあるのだ。その右ストレートを当てる前の準備が必要でもあるのだ。しかし闘争心は最後まで失う事なく戦った事は立派であり、見応えある試合をつくった。ゴロフキンは今年中にアルバレスとの3戦目が決まったようである。

 

会場 米国 テキサス州サンアントニオ テックポート・アリーナ 2試合 2022年7月25日  試合日6月25日

会場 テキサス州 サンアントニオ  テック・ポート・アリーナ 2022年7月25日 

試合日6月25日

1.WBA Sバンタム級タイトルマッチ

     チャンピオン ムロジョン・アフマダリエフ vs 挑戦者 ロニー・リオス

2.WBC Sフライ級タイトルマッチ 

      チャンピオン ジェシー・ロドリゲス vs 挑戦者シーサケット・ソールンビサイ

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1.WBA Sバンタム級タイトルマッチ

チャンピオン ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)27才 戦跡 10戦全勝7KO 2016年リオ五輪銅メダリスト アマ戦跡300勝20敗

挑戦者 ロニー・リオス(米)32才 戦跡 36戦33勝16KO 3敗。同級1位 レイ・バルガスに挑戦、敗れており2度目の挑戦である。

1R~11R アフマダリフェフ 右ジャブを多く使い、リオスの出鼻に左ストレート、4Rには左ストレートにリオス怯んだとみるや突然として右・左大振りのフックを思い切り振り回し、リオス ダウン寸前となる。その後も右ジャブを有効に使って自分のペースを探って、12R思い切った連打を再三にわたって打ち込み、左ボディブロー3発でリオスついにダウン。立上ったところに右左フックの連打でレフリーはストップ。

3度目の防衛を果す。

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2.WBC Sフライ級タイトルマッチ

チャンピオン ジェシー・ロドリゲス(米)22才 戦跡 15戦全勝10KO。( 兄はWBA王者ジョシア・フランコ)本人の正式名はジェシイ・ジェームス・ロドリゲス・フランコ。

2022年2月5日のWBC Sフライ級タイトルマッチはチャンピオン カルロス・クワドラスとシーサケットが対戦する予定がシーサケットがコロナの為に辞退。この前座として予定していたロドリゲスが代役として対戦した。誰もがシーサケットの勝利、そしてWBA、WBC王者のエストラーゼと対戦する予定であったがロドリゲスがダウンを奪って圧勝。今回シーサケットと対戦する事になった。

挑戦者 シーサケット・ソールンビサイ(タイ)35才 戦跡 56戦50勝43KO 5敗1分 サウスポー。当時パウンド・フォー・パウンドのローマン・ゴンザレスを倒し初の1敗を付け再戦でもKOでゴンザレスを下した強打者で、WBC Sフライ級のタイトルを2度獲得している。オッズは17:4でロドリゲス。

1R ロドリゲス ガードを高く掲げて開始。シーサケット右ジャブを突いて立上る。

2R ロドリゲス左サイドに少し動いて、左フックをボディに巧みな技術をみせる。

3R シーサケットはこのまゝではロドリゲスのペースになると読んで、パンチを振って前に出るがパンチはクリーンヒットせず、ペースは次第にロドリゲスへ。

4R シーサケットは相手の動きを止めるべくボディを中心に集中して攻めるが、さほど効果は上がらない。

5‐6R ペースを握ったロドリゲスはシーサケットのパンチの打ち終わりにワンツーを打ち込むが、前がかりのシーサケットにカウンターとなり、クリーンヒットが多くなってくる。

7R ロドリゲス、相手の攻撃を見切ったか、力を入れて倒しにかゝり、左フックが顔面にヒットしシーサケット左足を滑らせて倒れ、これがダウンと認定される。

8R ロドリゲス、相手のダメージを判断し、これが攻めどきとみて、連打で猛攻。レフリーストップを呼び込んだ。8RTKO勝ち。

 

ロドリゲスは防御に自信を持っており、ガードで相手の攻撃を総てストップ。シーサケットは強打者の為に力一杯パンチを振う為に打ったあとに空白が生じ、そこを狙われてスピードとタイミングのパンチは悉くカウンターとなってダメージを重ねていった。ロドリゲスは若さに似ず、機を見るに敏で、相手の特徴を素早く見極めて有効な手立て講じて、試合を構成しこれに従って試合を進めていった。詰めも万全で危険は冒さずに、試合を進めている。多分軽量級のスーパースターになるかも知れない逸材とみた。

 

米国 ネバダ州ラスベガス・ リゾートワールド・ラスベガス    2試合 2022年7月4日   試合日5月21日

1.Sフェザー級8回戦 ジェシー・マグダレノ vs エディ・バレンシア

2.WBOミドル級暫定王者決定戦 ジャニベク・アリムハヌリ vs ダニー・ディグナム

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1.Sフェザー級8回戦

ジェシー・マグダレノ(米)30才 戦跡 29戦28勝18KO 1敗 元WBO Sバンタム級チャンピオン。2016年12月ドネアからタイトルを奪取したが2018年ドグボエとの全勝対決に11RKOで敗れ初の1敗。2020年6月以降2年ぶりの試合である。

対戦者 エディ・バレンシア(メキシコ)31才 戦跡 32戦19勝7KO 6敗6分1無効試合。

1R から8Rまで体格で勝るバレンシアは圧力をかけて前に出るところ、マグダレノは右ジャブを有効に使って、打っては離れてのアウトボクシングに徹して、右フックを時折きめて、終始優位に試合を進めて圧勝。

判定は80:72 のフルマークが3人の結果であった。

全ての面で格の違いをみせた。しかしこの程度の力量では、このクラスでは無理がある。ドネアが何でこの程度の選手に敗れたのか不思議ではあり、体調不良か、何処か故障があったとしか思えなかった。

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2.WBOミドル級暫定王者決定戦

ジャニベク・アリムハヌリ(カザフスタン)29才 戦跡 11戦全勝7KO 元世界王者 ロブ・ブラント、アッサム・エンダムを連破しており、ゴロフキンの後継者と目されているスター候補である。同位2位。

ダニー・ディグナム(英)30才 戦跡 15戦14勝8KO 1分 同位3位

1R お互いにサウスポーの右ジャブの突き合いからアリムハヌリの右フックのあと押さえ込んでの引き落としにディグナム ダウンを宣せられる。これは可哀想であったが、右フックがその前にヒットしており、やむなしか。

2R アリムハヌリの左ストレート2発軽くヒットのあと、ディグナム自ら腰くだけでよろめいて膝を2度つく。1Rのパンチで足腰が定まらないようだ。左ストレート軽く2発ヒットのあと、ロープ際で右フックからの左アッパー顎に突き上げられて仰向けにダウン。レフリーはすぐさまレフリーストップを宣しKOを宣言。ディグナムのダメージは深く、試合終了後も起き上る事が出来なかった。

アリムハヌリはカザフスタン期待の選手であり、アマ戦跡は300勝8敗で強力なパンチとスピードも豊かで、防御技術もあるとみた。ミドル級のトップ戦線はWBA スーパー IBFのゲンナジー・ゴロフキン、WBAレギュラーのエリスランディ・ララ、WBCのジャモール・チャーロ、WBOのディメトリアス・アントラーデがいて、何れも強豪ぞろいではあるが、果たしてここに割って入れるか?

 

カザフスタン出身の歴代の世界王者はSフェザー級のアナトリー・アレキサンドロフ( ブラジリアン・ボンバー : アセリノ・フレイタスに1R壮絶なKO負けが強く印象に残っている。1999年8月のことである )、クルーザー級のワシリー・ジロフ、Lヘビー級のベイブット・シュメノフ、ミドル級のゲンナジー・ゴロフキン、バンタム級のザナト・ザギヤノフがいて何れもパンチ力があり、頑丈なタイプが多い。

 

会場 米国 NY マディソン・スクエア・ガーデン・シアター WBC、IBF、WBO Lヘビー級統一戦  2022年6月 日  試合日 (6月18日)

会場 米国 ニューヨーク マディソン・スクエア・ガーデン・シアター

   2022年6月 日 (試合日6月18日) 

WBC、IFB、WBOLヘビー級 統一戦 オッズ6:1でペテルビエフ

WBC、IFB、WBOLヘビー級アルツール・ペテルビエフ 戦跡 17戦全勝全KO ロシア生れのカナダ国籍 37才

WBOチャンピオン ジョー・スミス(米)32才 戦跡 31戦28勝22KO 3敗 ニックネームは「シンデレラ・マン」建設現場で働きながらボクシングをしてチャンピオンとなった。

 

1R スミス長いジャブを突いて前に出る。ペテルビエフはスミスの周囲をサークリングしながら様子を見る。後半、右フックがテンプルに当たってスミス膝をつく。ダウン。

 

2R スミス前に出て、乱打戦になるが、ペテルビエフの右フックが頭部にヒットしてスミス膝をついて2度目のダウン。立上ったところにペテルビエフの連打にたまらず3度目のダウン。やっと立上ったところに左・右アッパーで顔面を突き上げられ、そのあとの右フックでレフリーストップ宣言。2R 2分19秒であった。

 

ペテルビエフ、試合のあとのインタビューで『 終わったばかりなので時間をかけないと実感がわかない気がします。2~3日経てば実感が湧くんじゃないでしょうか。私はいつも良いボクサーになりたいと思ってきました。今日の私は過去よりも向上しているようですネ。彼(スミス)のジョー(顎)が無防備だったので狙いました。今日は私がラッキーでした。彼は危険な相手でしたから、自分にも色々ミスがあったので、このあと検討したいです。』

ビボルとの対戦を望んでいるかとの質問に「統一戦で戦う方が興味深いと思います」等と終始、良い笑顔で丁寧に答えて、試合中とは別人のように温かい人柄がみえた。

さて、愈々WBA王者の全勝ドミトリー・ビボルの方はSミドル級4団体統一王者カネロ・アルバレスの挑戦を退けて、その実力を天下に示しており、4団体統一を目指して戦う準備は整った。お互いに過去最強の相手である。

 

会場 米国 アリゾナ州 グレンデール・ヒラ・リバー・アリーナー1試合 2022年6月13日  試合日 5月21日

会場 米国 アリゾナ州 グレンデール ヒラ・リバー・アリーナ 2022年6月13日   試合日5月21日

 

WBC Sミドル級暫定王座決定戦

前WBC Sミドル級チャンピオン デビッド・ベナビデス(米)25才 戦跡 25戦全勝22KO ニックネームは「レッド・フラッグ」20才で同級のタイトルを獲得している実力者。

 

元IBF 同級チャンピオン デビッド・レミュー(カナダ)33才 戦跡47戦43勝36KO 4敗 デビューから20連続KOの記録を有している強打者。

 

1R レミュー先手をとって攻め込み、ベナビデスを2~3度ロープに詰めて左・右フックを振う。これをガードで防御していたベナビデスは後半に入ると反撃を開始し、強烈な左フックでレミューぐらついて、あわやダウンと見えたとみるとベナビデス猛然とレミューをロープにつめ、雨 あられの乱打を浴びせたところでゴングにレミュー救われる。

 

2R レミュー打ち勝つしか手はなく、打って出るところにベナビデスの左アッパーでレミューダウン。立上ったレミューも必死で反撃するが、ベナビデスのパンチが当る度にぐらつく。

3R レミュー打って出るが10㎝の身長差、リーチ差もあって、パンチが届かないところにベナビデスのパンチがヒット。レミューのぐらつき振りをみてレフリーTKOを宣言した。レミューの顔は血で染まりダメージの深さを現している。

 

このクラスの4団体統一チャンピオンはサウル・カネロ・アルバレスであるが、カネロはベナビデスとの対戦を嫌って、為に対戦が実現できていない。

カネロは9月ゴロフキンと3度目の対戦が決まっており、その結果次第ではその勝者とベナビデスが対戦する見通しも出てきた。このクラスでの一番はベナビデスかも知れない。

あのゴロフキンも、はや峠を越えた感があり、カネロは基本的に待ちのボクシングで、どの試合でも一貫して優位に立つスタイルでない為に、巧い選手を苦手にしている事からでもある。ベナビデスは常に積極的で、防御も巧みでパンチも強く、連打もきいた穴のない安定した試合を続けている。足が揃う欠点もあるが全クラスを通しても頭抜けた選手である事は間違いない。

 

会場 米国 NY州 ブルックリン バークレイズ・センター      2試合 2022年5月30日 試合日5月28日

会場 米国 NYブルックリン バークレイズ・センター 

2022年5月30日 試合日5月28日

1.WBAミドル級タイトルマッチ チャンピオン エリスランディ・ララ vs ゲイリー・オサリバン

2.WBAライト級タイトルマッチ チャンピオン ジャーボンティ・デービス vs ローランド・ロメロ

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1.WBAミドル級タイトルマッチ

チャンピオン エリスランディ・ララ(米)39才 戦跡 34戦28勝16KO 3敗3分 2021年5月1日WBAミドル級王座決定戦でトーマス・ラマンナを1RでKOして王座につき、これが初防衛戦である。それまで Sウエルター級で8度防衛している。世界戦は14度目となる。キューバからの亡命者でアメリカンドリームを掴んだ。

挑戦者 ゲイリー・オサリバン(アイルランド)37才 戦跡 35戦31勝21KO 4敗 これまでビリー・ジョー・サンダース、デイビッド・レミュー、ハイメ・ムンギア、クリス・ユーバンク 等 強豪と戦っている。

1R ララ、予想に反して正面から打ち合う。オサリバンは体力を生かして前進し、左・右フックを振う。

2R オサリバンはララをロープに詰めてパンチを振うが当らない。ロープに詰まったララの左ストレート ヒット。

3R オサリバン前進するが、ララの的確なジャブ、左ストレートがヒットし顔面が傷つき始める。

4R ペースを握るべくオサリバン連打するが、ララのガードを割った左ショート・ストレート顔面を直撃しオサリバン ダウン。立上った足がもつれ危うかったがゴングに救われる。

5、6R オサリバン、ララをロープに詰めて必死に攻撃するが、ララ余裕をもってこれに対処し適度に右ジャブ、左ストレート、フックで反撃。

7R 終了直前にララの左ストレート クリーンヒットでオサリバン、ダウン寸前に追い込まれる。

8R ゴング前にオサリバンにドクターチェックが入る。開始早々ララの右ストレート直撃。オサリバン足がふらつき、ロープにもたれかかるところ、ララの追撃をうけて、レフリーはストップを宣した。

試合後のオサリバンの顔面は傷だらけでダメージの深さが窺えた。オサリバンはララの左ストレートが全く見えておらず、1ラウンドからそのパンチを受け続けており、この結果はやむを得なかった。

ララは従来の試合とは異なり正面から打ち合ったが、オサリバンの実力では正面から打ち合ってもパンチを食わないとの確信があったのであろう。ミドル級に上って力勝負も出来る事を見せたかったのであろうか。しかし、このクラスも強豪が揃っており、やはり今までの足を使っい、長いリーチを生かしてヒット・アンド・アウェイの戦術で戦うのではと思う。しかし接近戦で防御技術、至近距離でのパンチの的確さ等さすがに技術の高さを堪能する事が出来た。オサリバンとはボクシングのレベルが違いすぎたと云う事であろう。

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2.WBAライト級タイトルマッチ

チャンピオン ジャーボンティ・デービス(米)27才 戦跡 26戦全勝24KO 3階級王者

挑戦者 ローランド・ロメロ(米)26才 戦跡 14戦全勝12KO 

1R ロメロ、左ジャブを突いてやゝ前進、上体を後ろに残しデービスの左ストレートが当らないように細心の注意を払って立上る。デービス、ガードを高く揚げて様子見。

2R ロメロ、圧力をかけて前に出て、右フックが軽くヒット。

3R デービス、サークリングしてロメロの周囲をまわる。ロメロの左フック浅いがヒット。お互いにフェイントの掛け合いをしながらチャンスを窺う。

4R デービスの必殺の左ストレート、ロメロ外す。ロメロの右・左のフック振うがヒットせず。ロメロの右カウンター振うがヒットせず。

5R デービスの一発目の左ストレート、ロメロかわす。デービスの二発目の左ストレート軽くヒット。デービスの左ストレート顔面、ボディに軽くヒット。

6R デービス、試合中に客に声をかける。ロメロ、右フック胸に、返しの左フックを躱しながらのデービスのカウンターの左フックでロメロ ダウン。やっと立上ったが、足許がふらつき、レフリーはストップを宣した。

デービスはロメロの逆ワンツーを読んでいたようで、これを逃す事なく、一発で仕留めた。

この試合でのクリーンヒットはこの一発のみであったが、デービスのボクシングセンスと実力はロメロを遙かに上廻っていたのは明らかであった。5ラウンドまでの審判の判定は48:47、49:46、47:48 の2:1で僅かにデービス有利と出ていた。

ちなみにデービスのい最近の試合をみると

2017/1/14 IBF Sフェザー級 ホセ・ペトラザを7R、TKO

17/5/20 IBF Sフェザー級 リアム・ウォルシュを3R、TKO

17/8/26 IBF Sフェザー級 フランシスコ・フォンセカを8R、TKO

18/4/21 WBA Sフェザー級 ヘスス・クエンジャルを3R、TKO

19/2/9 WBA Sフェザー級  ウーゴ・ルイスを1R、KO

19/7/29 WBA Sフェザー級 リカルド・ヌニェスを 2R、TKO

19/12/28 WBAライト級 ユリオルキス・ガンボアを 12R、TKO

20/10/31 WBAフェザー級/WBA ライト級 レオ・サンタクルスを 6R、KO          

2021/6/26 WBA Sライト級 マリオ・バリオスを 11R、TKO

何れも世界戦である。

デービスの凄いところは試合を支配されていても決して慌てる事なく、じっとチャンスを狙って必ず仕留めるところである。左、右ストレート・フック、左アッパーいずれも一発必倒の力を秘めて、当て勘も良く、防御技術も極めて高い。歴戦の勇サンタクルスを6R左アッパー、一発でKOした試合は見事なものであった。軽量級の中でも頭抜けた実力者である事に異論をはさむ者はいないであろう。あのメィウェザーの秘蔵っ子である。

 

会場 米国 カリフォルニア州 カーソン ティクニティ ヘルス スポーツ パーク 2試合 2022年5月19日 試合日5月14日

会場  米国 加州 カーソン ティクニティ ヘルス スポーツ パーク 2022年5月19日 ( 試合日 5月14日 )

1.IBFウエルター級挑戦者決定戦 ジャロン・エニス vs カスティオ・クレイトン

2. 4団体統一 Sウエルター級決定戦 3団体統一チャンピオン ジャーメル・チャーロ vs WBOチャンピオン ブライアン・カスターニョ

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1.IBFウエルター級挑戦者決定戦

ジャロン・エニス(米)24才 戦跡 29戦28勝26KO1無効試合  IBFウエルター級3位。

 

カスティオ・クレイトン(カナダ)34才  戦跡 20戦19勝12KO 1分。 

 

1R エニス右構えで始める。長い右ジャブで相手を完全にコントロール。2分過ぎに左構えに変えるがジャブの多さは変らず。

2R エニスの長いリーチを生かしたジャブにクレイトンのパンチが届かないまゝエニスのい右フックがクレイトンの左テンプルにヒット。クレイトン ダウンし、立上ったが足がふらつきレフリーは様子を見ていたが、ふらつきが続いた為にレフリーストップを宣言。これでエニスは19連続KO勝ちとなった。

エニスは今大注目の選手で、次はクロフォードかスペンスと戦う公算が大であり、大いに盛り上がる事であろう。又、全勝 全KO の WBA、WBC、WBOともに1位にランクされているバージル・オルティスもいて強豪のひしめくクラスである。

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2.4団体統一 Sウエルター級決定戦

3団体統一チャンピオン ジャーメル・チャーロ(米)31才 戦跡 36戦34勝18KO 1敗1分

 

WBOチャンピオン ブライアン・カスターニョ(アルゼンチン)32才 戦跡 19戦17勝12KO 2分、アマの戦跡は191戦181勝5敗5分けと敗けない選手である。

両者は2021年7月17日に対戦し、3者3様の判定で引き分けており、決着をつけるべくの第2戦である。2月26日、3月19日と2回試合が組まれたがカスターニョの負傷などで繰り延べとなったものである。

 

1R カスターニョ例によって高くガードを掲げて、立上り早々プレッシャーをかけて前進する。チャーロはこれを迎え打ち、ワンツーからの左ボディブローで対抗。両者激しく打ち合う。

2R チャーロはやゝ引きぎみ。カスターニョが前進し接近するとクリンチでこれを防ぐ。お互いにパンチはヒットする。

3R カスターニョの前進をチャーロ、左ジャブで止める。尚も接近するところチャーロは左右フック ヒットする。

4R カスターニョのプレッツシャーは続いて、カスターニョのパンチがヒットすると、打ち終わりを狙ってチャーロの左右ストレート、フックが当り、クリーンヒットは数発ずつ。

5R 前半カスターニョ、中盤チャーロの集中打のあと、後半カスターニョ猛反撃。

6R この試合の主導権を明らかにする為にカスターニョ攻勢を強めて、パンチが数発ヒット。チャーロ打たれて後退。効いたようだ。

7R チャーロの左フック有効でカスターニョの攻勢やゝ弱まる。

8R チャーロは相手の打ち終わりを狙って右ストレート、アッパーを有効に使い、カスターニョ得意の連打ができない。流れはチャーロに。

9R カスターニョの前進は止まらず、チャーロは打ち疲れか手数が減る。

***この時点でコンピューターが示すパワーパンチの数はチャーロ113発、カスターニョ116発と拮抗しており、審判の判定はカスターニョの攻勢を評価しているようだ。***

10R カスターニョ勝負にでて、打って出る。チャーロ後退を続けて手数も少なくなったが、突如左ショートフックがカスターニョのテンプルにヒット。さほど力強いパンチではないように見えたが、カスターニョ ダウン。やっと立上ったが、チャーロの連打で遂にKO、決着をみた。

前戦に比べてチャーロはロープに詰まることが相変わらず多かったが、打たれたら必ず反撃し、相手の打ち終わりに強烈なパンチを送り込み有効打は多かったのが目立った。二人とも目一杯戦い、実に見どころのある激しい打ち合いを見せてくれた。

 

これでチャーロはバーナード・ポプキンス、テレンス・クロフォード、オレキサンダー・ウシク、ティモフィオ・ロペス、カネロ・アルバレス、ジョシュ・ティラーに続いて7番目の統一王者となった。

 

ここでチャーロのボクシングを再考してみよう。

チャーロがあれ程の左右ストレートと右アッパーが強力であるにも拘らずKOが少なく、どの試合も常に後退するのは何故か? どのパンチも一発必倒の威力があるのは誰もが認めている。しかし、これが後退を続ける理由なのだ。どのパンチにも全力を込めて打つ為に、一定の溜めが必要で、手数の多い相手にはどうしても押されてしまうのだ。また力を込めたパンチを連続して打つことは出来ないし、長丁場になった場合スタミナももたないのは明白の事である。そこがスーパースターのゴロフキンとの違いである。ゴロフキンは左ジャブで相手をコントロールし、7,8分の力でパンチを振い、相手を弱らせてから力を込めたパンチを振ってKOの山を築いている。(注)  常に相手に圧力を加えて、自分のペースで試合を運ぶのだ。チャーロも速く鋭い左ジャブをもっているのだから、これを多用して相手を下がらせる事が大事で、パンチは強弱をつけて、今より数多く打ち、自分が後退する事のないようにすべきである。こうする事によって常に自分が主導権を握って優位に立てるのだ。今回の試合でもパンチの威力はあるが、試合はむしろカスターニョの方に主導権を握られていたようにみえる。後退を続けている為だ。

 

(注)ゴロフキンは17連続KO防衛の世界記録を持っている。

 

会場 米国 ネバダ州  ラスベガス  ヴァージンホテル                  2 試合    2022年5月9日  試合日 4月9日

会場  米国  ネバダ州ラスベガス ヴァージンホテル 2022年5月9日(試合日 4月9日)

1.WBC Sウエルター級挑戦者決定戦 トニー・ハリソン vs セルヒオ・ガルシア

2.WBC Sウエルター級暫定王座決定戦 セバスチャン・フンドラ vs エリクソン・ルビン

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1.WBC Sウエルター級挑戦者決定戦

トニー・ハリソン(米)31才 戦跡 32戦28勝21KO 3敗1分 ニックネームは「スーパーバット」=(悪い奴)ジャメール・チャーロを番狂わせで破り、王座についたが2019年12月21日再戦で11R KO敗けを喫した。ジャレット・ハードにもKO負け、3敗は総てKOで敗れており必ずしも打たれ強くはない。

 

セルヒオ・ガルシア(スペイン)29才 戦跡 34戦33勝14KO 1敗 ニックネームは「エル・ニーニョ」=(神の子)、唯一の配線は2021年12月5日セバスチャン・フンドラに判定で敗れたものである。

 

1R ガルシア ガードを顔の前に立てゝ構え、圧力をかけて前に出る。ハリソンは様子見のあと、速い左ジャブを出す。

2R ガルシア、ハリソンをロープに詰めて集中攻撃を行うが全く当らない。ハリソンはロープに詰まりながら左ジャブ3発、左アッパーのボディブロー、ついて右フックを顔面に返す。有効打はハリソン。

3R ハリソンの防御技術は冴えており、ガルシアのクリーンヒットは許さない。

4R ハリソンの左ジャブは悉く前進するがガルシアにカウンターパンチとなり、そのあとの左アッパー、右フックもヒット。

5R ハリソンの速い左ジャブが悉くカウンターとなり、ハリソンの顔面腫れる。

7~10R 2人のボクシング技術の差が歴然としてきて、ハリソンは無理することなく楽しげに試合を終了。

判定は98:93が1人、100:90が2人でハリソンの圧勝であった。ハリソンのテクニックは素晴らしく、左ジャブのタイミング、鋭さと申し分なく、上・下の打ち分けも巧い。防御技術も実に巧みで、ウィービング、ダッキング、足の運びとボクシングの技術の凄さを堪能する事が出来た。技術で云えば全階級のうち5本の指に数えられるであろう。見事な試合であった。

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2.WBC Sウエルター級暫定王座決定戦

セバスチャン・フンドラ(米)24才  戦跡 19戦18勝12KO 1分 ニックネームは「タワーリング・インフェルノ」身長197㎝ 同級2位

 

エリクソン・ルビン(米)26才  戦跡 25戦24勝17KO 1敗 ニックネームは「ハンマー」、1敗はジャメール・チャーロで1R KO敗けである。

お互いにサウスポー。

 

1R フンドラ、前進して接近戦に出る。右ジャブ、右・左フック、左アッパー手数が多い。

2R フンドラの連打がヒット、右アッパーでルビン足に来る。フンドラ、アッパー主体に打ち込み、右アッパーでルビン ダウン。ルビンの反撃が奏功し始めていたところである。

3R フンドラ、ルビンをロープに詰めて決めにかゝる。ルビンも反撃し、お互いにパンチも当って激しい打ち合いとなるが、フンドラやゝ打ち勝つ。

4R フンドラ、接近戦に持ち込み、ルビンの反撃も激しくなるが、フンドラは意外にも打たれ強い。

5R 互角の打ち合い。

6R ルビンの反撃強まる。フンドラの攻撃手数は変わらないが手打ちとなる。

7R フンドラ攻撃を強め、力強いパンチを振う。左アッパーが主体。中盤からルビン猛攻撃でフンドラ ダウン。

8R ルビン チャンスであったが7ラウンドの攻撃で体力を消耗したか、立ち直ったフンドラの反撃に押される。フンドラこの反撃によって元気を取り戻す。

9R フンドラ先手をとって攻撃を一層強める。ルビンは手数が減って受け身一辺倒となり、このラウンド終了時レフリーはストップを宣言し、フンドラのTKO勝ちとなる。

 

ルビンの顔は腫れ上がって、この判定もやむを得ないと思われる。フンドラはプロ入り初めてのダウンを喫したが、体型に似ず接近戦を好み、長い手を折り畳んでジャブ、フック、アッパーを数多く繰り出して、その手数の多くは驚異的であり、特に左アッパーは有効であった。ファイティング・スピリットも充分で意外と打たれ強い。ルビンに右ジャブが少なかったことも幸いした。しかしジャメール・チャーロを考えた時、その左ジャブの速さ、強さ長い距離の左右ストレート、フックは規格外で、これに対抗出来るかやゝ心もとない感じがするが・・・・。

 

会場 米国 ネバダ州ラスベガス MGMグランド・ガーデンアリーナ 3試合 2022年5月9日(試合日4月30日)

 

1・ミドル級4回戦 ニコ・アリ・ウォルシュ vs アレハンドロ・イバラ(註  ニコ・アリ・ウォルッシはモハメド・アリの孫 )

2.ライト級8回戦 キーション・デービス vs エステバン・サンチェス

3.WBC、WBO Sフェザー級王座統一戦 WBC王者 オスカル・バルデス vs シャクー

ル・スティーブンソン

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1.ミドル級4回戦

ニコ・アリ・ウォルシュ(米)21才 戦跡 4戦全勝3KO モハメド・アリ の孫。

対戦者 アレハンドロ・イバラ(米)28才 戦跡 8戦7勝2KO 1敗

1R 左フックからの右フックで2分50秒 ニコのKO勝ち。人気は高いが、防衛技術、パンチのスピードも甘く大成するのは難しいのではないかと思われる。

 

2.ライト級8回戦

キーション・デービス(米)23才 戦跡 4戦全勝3KO 東京五輪 ライト級銀メダリスト。決勝戦でアンディ・クルス(キューバ)に敗れている。(ちなみにアマ時代クルスに4戦して全敗しており、クルスのアマ成績は400勝9敗である。)プロ入りするやトップランク社と契約したスター候補である。

対戦者 エステバン・サンチェス(メキシコ)23才 戦跡 19戦18勝8KO 1敗

1~4Rまで デービスのスピード豊かなボクシングにサンチェスついていけずに一方的な展開となっていたが、5R デービスの左ボディブローが効いてそのあとのパンチにサンチェス グロッキーとなる。

6R ここが決めどころと集中打でレフリーストップ。デービスのTKO勝ちとなる。五輪組は何れもパンチが速く、当て勘が良いのが特徴であり、デービスも期待通りの試合を行っている。

 

3.WBC、WBO Sフェザー級王座統一戦 

WBC王者 オスカル・バルデス (メキシコ)31才 2021年2月絶対王者ミゲール・ベルチェルトをKOに下して戴冠し、2度目の防衛戦である。戦跡 30戦全勝23KO 2階級王者。北京、ロンドン五輪出場。

対戦者 シャクール・スティーブンソン (米)24才 戦跡 17戦全勝9KO  リオ五輪銀メダリスト。2021年10月23日3度防衛中のジャメール・ヘリングから10ラウンド相手の右目上負傷でドクターストップとなりTKOで戴冠している。

 

前試合の不出来からバルデスの評価が下がってオッズは 6:1 でスティーブンソンである。

1R サウスポーのスティーブンソン右ジャブを多発、ワンツーからの左ボディと快調に立ち上がる。バルデスは相手の右ジャブが邪魔で中に入れない。

2、3R 同様の試合で、完全にスティーブンソンのペースである。

4R コーナーから出たバルデスはマウスピースをするのを忘れてコーナーに戻る。試合再開後バルデス、左フックを大きく振るところ空振りとなり、ロープに崩れかゝるところにスティーブンソンのパンチを受けてダウンと判定される。本来はレフリーがその前に止めるべきであったろう。

5、6R あたりからスティーブンソンの右手の使い方が、あたかもつっかい棒のように出して相手を近づけない形を続けるようになり明らかな反則であるが、何故かレフリーはこれを制止しない。以後12ラウンドまで右ジャブで相手の前進を止めて、なお入ってくるところへ右ストレートを上・下に打ち分けたスティーブンソンが全く危なげなく試合を進めて勝利。 バルデスは一体どうした事か!

 

スティーブンソンの作戦はいつもの通りで解り切ったものなのに無策で、この試合を通じてのバルデスの左リードパンチの数は僅か6発に過ぎなかったのである。いきなりの右ストレートを振うが距離が取れずに身体も流れて、スティーブンソンの格好の餌食となっていた。あたかも4回戦ボーイがチャンピオンに稽古をつけて貰っている様で、メキシコ国民はそのだらしなさに腹を立てた事であろう。

 

判定は117:110が1人。118:109が2人でバルデスは完敗であった。第一はパンチが唯の一発も当たらないのだから当然の結果と云えるだろう。

 

一方のスティーブンソンである。前回タイトルを獲った試合もそうだったが今回も同様決められない選手で、これではビッグマッチはおろか、観客動員も思ったようにはいくまい。観ている方がイライラしてくる試合振りであるのはいつもの通りで、スティーブンソンと聞くとあまり観たくないと思ってしまうのだ。又試合後リング上で箱から指輪を取り出してリングに登った女性に結婚を申し込むパフォーマンスを行った事、試合の終了前10秒、リングを踊り回った事、試合中に何度も笑った事など、不謹慎さも目につき、対戦相手に対する敬意など微塵も感じられない嫌な選手の印象であった。

 

会場 英国 ロンドン ウェンブリィー・スタジアム WBC ヘビー級タイトルマッチ チャンピオン タイソン・フューリー vs 暫定王者 ディリアン ホワイト 2022年4月25日( 試合日 4月24日  )

WBC ヘビー級タイトルマッチ

タイソン・フューリー(英国)33才 戦跡 32戦31勝22KO1分 WBCヘビー級チャンピオン2度目の防衛戦 ニックネームは「ジプシー・キング」

 

対戦者 ディリアン・ホワイト(英国)34才 戦跡 30戦28勝19KO 2敗 WBCヘビー級暫定王者 ニックネームは「ボディ スナッチャー」

同団体の統一戦である。

両者の体格 

フューリー    ホワイト

身長  206㎝   193㎝

リーチ 216㎝   198㎝

体重  120.1㎏  114.87㎏

前日の計量でフューリーは「ベッドで共にしたチームメイトみたいなものだと」と語ったあと、あわてゝ「 クソ! こんな事云うつもりじゃなかったんだ。変なこと言ってゴメン」。「戦歴だけでボクシングを評してはいけない。1発当たればわからないのだから」と語っている。 

 

1R ホワイト左構えで始まる。フューリーはちょっと戸惑ったようだ。ホワイトやゝ圧力をかけて前に出る。フューリー右ストレート、右フック ブロックの上に打つ。又小刻みなフェイントをかけてホワイトを揺さぶる。

2R ホワイト右構えに変更。フューリー右フックボディ、左フック、ジャブと相手の出鼻を叩く。ホワイト相手が大きいので右フック大振りとなり、空振り。

3R フューリーの左ジャブ冴えており的確にヒット。ワンツーも速い。コンビネーションも小さくスピードもある。

4R フューリーのジャブ正確にヒット。両者レフリー ”ブレーク” の声にも構わず打ち合い注意を受ける。ホワイトは右拳をしっかりと右顎につけて、フューリーの左ジャブ、右ストレートに対応。闘争心も充分である。

5R フューリー 左ジャブを数発、右ボディブローを3発続けたあと 突如ホワイトの警戒心かボディに集中したと見る間に速いワンツー顔面に、ホワイトぐらつく。

6R フューリー左ジャブ、右ストレートを軽く出した後、この試合始めての右アッパーを顔面に突き上げてホワイト、これが全く見えておらず仰向けにダウン、立上ったもゝのファイティングポーズをとったが足許がふらつき、レフリーはこれをみてストップをかけフューリーのTKO勝ちとなった。

 

試合のあと司会者が世界のファンに何かと水を向けるとフューリーは歌をうたいだし、会場の観客もそれに唱和して大合唱、大いに盛り上がった。フューリーはこの試合を最後と引退を匂わせたが果して・・・・・・。

 

会場 米国 テキサス州 アーリントン AT&Tスタジアムステルダム 3試合 2022年4月18日 ( 試合日 4月16日)

1.WBC米大陸ライト級王座決定戦 ホセ・バレンスエラ vs フランシスコ・バルガス 

2.ライト級10回戦 イザック・クルス vs ユリオルキス・ガンボア 

3.WBAスーパー、WBC、IBF ウエルター級 タイトルマッチ  エロール・スペンス vs ヨルデニス・ウガス  

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1.WBC 米大陸ライト級王座決定戦

ホセ・バレンスエラ メキシコ生れアメリカ籍 22才 戦跡 11戦全勝7KO サウスポー

 

対戦者 フランシスコ・バルガス(メキシコ)37才 戦跡 32戦27勝19KO 3敗2分

 

1R バレンスエラ、左ボディブロー数発ヒット。ボディを打つとみせて突然の左フックを顔面に的中させる。予期していなかったバルガス ダウン。倒れ方をみてレフリーはストップを宣言。さすがタフネスを誇ったバルガスも完敗した。バレンスエラはボクシングがうまく、長いリーチを巧みに使って安定感もあり、楽しみな選手である。

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2.ライト級10回戦

イザック・クルス (メキシコ) 才 WBC、WBOライト級4位 前戦でジャボンティ・デービスに善戦で評価が上がっている。 戦跡 25戦22勝15KO 2敗1分 

 

対戦者 ユリオルキス・ガンボア(キューバ)元3階級王者 戦跡 34戦30勝18KO 4敗 ニックネームは「グアンタナモのサイクロン」

 

1R クルスの左フックがガンボアの顔面に直撃。ガンボア足にきてぐらつき、その後も右フックでダウン寸前となるがゴングに救われる。

2R ガンボア劣勢をとり戻すべく積極的に打って出るところ、クルスの左・右フック4発でガンボア ダウン。何とか立上る。

3R クルスの左フックでガンボア2度目のダウン。ガンボアふらつきながら打ち合う。

4R ガンボア打たれたダメージ深く、パンチに力がなくなるところクルスの左フックで3度目のダウン。ここでレフリーがストップを宣言した。

 

クルスはジャブは一度も打たず、ストレートも打たない。たゞの左・右フックを振り回すのみの選手であり空振りも多いが、今回はツボに嵌って成功した。ガンボアは元々打たれ弱いところがあるが、直ぐに立ち上がるタイプである。 打たれるとむきになって打ち合い、ダウンを食らう事をくり返しているがガードをかためることもなく、これから選手活動を続けることは難しいのではないかと思われる。

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3.WBAスーパー、WBC IBFウエルター級タイトルマッチ

エロール・スペンス(米)32才  戦跡 27戦全勝21KO  WBC、IBF ウエルター級王者 ニックネームは「ザ・トゥルーズ=本物」。イギリスの全勝王者ケル・ブルックを敵地で下して戴冠するやダニーガルシア、ショーン・ポーター、マイキー・ガルシア等強豪を次々に負かしてこのクラス テレンス・クロフォードと並んで、絶対的存在となっっている。パンチ力、スタミナ、防御力と完成したボクサーである。

 

対戦者 ヨルデニス・ウガス(キューバ)35才 WBA スーパーウエルター級チャンピオン 戦跡 31戦27勝12KO 4敗。ウガスはそれまでさほど注目されていなかったが、2021年8月マニー・パッキャオを番狂わせで破りタイトルを奪取。パッキャオを引退に追い込んだことで一躍注目を浴びたが、それでもスペンスとの実力差は誰もが認めるところであり、2020年12月から実に1年4ヶ月振りとなる。スペンスの負傷を加味してもオッズは5:1でスペンスであった。

 

さて1R 例によってスペンス右ジャブを突いて開始。ウガスは左ジャブを数発ボディにヒット。

2R ウガスはスペンスの右ジャブに対して、リターンの右フックを狙う。予想以上にこのリターンが速く、スペンスが圧力をかけて前に出ようとしても、ウガス体力を使って下がらない。

3R スペンス攻勢を強める。ウガス反撃がやゝ少ない。ウガスのスペンスの攻撃に対しての返しのパンチが力強く、なかなかスペンスのペースにならない。

4R 一進一退

5R スペンスはペースを取る為にエネルギーを使って攻撃を強める。ウガスの手数は少ないが、防御は固く後半反撃のパンチを振う。

6R スペンス途中でマウスピースを落とし、これを自分で拾おうとして探していたところにウガスの左フックでロープに飛ばされ、あわやダウン寸前となる。

7R スペンス猛然と攻勢に出て、ウガス受け身一方となる。

8R スペンスここぞと猛攻を続けてウガスの右目完全にふさがる。

9R 守勢に回ったウガス、反撃のボディブローがきいて、スペンスの攻勢が止まる。ウガスに右目確認の為ドクターチェックが入る。

10R スペンス優勢の中、ウガスの右目にドクターの確認が入ってドクターストップとなり、スペンスの勝利となった。

 

スペンスにとってこれまでのボクシング人生で一番の難敵であったろう。戦跡からみたら、すでに4敗もしておりKO勝ちも少ない事から試合前のインタビューでも、もしウガスが対等に向かってくれゝば、早い回でのKOであり、ボクシングで足を使ってくれば大差の判定で自分が勝であろうと証言している。しかしウガスは防御が固く相手の打ち終わりを狙ったリターンパンチも速く鋭いものがあり、又一発の威力はむしろスペンスを上回った感があった。特に左右のボディブローは強烈で予想をはるかに上回る強敵であったのである。もし右目がふさがらなかったら、この試合どっちに転んだか解らないスリルに満ちた試合であった。

 

一方のスペンスは相変わらずの試合振りであったが、通常の試合ではスペンスの右ジャブの威力と次いでの左ストレートで相手は後退していたが、ウガスは下がらずにスペンスの前進に対し、打ち終わりを鋭く力強いパンチで対抗。体力もあって中盤まではほゞ互角の状態あった。スペンスは中盤以降ギアをあげて一気に攻勢を強めて、その後も手を緩める事なく攻撃、その驚くべきスタミナにウガスは対抗できずに敗れたがスペンスの攻撃力が以前より弱まったのではの感があった。

 

これで残るのはテレンス・クロフォード戦のみとなって、世紀の一戦が楽しみとなった。

ウガスはパッキャオを破ったことで自分に自信を持ったのではないか。見違える程の強さをみせた。

 

会場 ロシア エカテリン・ブルグ RCCボクシングアカデミー  1試合 2022年3月28日 (試合日 2月19日)

WBCシルバーライト級タイトルマッチ

チャンピオン サウル・アブドゥラエフ(ロシア)27才 戦跡 15戦14勝8KO 1敗 1敗はデビン・ヘイニ、 WBC6位。

 

挑戦者 ホルヘ・リナレス(ベネズエラ)36才 戦跡 53戦47勝29KO 6敗 元3階級王者 

リナレス 栄光の軌跡

2007年7月21日 WBCフェザー級でオスカー・ラリオスを10R TKOに下しタイトル。

2008年11月28日 WBA Sフェザー級でワイベル・ガルシアを5R TKOに下しタイトル。

2015年5月30日 WBC ライト級でケビン・ミッチェルを10R TKOに下しタイトル。

2016年9月24日 WBAライト級でアンソニー・クロラを12R判定に下しタイトル。

2018年5月12日 ワシル・ロマチェンコを右ショートストレートのカウンターでダウンを奪うも10R TKOに敗れる。

 

1R リナレス、左ジャブを中心とし、左フックのボディブロー、左・右のボディブローで快調に立ち上がる。アブドゥラエフは固いガードで対応。

2R 1ラウンド同様左ジャブと左・右ボディブローでリナレス優勢。

3R 左ジャブからの左・右ボディ、左ジャブが速く鋭い為にアブドゥラエフは対抗できない。

4R リナレス右、左フックのボディブローを始め、上下に打ち分け、左ボディブロー再三に亘りヒット。アブドゥラエフ左ボディブローを放ってプレッツシャーをかけ始める。

5R 両者の距離が近くなってきた。アブドゥラエフの攻勢が始まった為であるか、リナレスの左ジャブが邪魔で思うように攻撃できない。

6R アブドゥラエフのプレッツシャーが強まると共に、パンチが当たり始まる。

7R 両者、ボディブローを中心に打ち合う。

8R 左ボディブローを始め、アブドゥラエフの攻勢強まり、リナレス鼻血を出す。

9~11R  リナレス左ジャブを中心にアブドゥラエフの前進を止めるべく努力するが、パンチに力がなくなってくる。アブドゥラエフの攻撃強まり、劣勢に追い込まれる。

12R アブドゥラエフ、ポイントで負けているのを自覚し、逆転を狙って猛攻。狙っていた左フックが決まりリナレス ダウン。立上ったが戦闘能力を失って2度目のダウン、再度立上ったが連打を受けてレフリーストップとなる。

 

アブドゥラエフは6ラウンドあたりリナレスのスピードが落ちるまで防御中心に対応し、7ラウンド以後リナレスの攻撃力が弱まったのを見て反撃にでた。リナレスは9ラウンドあたりからパンチに全く力がなくなり、何とか逃げ切ろうとしたが、アブドゥラエフの12ラウンドの猛攻に屈した。

 

リナレスは中盤までスピードもあり、左ボディブローも良く、まことにスタイリッシュなボクシングを展開したが、パンチ力の低下は覆うべくもなく最後に掴まった。元々リナレスは打たれ弱いところがあり、反撃力では左ジャブで相手の出鼻を叩いて、尚相手の出るところにカウンターの右ショートストレート、アッパーを打ち込むカウンターパンチャーである。

リナレス今回の試合も、年齢の事もあって力強さに翳りがみられ、中盤以降のスタミナ切れもあり、ボクシング人生の終盤に差し掛かったと言えよう。

 

会場 米国 ネバダ州ラスベガス ザ・コスモポリタン・オブ・ラスベガス 1 試合 2022年3月28日(試合日2月26日)

WBA 米大陸Sライト級王座決定戦 10回戦

ゲイリー・アントゥアル・ラッセル(米)25才 戦跡 14戦全勝14KO リオ五輪 ベスト8位 WBC Sライト級30位。3人兄弟の三男。 長男ゲィリー・ラッセル Jr.元フェザー級チャンピオン。次男アントニオ・ラッセル バンタム級ランカー。

 

対戦者ビクトル・ポストル(ウクライナ)38才 戦跡 34戦31勝12KO 3敗、3敗は ⓵テレンス・クロフォード 元Sライト級で4団体統一チャンピオン、現在はWBOウエルター級チャンピオン。パウンド・フォー・パウンドで常に2-3位に位置するスーパースター ②ジョシュ・テイラー Sライト級の現在4団体統一チャンピオン ⓷ ホセ・ラミレス Sライト級元2団体チャンピオン。 3戦とも判定負けしている。ポストルはウクライナ国旗をデザインとしたガウンとトランクスを着用して登場。

 

1Rからラッセル、猛然と攻撃。特に右フックは強力。9ラウンドまでポストルに反撃の機会すら与えず攻めまくった。10ラウンド、連続KOを狙って攻撃を強め、得意の右フックがポストルの顎にヒット、ポストルぐらつくところに追撃の連打でレフリーストップを呼び込んだ。ラッセルは初回から力強いパンチを振って攻めまくりポストルにペースを渡すことなくパンチの当て勘も良く、意外に防御技術も確かで危なげなく勝利を掴んだ。兄二人はテクニック重視であるが、三男のアントゥアルは攻撃最重視で全く異なる。

 

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス ザ・コスモポリタン (チェルシー・ボール・ルーム)2 試合 2022年3月21日 (試合日2月26日)

1. WBC Sフライ級王座決定戦 カルロス・クァドラス vs ジェシー・ロドリゲス       2.  IBF Sフライ級タイトルマッチ  チャンピオン ジュルウイン・アンカハス vs フェルナンド・マルチネス

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1. WBC  Sフライ級王座決定戦

カルロス・クァドラス(メキシコ)33才 戦跡44戦39勝27KO 4敗1分 WBC3位 

対戦者 ジェシー・ロドリゲス(米)22才 サウスポー 戦跡 14戦全勝10KO 

この試合はクアドラスがWBC1位のシーサケット・ソールンビサイとWBC王座をかけて対戦する予定であったが、コロナの為中止となり、この試合の前座として決まっていたWBC Lフライ級6位のロドリゲスが2階級上げて急拠決まったものである。

クアドラスはファン・フランシスコ・エストラーダと2回戦っているが、いずれも僅差で敗れている。

1R ロドリゲスはガードが固く、右ジャブが鋭く上・下に打ち分けてボクシングがうまい選手である。足も速く上体も絶えず動かしている。クアドラスの若い頃は完全なファイターで打ちまくる選手であったが・・・・

2R ロドリゲスはワン・ツーのあと左ボディブロー、左アッパーのカウンターと調子にのってきた。

3R ロドリゲス接近戦で右に回り込みながらダッキングするクアドラスに対して右のアッパーカットを顔面に打ち込みクアドラス ダウン。普通、回り込んで左のアッパーを突き上げるのは通常のパターンであるが、ここで右アッパーを打つのは技術的に非常に難しい。クアドラスにはこのパンチが全く見えなかったのではないか。そのあと左ボディ・アッパーにクアドラス腰が引ける。

4R ロドリゲス1ラウンドを終って打ち合っても大丈夫と思ったのであろう。クアドラスに体格差にかゝわらず負けないと確信したと思われる。左・右のボディブローを効果的に打ち込む。クアドラスが元々ボディを打たれるのを嫌がるのを知っていたからである。クアドラスのスタミナは次第に削られてゆく。

5R ロドリゲスの左右ボディブロー有効。クアドラスの右アッパー3発を始め打ち合うが、ボディブローを打たれて腰が引けている為力強さに欠けて相手にダメージを与える事が出来ない。

6R ロドリゲス快調にとばす。左アッパーのボディブローから上に返す。クアドラス疲れてくる。

7R クアドラス、押されて後退ぎみとなるが、これではならじと必死に攻勢をとりパンチを振いこのラウンドをとる。

8R クアドラスがクリーンヒットを決めると必ずロドリゲスがその2~3倍の有効打で反撃されてペースを握れない。

9R クアドラスはボディを打たれるのを極端に嫌がり表情に出す。ロドリゲスはロマチェンコばりの右に動いて左アッパーを振う。

10R 前半ロドリゲス、後半クアドラスがであったが、クアドラスのパンチは横殴りとなっており相手にダメージを与える効果が薄い。

10~12R クアドラス必死に反撃するが体力の消耗が激しいかロドリゲスには体力が充分残っているようだった。

 

判定は115:112が1人、117:110が2人でロドリゲスの勝利であった。これで若い才能ロドリゲスはWBC Sフライ級の王者となった。これから試合を重ねる毎にどんどん強くなっていく事であろう。防御技術も充分パンチは相手の空いている所を狙って打ち、コンパクトで鋭く、右リードも良く出る。攻撃力は多彩で、特に左・右のアッパーカットが巧みで威力がある。足も速く頭の位置を絶えず変える等完成されたボクサーである感がつよい。楽しみな選手が出てきた。

 

2.IBF Sフライ級タイトルマッチ

チャンピオン ジュルウイン・アンカハス(フィリピン)30才 戦跡 36戦33勝29KO 1敗2分 2016年から9度防衛しており2021年12月にはWBOチャンピオン井岡一翔と統一戦の予定であったがコロナの為来日できず流れている。パッキャオ二世の呼び声が高い実力者である。

挑戦者 フェルナンド・マルチネス(アルゼンチン)30才 戦跡 13戦全勝8KO  アメリカのリング初登場。

1R マティアス先制攻撃をかけて左・右を思い切り振って前進。アンカハスは相手の出方をみる。

2R お互いに接近戦でボディを打ち合う。

3R お互いに接近戦で一歩も引かず打ち合う。

4R マルチネスの思い切りの良いパンチの力にやゝ押されるアンカハス。マルチネス左瞼切る。

5R お互いに打ち合うがマルチネスのボディブロー強烈でアンカハスたじろぐ。距離は完全にマルチネスのもので、アンカハス相手のペースに引き込まれる。

6R マティアスの左フックからの左ボディブロー クリンーヒット。アンカハスは打ち負けて動きがおかしくなってくる。

7R アンカハスこれではならじと手数を多くするが、威力はボディを相当打たれている為か大分低下してきて、活きの良い力一杯振うマルチネスのパンチにアンカハスよろめく。

8R アンカハスこのラウンド ガードを高くして手数で前進するが、威力は全く無くなり、有効打では断然マルチネス。

9R マルチネス益々元気になり左右フック5連発、加えてボディ打ちも忘れない。アンカハスまともにパンチを打たれ、辛うじて立っている状態となる。

10R アンカハスはもはやKO以外に勝てないと覚悟して大振りの左右フックを力一杯振うが、その都度返される。

11R アンカハス打たれて打ち返さないとレフリーストップを宣言されるので必死に打ち返しチャンピオンのプライドで倒されないよう頑張る。

12R アンカハス ダウン寸前となり辛うじてゴング。

 

判定 117:111が1人、118:110が2人でマルチネス番狂わせの新チャンピオンとなる。マルチネスはIBF Sフライ級11位の選手であり、国際的にも無名に等しかったことから、アンカハスに明らかに相手を軽くみた油断があったのは否定できない。そうでなければ本来アンカハスは一定の距離を保って、そこから踏み込んでパンチを繰り出すスタイルであるのに、マルチネスの接近戦での打ち合いに付き合っても大丈夫であろうと高を括って応じたことが、マルチネスの予想以上のパンチ力とスタミナに押されて続け、途中で戦術を変更するにはボディを打たれ続けて、不可能になってしまったのである。ペースを握ったマルチネスは元気100倍、予想以上の力を発揮したのである。

 

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス マンダレイベイ・イベンツセンター WBC 米国シルバーSウエルター級王座決定戦  ヘスス・ラモス vs ウラジミール・エルナンデス           2022年3月14日 試合日2月6日

 

WBC米国シルバーSウエルター級王座決定戦

ヘスス・ラモス(米)20才 戦跡 17戦全勝14KO WBA ウエルター級11位

 

対戦者 ウラジミール・エルナンデス(メキシコ)32才 戦跡 17戦⒔勝6KO 4敗

IBF Sウエルター級12位、元世界王者を2人倒している実力者。

共にサウスポー。

 

1R エルナンデス先制攻撃をかけて打って出る。クリーンヒットはないが何発かヒット。ラモスはほとんど手を出さずに落ち着いて対応。

 

2R エルナンデス精力的にパンチを振い、ラモスを守勢に追い込む。ラモスの右フックヒット。ラモスはL字ガードで構え右肩を使ってエルナンデスの左に対応している。

 

3R エルナンデスの攻撃止まらない。ラモスは左・右のボディブローを中心にパンチを振う。

 

4R ラモスのボディブローに力を入れてきてエルナンデスの攻撃やゝ弱る。

 

5R エルナンデスの手数は変らないが、ラモスのボディブローが効いてきて消耗してくる。

6R ラモスの左フック2発顔面にクリーンヒット。エルナンデスぐらつくとみるやラモス猛攻連打でレフリーストップを呼び込んでTKOに仕留める。

 

ラモスは若さに似ずL字ガードを使って中間距離も接近戦もこなし、途中休むしたたかさも見せクレーバーな闘い振り。余裕をもって闘った。まだ20才の若さで、パンチにスピードと鋭さがもう少し加われば大いに将来が楽しめる。

会場 スコットランド グラスゴー The SSE ハイドロ     1.フェザー級10回戦 2.4団体統一 Sウエルター級タイトルマッチ      2022年3月14日 試合日2月26日

 

1.フェザー級10回戦

ロベイシー・ラミレス(キューバ)28才 戦跡 9戦8勝4KO 1敗 ロンドン五輪のフライ級、リオ五輪のバンタム級で2大会連続の金メダリスト。鳴り物入りでプロ入りしたが、初戦でまさかの敗北。その後8連勝中。 

対戦者 エリック・ドノバン(アイルランド)36才 戦跡 15戦14勝8KO 1敗 

共にサウスポー。 

1R ドノバン前がかりで出るところに左ストレートのカウンター決まりダウン。ラミレスは初戦の敗北からイスマエル・サラス トレーナーの指導もあってガードを高くガードを構えて防御に細心の注意を払って立上る。 

2R ラミレスの右ジャブが的確で速く、ついでの左ストレート、フック、アッパーと多彩なパンチを振う。 

3R ラミレスの左アッパーからの左フックでドノバン ダウン TKOに終わる。

 

さすがに鳴り物入りで登場したラミレスの巧さが目立ったが、防御もパンチの威力も目を見張る程のものは見られなかった。これから強敵との闘いが始まり、その能力をどう見せるのかが注目される。

 

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2.4団体統一 Sライト級 タイトルマッチ

チャンピオン  ジョシュ・テイラー(英国)31才 戦跡 18戦全勝13KO ニックネームは「タータントルネード」 

挑戦者 ジャック・カテロール(英国)28才 戦跡 26戦全勝13KO、 3年3ヶ月WBO1位で挑戦を待たされ続けていた。ニックネームは「エル・ガド」 

テイラーはスコットランド、カテロールはイングランドの出身。会場はスコットランドで同国人同士の戦いであるがイギリス人にとってはイングランドとスコットランドの試合は国際試合とみなされており、カテロールの入場には会場から大ブーイングが浴びせられた。共にサウスポーでテイラーは攻防兼備。足も使え、中間距離もこなせるオールラウンドプレイヤーであり、闘争心も旺盛である。 

1R テイラー攻勢、前に出るところカテロールの左ストレートでテイラー大きくのけぞる。

2R テイラー攻撃、圧力をかけて前進。カテロールの右ジャブからの左ボディブロー ヒット。

3R 攻勢はテイラー、カテロールの左アッパー、右フック ボディにヒット。テイラーのパンチは当らない。 

4R 出てくるテイラーに退りぎみのカテロールの迎え打つ左ストレート顔面に、右フックのボディブローヒット。 

5R カテロールの左右ストレートがクリーンヒット。 

6R テイラー前進するがカテロールの右ジャブが邪魔となって有効なヒットなし。カテロールの左右ストレートがヒット。 

7R 共にみるべき有効打なし。攻勢点でテイラーか。 

8R カテロールの打ち下ろしの左フック2発でテイラー ダウン。テイラーにさしたるダメージはなさそう。 

9R テイラー必死で前に出て左フック2発軽くヒット。 

10R ポイントを取り返すべくテイラー前進する。カテロール ホールディングで減点1。 

11R カテロール受けに回って手が出ず。テイラーもクリーンヒットなし。このラウンド終了後テイラーがカテロールのボディをかるく打って(挨拶代わりのようだった)減点1をとられる。 

12R お互いにヒットなく終了。 

判定 112 :113 、114:111、113:112 の2対1でテイラーの辛勝であった。

この試合の唯一の有効打はカテロールの8ラウンドの2発のみ、盛り上がりに欠けるものであった。テイラーのクリーンヒットは唯の一発もなく、有効打だけみればカテロールの方に軍配が上がるべきであったが、何せカテロールは基本的に待ちのボクサーで、この試合中一貫して後退を続けており、さりとて一発必倒のパンチの切れ味がある訳でもなく、これでタイトルを獲ろうとしても所詮無理というものであろう。

 

このクラスは中量級の中でも実力者の少ないところである。この下のライト級にはロマチェンコやジャーボンティ・デービスがいて、上のウエルター級にはクロフォードやキース・サーマン、ダニー・ガルシア、エロール・スペンスと強豪が揃っている。彼等に比べるとテイラーの実力はいかにも見劣りがすると言わざるを得ない。しかしヨーロッパではテイラーのようなスタイリッシュなボクシングは特に好まれているようで、地元イギリスでの人気は絶大である。

会場 米国 ネバダ州 ラスベガス マンダレイベイ イベンツセンター 2試合 2022年2月28日 試合日2月5日

 

1.WBC、WBO Sバンタム級挑戦者決定戦 ルイス・ネリ vs カルロス・カストロ

2.WBC ウエルター級挑戦者決定戦 キース・サーマン vs マリオ・バリオス

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1.WBC、WBO Sバンタム級挑戦者決定戦

ルイス・ネリ(メキシコ)27才 戦跡 32戦31勝24KO 1敗 元2階級王者。ブランドンフィゲロアに手数で押しまくられて王座陥落、再挑戦である。 サウスポー、ニックネームは「バンテラ」(豹)

対戦者 カルロス・カストロ(米)27才 戦跡 27戦全勝12KO WBC、IBF3位。

1R ネリは左拳を胸の前に置き右は下げてL字ガードで構える。カストロはガードを高く掲げる。ネリのいきなりの左ショートストレート カストロの顔面にヒット。カストロ ダウン。カウント8で立上がり、ネリの猛攻をガードで固めて防ぎ、ネリ攻めきれず。

2R カストロはネリの左ストレートのカウンターを警戒し、防御を固めて対応。ネリは1Rの猛攻で体力を消耗し、このラウンド休む。

3~10R ネリはウィービング等で巧みにカストロの攻撃を躱して、時折攻撃を仕掛けて、あとは休むのパターンを繰り返してスタミナ消耗を防ぎ、ポイントを取る事に専念。一方のカストロはネリの作戦に翻弄されて一本調子の攻撃を繰り返し、術中に嵌って敗れた。

判定は94:95、95:94、96:93の2対1でネリに軍配があがった。凡庸な試合であった。

 

2.WBC ウエルター級 挑戦者決定戦

キース・サーマン (米) 33才 戦跡 31戦29勝22KO 1敗1無効試合。マニー・パッキャオに敗れて6年8度防衛したがタイトルを失い、2年7ヶ月振りの試合である。

対戦者 マリオ・バリオス(米)26才 戦跡 27戦26勝17KO 1敗。 2021年6月26日2度目の防衛戦でWBA Sライト級タイトルマッチでジャボンティ・デービスに11RTKOで敗れ二人とも再起戦である。

1R サーマン左ジャブからの右フックで始まり、左右フックを繰り出す。バリオス左ボディブローを放つ。

2R サーマン左・右を振り回す。バリオスも左ジャブからの右ストレート。アッパーを打つ。パンチはは鋭い。

3R サーマン ガードを高くして飛び込みざまに左フックのボディブロー威力あり。バリオス右アッパーヒット。

4R サーマンの右フック顔面にヒット。フェイントからの右アッパーにバリオスやゝぐらつく。勢いづいたサーマン攻撃を強める。

5R バリオス上・下に打ち分け、左ボディブロー有効。サーマンは飛び込んでの左・右・左のコンビネーションを振う

6R サーマンの左ジャブがカウンターとなりバリオスのけぞる。

7R サーマン距離をとって、いきなりの飛び込みざまの左右フックが良くヒットし始める。

8R サーマンの右ストレートでバリオスふらつく。次いでの左右フックヒット。

9R サーマン先手をとって攻め、途中休みながらメリハリのあるボクシング。

10~12R サーマン攻撃しては休むが当て勘は流石。

 

判定は117:111,118:110が二人でサーマン圧勝。サーマンは従来と比べて身体に筋肉がつきあたかも格闘家のようになっていた。パンチは左右フックを飛び込んで振うスタイルとなっており、従ってパンチの威力は以前程ではなくなっていた。

2年7ヶ月のブランクは掩うべくもない。一方のバリオスはサーマンにゴマカサレた感があったが、終盤までパンチの威力もスピードも衰えないのはさすがであった。対サーマン戦の決め手は、もっとボディを集中的に攻めるべきではなかったかと悔やまれる。サーマンは対パッキャオ戦でボディを打たれて敗れているからだ。あれだけサーマンに動かれると顔面にヒットするのは難しいし、ブランクも2年半に及んだことでもあり、動きを止める為もあり、体力の消耗を図ることからもボディ打ちがもっと必要であったのは明らかで、バリオスがボディ打ちが巧みな選手であったので尚更と悔やまれる。

 

尚TVの解説者は長谷川穂積氏と亀海喜寛氏で、どこか、誰かに気を遣っていたか、サーマンと休養前よりもスピードもパンチ力も上であると評価していたが、バリオス戦のサーマンはジャブが極端に少なく、左右フックが攻撃の主体であったが、スピードもパンチ力も乏しくパンチを振うときはワイドオープンとなっていた。2017年頃、当時ショーン・ポーターやダニー・ガルシアを激戦のうえ下して6年間で8度の防衛を果していたが、2年間休養、復帰戦を一試合して2019年7月マニー・パッキャオ戦に敗れてさらに2年半振りのサーマンはスピード、パンチ力、スタミナも格段に落ちており、実質4年半のブランクは被うべくもなかった。

 

今後のサーマンの相手は当然テレンス・クロフォード、とエロール・スペンスとなるが両者の速くて鋭いジャブの餌食となるのではと思われる。また、二人のパンチはバリオスより数段上でしかもコンパクト、そして多彩。最終ラウンドになってもスピード、パンチ力は衰えない。スタミナも有り余るほど余裕があり、今のサーマンは到底太刀打ち出来まい。

会場 米国ニュージャージー州アトランティックシティ ボルガタホテル&カジノ 2 試合 2022年2月21日 試合日 1月22日

会場 米国 ニュージャージー州 アトランティック シティ ボルガタ ホテル&カジノ

2022年2月21日  ( 試合日1月22日 ) 

1.Sライト級10回戦 サブリエル・マティアス vs ペトロス・アナニヤン

2.  WBCフェザー級タイトルマッチ 

                 チャンピオン ゲイリーラッセル vs  マーク・マグサヨ

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チャンピオン ゲイリーラッセル(米)

1.Sライト級10回戦

サブリエル・マティアス(プエルトリコ)戦跡 18戦17勝17KO 1敗 IBF Sライト級2位

ペトロス・アナニヤン(ロシア)戦跡 20戦16勝17KO 2敗2分 

全勝できたマテイアスはアナニヤンと対戦したが相手を見縊ったか、7Rにダウンを奪われて初の1敗を喫し、その後2戦をKOで飾ってのリマッチである。

1~6R マティアスは敗けた反省からガードを高く据え、パンチはスピード優先で細かいもので手数を多くしてアナニヤンが打つ前に速いパンチを数多く打つことに心がけてきた。

1Rから接近戦で終始し、3Rからアナニヤンの顔が腫れ出し 7Rあたりからマティアス 力をいれて打ち始め 8Rアナニヤン打たれて弱ってきてパンチに力が失われてきた。

9Rマティアスの切り換えしの左フックが顎にヒット。アナニヤン ダウン。ゴングに救われたが、10R始める前にドクターチェックが入り、ドクターが指をアナニヤンの顔の方に動かし、目が正確にこれを追う事が出来るかを確認した、首を振る。

レフリーがストップを宣言し、9R終了時TKOで リベンジに成功した。

マティアスは従来自分のパンチ力に頼って防御を疎かにしてきたがこれを改善し、しっかりとガードで防御を固め、脇を締めてパンチを打ち側から出すようにつとめ、弱点を修正してきた。今後、ウィービング・ダッキングも加味してすることも考え、左ジャブをもっと多用するようになれば、チャンピオンも夢でない。

 

2.WBCフェザー級タイトルマッチ

チャンピオン ゲイリーラッセル(米)33才 戦跡 32戦31勝18KO 1敗。 1敗はロマチェンコ、2014年戴冠し現在まで5度防衛している。サウスポー

挑戦者 マーク・マグサヨ(フィリピン)26才 戦跡 23戦全勝16KO 指名挑戦者である。ニックネームは「マグニフィコ」(壮大)。

ラッセルは2年ぶりの試合で、その間父親が病気の上、片足切断。又弟死亡の悲劇にあっている。試合間隔が長いのは本人の身体上に原因があるのではないか、例えば拳を痛めやすいか等考えられる。

1R マグサヨの右ストレート、右アッパーが浅いがヒット。ラッセルは右ジャブで様子をみる。

2R マグサヨの右フックのカウンターヒット。ラッセルはマグサヨの出るところに左ストレートのカウンター狙い。

3R お互いにフェイントをかけ合い、ジャブを出し合う。

4R このラウンド中盤ラッセル、右肩を痛めた模様。しかしラッセルの左カウンターが2発ヒット。

5R ラッセルは右腕下げたまゝパンチは以降右は一切使わず、左ジャンプ、左ストレートのみで闘う。

6R マグサヨは攻撃を仕掛けるがラッセルの左ストレートのカウンターが鋭くて、攻め切れない。

7~8R マグサヨは圧力をかけて前進するが、ラッセルの左を警戒し、打つパンチはラッセルの巧みなボディワークでことごとく躱される。

9R みるべきものなし。

10R マグサヨこれではならじと無理に攻撃を開始し、ラッセルをロープに詰めて攻撃。有効打はなし。

11R ラッセルは左拳も痛めたようで、右も、左も全くパンチを出さなくなり、出しても撫でる程度となる。マグサヨも攻撃するが有効打はなし。

12R お互いにモタモタしたまゝ終了。

判定114:114が1人、115:113が2人でマグサヨが勝利。王座交替となった。

ラッセルはこれ程拳が脆くては現役を続行出来まい。マグサヨは最初から最後まで一本調子。左ジャブから右ストレート、アッパーと同じパターンで正面から攻め、ラッセルが左パンチを出すとすぐに攻撃を中心に距離をとって仕切り直しの繰り返し。相手が右腕が使えないのが解っているのに左フックをもっと多用するなり、ロープに詰めてラッセルの左パンチが飛んできても攻撃を続行するなりすれば良いのに、なにせラッセルは左一本しかないのだから。これ程頭の悪い選手は見ている方がいらいらする。近来これ程見ていられない試合は珍しい。ラッセルの右腕はパンチを打つことはおろか、防御にも使えない事に加えて11Rには左拳も故障して両腕が使えなくなった事態が明らかになったのに。マグサヨはこの試合を通じてクリーンヒットを唯の一発も当てる事が出来なかったのだから呆れる他ない。

会場 米国 NY州ベローナ・ターニングストーン・リゾート&カジノ 2試合 2022年1月14日 試合日 現地1月15日

会場 米国 ニューヨーク州ベローナ・ターニングストーン・リゾート&カジノ

              2022年1月14日 (試合日現地1月15日)    

1.WBO Sフェザー級10回戦

エイブラハム・ノバ(米)28才 戦跡 20戦全勝14KO 

ウィリアム・エンカーナシオン(ドミニカ)33才 戦跡 20戦19勝16KO 1敗

1R エンカーナシオン先手を取るべく左ジャブ、右ストレートで前に出る。L字ガード、右ストレート2発顔面にヒット、ノバやゝ足元乱れる。

2R ノバ左ジャブを繰り出して前に出る。エンカーナシオンはガードを高く揚げて防御体勢をとる。

3R ノバの右ストレートかるいがヒット。ノバ動きが良くなりパンチも当たり始める。

4R ノバこのラウンドあたりからパンチを力一杯振う。エンカーナシオンやゝ打ち負けて後退し始め、

5R ノバの上・下の打ち分け、右々フックのボディブローが効いてきたようだ。

6R ノバのクリーンヒットが多くなり、エンカーナシオンも必死で反撃。頑張る。

7R ノバの右ストレート ヒットしてエンカーナシオン苦しくなりクリンチ等で防ぐがダウン寸前に追い込まれる。

8R 途中エンカーナシオンのコーナーからタオルが投げられTKOでノバの勝利。

 

ノバはうまいボクサーで離れても接近戦も巧み。パンチも多彩でスタミナもある。オールラウンドプレイヤーでチャンピオンも狙える素材である。

 

2.WBO Lヘビー級タイトルマッチ

チャンピオン ジョー・スミス(米)32才  戦跡 30戦27勝21KO 3敗 スミスは建築作業員をやりながら対フォン・ファラ戦を闘い、そのあとでも仕事を続けていた。番狂わせのスミスで対ファンファラ戦のオッズは1:3、対バーナード・ポプキンス選2:5、Jハード戦1:3、E アルバレス戦1:2と劣勢を予想された試合を悉く勝ち切ってチャンピオンとなった。この試合が初防衛である。

挑戦者 スティーブ・ジェフラード(米)31才 戦跡 20戦18勝12KO 2敗 初戦2連敗から18連勝中。連敗のあとグレンコフ・ジョンソンのスパーリング パートナーとして呼ばれて注目され目が出た選手で、その後も固いガードと鋭い攻撃が見込まれてコバレフ、ペテルビエフ、アルバレス等名だたる強打者からスパーリング パートナーとして指名される。

1R スミス右フックを顔面、ボディと打ち始め、ロープに詰めてラッシュ。ジェラード固いガードで顔面、ボディを完全にブロック。

2R スミス、ジェラードをロープに詰めて集中攻撃。ラッシュのあと少し休む。ジェラードの反撃を待って空いたところを狙う。

3R ジェラード左フックのカウンター、左ジャブと攻撃を集中、後半スミス猛反撃。

4R スミス左右フックの連打で、ジェラードの攻撃のひまを与えず打ちまくる。

5、6R スミス、ジェラードをロープに詰めてこのラウンド力を込めた連打を打ち込む。

7R スミスの右ロングアッパー、ジェラードは後退することが多くなり、スミスのパンチをまともに受け始める。ボディへのパンチが効いてきたようだ。

8R ジェラード弱ってきてコーナーに戻るときに弱気な表情を見せる。

9R スミス、ジェラードをロープに詰めて軽い連打。ジェラードたまらずダウン。レフリーのカウント中に立上ることをせず諦めてレフリーKOを宣した。

 

それにしてもスミス、連打を毎ラウンド続ける。しかも力を入れたパンチで8Rになってもスピードが些かも衰えない無尽蔵ともみえるスタミナには驚くしかない。 今までタイトルを握ってもさほど評価が高くなかったスミスの力は、本当はもっと高かったのではないかと思わせるものがある。

このクラス WBAスーパーのドミトリー・ビボル、WBC、IBFのアルツール・ペテルビエフが共に全勝、そこにカネロ・アルバレスが参入。カラム・スミス、ヒルベルト・ラミレスも階級をあげて加わり、ジョー・スミスも加えて全階級きっての注目の階級となってきた。

会場 カナダ ケベック州 モントリオール ベル・センター     2試合 2022年2月14日 試合日 2021/12/17

会場 カナダ ケベック州モントリオール ベル・センター 2022年2月14日

1.S ウエルター級6回戦

バティルザン・ジュケンバエフ(カザフスタン)30才 戦跡 21戦18勝14KO 1敗2無効試合、初戦より2試合続けての無効試合のあと18連勝。マティアスに敗れて初の1敗、再起戦となる。

ファン・ホセ・マルチネス(メキシコ)35才 戦跡 38戦28勝20KO 10敗 戦跡中世界戦挑戦者4人と闘っており、最近の戦跡は3勝8敗と負けこんでいる。

1R ジュケムバエフは開始早々から右フック、左ストレート、右フックからの左ストレートでマルチネス ダウン。立上ったところにロープに詰めて連打でレスリーストップ。終わったあともマルチネス足許 足元定まらず。

 

2.Sライト級8回戦

アルツール・ビヤスラノフ(カナダーロシアのチェチェン生まれ)26才 戦跡 8戦全勝6KO 

アラン・アヤラ(メキシコ)24才 戦跡 11戦9勝6KO 2敗

1R ビヤスラノフ右ジャブで圧力をかけついでの右フックでアヤラ ダウン。立上ったところに再び右フックで早々とTKOとなる。

ビヤスラノフはスピードもテクニックもあり、今後の注目選手である。

会場 米国 フロリダ州 ハリウッド セミノール ハードロック ホテル&カジノ  IBF ヘビー級挑戦者決定戦 ルイス・オルティス vs チャールズ・マーティン 2022年2月7日 (試合日1月1日)

会場 米国 フロリダ州 ハリウッド セミノール ハードロック ホテル&カジノ

2022年2月7日(試合日1月1日)

IBF ヘビー級挑戦者決定戦

ルイス・オルティス (キュ―バ)42才 戦跡 36戦32勝27KO 2敗2無効試合 元WBA暫定ヘビー級チャンピオン 2015年10月にタイトルを獲得している。2敗はいずれもデオンティ・ワイルダー戦によるもの。しかし特に第1戦の7R ワイルダーをあわやダウン寸前まで追い込んだ試合が印象深い。ニックネームは「キング コング」。

対戦者 チャールズ・マーティン(米)35才 戦跡 31戦28勝26KO 2敗1分 IBF 2位 元IBFヘビー級チャンピオン。しかしタイトルマッチ獲得後85日目にアンソニー・ジョシアに2RKOで敗れタイトルを失う。ニックネームは「プリンス チャールズ」。

オルティスは14ヶ月振り。マーティンは23ヶ月振りの試合である。オッズは10:3でオルティス。

1R オルティス 右ジャブを突いて順調に立上がり主導権を握ったかにみえた。右ジャブでマーティンダウンしたかに見えたがレフリーはスリップと判定。その後マーティンの打ち下ろしの左ストレートでオルティス ダウン。なぜかマーティンは追打ちすることをせずにゴング(ストレートはオルティスの後頭部に当たったもの)

2R 距離はマーティンのもので、オルティスは距離を詰めたいところだがマーティンの右ジャブ、左ストレートの為近づけず。

3R お互いに左ストレートを同時に繰り出すが、ヒットはせず。マーティンはオルティスの出るところに左ストレートを狙う。

4R オルティスが距離をつめるところ、マーティンの右・左・右のコンビネーション浅いがヒット。そのあとマーティンの右ジャブがストレートのカウンターとなり、オルティス2度目のダウン。ゴングに救われる。

5R マーティンは左アッパーを振う。当らないがマーティンはすっかり余裕を持ったようで、動きも軽快となり終盤左ストレートにオルティスふらつく。

6R オルティスの突然の左ロングフック マーティンの顔面にヒット。マーティンぐらつく。そのあとオルティス猛攻撃をかけ、たまらずマーティン ダウン。左手をロープに挟まれて、これを外してもらった事で一呼吸したが、オルティスの攻撃は止む事はない。もつれてマーティン倒れたところ、レフリーはダウンと判定。マーティンに戦う意志なしと判断したレフリーはTKOを宣言して、オルティスの大逆転勝利となった。

 

マーティンは5ラウンド終わったところで勝利を確信した事であろう。やゝ警戒心を失いKO狙いに不用意に出たところ、左ロングフックをまともに貰って、すっかり効いて自分を失ってしまったようであった。パンチのある選手は恐い。これでヘビー級生き残りをかけた大事な一戦をマーティンは棒に振ってしまった。タイトル獲得の挑戦権を賭けた試合に敗れタイトル戦は夢と消えた。

 

会場 カナダ ケベック州 モントリオール ベル・センター WBC,  IBF Lヘビー級タイトルマッチ チャンピオン アルツール・ペテルビエフ vs マーカス・ブラウン 2022年1月31日  (試合日 2021年12月17日)

会場 カナダ ケベック州モントリオール ベル・センター  2022年1月31日 (試合日2021年12月17日)

WBF, IBFLヘビー級タイトルマッチ

チャンピオン アルツール・ペテルビエフ(ロシア)36才 戦跡 16戦全勝全KO ロンドン、北京 五輪出場

挑戦者 マーカス・ブラウン(米)31才 戦跡 25戦24勝16KO1敗 ロンドン五輪出場 ニックネームは Sir(サー)元WBA暫定Lヘビー級でバドウ・ジャックを破ってタイトル獲得したが、2019年8月ジャン・パスカルに敗れタイトルを失っている。サウスポーで足が速いテクニシャンである。

1R ペテルビエフは例によって高くガードを掲げてゆっくり前進。ブラウンは右ジャブを繰り出しながらゆっくり左右に回るが、やゝロープに詰まり気味。ペテルビュエフはブラウンのパンチをガードで防いで接近。自分の距離になるまで手は出さない。

2R ペテルビエフのプレッシャーが強まり、ブラウン、右ジャブではこの勢いを止められずロープに詰められる。

3R ペテルビエフはブラウンをロープに詰めることが今の主目的と考えているようで、ブラウンはたまらず右ジャブと左ストレートでこれを防ぐが、押されている為に威力がない。後半ブラウンをロープに詰めてクリーンヒットはないもゝの集中打をみせる。

4R バッティングでペテルビエフの額から出血。このラウンド以降最後まで流血は続く。ペテルビエフはレフリーに試合をとめられない為に攻撃を強める。

5R ペテルビエフ傷の具合を確かめる為にドクターチェックを受ける。そのあとブラウンはロープに詰められ集中打を受けて、接近戦に巻き込まれ自分のボクシングが出来なくなってきた。ペテルビエフは左右、上下とショートパンチを的確に送り込んでくる。 

6R ペテルビエフの左ジャブが良く当り、ブラウンはロープ、コーナーに釘付けとなってきた。ペテルビエフはこの段階でも大振りはせずに左ジャブを有効に使い、ショートパンチを数多く打ってくる。

7R ペテルビエフはブラウンをロープに詰めて集中打のあとのボディブローからの右アッパーで辛抱していたブラウンも遂にダウン。何とかゴングに救われる。

8R ブラウン最後の勝負を賭けて攻撃に出るが、中盤を過ぎる頃からロープに詰められて打たれ始める。

9R ブラウン コーナーに詰められて集中打を受けダウン。立上れずにKO敗けとなる。

 

これでペテルビエフは5度目のタイトル防衛となった。ペテルビエフは全KO勝利を続けているが、パンチを力一杯振う選手ではなく、左ジャブを突いて多彩なパンチをコンパクトに的確に当て、打つタイミングを変え、打つ位置を変えての試合振りは、その技術の高さを改めて我々に示してくれた。

防御は総てガードであるが、その能力の高さも相当なもので、唯体力とパンチ力で勝ってきた選手ではないことを証明してくれたことは嬉しいかぎりである。

ブラウンの得意の足を使って戦うスタイルに苦戦が予想されるが、完全にこれを封じ切っての勝利であった。このクラスにはWBA王者で全勝のドミトリー・ビボルが居て統一戦が望まれる。

ペテルビエフにとって正面から打ち合う相手が最も好ましいが、昨今力で対抗する選手は見当らなくなり、巧い選手、又は足を使ってヒット・アンド・アウェイで対抗する選手が多くなってきたが、これらに対抗する技術もペテルビエフは相当なもので、まるで鶏を追い込むように相手の動きを封じて、結局は倒し切ってしまう技術の高さは改めて見直される。

会場 カナダ ケベック州 モントリオール オリンピア・センター WBCブリッジャー級王座決定戦 オスカル・リバス vs ライアン・ロジッキ 他 2試合 2022年1月24

1.WBCブリッジャー級初代王座決定戦  オスカル・リバス vs ライアン・ロジッキ

2.IBFクルーザータイトルマッチ チャンピオン  マイリス・ブリーディス vs アルツール・マン

3.Sミドリ級10回戦 デビット・ベナビデス vs カイロン・デービス

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1. 会場カナダ ケベック州モントリオール オリンピア・センター 2022/1/24

 試合日 2021/10/22

WBCブリッジャー級初代王座決定戦

従来のクルーザー級は90.70kg以下であったが、ヘビー級選手の平均的体格が大きくなる傾向が強まり、実質的にクルーザー級との差が拡大した為にクルーザー級とヘビー級との間に101.60kg以下のクラスを新設し、ブリッジャー級とした。しかしボクシング界に反対意見が多かったのも事実であり、過去タイソンも小柄であったし、ホリフィールドもクルーザー級出身。現WBA、IBF、WBOチャンピオン  オレクサンドル・ウシクもクルーザー級出身であることから、今でも17階級と多いクラスにさらに増やすことに否定的な意見もあった。しかし新設を支持する声が多くブリッジャー級が決定し、その初代チャンピオンを決める試合である。

オスカル・リバス(コロンビア)34才 同級1位 戦跡 28戦27勝19KO 1敗 

ライアン・ロジッキ(カナダ)26才 同級15位 戦跡 13戦全勝全KO 

リバスはヘビー級からクラスを下げて、ロジッキはクルーザー級からあげて闘う事となった。

1R リバス 先制攻撃をかけてパンチを振う。ロジッキは中盤からペースを握ったかにみえたが、終盤リバスの右ストレートで追い込まれダウン寸前となるが、辛うじてゴングに救われる。

2R 試合は体格差とパンチ力、リードパンチの差でリバスに利があるが、ロジッキは打たれ強く、ガードを固めて接近戦に持ち込みペースを掴む。

3R 離れるとリバスの左ジャブの威力とパンチ力に負ける為、ロジッキは接近戦に活路を見出し、頭をつけて打ち合う。

4~6R 3R同様有効打でリバス、手数でロジッキで進行。

7Rロジッキはリバスの体力とパンチ力に次第に押され始めて、11Rリバスの左フックでロジッキはダウン寸前となるが、リバスも疲れており追い切れない。

12R 両者力を振り絞って打ち合いのまゝ終了。

判定は116:111が一人、115:112が二人でリバス勝利。初代のチャンピオンとなる。リバスは左ジャブが鋭く、かつ正確で右パンチも強く、途中休むところは休んで体力の温存をはかって試合運びも巧みであった。ロジッキは驚異的な粘りとタフネスで対抗したが、如何せん、パンチにスピードも力強さも乏しく、接戦ではあったが、当然の結末であった。

 

2. 会場 ラトビア アリーナ・リガ  試合日 2021/10/16

IBFクルーザー級タイトルマッチ

チャンピオン  マイリス・ブリーディス(ラトビア)戦跡 28戦27勝19KO 1敗 この1敗は当時クルーザー級4団体チャンピオンであったオレキサンドル・ウシクでその後3団体統一チャンピオンのヘビー級アンソニー・ジョシアを下してチャンピオントなったている。挑戦者 アルツール・マン(ドイツ)戦跡 18戦17勝9KO 1敗。 

マンはコロナの影響もあり仲々試合が組まれず、引退してパリ五輪出場を考えていた。 ブリーディスの方は仲々対戦相手が決まらずいたところ、たまたま戦跡も良かったマンに白羽の矢が立ったので、急拠5週間で体調を仕上げてこの試合に臨んだ。

1R マンは左ジャブを数発仕掛けて右ストレート3発アッパー1発軽いがヒット。ブリーディスは中盤から圧力をかけて前に出る。

2R ブリーディスの打ち下しの右ストレートでマン ダウン。

3R ブリーディスは左右、上下に打ち分け最後の力を入れたボディブローでマン2度目のダウン。辛うじて立上ったところに左ボディブローを打たれて3度目のダウン。一度立上りかけたが再び崩れ落ちて3R2分59分TKOを宣せられた。

ブリーディスはさほどスピードもパンチ力もあるように見られないが、左ジャブを突いて左右フック、ストレート、アッパーと多彩なパンチを打ち分けて防御も巧みな堅実な選手であり、初防衛に成功。ラトビアではスター選手で絶大な人気を誇っている。

 

3. 会場 米国 アリゾナ州 フットプリント・センター 試合日 2021/11/13

Sミドリ級10回戦 

デビット・ベナビデス(米)24才 戦跡 24戦全勝21KO  前WBC Sミドリ級チャンピオン  2度タイトルを握っていたがともに体重オーバーでタイトルを剥奪されている。

尚 兄のホセは28才アマの戦跡は120勝5敗で元WBA暫定Sライト級チャンピオンであったが、テレンス・クロフォードに唯一敗れている。

対戦者  カイロン・デービス(米)27才 戦跡 19戦16勝6KO 2敗1分

1R ベナビデス 左ジャブを出しながらゆっくり前進。デービスはその圧力に押されてリングを廻って逃れる。

2R ベナビデスはガードを締めて高く構えて、かつ相手のパンチには素早く反応。デービスをロープに詰めると回転の速いパンチを繰り出して攻撃。

3R ベナビデスは一段と圧力を強め、デービスを追い回す。身体の回転を使わずに手打ちのパンチで50%程度の力で乱れ打ち。

4R ベナビデスはデービスをロープに詰めて連打。左フック、右アッパー途中必ずボディブローを入れ、多彩なパンチ。

5R ベナビデスの攻撃は加速。デービスも反撃しなければTKOを宣せられる恐れがある為に必死で反撃するが、後退しながらで威力のあるパンチは振えない。

6R 打たれても流石に防御が巧みでタフなデービスも試合が一方的な為弱ってくる。

7R ベナビデスはそろそろ倒しにかゝり、力をいれたパンチを振って連打するところ堪らずデービスのコーナーからタオルが投げ込まれTKOとなる。愈々これでベナビデスの対戦相手はカネロ・アルバレスに絞られてきた。カネロにとっては過去最大の難敵となる。しかしカネロはあまりベナビデスとは戦いたくないような話も聞こえてはきており、ベナビデスの長身で懐の深いジャブが良く出て、まるで軽量級のような速い連打と防御の巧みな相手を攻略することは至難の技である事からだ。4団体統一の絶対王者アルバレスがLヘビー級へ転向する意向をもっており、実現すると現在1位のベナビデス、2位のディビット・レミュー、3位のダニエル・ジェイコブスとそこに割って入ってくるミドル級の強打者ジャメール・チャーロの参入の話もあって、面白くなってくる。しかしレミューもジェイコブスも既に峠を越えた感があり、ベナビデスの優位は動かないところだ。云われるようにベナビデスには両足が揃う欠点はあるが、これを突く力量のある選手は今迄にない。

 

会場  米国  ニューヨーク州  マディソン・スクエア・ガーデン  ライト級12回戦 ワシル・ロマチェンコ vs リチャード・コミー   他3試合 2021年12月20日 (試合日 12月12日)

会場 ニューヨーク州マディソン・スクエア・ガーデン 試合日 2021年12月12日

1.  S ウエルター級6回戦 サンダー・ザヤス vs アレッシオ・マストロヌンツィオ

2. ライト級6回戦  キーション・デービス vs ホセ・サラゴサ

3.  ヘビー級8回戦 ジャレド・アンダーソン vs オレクサンドレ・テスレンコ

4.  ライト級12回戦 ワシル・ロマチェンコ vs リチャード・コミー

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1.S ウエルター級6回戦

サンダー・ザヤス(プエルトリコ)19才 戦跡 11戦全勝8KO

アレッシオ・マストロヌンツォ(イタリア)26才 戦跡 10戦9勝3KO 1敗

1R 開始早々僅か10秒ザヤスの右ストレートでマストロヌンツィオ ダウン。立上ったところに左ジャブから右フック、ストレートで一方的となりTKOをレフリーは宣言。前評判の高い将来のチャンピオンと目されるザヤスは期待通りの試合であった。

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2.ライト級6回戦

キーション・デービス(米)22才 戦跡 3戦全勝2KO  プロでこの成績のあとアマチュアに転向し、東京オリンピックのライト級で銀メダル獲得しその後再びプロに戻っての初戦である。

ホセ・サラゴサ(メキシコ)33才 戦跡 12戦8勝2KO 3敗1分

1R サラゴサ、ガードを固めて前進、プレッシャーをかけるが、パンチのヒットはせず、このラウンド後半からデービスのペースとなる。

2R デービスの左ボディブローを集中的に打たれ弱ってきたところに右アッパー顎に命中、サラゴサ堪らずダウン。立上ったところに左ボディブローで2度目のダウン。苦悶の表情で立上れずTKOとなる。

デービス  スピード、テクニック、カウンターの巧さと流石にレベルの違いをみせた。

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3.ヘビー級8回戦

ジャレド・アンダーソン(米)22才 戦跡 10戦全勝10KO WBCヘビー級34位

オレクサンデル・テスレンコ(ウクライナ)29才 戦跡 18戦17勝13KO 1敗 

1R アンダーソン左構えで始める。右ジャブを上・下に、次いで左ストレートで主導権を握り、後半は右構えに。

2R アンダーソン、このラウンド右構えにして、いきなりの右フックにヒット。テスレンコはガードを固めブロックしたが そのわずか上にパンチがヒットしてTKOに終わる。

 

上記3試合の勝者3人とも将来チャンピオンとなるような期待の選手であると評価されているが、ヘビー級のアンダーソンは全試合KOで来ている。しかし、これは対戦相手が弱い為で確かにボクシングは型通りに嵌っているいるが、目を見張るような特徴がなく、これから当たるランキングボクサーと闘ってこのまゝ通用するか、評価これからである。

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4.番外ニュース ロマチェンコ、コミー戦のに前に、ゲストとしてリングに登ったボクシング界の最大のスーパースター タイソン・フューリーが90才を迎えたトップランク社 CEO ボブ・アラムを祝って「ニューヨークのみんな 楽しくやっているかい、海を渡ってきたけど、たった5000マイルの距離だったよ。世界一の伝説のプロモーターの為に歌いに来たんだ。ボブはどこにいる?ボブ・アラム、ボクシング界のレジェンドだ。そして俺がこの惑星で最も偉大なボクサーだ。だから誰もが知っているあの歌をみんなで唄おうぜ!ハッピーバースデートゥーボブ!」フューリーはそのエンターティナー振りを今回も遺憾なく発揮した。

 

4.ライト級12回戦

ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)33才 戦跡 17戦15勝11KO 2敗 ニックネームは「ハイテク」。3団体王者であったがティモフィオ・ロペスに惜敗してタイトルを失い、再起戦で中谷をKOで下し、これが2戦目である。このクラス4団体統一王者はロペスを判定に下したジョージ・カンボソス、WBAレギュラー王者ジャーボンティ・デービス、WBC王者デビン・ヘイニ―がいるが何といってもロマチェンコがこのクラスの中心である事は間違いないところだ。

リチャード・コミー(ガーナ)34才 戦跡 33戦30勝27KO 3敗 ティモフィオ・ロペスに2RKO敗けでIBFのタイトルを失ってのこちらも再起戦であり、ボクシング界の有数のハードパンチャーである。

1R コミー 左ジャブを型どおり10数発、ボディブローを1発出すが、いつもに比べてやゝ腰が引けているようだ。

2R 1ラウンド様子をみていたロマチェンコの動きが急に活発になってくる。コミーは動きを止めるべくクリンチでこれを防ぐ。コミーの腕力は相当なものでロマチェンコがこれを振り解くのは仲々のようだ。

3R コミーは試合の主導権を握るべく接近戦を挑み連打するが、ほとんど当らない。ロマチェンコの右ジャブ速く、上・下に打ち分け、的確。上体を絶えずうごかし、前後、左右に動いてコミーに的を絞らせず、左ストレートのカウンター、コミーの顔面にクリーンヒット。

4R ロマチェンコの動きが一段と精彩を放ち細かいパンチが 精彩を帯びる細かいパンチがコミーの顔面、ボディに数多くヒット一方的となりコミーも何とか攻撃に転ずるが、打つ前に打たれ、打つと躱されカウンターを打たれてスピードと技術の差が歴然としてくる。

5R コミーがクリンチするところ、ロマチェンコ振り解いて左ショートフックを振う。タイミング絶妙。ウマイ!右ジャブからの左ストレートでコミーふらつく。細かいパンチをタイミング良く数多く浴びて、コミーのダメージが重くなってきた。

6R ロマチェンコすっかり余裕をもってきて、コミーの必死の攻撃を難なく躱し、自分のパンチを当てる。

7R ロープ際でロマチェンコの攻撃をクリックで凌いで、コミーがホッとした時右手をクリンチから抜いて距離を僅かにとったと見る間に、ロマチェンコの超至近距離から左フックのショートフックがコミーの顎を捉えて、コミー ダウン。立上ったコミーが足がふらつくのをみたロマチェンコはコミーのコーナーに、もう無理だから試合をやめるように訴えるが、これに応ぜず試合再開したロマチェンコは倒しにかゝるがコミー必死に耐えて辛うじてゴング。

8R ロマチェンコ 7ラウンドの猛攻でこのラウンド休む。

9~12R コミー何とか立ち直るが試合は一方的。コミーはKOを免れるのに精一杯のまゝ終了。

 

判定は117:110が一人、119:108が二人で、ロマチェンコの完勝であった。変幻自在の動きと防御に対する絶対の自信、完璧のガード。どこから出てくるか分からない多彩なパンチと当て感の良さ、相手の空いたところを見逃がさなずパンチを打ち込む鋭さに、相手は自分のパンチは全く当らずに一方的に打たれるこのような試合は過去歴戦の雄たちが悉く子供扱いされて途中ギブアップしてきた事はニコラス・ウオータースやギジェルモ・リゴンドー等で何度も見てきた。対ティモフィオ・ロペス戦も左手を負傷していた事が試合後判明、試合後手術している。それでも、この試合有効打は圧倒的にロマチェンコにあったのである。その後の中谷戦、今度のコミー戦をみてもロマチェンコの完全復活は間違いのないところで、4団体統一への道が再び見えてきたといえよう。

 

一方コミーはフェザー級のニコラス・ウォータース型の強打者で、普通に打ち合う相手ならば無類の強さを発揮することであろう。しかし相手が何せロマチェンコである。いつどこから飛んでくるか解らないパンチと打とうと思うとそこに相手が居ない為に打つタイミングが掴めず、無理にパンチを出すとその空いた部分を打たれ、また打つ前に打たれ自分のパンチは相手の身体にも当たらず殆んどが空振り、しかも軽いパンチでも正確にヒットされて精神的にも肉体的にも消耗してくることから、多くの有力ボクサーが途中棄権して試合を諦めてきたのである。しかしコミーは最後まで諦めずに一発逆転を狙って戦ったことはこの試合で評価を下げることはないであろう。

 

会場 カリフォルニア州カーソン・ディクニティ・ヘルス スポーツパーク 2試合   試合日 2021年12月11日

1.S ライト級10回戦

ブランダン・リー(韓国系アメリカ人)22才 戦跡 23戦全勝21KO、IBF Sライト級9位

 

対戦者  ファン・エラルデス(米)31才 戦跡 18戦16勝10KO 1敗1分 1敗はプログレイスに3R KO負けである。

 

1R エルナンデス積極的に打って出るが、リーの右フックがヒットしてエルナンデス消極的になる。

 

2R リー 左ジャブのボディブローさかんにだす。エルナンデスはりーのジャブの打ち終わりを右フックのカウンター狙い。

 

3、4R 一進一退が続いて5Rリーが攻撃を強めて右ストレートが数発ヒット。エルナンデス 上・下でパンチを受けて後退気味、このラウンドで鼻血を出す。

6R 5Rの流れを受けてパワーの差が出てきた。

 

7R 左フックからの右ストレート顔面に命中。エルナンデス後方に飛ばされてダウン。立上れずKOとなる。

 

リーは今までは踏み込みも鋭くパンチも思い切り振っていたが、相手のレベルも高くなり、注意深く試合をすゝめ、徐々に相手を弱らせたうえで、得意の右ストレートで仕留める巧みさをみせた。今大学に在籍し、IQも高く成績も優秀であるとの事。ニュースターの誕生を思わせた。一方エルナンデスは試合巧者でカウンターもうまく、当て勘も良く、完成された良いボクサーであった。    

             ・・・・・・・・・・

2.WBCバンタム級タイトルマッチ

チャンピオン ノニト・ドネア(フィリピン)39才 戦跡 47戦41勝27KO 6敗

レイマート・ガバリョ(フィリピン)25才 WBC暫定王者 戦跡 24戦全勝20KO 

ドネアはフライ級からフェザー級まで5階級を制していたが、フェザー級でニコラス・ウオータースにKO敗けしてから低迷したが、クラスをバンタム級にさげて復活。2021年5月全勝チャンピオン  ウバーリを4R左アッパーでKOして再度輝きをとり戻した。

一方ガバリョはエマヌエル・ロドリゲスを2:1の僅差の判定に下し暫定王座についた。同団体の統一戦である試合前の記者会見で英語が話せないガバリョの話を引き取って通訳を買って出たドネヤが後輩を気遣うやさしさをみせた。又自分について朝起きるとまるで20才のように感じて、このまゝで行くと50才まで現役を続けられそうだと語っている。

 

1R ドネヤの左ジャブから試合が始まり、ガバリョの左ジャブ、右ストレートは速く鋭く力感が溢れていて軽量級とは思えない緊迫した試合となった。

 

2R ドネアはガバリョの距離を始めから見切っていたように小刻みなスッテプを踏んで距離を詰め圧力をかけ、相手がたまらずに出てきたところに左フック、アッパーを繰り出す作戦で、主導権を完全に握っていた。

 

3R 一瞬も気を抜けない試合が続く。

 

4R ドネアは右ボディブローを2発のあと、左ボディブローを2発。ガバリョはドネアの左フック顔面に注意を集中していた為に、レバーへの左フックに対応できずダウン。苦悶の表情を浮かべて立上ることが出来ずにカウントアウトとなる。

 

ドネアは自信に満ちて試合に臨んで余裕をもって戦っており、ガバリョの顔面に注意を集中させておいて、左ボディに強烈なパンチを送り込んだ。最小限のエネルギーを使って、無駄な動きを拝しての完璧な試合であった。

一方のガバリョの体調の仕上がりはロドリゲス戦と比べて数段の出来で、そのスピード、パワーは一段と上達しており、ドネア以外であれば十分な王者であったろうと思わせた。

これでドネアと井上の実力の差は大分縮まったとみられて大一番に向けて期待が高まった。ちなみにファイトマネーはドネアの最低保障は20万ドル、勝利すれば更に15万ドル、合計35万ドルで呆れるほどに少ない。ドネアがこれに応じたのは次に井上尚弥との対戦で桁違いの報酬が見込まれるからであろう。

 

会場 米国 ロスアンゼルス ステーブルズ・センター                  試合日 2021年12月5日

1.WBC ウェルター級挑戦者決定戦

セバスチャン・フンドラ(米)23才 戦跡 17戦16勝12KO 1分 同級4位

セルシオ・ガルシア(スペイン)29才 戦跡 33戦全勝14KO 

フンドラは197㎝の長身、ガルシアは185㎝。

1Rから12Rまでガルシアは圧力をかけて前進。フンドラはガルシアの前進を止める右ジャブがない為に中に入られて、終始接近戦を強いられたが、彼自身接近戦が嫌いではないようで長い手を折り畳んで左アッパーを中心に迎え打つスタイルで対抗した。ガルシアは圧力をかけてパンチを振うが、フンドラの左フック・左アッパーが待ち受けているので、懐に入っても攻撃に結びつけられずに、フンドラの左ストレート、アッパーの餌食となって攻撃はとるが有効打は打つことが出来ずに敗北した。

115:113が一人、117:111、118:110でフンドラに軍配が上がった。

これだけの長身選手はガルシアとしても初めての対戦で大分戸惑ったようで自分の持ち味が出せなかったようである。

しかしこのWBCのチャンピオンは無類の強打者ジャメル・チャーロで今までの相手と桁違いの強打者でやゝひ弱さをみせるフンドラがどう戦うか見ものである。

         ・・・・・・・・・・・・・・・     

2.WBAライト級タイトルマッチ

チャンピオン ジャボンティ・デービス(米)27才 戦跡 25戦全勝24KO ニックネームはタンク、フロイド・メイウェザーの秘蔵っ子である。

挑戦者 イサック・クルス(メキシコ)23才 戦跡 24戦22勝15KO 1敗1分

1R 開始早々クルス猛然と前進。左フックを右フック デービスの顔面にヒット。先制攻撃をかける。

2R クルスの攻撃続くがデービスの右アッパー ヒット。

3R デービス  やゝ落ちついてきて、前進するデービスに左・右のカウンターをあてる。

4R クルスのボディブロー 数発ヒット。

5R デービスのスピードあるパンチが次第に軽くではあるがヒットし始める。

6R デービスのボクシングが生き始め、自在に動き、多彩なパンチが際立ってきた。

7R 前半に掛かっていたクルスの圧力が弱り、デービスのボクシングが完全にすゝみ始める。

8R これではいかんとみたか、クルス攻撃力を強め盛り返す。

9R デービスにメィウェザーからゴーサインが出てデービス倒しにかかる。クルスもこれに応戦。

10R  クルスはデービスをコーナーに詰めて攻撃するが、デービス余裕をもってこれを受け止め、攻撃を強める。

11R デービス、左手を痛めて左を全く出さず右だけで闘う。 

12R 11R 同様。

判定  116:112が1人、115:113が2人で、デービス勝利したが不本意な試合であったろう。

クルスはガッチリと両腕でガードを固めてひたすら前進し、デービスのパンチをまともに喰わない作戦は功を奏し、倒されなく判定に持ち込んだクルスは攻撃力も耐久力もスタミナもあり、ガードも固いことからデービスも攻めあぐねたが、その能力の高さは随所にみせてくれて、そのスピードと威力、センスはスーパースターとしての存在感を存分に見せてくれた。